IDCとApp Annieからモバイルゲームに関する調査報告が発表され、iOSとAndroidを合わせた収益が、モバイルゲーム機(NintendoやSonyなど)の収益の3倍であったことが報告されています。もちろん他の統計でも報告されているようにiOSの方がAndroidよりもずいぶんと収益が多く、iOSはAndroidの倍以上があります。
iOSやAndroidなどのスマートフォンがいずれモバイルゲーム機を追い抜くのはかなり前から予想できたことであり、必然だったと言えます。特に驚くべきことではありません。
しかしこの報告の中には、これ以外に驚くべき内容も含まれています。
Androidの地域性が異常
Androidが世界的に非常に多く売れていることは繰り返し報告されていますが、具体的にどの国で使われているかというデータはあまり出てきません。しばしば指摘されるのはiPhoneは先進国の中でも裕福な国で多く使われていて、それに対してAndroidはより裕福でない国で使われている点です(例えばこれ)。
下のグラフを見るとiOSとAndroidのゲーム売り上げに大きな地域性のズレがあることがわかります。iOSの売り上げは北米とアジア・パシフィックがほぼ同等で、西ヨーロッパがそれに続きます。それに対してAndroid (Google Play)では北米と西ヨーロッパが非常に少なく、アジア・パシフィックが圧倒しています。2013年1Qでは、Androidのゲーム売り上げのうち、実に70%がアジア・パシフィックから来ています。
さらにGaming-Optimized Handhelds、つまりNintendoやSonyなどの製品の地域性を見ると、アジアが若干多いものの、これはiOSのものと似ています。
アジアの中でもどこで売れているのか
今回のレポートではより細かい地域性のグラフは示されていませんが、以下のように記載されています。
Consumer spending on games strengthened in Asia-Pacific on Google Play and on gaming-optimized handhelds, with Japan & South Korea leading the way on Google Play
アジア・パシフィックでビジネスが非常に好調な場合、例えば成長性や人口の多さで魅力的な中国市場を連想することが多いのですが、Androidがアジア・パシフィックで売れているのはこれが原因ではないようです。そうではなくて、日本と韓国で爆発的に売れていることが原因です。
売り上げトップランキングを見るとそのことがはっきりします。
iOSの場合は日本のパズドラの他、フィンランドや英国、米国のゲームがランキングしています。それに対してGoogle Playの場合は韓国のゲームがトップ5のうち3タイトルも占めています。しかもこれらのゲームはGoogle Playで見る限り英語の説明文すら無く、すべてハングルで書かれています。つまり韓国限定のローカルものです。
この地域性は何を意味しているのか
Google Playにとってこの地域性は危険です。特に日本での売上比率が大きいというのは大きな不安定要素をはらんでいます。なぜならば日本でAndroidが売れているのはDoCoMoがiPhoneを売らないことによる影響が非常に多いからです。
韓国でAndroidが強いのはSamsungやLGの影響です。SamsungがTizenなどの別OSに切り替える可能性はありますが、ハードルは高く、しばらくは韓国のAndroid比率は高いまま推移すると予想できます。
しかし日本の事情は違います。日本ではトップキャリアのDoCoMoがiPhoneを売っていないため、市場の需要よりもiPhoneのマーケットシェアは低く抑えられ、Androidのシェアが大きくなっています。キャリアの問題が無ければ、iPhoneの潜在的マーケットシェアは現在よりもプラス20%近くあるでしょう。もしDoCoMoがiPhoneを売るようになれば、数年のうちに日本のAndroidのマーケットシェアは激減します。これは予想するまでも無く、明白です。
Androidはアジア・パシフィックでしか伸びていない
レポートの中のデータを加工して、地域ごとの売り上げを下図にまとめてみました。ここからわかることは、Androidの北米および西ヨーロッパでの伸びが非常に少ないということです。アジア・パシフィックでの伸びで補っていますが、Androidは世界の他の地域ではゲーム売り上げがあまり伸びていません。iOSに大きく離されている状況ですが、その差は埋まるどころか広がっています。
以上を合わせて考えると、日本のDoCoMoがiPhoneを売り出すだけでAndroidのゲーム売り上げの伸びは大きく落ち込み、成長率でiOSに引き離されてしまいます。デベロッパーを引き留めたいAndroid陣営としてはかなりまずい状態です。
なお、以上のデータは広告収入を差し引いたものです。ただしゲーム業界にて広告収入に依存したビジネスモデルというのは非常に難しくなっているのは周知の通りです。
ゲームの意味合い
iOSにしてもAndroidにしても、ゲームは大きな収益源です。iOSではApp Storeの収益の70%がゲームから来ています。Androidはもっと極端で、Google Playの収益の80%がゲームです。それぞれのプラットフォームが収益面から開発者にとって魅力的かどうかは、かなりの部分ゲームにかかっていることがわかります。だからこそ今回のIDCとApp Annieのデータは重要であり、大きなゆがみがあるAndroidは危険な状態にあると言えます。
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