先日、以下の内容のポストをバイオの買物.comのフォーラムに書き込まれました。
2ch経由で入ってきたユーザで、主に「ニュース」を見てからコメントしたようです。言葉の調子が非常に強く、冷静な議論を難しくしてしまう危惧がありましたので、ポイントだけ抜粋させていただきました。また、もとのポストは削除させてもらいました。
ただしおっしゃっている内容は本質的なものなので、こちらのブログの方で取り上げました。
メーカーサイトのリンクばっかりで気持ち、どこで調べたかわからない実勢とは異なった価格とか載ってる。どうでもよい試薬の。….
具体的な現場の話でもあれば少しはましになるかもしれないと思います。…..
製品の比較も、一番マーケットシェアをとってるものに対して、2番手、3番手を取り上げるくらいに絞らないと。
まず、最初に僕のスタンスを明確にしたいと思います。
- おっしゃっていることは基本的にはよくわかります。
- それに対する解決策を提供するのが「バイオの買物.com」の使命と位置づけており、少しずつではあるけれどもその解決した姿に近づければと思っています。
以下、説明していきます。
どこで調べたかわからない実勢とは異なった価格 について
価格はすべて各社のウェブサイトから取り出しています。古い情報になってしまわないように、2週間に1回程度の頻度で更新を行っています。
ただし、この価格が実勢と異なる価格であることは事実です。そしてまさにここが問題になる訳です。
実勢価格は通常、研究室もしくは施設ごと、そしてメーカーごと取引代理店ごとに設定されています。仕組みとしては、メーカーは代理店に対して決まった卸価格で製品を卸します。この価格(仕切り価格)は通常定価の何%というように決まっていて、メーカーごとに異なります。同じメーカーであれば、ほとんどの製品は一律の%になります。またこの仕切り価格は、同じメーカーでも代理店ごとに異なります。最後に代理店が末端顧客(研究者)に製品を販売するとき、メーカーからの仕切り価格に代理店取り分のマージンをのせた価格で販売します。
言葉だけで説明するとわかりにくいのですが、要するにメーカーが代理店に製品を卸す時点で既に卸価格は一つではないですし、その後も代理店は顧客個別に値引きをする訳です。ですから実勢価格とメーカーが設定した希望小売価格は大きく異なってきますし、高い値段で買わされる顧客と安い値段で買えてしまう顧客も出てきます。
このように実勢価格とメーカーの希望小売価格が異なることは別に珍しいことではなく、むしろ当たり前のことです。家電や食品など、大部分の業界で一般的です。逆に実勢価格がどこでも希望校入り価格であれば独占禁止法違反の疑いが出てしまいます。
ただし、バイオ業界では、メーカー希望小売価格から実勢価格を概算するのはそれほど難しくない側面もあります。なぜなら通常は代理店ごとに各メーカーの割引率が一定に設定されているからです。例えば代理店AからメーカーGの製品を購入するときの割引率はほぼ一律15%引き、代理店AからメーカーHの製品を購入するときは一律10%引き、そして同じメーカーGでも、代理店Bから買えば割引率が17%になる、という感じかと思います。ですから、この情報を研究室ごとに整理すれば、メーカーの希望小売価格から実勢価格を計算することはだいたいですができるはずです。何しろ製品数が多いので、代理店が個別の小売価格を設定することはまずやらないからです。
ただし僕が問題と感じるのは、小売価格の不透明性です。代理店は小売価格をオープンにする訳ではなく、すべて各研究室ごとの個別対応です。家電業界の小売りであればインターネット上に価格を載せたりしますが、バイオの業界ではそんなこともありません。すべて個別に、研究室ごとに代理店が値段を変えているのです。実勢価格と異なる希望小売価格であっても、それを見やすい形で整理していくことによって、実勢価格までも少しずつ透明になっていくことを期待しています。そうすれば値引き交渉がうまい研究室でも下手な研究室でも、そして大きい研究室でも小さい研究室でも、それなりに安い価格で製品が購入できるようになると思います。要するに家電業界で起こっているようなことがバイオの業界でも起こるようになればと思っている訳です。
製品の比較も、一番マーケットシェアをとってるものに対して、2番手、3番手を取り上げるくらいに絞らないと について
これについては、僕の意見は逆です。簡便性を重視するのであれば、マーケットシェアが高いものだけを取り上げることは良いかもしれません。でもそればかりだと、結局市場は硬直化してしまいます。
今年もそうですけれども、多くのメーカーはまたもや4月から値段を上げてきました。日本の研究者は予算の減少に悩んでいるのに、試薬の値段が上がってしまいます。メーカーの論理(そしてこれは外資系の論理ですが)からすれば、どうせ研究者はいろいろ調べないだろうから、値上げしても買ってくれるだろうというわけです。言い方は悪いですが、日本の研究者は外資系メーカーからその程度に思われてしまっています。
それを回避するためには、研究者は他社の製品との比較検討を行い、そして性能が変わらないと思われるものに関しては、値段が安い方を買うようにしないといけません。そしてその比較検討の手伝いをするためのウェブサイトがあった方がよいだろうというのが「バイオの買物.com」の考えです。
トップ3社に絞ったときと同じような簡便性でありながら、10社ぐらいを同時に比較できてしまう。そんなサイトになれればと思っています。これは難しい課題ですが、乗り越えるだけの価値はあると思っています。