「ワールドカップサッカーで日本が決勝トーナメントに進出できたのはチームワークのおかげ」としているtweetを多く見かけます。
直接は関係ないのですが、僕がいままでいた会社で見てきた??なチームワークを紹介し、「チームワークって言うのは簡単、行うは難し」「チームワークって言いながら、もう片方で個人プレイを推奨していないか?」についての僕の考えを述べたいと思います。
みんなでボールのところに行くのはチームワークじゃない
ちゃんと理解していない人がサッカーをやると、みんなボールに群がります。会社でもそういうのがチームワークだと誤解している人がいます。年中パワープレイ(一か八かの攻撃重視戦略)をやって、それがチームワークだと勘違いする人もいます。
「今年はこれが主力製品だから、みんなでこれを売れ!」とか「学術もマーケの人もみんな外に出て営業しろ!」とか、売上げの調子が悪いときの経営陣のヒステリー状態においてしばしば見られる現象だと思います。
サッカーにおけるチームワークは、各人が自分の役割は何かを考え、そしてそれを実行することです。どうやったら一番点数が取れ、点数を取られないで済むかです。そのためにはディフェンダーはちゃんと守備をしないと行けないし、センタリングを上げる人はちゃんとサイドにいないと行けない。フォワードは相手でフェンダーの最終ライン付近でチャンスをうかがわないと行けない。みんながピッチの真ん中でボールを取ろうとしていちゃダメなのです。
でも経営陣がこういうチームワークを理解していない場合、ボールに群がらない人は「チームワークに欠ける」と烙印を押されることもあります。困ったものです。
チームワークと能力評価システムの相性は真剣に考えないと
特に営業部隊にありがちですが、個人の実績に応じていろいろな賞を与えることがあります。でも普通に考えたら、これって個人プレイを奨励していることになりませんか?
チームワークを損なわないように個人の努力を引き出す方法を真剣に考えるべきところですが、やはり経営陣がヒステリー状態になるとうまくいきません。やたらと個人に賞を出したりします。
孫氏の兵法の中にも次の文があります。
「しばしば賞する者は窘(くる)しむなり。」
やたらに賞をくれているのは、士気の低下に苦しんでいることの表れである。
「しばしば罰する者は困(つか)るるなり。」
やたらに罰しているのは、兵士が疲れ果てて命令に服さなくなっていることの表れである。
状態が良いときは賞罰をあまりしなくても組織はうまく機能します。しかしおかしくなると、とかく賞罰によってなんとかしようという心理が経営陣の中に働きます。その結果としてチームワークが崩れ、さらに組織がうまく回らなくなります。悪循環にはまるのです。
チームワークがうまくいっているというのは不安定な均衡状態です。普段から細かくケアしないとすぐにおかしくなります。あるとき急にチームワークと言い出してもダメなのです。
チームワークは経営陣から
チームワークの大切さを経営陣が強調しているにも関わらず、経営陣の仲が悪いことがあります。また経営陣の直下の中間管理職との仲が悪いことがあります。
これでは100%無理です。こんな状態では絶対に組織のチームワークはうまくいきません。組織全体のチームワークを言う前に、経営陣は自分たちのチームワークを改善しなければなりません。
やはり孫氏の兵法に書いてあります。
「それ将とは国の輔(ほ)なり。輔、周なればすなわち国は必ず強く、輔、隙(げき)あればすなわち国は必ず弱し。」
そもそも将軍とは、国家の補佐役である。補佐役が君主と親密であれば、その国家は必ず強くなるが、両者の間に隙間があれば、その国家は必ず弱体化する。
そしてひとたび将軍に軍を委ねたならば、君主が軍のことに口出ししてはいけないと強く戒めています。
面白いのは君主にこそチームワークの責任を負わせていることです。しばしば「ホウレンソウ」とか言って、ちゃんと連絡したり相談したりする責任を部下に押し付ける考え方が多いのですが、少なくとも経営陣レベルではチームワークはトップの責任と兵法では考えているようです。
僕なりの結論
僕自身はチーム競技をあまり経験していないし、本当の意味でチームワークを理解しているかと聞かれれば、多分理解していないと思います。しかしチームワークにプラスにならないものぐらいは簡単に見えます。
サッカー選手なんて小さいときからチームワークの大切さを知っているはずですし、どういうときにチームとしてうまく機能するかをたくさん経験しているはずです。そういう人、しかも一流の人が集まってもうまくいかないことがあるというのが、どうやらチームワークの本当の姿のようです。チームワークをよく知っている人を集めても、だからってうまくチームが機能する訳ではないのです。
多分チームワークというのはうんと繊細なもので、ちょっとバランスが崩れるとおかしくなるものだと思います。そういうものだと思って、特に経営陣は普段からチームワークを強く意識していかないとこれは生まれないのでしょう。
困ったとき、ヒステリーになったときに叫ぶ、単なるかけ声じゃー全くダメなのです。
そして「日本のサッカーチームはチームワークのおかげで勝てたね」と素人ながらに評論するにしても、それを可能にした協会トップ、岡田監督、その他様々な要因に考えを巡らせないと、いったい何が良かったのかは永遠に理解できないと思います。