Mac OS XのPublic Betaが公開されてから今日で10年が経ちました。その歴史についてはWikipediaなどを参照するのが良いと思いますが、そのPublic Betaを新宿に行って購入した僕としては、とにかく長かったなぁ〜という気持ちです。
Wikipediaの記事も、またArs Technicaが当時書いたこの長文のレビュー記事もかなり良く書かれています。当時を知らない人、もしくはそのときはウィンドウズを使っていてマックを使っていなかった人は、せめてWikipediaの記事でも読むと良いと思います。
そこでここでは、あくまでも当時の自分の個人的な気持ちを書こうと思います。
まず当時のMacintoshの状況です。
OSはMac OS 9。1984年に発売された初代のMacintoshを継承したものでした。既に16年が経っていましたが、マルチタスクがうまく出来ないなど、1984年当時の負の遺産をそのまま継承していました。ちょっとしたことでOSごとフリーズしたりすることはしょっちゅうで、フリーズしないにしてもしばらく全く操作を受け付けないということはあっちこっちでありました。
マイクロソフトから1995年に発売されたWindows 95も同じような問題があったので、そのときはまぁしょうがないよねって流せました。Windows 95って、要は11年かけてやっと同じところまで追いついてきたのねって。でもWindows 2000が発売されると、もうそろそろこんなのではダメだということが誰の目にも明らかになってきました。Windows 2000はマイクロソフトが長年をかけて開発した、マルチタスクができる近代型のOSでした。Windows 95に将来的に代わるものして準備されていて(実際にはWindows XPで代わった)、この近代的なOSであればフリーズの問題などが大部分なくなりそうでした。
Windows 95はMac OS 9とさほど差はなかったのですが、Windows 2000は明らかにMacを越えていました。Macのファンであっても、もうダマしが効かなくなり、かなり暗い気持ちになってきていました。
1984年以来、次世代OSの開発に失敗し続けたApple社に、ようやく引導が渡されるのかな。そんな気持ちしてした。
Steve Jobs氏は1997年にApple社に復帰していて、2000年には正式にCEOになりました。一時は破産まで残り90日間という大ピンチを乗り越えて、Apple社は利益が出る会社になっていました。1998年にはiMacも投入して爆発的に売れました。しかしこれはまだ急場しのぎでした。なぜならOSはまだ旧来のものだったからです。OSを近代的にしない限り、長期的なApple社の復活はあり得ませんでした。
Steve Jobsは復帰当初からMacの次世代OSの開発を最も重要な仕事に挙げていました。NeXTのOSをベースに、全く新しい近代的なOSを作り上げると言っていました。これがうまく開発できて、そして多くの人が使ってくれれば、Apple社に復活の道が見えます。これができなければ、長期的にはApple社は必ずしぼんでしまいます。Windows 2000、そして噂されていたWindows XPの登場までもうあまり時間は残っていませんでした。
Mac OS X Public Betaはそういうぎりぎりの状況の中で生まれた製品でした。すくなくとも私はそう感じました。
でも実際に使ってみると、全然使い物にならない。
機能がまだそろっていないのは許せました。何しろベータなので。でも何よりもパフォーマンスが遅すぎました。2001年3月に発売されたMac OS X 10.0 (Cheetah)も大してスピードは良くなりませんでした。当時はWindows 2000を仕事で使っていましたが、それと比較するともう猛烈に遅かったです。すべての操作がもたつきました。
もうがっかりです。
もうだめかなと。
僕はCheetahが出て、これもすぐに家で試してみて、あまりにも遅いのでがっかりしたので、すぐにIBMのThinkPadを買いました。Windows Meという超駄作がプレインストールされていましたが、すぐにWindows 2000を買ってインストールしました。
もうMacを仕事で使うのは無理かなと。Apple社、だめだったのかなと。
今の飛ぶ鳥を落とす勢いのApple社からするととても信じることが出来ないような、とても将来が暗い時代でした。
Mac OS X。本当に良くここまで成長してくれました。ここまで立派になるとは、Public Betaのときは夢にも思いませんでした。
仕事で使うのは一時期諦めましたが、それでもずっと信じ続けて良かったです。
Public Betaに期待を寄せたのにすごくがっかりしてしまったファンは、みんなそう思っているはずです。
最後に、Mac OS X Public Betaの冊子に書かれていたApple社からのメッセージを引用します。
あなたの力が必要です。Mac OS Xを先進的で直感的なオペレーティングシステムにするために。そう、世界で最高の。
親愛なるMac OS Xベータテスターへ
Macintoshの未来は、あなたの手の中にあります。
Mac OS Xは、Macintoshを新世紀へと導く、全く新しい、次世代のオペレーティングシステムです。根本から生まれ変わったMac OS X。それは、特にインターネットへのベストマッチを目的にデザインされ、安定性とパフォーマンスを信じられないほど向上させる先進のテクノロジーが存分に注がれています。目を見張る最新のグラフィカルユーザインタフェース、Aquaも搭載しています。
このパブリックベータは、あなたにとって、Mac OS Xをいち早く体験できるチャンスです。同時に、Appleにとって、あなたの意見を聞けるチャンスなのです。
あなたの声を、ぜひ聞かせてください。
あなたの協力とApple historyへの参加に感謝します。
これまでも、これからも。
One thought on “Mac OS X Public Beta から今日でちょうど10年”