IDCが10-12月の世界タブレット市場調査を発表していて、前年同期比75.3%の5250万台がメーカーから出荷されたというデータを出しています。ここまでは納得なのですが、意外なデータがたくさんありますので、これについて解説しながら、タブレットの市場の真の姿について考察してみたいと思います。
データは下のグラフの通りです。
私が見ているポイントは以下の通り;
- SamsungがAppleについでシェアを獲得しています。なおかつ堅調にシェアを拡大しているのはSamsungだけです。しかしSamsungはこれといった話題になるようなタブレット製品を発表しておらず、どちらかというと注目されていません。Samsungが発表した話題商品はGalaxy Noteですが、これがタブレット出荷台数に入っている様子はありません。
- Amazonは出荷台数を伸ばしているように見えますが、実は2011Q4の時よりもシェアを落としています。2011Q4で大量に出荷した後、2012Q1, Q2で大幅に出荷台数を落としたためです。AmazonのKindle Fireについては、クリスマス商戦で非常に好調だったものの、それ以後は大幅に売り上げが落ちたことが言われています。通年で見るとiPadよりも成長率が低く、競争力を失っているように見えます。
- ASUSはNexus 7の数字が含まれています。価格が安い割には性能が良いと言われ、非常に評判だったNexus 7です。2012Q3にASUSの出荷台数が大幅に伸びているのはNexus 7効果だと思われますが、2012Q4には出荷台数を落としています。Nexus 7は販売が好調だったため、11月末まで米国で在庫切れとなっていたそうです。したがって2012Q4の出荷台数の低下はGoogleの需要予測ミスの可能性があります。Nexus 7の人気そのものが陰ったわけではないと考えられます。
- OthersもSamsungと同様に堅調にシェアを拡大しており、全体としてのシェアは20%と非常に高いです。
それぞれについて自分なりに考察してます;
- Samsungのタブレット販売数は以前から謎です。Samsungはタブレットの販売台数を発表していませんが、Appleとの裁判の中で米国での販売台数が公開されたことがあります。それによると、IDCの推測では2012Q2で2,391,000台が世界で出荷されたところ、米国では37,000台しか売られていなかったことがあります。もしIDCの推測が正しいのならば、ほとんどのSamsungタブレットは米国以外で売られたことになります。一方でタブレットの使用率は米国が圧倒的に高いというデータもあり、矛盾します。
- 2011年のクリスマス商戦語、Kindle Fireが急速に販売を落としたことについて、性能が悪かったことなどが言われています。それが真実だとすれば、性能が改善されたKindle Fire HDは2013年以降、大きく売り上げを落とさない可能性があります。経緯を見る必要があります。
- Nexus 7はKindle Fireと価格帯および製品のサイズが似ており、Kindle Fire同様の売り上げパターン(つまりクリスマス後に大幅に落ち込む)可能性が否定できません。これも経緯を見る必要があります。
- 中国では格安のタブレットが非常に好調に売れていると言われており、Othersの大部分はこれらだと私は想像しています。
まとめ
メディアで話題になっているKindle FireやNexus 7が思ったほどに売れていません。一方でSamsungとOthersが伸ばしています。いずれも西洋のメディアでは話題になっておらず、どうして売れているのかよくわかりません。IDCの推測がどれだけ当たっているかも含めて、タブレット市場の真の姿は見えていないのが現実ではないでしょうか。
現状ではタブレットの販売台数を発表しているのはAppleだけです。Appleの販売台数は劇的ではありませんが、出荷の伸び率が48%と高い状態を維持しています。他のメーカーはアナリストを煙に巻いていて、出荷台数も販売台数も都合の良いときにちらちら見せているだけです。この状態では何が起こっているかがわからないのも仕方ありません。