10代の子供にはネットをどう活用してもらいたいか:「10代、パソコン離れ…ネットは携帯で 東大教授ら調査」

Asahi.comに「10代、パソコン離れ…ネットは携帯で 東大教授ら調査」という記事が載っていました。

NewImage.jpg左に引用したグラフを見てもらえるとはっきりしていますが、「自宅でのパソコンによるネット利用時間」が2005年には20分弱あったのに、2010年には10分強までに落ち込んでいます。他の年齢層は軒並み利用時間が増えている中で、10代だけが落ち込んでいます。したがって10代の若者特有の何かがあると考えるのが自然です。以下、思うことを書いてみたいと思います。

これは意外な結果ではない

2009年の1月に僕は「高校生の携帯電話の使い方」というブログ記事を書きました。高校一年生だった姪が携帯電話をどのように使っているかを聞いたものです。そのときも「自分専用のパソコンが仮にあったとしても、面倒だから使わない」ということを言っていました。ブログを書いた当時は気付かなかったのですが、iPadなどが登場したいまでは、パソコンの何が面倒だったのかははっきりしていると思います。立ち上がるのは遅いし、設定が面倒だし、アプリのインストールは分かり難いしなど、iPadが解決しようとしているのはそういったパソコンの面倒臭さです。

この調査を実施した橋元教授は

10代のパソコンによるネット利用時間が落ち込んだのは意外で、10代の携帯ネットの利用も飽和状態に近いと見ている。

と語っているそうですが、彼はあまり10代の若者と接する機会がないのかなと想像されます。

面倒くさいというのは10代だけではないはずです

しかしパソコンが面倒くさいというのは10代だけの話ではないはずです。他の世代にとってもパソコンの起動が遅いのは共通の苦痛です。ですからこれだけでは10代の落ち込みは説明できそうにありません。

Asahi.comの記事の中では、10代の時間がテレビゲームなどに振り分けられていることにも注目していますが、これもまた10代特有とは言えません。3-40代もかなりテレビゲームをやっているはずです。

日本のマスコミのレベルが一般に低いので仕方ありませんが、Asahi.comの記事では10代の落ち込みの原因が十分に議論されていないと言わざるを得ません。

携帯サイトの年代別利用状況

一つ考えられる仮説として、携帯サイトが10代の若者にとって魅力的である一方、インターネットのコンテンツに魅力がない可能性があります。

「モバイルでの利用サービス調査」では世代別の調査が行われていますので、これを見てみましょう。

NewImage.jpg

この中で10代の利用率が突出して高いのは「着うたフル」「ブログ」「電子コミック」「占い」です。「ブログ」の中身が芸能人等のブログなのか、友人同士のブログなのかはこのウェブページだけでは分かりませんが、僕の姪の話だと友人同士のブログを見ることが多いと言っていました。よくある、携帯で簡単に書いたブログなのでしょう。

確かにこれらのものであれば、携帯の小さな画面でも不便は無さそうです。敢えてパソコンを使う必要は感じられません。今日初めて電子コミックをこのサイトで試してみましたが(パソコンの画面上で)、画面が小さいと一コマ一コマに集中させられてしまい、却って良さそうな気もしますね。

逆にパソコンでネットを利用する目的のうち、高校生にとって魅力のありそうなものを見てみます。総務省の資料平成 21 年「通信利用動向調査」の結果の9ページ目のグラフにいろいろな利用目的が記されています。

スクリーンショット(2010-12-13 0.30.29).png

上位項目のうち、パソコンでなければできず、なおかつ中高生にとって面白そうなのは「動画投稿サイトの利用」ぐらいでしょうか。10代がパソコンを利用しなくなっている理由がだんだん分かって来た気がします。

親としては子供にネットをどう活用してもらいたいか

先ほどの総務省のグラフを見ながら、親としては10代の子供にどのようなサイトに行ってもらいたいかを考えてみたいと思います。

パソコンでのネット利用の最上位は「企業・政府等のホームページ(ニュースサイトを含む)」ですし、親としては子供にもこれを見てもらいたいはずです。世の中がどのようになっているのかの情報はそこにあるからです。そして親自身がインターネットをイメージしたときは、このようなサイトをイメージしています。

しかし10代の子供はこれにあまり興味がないのでしょう。だから携帯で十分と考えるのだと思います。

どう考えるか

少なくとも親の世代から見たとき、10代の理想的なネット利用というのは、学習の助けになるような使い方だと思います。学校でやる目の前の勉強はもちろんのこと、社会の仕組みを知る勉強、将来の職業について考えるための勉強など、そういうことにインターネットを利用してもらいたいと思っているはずです。

しかし当然ながら子供が素直に親の意向に従ってくれるはずもなく、自分たちが興味を持っているものがまず最初にあって、それに合わせるようにネットを活用していきます。そして若者の興味はいつの時代もほとんど変わることはなく、相変わらずポップ音楽であったり、友達関係(異性を含む)だったり、漫画だったり、芸能人だったりする訳です。10代の若者が社会の仕組みや将来の職業に非常に関心を持っていた時代は、少なくとも日本が豊かになってからはないはずですし、今後も訪れないと考えるのが自然です。社会のことに無関心でいられるのは先進国の10代の特権なのですから。

10代のパソコン離れは、これを単に反映しているだけではないかと思います。

ただ僕としては残念な思いはあります。若い世代にはもっと有効にネットを活用し、我々の世代では出来なかったようなこと、得られなかったような情報を活用しながら、我々の世代を越えるような人間たちが育ってほしいからです。

そのためにはネット(パソコンの)を活用した授業を学校の中で取り入れるしかないのかなと、この調査結果を受けて、いままで以上に強く思うようになりました。

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