東京オリンピック2020エンブレム 盗用疑惑のポイント

誤解している人が多いようなので、私自身も専門家ではないが、とりあえずメモ。

  1. まずベルギーのリエージュ劇場のエンブレムは商標登録されていないので、裁判は著作権に絞って争われるだろう。
  2. 著作権上は似ているか否かは問題にならない。結果としてたまたま似ているものを作ってしまったも著作権侵害には当たらない。Wikipediaによれば、「著作権は相対的独占権あるいは排他権である。特許権や意匠権のような絶対的独占権ではない。すなわち、既存の著作物Aと同一の著作物Bが作成された場合であっても、著作物Bが既存の著作物Aに依拠することなく独立して創作されたものであれば、両著作物の創作や公表の先後にかかわらず、著作物Aの著作権の効力は著作物Bの利用行為に及ばない」。したがって裁判ではリエージュ劇場のエンブレムと東京オリンピックエンブレムの類似性そのものは問題にならない。問題になるのは東京オリンピックエンブレムが二次著作物 (derivative work)かどうかである。もし二次著作物であれば、リエージュ劇場は東京オリンピックエンブレムの使用差し止めなどの権利を持つ。

サントリーのキャンペーンで”BEACH”と書かれた標識を、標識の細かい傷を含めてそっくりコピーしたのは、元のものをそっくり利用したことが明白であり、偶然の一致はあり得ない。したがって著作権を侵害したことを否認することは現実的に不可能である。訴訟を起こされれば、あとは賠償額がいくらになるかだけである。

東京オリンピックエンブレムの場合は偶然似たのか、それともリエージュ劇場エンブレムを参考に、これを改変するように作られたのかが焦点になる。これを証明するためには結果として類似性ではなく、制作過程が問われる。リエージュ劇場側は制作過程でデザインが無断で使用されたことを証明する論拠が必要だし、逆に東京オリンピック側はリエージュ劇場のエンブレムを改変したのではないことを示さないといけない。繰り返すが、結果としての類似性の程度は問題ではない。

さてリエージュ劇場側の弁護士、Alain Berenboom氏はかなりの大物弁護士のようである。彼が登場しているからには著作権侵害の何らかの証拠、つまり制作過程でリエージュ劇場のエンブレムが無断使用された証拠を持っている可能性が高い。その証拠が何かがかなり興味深いが、Pinterestを見ていたか否かのレベルではないだろう。

なお専門家も類似性に基づいた著作権侵害の証明は困難という意見で一致しているようで、私も確かにそうだろうと思う。問題はあくまでも制作過程について、リエージュ劇場側が何らかの情報を持っているのではないかということだ。これについては以前にここで議論した。

2 thoughts on “東京オリンピック2020エンブレム 盗用疑惑のポイント”

  1. はじめまして。

    私はヨーロッパに住んでいます。 
    今回のエンブレム騒動ではとても困惑していますが 勘違い? ブラックジョーク? としか言いようのない 実は なんともお粗末なできごとなんですよ。
     
    ベルギー在住の方から指摘がないことが不思議ですけど リエージュ劇場は先代の王様が教育施設として建てた特別な建築物で 大切に補修しながら現在は劇場として使用しています。 
    伝統と教養を重視するヨーロッパでは 文化と芸術は保護する対象であり 金儲けの手段にする下品さを持ちあわせておりません。 リエージュ劇場は商標登録の必要はありませんし エンブレムの商標登録も不可能です。
    日本語で上手に表現できないのですが 劇場の存在そのものが商標 と申し上げたらよろしいのか,,, そう考えると 組織委員会の発言がどれだけ赤面ものか おわかり頂けると思います。 次元のまったく違う話です。

    このエンブレムは劇場のロゴを下地にして赤丸と黒い棒を付け足したコピーです。
    その証明もできますし 何事にも手続きに時間のかかるヨーロッパ しかも夏のバカンス中であるにも関わらず裁判が進められていく理由も明らかです。
    日本でどのような報道があったとしても ベルギー勝訴は確実だと思います。 

     
      

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    1. ありがとうございます。リエージュ劇場のことがよくわかりました。どうして賠償請求に興味がなく、エンブレムの使用差し止めを求めているのかもよくわかりました。

      大会組織委員会の発言が恥ずかしいというのは、まぁ珍しいことではないので私は諦めてしまっていますが、海外に住んでおられる日本人の場合は諦めるだけではすみませんよね。残念です。

      以後、数々の盗作疑惑(確定もあり)が出てきていますので、著作権侵害の立証は確実になってきていますね。一方で日本側が自らエンブレムの使用中止を申し出る可能性も日に日に高まっています。その場合、裁判がどうなるのか、気になっているところです。

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