Facebook Homeが流行るかどうかを考えてみる

Facebook Homeが発表されました。

見た感じ、特にデザイン的な完成度が非常に高そうで、興味をそそられます。

ただしネットを見ていると大部分の技術評論家たちは懐疑的な意見を述べていて、その主たる根拠は「俺の生活はFacebookだけじゃない」のようです。まぁ技術評論家の生活スタイルおよびFacebookの使い方は一般人とは全然違いますので、彼らの意見が正しいと考える理由はこれっぽっちも無いとも言えます。

このような製品が成功するかどうかを予想する上で大切なのは、マーケティングの4Pで言うところのProduct(製品)ではなく、おそらくPlace(流通)とかPromotion(プロモーション)だろうと思います。なぜかというとFacebookは非常にユーザ数が多いので、流通やプロモーションの切り札がたくさんあるからです。

例えばこの記事にも書いてあるとおり、FacebookやFacebook Messengerがインストールされていれば、Homeの通知がきます。ほとんど製品アップデートのような感じで通知が来ますので、大部分のユーザがアップデートと誤解してインストールするのではないかと私は予想しています。

非常に普及が早いアップデートの例

アップデート通知の威力、浸透力の強さはiOSで証明されています。例えばiOS 6.1の浸透度を調べたChitikaの調査によれば、iOS6.1は公開からわずか2週間で50%のデバイスにインストールされました。アップデートの通知が目立つように表示され、そこから数タップでアップデートが完了してしまうという手軽さは非常に効果的で、Place(流通)やPromotion(プロモーション)としては驚異的な威力を発揮することがわかります。

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製品の評判が良くても普及しない製品の例

それに比べて、製品がどれだけ技術評論家の間で評判が良くても、プロモーションの仕組みがしっかりしていなければ全くダメな例もあります。その好例がAndroid用のChromeブラウザです。

同じChitikaのデータで、Androidユーザの間でのChromeの普及率が著しく低いことを示しているデータがあります。

2012年9月のデータによると、Android OSユーザのわずか2.34%だけがChromeブラウザを使用していました。デフォルトのAndroidブラウザが91.26%でしたので、Androidブラウザ使用者の1/38しかChromeブラウザに切り替えていない計算になります。

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StatCounterのデータを使ってUSの直近2週間を調べても、Chromeブラウザの使用率はAndroidブラウザの使用率の1/13です(全モバイルブラウザのうち、Androidブラウザが36.78%、Chromeブラウザが2.93%)。またグラフは示しませんが、StatCounterで全世界のデータを取っても、やはりChromeブラウザの使用率はAndroidブラウザの1/14しかありません。

StatCounter mobile browser US weekly 201312 201313 bar

ChromeブラウザはAndroid 4.0以上じゃないとインストールできないというハンディがありますが、GoogleによるとAndroid 4.0以上の普及率は54.3%ということですので、上述の数字と合わせると、Android 4.0以上に限定してもChromeブラウザの普及率はAndroidブラウザのたった1/7という結果になります。

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どう見てもChromeブラウザの普及率は悲惨な状態です。

アップデートと新製品の違い

iOSのアップデートとChromeブラウザの普及率がこれほど開いた理由は製品の善し悪しではありません。少なくとも技術評論家の間の評判でいえば、Chromeブラウザは絶賛され、一方iOSのわずか0.1のバージョンアップは大して話題になりませんでした。

違いはアップデート、つまり「通知」が送られてくるものであるか、あるいは別の製品であるかにあります。

iOSの場合はアップデートです。インストールの精神的ハードルが低く、「通知」が来てからわずか数クリックでインストールが完了します。

それに対してChromeブラウザは別製品です。インストールの精神的ハードルはかなり高く(技術評論家にとってはインストールの敷居は低いのですが、一般人にとっては意外と高いものです)、手間もかかります。

アップデートか新製品かということで、雲泥の差があります。

Facebook Homeは新製品だけど、アップデートと同じプロモーションの仕方をしている

さてFacebook Homeに戻ると、これは明らかにアップデートのプロモーションスタイルです。もちろん大がかりな広告やプロモーションはするのでしょうが、一番威力を発揮するのは「通知」です。ほとんどの人はFacebook Homeを単なる製品アップデートだと思ってしまうでしょう。ですからあっという間にものすごい普及率になりそうです(ただインストール可能なスマートフォンの機種を絞っていますので、それは考慮しないといけません)。

Facebook Homeのできが良いか悪いかは、一端インストール後にどれだけのユーザがFacebook Homeを外すかに影響しますが、最初のインストール数にはあまり関係がないはずです。つまり技術評論家の意見は普及率とは無関係です。

Facebook Homeの破壊力

Facebook HomeはAndroidの乗っ取りです。Facebook HomeをインストールしてもGoogleのアプリは使えます。しかし主従関係は逆転します。Facebookが主でGoogleが従になります。

Facebook Homeのコンセプトは他社でも真似ができます。Twitterでも同じことができますし、Amazonだって似たことができるはずです。Android上の単なる1アプリとしての存在では無く、また1ウィジェットとしてでは無く、ランチャーを乗っ取ることができます。

Facebook Homeの破壊力は、他社でも簡単に真似られることです。Androidはウィジェットという仕組みを提供していますが、それでは不十分だというところは今後Facebook Homeのようなランチャーを出してくるでしょう。ランチャーの奪い合いというすさまじい戦いがAndroid上で繰り広げられる日が近いかも知れません。

まとめ

Facebook Homeが普及するかどうかはその製品コンセプトの善し悪し、あるいは技術的なできの善し悪しとはほとんど関係がありません。むしろ「アップデート」を装うというプロモーション戦略の方が圧倒的な影響力があり、Facebookアプリのインストール率が極めて高いことを考えると、Facebook Homeがかなり普及すると予想できます。

またランチャーを乗っ取るという戦略はFacebook以外の他社も真似られる戦略です。これに対してGoogleが何らかの制限をかけて、防御に回る可能性があります。そうしないとAndroidランチャーの陣取り合戦が始まるかも知れません。

最後に、Facebook Homeは「Googleばなれ」のトレンドを加速させます。いままではSamsungやHTCに代表される携帯メーカーの「Googleばなれ」が見られましたが、サービスプロバイダー側の「Googleばなれ」は新しいトレンドとなる可能性があります。2013年は「Googleばなれ」が顕著になるというのが私の予想ではありますが、想定以上の早さでこれが進んでいるという印象を強く受けます。

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