Wall Streetの元投資家で、複数のベンチャー企業の取締役になっている Roger Ehrenbergが、Monitor110という投資情報を集積する技術を開発していたベンチャー企業の失敗について語っているブログがありましたので、一部紹介します。(翻訳調で書きますが、実際には一部分のみを書き出しています)
Rogerは7つの決定的失敗 (Seven Deadly Sins) があったと解説しています。
- 最後の決断を下す、一人のリーダーが欠けていたこと(リーダー2人体勢の問題)
- 技術を担当する組織と、製品を担当する組織の区別が曖昧だったこと
- PR を早くやりすぎた、多くやりすぎたこと
- お金がありすぎたこと
- 顧客との距離が十分に近くなかった
- 市場の現実に対応するのに遅すぎた
- 会社と取締役会とで、戦略の不一致があったこと
リーダー2人体制について
Jeffという技術出身の人が技術と製品を担当し、RogerはWall Street投資家の経験を生かして資金集めをするという体制でした。でも結局、本当に難しい決断はこの体制では下せませんでした。JeffもRogerも組織の方向性を変える権限が無かったのです(失敗#1)。
製品を出すこと vs. 研究プロジェクト
より良い製品を開発するまで待つか、それとも不十分な製品をとりあえず出して、フィードバックを集めるか。そのとき、前者を選んでしまいました。後から考えると後者を選ぶべきでした。前者を選んだことによって、顧客との距離が開いてしまいました(失敗#5)。また技術担当と製品担当の区別が曖昧だったために、技術先行の研究プロジェクトが長く続いてしまったのです(失敗#2)。何となくは気付いていたのですが、起業家としての経験不足で遠慮してしまってか、アクションを起こせなかったのです。
しかもこのときにFinancial Times紙 (世界的に権威のある英国の経済新聞)の一面に載ってしまったのです(失敗#3)。そのため、なおさら中途半端な製品を出すことが出来なくなってしまったのです。またお金も集めやすくなったので、顧客との距離を置きやすくなったのです。
お金がありすぎた
お金がありすぎたために、非効率な組織構造と的確でない決断を続けることができました(失敗#4)。ケチケチとした利益志向になるようなプレッシャーが無かったのです。お金が潤沢にあったので、製品を顧客に見せる必要がありませんでした。本質的な技術上の問題があっても、それを直視するのが遅れました。お金がありすぎたことが根本原因で、他の6つの決定的失敗を繰り返す羽目になったと言っても過言ではないでしょう。これが教訓で、いまではこの問題に非常に神経質です。ある会社が、真に必要な金額以上に資金を集めようとしていたら、強く反対します。
投資家の期待 vs. 市場の現実
失敗#6, #7に関連して。
お金を集めたときは、ウェブから自動的に情報を取り出し、それぞれの情報の信憑性と有用性を解析するシステムというビジョンを売り込んでいました。でも実際にやってみると、これは技術的に大変なことでした。信憑性の低い情報が混ざり、カテゴリー分けがおかしくなり、信憑性解析アルゴリズムがうまく当てられなかったりと散々でした。
そこで顧客に近い社員は全く違うアプローチを提案しました。情報のリアルタイム自動解析技術を売る会社としてではなくて、解析済みで品質管理も行われた情報を売るようにしたいと。
しかし、失敗#1と失敗#2の影響もあって、これは社内の分裂を招きました。何ヶ月間も社内で議論が行われ膨大なコストがかかりました。最終的には方向性を変えましたが、会社の士気は大幅に下がり、経費インパクトも大変なものでした。