ミクシィのケータイへのシフトを読み解く

ミクシィに限らず、日本のインターネットビジネスの中でケータイの重要性が大きく増しています。(例えば 1, 2

実際に利用する人の利便性という意味ではパソコンを使ったインターネットの重要性はますます高まっているようにも思います。しかしいざ収益という点においては、パソコンは横ばい、それに対してケータイが成長しているという話が各社から聞かれます。

その中の一つ、ミクシィのケータイへのシフトについて述べている記事がありましたので、それを見ながら僕なりの考察を加えたいと思います。

ページビュー数ではすでに「パソコン1」対「ケータイ2」に

登録会員数の内訳は公開されていないので詳細は不明だが、パソコン・携帯電話それぞれのページビュー数では2007年8月に初めて携帯電話経由の値がパソコン経由のを上回り、以降ずっと「携帯電話経由のページビュー数が全体に占める割合を増やしつつある」傾向が見られる。

ちなみに2008年9月時点の数字はパソコン経由のページビューが49.9億なのに対し、携帯電話経由は97.8億。すでにパソコン対携帯電話の比率が1対2に迫っている。この比率がさらに携帯電話寄りになることは容易に想像がつく。

読み解くという意味では、ケータイからのページビュー数を過大評価しないように気をつけるべきだと思います。というのは、ケータイの方が画面が小さく、一度に多くの情報を載せられないため、ページビューが多くなる傾向にあるからです。ページビューというのはウェブサイトのナビゲーション構造に大きく影響されますので、異なるウェブサイト間でページビューを比較するのは、あまり意味が無いのです。

ただ広告を掲載する上では、このページビューは大きな意味を持ちます。ケータイ利用者が多くなるということは、訪問者あたりのページビューが増えることになりますので、広告収入を高める効果は非常に高いでしょう。

携帯電話の方が広告単価がパソコンより高い

携帯電話の方が(アクセス者のリアクションが良いことなどを理由に)広告単価がパソコンより高い

以前のブログ記事「高校生の携帯電話の使い方」で、携帯電話サイトの広告の方がウザイ上、間違えてクリックしやすいということを紹介しました。広告にとってはこのことが大きなプラスなのです。

つまり携帯電話の方がアクセス者のリアクションが良く、それだけ広告単価は高くなるのは事実ですが、それは利用者にとってポジティブなものではないということです。

SafariやFirefox、そしてInternet Explorerなどのブラウザでは、あまりにもウザイ広告は表示しない機能があります(ポップアップを表示しない)。いまのところケータイにサードパーティーのブラウザをインストールすることは一般的ではありませんが、それが可能になれば、ケータイのウザイ広告を表示しない機能が普及するかもしれません。

そういう意味で、「携帯電話の方がアクセス者のリアクションが良い」ことにあまり頼らないことが重要だと思います。

個人的な気持ち

個人的には日本のインターネット産業が携帯電話にシフトしていくことに危機感を感じています。理由は以下のものです。

  1. 日本だけの閉じた産業・技術で終わってしまい、日本のインターネット産業の国際競争力育成につながらない
  2. iPhoneなどに見られるように、携帯電話の進歩は凄まじく、パソコンと同様のことができるようになる日は近い。パソコンでのビジネスモデルから携帯電話のビジネスモデルにシフトしてお金を儲けようとしても、携帯電話そのものがパソコン化してしまうだろう

日本のインターネット産業には、安易に携帯電話にシフトするのではなく、パソコンでのビジネスモデルをどのように発展させていくかということをもっと真剣にやってもらいたいと思っています。確かに今は携帯電話ビジネスの方が儲かるかもしれません。でも、技術革新のスピードを考えると、携帯電話が独自のビジネス空間を形成していられるのはせいぜい5年だと思います。iPhoneや携帯性に優れたNetbookにより、携帯電話独自のビジネスはあっという間に浸食されてしまうのは間違いのないことでしょう。

8 thoughts on “ミクシィのケータイへのシフトを読み解く”

  1. なるほど。携帯のサイトは全然見ないので、気づきませんでした。でも、回りには確かに「忙しくてPCが開けない」って言う人達が数人いますね。そう言う人たちが携帯にシフトすると言うのは日本独特の現象かも。

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  2. 僕も携帯よりはPCを使う方なので、個人としてはよく理解できないことが多いです。

    ただ高校生の姪に聞いてみると「パソコンは面倒くさい」「自分専用のパソコンがあっても使わない」「パソコンは電車の中でできない」というのです。

    でもこれを聞くと、これは携帯電話の便利さがそうさせているのではなく、通勤時間が長いとか、家が狭いなどの日本の住環境の問題が原因に思えます。

    ですから、日本の携帯文化が進んでいると喜ぶのではなく、課題の大きさを認識して、さらに改善する努力を重ねてもらいたいと思っています。

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  3. じょあんなさんのmixiページからこちらにお邪魔しました。
    パソコンは根幹がアルファベット文化だしOSもアメリカ製なので、パ
    ソコン勝負したらば日本は負けます。そういう意味ではむしろ日本人
    がOSまで持っているケータイで勝負した方が優位に立てると思います。
    iPhoneだって、ちゃっかり日本の携帯事業者のビジネスモデル(
    SIMロックによる顧客囲い込み)を導入していますよ。

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  4. Escherさん、
    コメントありがとうございます。

    ちょっとわからなかったのが
    >日本人がOSまで持っているケータイ

    僕の認識では、日本のメーカーは日本生まれOSの開発をあきらめつつあり、海外のOSに移行しているように思っています。(例えば http://ja.wikipedia.org/wiki/携帯電話#OS , http://homepage3.nifty.com/webpress/index.1992d.htm)

    特にMac OS XやLinuxなど、元来はPCのOSだったものが携帯電話に利用されてきているのを見ると、携帯電話はますますPCライクになるのではないでしょうか。僕はそう考えています。

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  5. むかしラーメン屋で仲良くなったケータイ屋の兄ちゃんが言ってました。
    「パソコンはインストールだとか、いろいろ他人に触らせても平気でしょ?
    でも携帯は他人に触らせるのはイヤだよね。肌身離さず持ち歩くものはどれもそう。
    だから携帯が便利になればパソコンとか使う人はいなくなるよ。」
    これ聞いて納得した覚えがあります。

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  6. くぼちゃん、コメントありがとうございます。
    ずいぶんと返事が遅くなりましたけど、私の妻はケータイもパソコンも目の前でやるのでなければ、インストールするときだって触らせてくれません。
    僕がマック好きでパソコンが家にいくつもあって、みんなが専用のパソコンを持っているからです。
    ネットブックみたいに子供にもあげられるぐらいの激安ノートが出てきたり、逆に内部はほとんどパソコンと同じiPhoneが出てきたりすれば、パソコンもケータイも同じになっていくと思います。

    ですからケータイ向けビジネスに変に注力するのは、先を考えると間違った判断ではないかなと思うわけです。

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