何でも不景気のせいにするのは考えが足りない: 「30代前半の男性、半数が親と同居…不況背景?晩婚化も」

Asahi.comの記事
「30代前半の男性、半数が親と同居…不況背景?晩婚化も」

マスコミだから仕方ないと諦めているけれども、論理展開がおかしいです。

国立社会保障・人口問題研究所が「経済状況の厳しさが、結婚や自立を遅らせている可能性もある」と語ったと報じられていますが、本当にそうだとすると、この研究所もちょっと考えが足りないことになりそうです。

なお調査の原文はここの10ページ、図III-6だと思われます。

スクリーンショット(2010-12-11 2.00.16).png

新聞記事を引用します

親と同居している割合は、結婚を機に30代になると大幅に減少する。ただ、30代前半の男性は調査のたびごとに増加し、1999年は39%、04年は45%だったが、今回は48%と最高を更新。女性も04年の33%から37%に増えた。

つまり1999年から2004年は同居率が6ポイント上昇していて、2004年から2010年は3ポイントしか上昇していません。2002年2月から2007年10月は公式には好景気(いざなみ景気)である一方、2008年のリーマンショックによる景気後退は100年に一度とも言われているものです。したがって言い方によっては、好景気時に同居率が6ポイント上昇して、不景気時に上昇率が半分に低下したとも言えます。

実際に過去の調査結果のデータを確認し(2009年実施2004年実施1999年実施1994年実施)、30歳前半男性に限って整理しました。

2009年 47.9%
2004年 45.4%
1999年 39.0%
1994年 41.2%

1994年から1999年にかけてというのは、バブルが崩壊した直後で、日本経済史上最長の不景気が続いた時期です。でもその間に同居率は2.2ポイント減少しています。

僕なんかの考え方で言えば、この数字を見る限り、景気と同居率の間には相関関係は無さそうだと思うのですが、いかがでしょうか。

まとめ

親との同居率について、晩婚化についても、最近15年のデータを見る限り景気との相関関係は認められません。新聞で報道されているように景気のせいにするのは、はなはだ根拠に乏しい議論だと言えます。

おそらく親との同居率についても、晩婚化についても、景気とは全く異なる要因がむしろ大きく影響していると思われます。

そもそも親と同居するかどうかの判断は、家賃、給与、そして会社の福利厚生に大きく影響されます。

好景気のときは給与も増えますが、家賃も増えます。もし給与の増加分以上に家賃が増えてしまったら、いくら好景気とはいえ、親と同居する子が増えるという議論が成り立ちます。好景気かどうかを見るだけでなく、給与と家賃の相対的な関係を見る必要があります。

また会社の福利厚生として独身寮があり、格安で借りることができるのであれば、景気に関係なく多くに人が入寮するでしょう。最近は各企業が社宅や独身寮を減らしていますので、親との同居率にはこっちの方がむしろ影響している可能性があります。

本当のところはしっかりした調査が必要になりますが、いずれにしても簡単に景気のせいにするというのはあまりにも考えが足りず、あきれてしまいます。

朝日新聞だけなら仕方ないのですが、日経新聞までもこんな報道の仕方をするのでがっかりです。

One thought on “何でも不景気のせいにするのは考えが足りない: 「30代前半の男性、半数が親と同居…不況背景?晩婚化も」”

  1. 何でもかんでも景気のせいにする風潮は日本を悪化させてると思います
    景気のせいにしたところで、何も良い方に行かないですし

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