少しGoogleで調べたら、iRobotは特許を積極的につかって競合をかなり牽制しているようです。
東芝がこれだけセンサーを使ったりしているのは、恐らくは特許回避のためでしょう。
iRobot Settles Patent and Copyright Infringement Lawsuit to Protect Roomba Floor Vacuuming Robot
東芝が2つのCPU、38個のセンサー、カメラなどを搭載したロボット掃除機(名前は「スマーボ」。要するに「ルンバ」もどき)を10月1日に発売するそうです。実売予想価格は9万円前後。月次販売目標は5,000台だそうです(正確な数字はわかりませんが、それに対してルンバはおそらく2010年で年間10万台を販売)。
この掃除機、何がすごいかというと価格がすごい。これでルンバの半分ぐらい売れるかもという販売予想の大胆さもすごい。
Amazonで”roomba”を検索してみるとわかりますが、ルンバは¥34,780のルンバ530から¥82,800のルンバ780まであります。新しい東芝のロボット掃除機スマーボは、後発でありながら最上位機種よりも高い9万円のモデルだけを用意します。
数年経った後の後発メーカーなのに、うんと高い。常識では考えられないマーケティング戦略です。常識的に考えれば売り上げ目標は大幅未達で終わるでしょう(だから半年ぐらい待てば、在庫処分の大安売りがあるかも)。
何でこうなってしまったのでしょうか。
単に日本の過剰品質癖では説明がつかない
日本の製品は何かと過剰品質であることが多く、高いというのが一般的なイメージです。でもそれが日本の産業が海外勢に負けている理由だとも言われています。東芝がそれを理解していなかったはずはありません。ですから単に「癖」で過剰品質のものを作ったというのでは説明がつきません。
またプレスリリースを見ると、まずタイトルの最初に「2つのCPUとセンサー、カメラ機能」と書いています。主に家庭用で、主婦を対象に売るわけですから、「CPU」とか「センサー」というコピーが無意味なのは誰でもわかるはずです。それでも敢えて機械好きの男性しか反応しないような言葉をトップに持ってきたのは、何か僕にはわからない理由があるのか、それとも単なる苦肉の策であるかのどちらかだろうと想像します。
最近はトップブランドの価格が安い
iPadの時に特に感じましたが、最近はトップブランドが値段を高くすることが減ってきました。iPadなどはびっくりするぐらいに安くて、Samsungを含めた競合メーカーは同じコストで製造することができませんでした。
ルンバもきっとそうなのだろうと思います。東芝は同じ性能のものを同じ価格帯で作ることができなかったのです。ですから仕方なく差別化をして、そして独自の価格帯で製品を出したのだろう思います。
ルンバを作っているiRobot社も変なプレミアムプライシングをせずに、コストをしっかり意識した作りをしたのでしょう。うちにもルンバはありますが、性能はいいし、作りはしっかりしているし、故障しないし、顧客サポートは良いし、5万円が高かったと思ったことは一度もありません。
ルンバはなぜ安く作れるのかについての想像
特に情報がある訳ではないので全くの想像ですが、ルンバが少ないセンサーしか無いにもかかわらず、しっかりとお部屋を掃除ができるのはソフトウェアのおかげだろうと思います。少数のセンサーからの信号に対してどのような応答をしていけばしっかり部屋を掃除できるか。多数のシミュレーションを行いながら最適なアルゴリズムを考えだしたのだと思います。
おそらくは人工知能的なアプローチ、機会学習とかも取り入れながら導いたアルゴリズムは、もしかすると特許にも守られているかもしれません。
そういう高度なソフトウェアが開発できなかったのか、あるいは特許で使用できなかったために、センサーを38個も搭載してハードウェアで補おうとしたのが東芝のスマーボなのだろうと思います。
イノベーションって、如何に安くするかが重要
お掃除ロボを作ることがイノベーションだったと思っている人がいたら、それは大きな間違いです。お金をいくらかけてもいいのであれば、数十年以上前から家庭用のお掃除ロボを作り技術はあったでしょう。当然ながらその機械は大きく、多数のセンサーをもって、当時の最高のCPUを搭載していたでしょうが。
何がイノベーションだったかというと、iRobot社が家庭で普通に買えるぐらいの価格のお掃除ロボを開発したことです。センサーの数を少なくし、また信号の高度な処理が不要な単純なセンサーに絞り、それでもしっかり部屋が掃除できるようなアルゴリズムやソフトウェアを開発したことこそがルンバなのだろうと思います。分子生物学を学んだものがルンバの動きを見れば、大腸菌の走化性にヒントを得ているのは明確なのですが、そういうところから低価格のお掃除ロボが開発ができると確信したのがiRobot社の目の付け所だったのでしょう。
Steve Jobsがいた時のAppleもずっと価格を意識していた
Appleが最初の大ヒットを飛ばしたApple IIは、当時としては信じられないような安い価格で発売されたカラーパソコンで、そのためには独自の工夫が何カ所もありました。例えばApple II用のDisk IIは当時としては最も低価格だったのですが、めちゃくちゃ利益幅があったそうです。それを支えていたのはSteve Wozniak氏が開発した画期的なディスクコントローラのデザイン。後のMacintoshでも使われたデザインです(当時のフロッピーの容量が720Kbyteだったのに、Macだけ800Kbyte詰め込めたのはここに理由があります)。
カラーグラフィックスを実現するデザインについても、Steve Wozniakは随所でコストを削減するやり方を採用していて、徹底してコストを下げていたのがよくわかります。
2010-2011年にiPadの製造コストをコントロールして、アジアメーカーもついて来れない価格設定でも利益が出せているのは、20歳の頃にやったことをSteve Jobsが繰り返したからなのです。
どんなに高性能なものを作っても、高いものを作ってしまってはイノベーションではありません。それはただの技術です。
この商品てサムスンのを東芝が日本語仕様にカスタマイズしてるだけでしょ?
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詳しいことはわからないけど、そんな感じはありますね。
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主婦向けという点に疑問。
普通の主婦であれば、掃除機を買うと思うし、
やはりマニア向けなのでは…?
欲しい人にとっては高性能を追求したいと思うし、価格は次だと思う。
実際、1万ほどしか違わないようだし。
スマーボがルンバより性能が良いかどうかはわからないけど。
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やまさん、
東芝のPRの仕方はマニア向けだと思います。そしてそれは誤ったやり方だと思います。
一方で我が家のルンバは大活躍しています。小さい子供がいて共働きなので、毎日掃除する時間はなかなか作れません。でもルンバなら、出かける前の5-10分で床の上のものをどかし、そして学校のようにいすをテーブルの上にのっけてやれば、床だけはそれなりに掃除してくれます。
掃除のレベルが高いか低いかはよくわかりませんが、軽く掃除機をかけるよりはずいぶん良く掃除できているように感じています。
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