iPadが圧倒的に強いタブレット市場において、それでも徐々にAndroid陣営は勢力を伸ばしつつあります。とはいえ、状況はGoogleにとってかなりまずいように思えます。なぜならAndroidを前面に出して売れている気配が全くありません。
iOS vs. Android
という構図ではなく、
Apple vs. Amazon
もしくは
Apple vs. Samsung
という状況になっています。テクノロジーブロガーはGoogleに注目しています。しかし実際の販売状況および利用状況を見る限り、Googleは「蚊帳の外」感すら漂っています。
以下データを見ていきます。
Millennial Mediaというモバイルの広告事業を展開している会社が発表したデータをまず紹介します(Apple Insider経由)。ここで見ている数字は広告がどれぐらい多く閲覧されたかを示すもので、広告はアプリなどに埋め込まれて表示されます。
まずはスマートフォンを含むデータ。Appleが2012年にシェアを25.36%から31.20%に伸ばしている結果となっています。Samsungも同様に16.80%から22.32%に伸ばしています。
タブレットに限ったのが以下のデータです。Androidがシェアの41%を握るまでに成長しているものの、その原動力は圧倒的にSamsungによるものであり、次いでAmazonとなっています。GoogleがブランディングしているNexus 7はAsusのシェアに含まれていますが、Androidのうちのわずか5%です。
AmazonのKindle Fireは、OSとしてはGoogleのAndroidを使っていますが、激しくカスタマイズされていてAndroidの存在感を消しています。それどころか、メーカー保証を損なうような改造を行わない限りGoogle PlayストアなどのGoogleのサービスを利用することができなくなっています。
SamsungはAndroidをそこまで改造しておらず、普通のGoogle Playを使うことができます。しかしスマートフォンでもタブレットでも圧倒的に強いSamsungはAndroidを脅かす動きが顕著に出てきています。独自のモバイル用OS Tizenを2013年中に発表予定していることもそうですが、スタイラスによるペン入力やマルチウィンドウの独自ソフトを組み込んで、Samsungだけの機能を強化しようとしている点も見逃せません。
Nexus 7はアメリカでの発売が7月で販売期間が短いという問題がありますが、機能の割には圧倒的に安い価格で提供していて、なおかつ評論家の間では非常に好評だったにもかかわらず、Samsungの遙か後方に位置しています。販売チャンネルをしっかり管理しているSamsung、独自の強力な販売チャンネルを持っているAmazonとの差がくっきり出ているように感じます。
なお同じような結果は同業者のChitikaからも発表されています。Chitikaのデータの違いは2ヶ月ごとに更新されている点で、そのため年末商戦に強いAmazonのシェアが高くなっています。
推察
GoogleはAndroid OS自身からは利益を取らず、Android OSを使っている利用者からの広告収入やオンラインストアで利益を得ようとしています。そのためにはAndroidがどう使われているかをある程度コントロールする必要があります。
しかしAmazonのKindle FireユーザはAmazonのオンラインストアに囲い込まれているため、Googleのストアが入り込むことができません。Kindle FireのブラウザもAmazon製ですので、Googleがコントロールできません。
SamsungはGoogleを排除していません。しかしGoogleのタブレット戦略はNexus 7後もほぼSamsung1社に依存しています。力関係は圧倒的にSamsungに傾いています。特筆するべきは、ちゃんと粗利を稼げるAndroidタブレットはSamsungしか作れていない点です。
Androidはタブレットのシェアを伸ばしました。しかしその犠牲として、Googleは市場をコントロールする力を失いました。価格崩壊も起きていて、混沌としています。2013年がどうなるか、予測不能です。
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