「iモードがiPhoneに敗北した理由は製品にこだわらなかったから」という書き込みを先ほどしました。その中で特にiモード ブラウザを取り上げて、ドコモが製品の改良を怠ったのが主因だとしました。そしてドコモが製品改良を優先していれば、もしかすると先にiPhoneに似た端末を開発できたかも知れないと述べました。
ただし、ドコモが製品の改良を全然してこなかったかというとそういうわけではありません。ワンセグやおサイフ携帯など、世界で初めての機能をいくつも取り入れていました。問題はこれらの機能が余り重要ではなかったことです。
ワンセグもおサイフ携帯もiPhoneには搭載されていません。それでもiPhoneは日本で非常に人気があります。
ここでは、iモードの主な敗因(iPhoneの勝因)がブラウザにあったことを示す情報と、iモードのブラウザの状況が惨憺たるものであったことを示す情報を紹介したいと思います。
iPhoneと特徴はパソコンと同等のネット閲覧ができることだった
Steve Jobs氏がiPhoneを発表したとき、iPhoneを“An iPod, a Phone, and an Internet Communicator”と紹介し、“Internet Communicator”というのはSafariブラウザのアイコンを使って紹介しています。それまでに携帯電話とiPodを融合した製品は存在していましたので、iPhoneの新しかった点はまさに“Internet Communicator”の部分、つまりSafariブラウザの部分であったことがわかります。
なおかつ初代のiPhone OSではサードパーティーのアプリはインストールできませんでした。アプリはHTML, CSS, Javascriptを使って開発し、Safariブラウザ上で動作させなさいというのがメッセージでした。ここでもSafariブラウザが中心です。
App Storeがまだできていなかった当初は、iPhoneはSafariをどうさせるためにこそ存在する端末とも言える存在でした。iPhoneで新しいのはSafari。そしてイノベーションはパソコンと同等のネット閲覧を携帯電話で実現したことでした。
スマートフォン購入の主な同期はパソコンと同等のネット閲覧ができること
まずは総務省が公開した平成24年版 情報通信白書です。この中の「スマートフォン・エコノミー」~スマートフォン等の普及がもたらすICT産業構造・利用者行動の変化~の中で以下のように書かれています。
ウェブ調査結果に示すとおり、スマートフォンがパソコンとほぼ同等のウェブ閲覧機能等を有していることが、スマートフォン購入の重要な動機となっていると考えられる。
この根拠となるデータは「スマートフォン・エコノミー」~スマートフォン等の普及がもたらすICT産業構造・利用者行動の変化~に紹介されています。
まず、①当てはまるもの全てに係る回答については、「パソコンと同じ画面で閲覧ができるから」との回答が57.4%(1位)に達し、「画面が大きくて見やすいから」との回答(2位、46.4%)が続き、パソコンと同等環境でのメールの使用(4位、37.2%)も上位を占めている。次に②最も決め手になった項目を1つ選択する回答についても、パソコンと同じ画面での閲覧が1位(22%)となっている。この結果を踏まえれば、スマートフォンがパソコンとほぼ同等のウェブ閲覧機能等を有していることが、スマートフォン移行の重要な動機となっていると考えられ、上記の重視度に関する分析とも符合していることがわかる。
iモードのブラウザは完全に時代遅れでした
NTT Docomoのiモードブラウザのウェブページに行くと、iモードブラウザ1.0とiモードブラウザ2.0以降の技術情報が紹介されています。
iモードブラウザ1.0は「主に2009年3月までに発売となった、ブラウザキャッシュ100KBまでのサイズに対応した機種をiモードブラウザ1.0と規定します。」となっています。
つまりiモードブラウザはiモード誕生の1999年から2009年3月までに一回も大きなバージョンアップが無かったのです。IT業界で10年というのはあまりにも長い年月です。
2009年に誕生したiモードブラウザ2.0はiPhoneの躍進に対抗して、やっとDocomoがバージョンアップを行ったものです。しかしiPhoneが搭載し、パソコン用のウェブサイトも閲覧できるSafariと比べて圧倒的に性能は低いものでした。主な特徴はブラウザのキャッシュサイズが500KBになったこと、UTF-8に対応したこと、BMPやPNGフォーマットの画像に対応したこと、Cookieに対応したこと、Javascript, CSSに限定的に対応したことだけです。これらの機能はiPhoneならずとも、AUやSoftbankの携帯電話で既に実現されていたものばかりです。
結論
今から振り返って分析すれば、答えは簡単です。
ユーザは潜在的にパソコンと同等にネット閲覧ができる携帯電話を望んでいました。
これを理解し、数々の技術革新をしながら実現したのがAppleのiPhoneでした。
ドコモはブラウザの重要性を認識していませんでした。10年前と同じ技術を使っていても問題は無いと考えていました。ドコモはiモードのブラウザを更新せず、iモードブラウザの開発を滞らせてもお財布携帯やワンセグの方を優先しました。そして10年間、iモードブラウザを大きくバージョンアップしませんでした。
iモードがなぜ敗北したかを理解するために必要なこと
上述でiモードの敗因はiモード ブラウザの開発を怠ったことだと結論しました。
次の問題は、どうしてiモード ブラウザの開発を怠ったかです。
これには技術力の問題そして既存のビジネスモデルの問題があるだろうと推測しています。また別の機会に考えたいと思います。