Androidの収益性の危険な地域性(その2)

先日のブログでAndroidのアプリの売り上げが日本と韓国に極端に偏っていて、特に日本のスマートフォン市場の動向次第でアプリの売り上げに大きな問題が生じる可能性があることを紹介しました。具体的にはDoCoMoがiPhoneを販売するようなことになれば、日本でのAndroidアプリの売り上げが大きく減速することは避けられず、それが世界全体のAndroidアプリの売り上げに大きな影響を与えると述べました。そしてそうなると、Androidというプラットフォームそのものの収益性が大きな影を落とすことになります。

今回はApp Annieのブログ 12を見ながら、もう少しデータを拾いたいと思います。

収益から見たゲーム開発会社の順位

iOSの場合は以下の通り、ヨーロッパ、北米、日本のいろいろなメーカーが含まれていて、バランスがとれています。

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それに対してAndroid (Google Play)の場合は、日本と韓国のメーカー会社が圧倒しています。

スクリーンショット 2013 05 21 10 10 11

収益から見たゲームの順位

iOSの場合はやはりバランスがとれています。

スクリーンショット 2013 05 21 10 11 34

そしてAndroidの場合は日本と韓国に極端に偏っているばかりでは無く、韓国限定のハングルのタイトルが登場します。

スクリーンショット 2013 05 21 10 12 44

国ごとのランキング

iOSの場合はアプリのダウンロード数およびアプリによる収益はともに各国のGDPを反映するものになっています。つまり先進国レベルの裕福な人間がどれだけいるかによってダウンロード数も収益も順位が決まっています。

AppannieiOS

それに対してAndroid (Google Play)の場合、ダウンロード数ではインドやロシアなど、経済発展が著しい発展途上国が登場しています。そして韓国が米国に次いで2位に付けています。

収益についてはがらりと変わり、日本が1位、韓国が2位となっています。発展途上国は上位5国からはずれます。

AppAnnieGP

考察

前回のブログではAndroid (Google Play)の収益性が地域的に大きく偏っていて、それが危険であると述べました。ここではなぜそうなっているかを考察してみたいと思います。

以下の理由があると私は考えています。

  1. iOSはiPhoneの端末価格が高価なため、世界的に見たら裕福な人が買います。そのため各国のGDPに応じてiPhoneが売れ、アプリがダウンロードされ、そしてアプリが購入されています。
  2. Androidの場合は安価な端末も売られているため、BRICSなどのように経済成長著しい発展途上国で売れています。そしてアプリがダウンロードされています。しかし、地域ごとに価格戦略もマーケティング戦略も調整が可能な端末販売と異なり、アプリの価格は世界的に統一されています。したがってこのような国では端末は安価に購入できても、アプリは割高になります。そのためアプリはあまり購入されていません。
  3. 韓国がAndroidに大きく偏っているのはSamsungやLGなどのメーカーの影響です。驚くべきことは人口が米国の1/6程度しか無いのに、アプリの購入が米国をしのいでいることです。日本もまた人口は米国の1/3程度ですし、若年層についてはもっと開きがありますので、やはり日本についてもこれだけアプリが購入されているのは驚きです。これには何らかの共通の特殊要因が存在する可能性があります。

こうなると、日韓に共通する特殊要因が何だろうと気になります。おそらくはネットワークゲームやソーシャルゲームの影響があると思いますが、米国にも同様のゲームがあるはずですので、これだけでは説明が付きません。私にはまだよくわかりません。

この特殊要因が今後、世界的にも広がっていき、米国や西ヨーロッパでも日韓と同じようなことが起こる可能性があります。しかしもうそうならなければ、Google Playは米国や西ヨーロッパで成長できなくなってしまいます。

以上、アプリの収益性を比較しながら強く思ったのは、グローバル展開について言えば、携帯端末の市場とアプリの市場は全く別物であるという点です。

1. 携帯端末は各地域のローカルの事業者が販売します。様々な工夫をして、各地域の所得水準に合致した端末を探し出してきて販売します。またメーカーは地域ごとに価格を変えることができますので、所得水準の低い地域には低価格商品を用意できます。そのため、携帯端末は所得水準の低い地域でも普及していきます。
2. それに対してアプリは世界で同一料金で販売されています。スマートフォンアプリの単価は一般に高くはないのですが、それでも所得水準が低い地域だと割高感が高くなります。アプリの低価格仕様というものはあまり作られませんし、地域ごとに限定して販売することもできません。アプリが世界同一料金になるのには理由があります。しかしこの結果、Android用であったとしても、所得水準の低い地域ではアプリはなかなか売れません。

Androidが世界的にシェアを拡大できた最大の理由は低価格戦略です。このおかげで、iPhoneを買えない低所得地域でAndroidは勢力を拡大し、Nokiaを駆逐しました。しかし、この低価格戦略はアプリでは使えません。Androidがアプリ等の収益性でもiPhoneに並ぼうとするのなら、何か新しいことをしないといけません。

3 thoughts on “Androidの収益性の危険な地域性(その2)”

  1. いつも楽しく拝見させて頂いています。大変参考になります。 有り難うございます。

    同じ視点で携帯のネット広告の売り上げが、どの国のクリックでより多く発生し、どこの国のスポンサーが支払っているのか分析できるとさらに面白いですね。ひょっとして、米国外の人のクリックに、米国スポンサーの広告が表示され売りがたってしまっている事も多くあるかも。そうだとすると、ますます危うい感じがしますね。

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  2. コメントありがとうございます。

    我々は裕福な発展途上国にいるからわからないのですが、そうでない国の状況は知りたいですね(私もよくわかりません)。例えばそういう国であればデータ無制限プランではなく、データ量の上限が厳しいかも知れません。

    そうなると、広告をクリックしても買わないというのももちろんですが、彼らにとっては広告が表示されること自体が非常にうっとうしいかのせいがあります。広告をブロックするツールを先日GoogleはGoogle Playから排除しましたが、途上国のユーザにとっては目障りだけでなく、お金を損するという意味でかなり重要な問題かも知れません。

    途上国相手の場合は、広告という間接的なやり方ではなく、その国の流通システムを巻き込んだ売り方じゃないとうまくいかないのかも知れません。そんなことを頭に入れながら、今後勉強していきたいなと思います。

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