抗体検索サイトのリストと評価

バイオの買物.com まとめて抗体検索

僕が作っているサイトです。相当にいろいろなことを考えて作っていて、はっきり言って世界最高を狙っています。他のサイトにもいろいろな機能はありますが、そのどの機能も取り入れつつ、より優れたものに改変しているつもりです。

目標が達成されているかどうか、それはこのページを見ているご自身で判断ください。Twitterの @naofumi もしくは @BioKaimono に感想をいただければうれしいです。

Exact Antigen 改め Labome.jp

ここは遺伝子名を入力すると、抗体だとかsiRNAだとかタンパク質だとかが検索できるシステムになっています。日本語のは動作が安定していませんが(2011/8/3現在)、英語版のlabome.comは一応動作しています。ロボットでメーカーサイトから自動的に情報をとったり、あるいはスポンサーから情報をもらったりしていると聞いています。
labome.jpは一応日本語を使っていますが、製品の価格は全部USドルですので、日本のサイトとしては役に立ちません。

Biocompare

ページのトップからAntibody Searchを探して抗体検索のページに移動します。

Biocompareは知名度があるだけにメジャーブランドも小さいブランドも含め、非常に多くのメーカーの製品をのせています。残念なのは価格がほとんど敬さされていないこと。US価格すら載っていません。

また検索システムは昔ながらもので、最初にドロップダウンメニューから検索条件を入れていきます。ただ検索に少し時間がかかりますので、たくさんの絞り込みをするのは疲れます。

検索システムで特徴的なのは蛍光色素の選択の仕方です。同じ蛍光波長のものでも、メーカーによって使用する蛍光色素は大きく異なります。特に緑や赤の領域は同じような蛍光色素がたくさんあります。そこでBiocompareでは蛍光波長によってグループ分けし、Blue, Green, Yellow, Orange…などと選択できるようにしています。これは非常に便利です。

海外サイトですので、製品が見つかったとしても価格や果たして日本で売っているのかどうか輸入販売店を探すまではわかりません。

Antibodies-online.com

ここは小さな抗体メーカー(140社)をたくさん集めて、オンラインでの販売も行っているウェブサイトです。大手のメーカーは登録されていません。代金の請求や物流も小さいメーカーに変わってやってくれるそうです。インターネット上の輸入代理店(フナコシ、コスモ)みたいなものでしょうか。

検索システムはファセットナビゲーションは取り入れていますので、絞り込みはしやすいです。

あとメーカーによっては実験データ(ウェスタンとは組織染色の画像)が表示されます。

海外サイトですので、製品が見つかったとしても価格や果たして日本で売っているのかどうか輸入販売店を探すまではわかりません。

コスモバイオ

輸入商社大手のコスモバイオの抗体検索システムです。

製品は非常に多いので、その点は良いです。しかし検索システムはすべてのキーワードをユーザが自分で考えないといけないため、ちょっとドキドキしながら博打を打つような検索体験になります。その他、この検索システムはいろいろと問題があります。一例を「抗体検索の絞り込み条件は『選択式』が正しい」のブログに詳しく書いてあります。

製品が多いし、日本価格も表示されていますので製品が見つかれば良いのですが、見つけるまではかなりがんばることになりそうです。

フナコシ

輸入商社大手のフナコシの抗体検索システムです。

Biocompareの検索システムとよく似ていて、可もなく不可もなくと言ったところです。コスモバイオのものと異なり、例えば標識物はキーワードを入力するのではなく、リストの中から選択する形になります。

しかし残念ながらBiocompareのように蛍光波長でグループ分けせず、蛍光色素のブランドでグループ分けしています。例えば “Alexa Fluor”とか”Cy”とかいうグループ分けです。正直、これじゃ何の色が選ばれるのか全くわかりません。

取扱商品はコスモバイオとそれほど重ならないので、製品を探すときは両方使うことになると思いますが、ウェブサイトとしてどっちが好きかと言えば圧倒的にフナコシの方が好きです。

試薬.com

このウェブサイトは名前がメーカー横断検索サイトのようですが、和光純薬が輸入販売している製品が検索できるだけです。その製品数も限られていますので、横断検索サイトとしてはあまりお勧めできません。

検索システム自体は可もなく不可もなく。Biocompareやフナコシと良く似たシステムです。

バイオ百科

ここは横断検索サイトでコスモバイオの製品もフナコシの製品も、そしてシグマアルドリッチやアブカムの製品までも取り入れていますので、母数としては巨大です。在庫がわかるのも良いです。

ただし検索システムはかなり不思議なものです。

使い勝手が悪いというか、どうもスポンサーに遠慮しているのではないかという気がします。またシステム自体がこれほど多くの抗体を想定した作りになっていませんので、かなり検索が遅くなってしまっています。検索条件を入力するインタフェースはそのものはBiocompare的なもので、可もなく不可もないものです。

このサイトの不思議さについてはブログで紹介してます。

  1. 収益モデルがウェブサイトの使い勝手を決める例:バイオ百科
  2. バイオ百科で抗体検索:僕が使いにくいと感じるところ

最後に

僕が作っている新「まとめて抗体検索」はシステムとしてはダントツに良いとは思います。取り扱いメーカーの拡充もしていく予定です。

それ以外で良さそうなものと言えば、Biocompareではないでしょうか。ただ日本の輸入代理店を探すのが大変なので、Biocompareで見つけた後はフナコシ、コスモバイオ、あるいはバイオ百科で検索しないといけません。バイオ百科はキーワード検索は不思議なことが起こりますが、カタログ番号検索なら問題なくやってくれるので、ここでカタログ番号検索をするのが一番楽かもしれません。

なお、まだこの表には大手抗体メーカーの抗体検索システムを掲載していませんが、徐々に掲載していく予定です。はっきり言って、大手抗体メーカーの方がずっと先を行っているケースが多いです(輸入商社や比較サイトはうちを除いて停滞気味?)。

バイオの買物.comでは抗体以外の製品はどうするの?

理想の抗体検索システムを追求した新「まとめて抗体検索」サービスを始めましたので、ぜひご利用ください。

またこの記事を含め、ライフサイエンス研究用製品メーカーのウェブサイトのあるべき姿について書いた記事を特集ページにまとめました。あわせてご覧ください。

スポンサーから「バイオの買物.comでは抗体以外の製品はどうするの?」という主旨のお問い合わせをいただきましたので、回答した内容を修正してここに掲載します。バイオの買物.comの今後半年ぐらいの目標が簡単に書いてあります。

—–

ご質問の件について、お答えいたします。

まず、簡単に結論を申し上げます。
抗体以外の製品についても、バイオの買物.comに掲載する仕組みを現在作成しています。
単なる検索ではなく、各社の製品をカテゴライズしたものを準備しています。
製品の掲載そのものは無償で、御社の製品についてはすでに作業を進めています。
秋頃の公開を目指しています。

次に長くなってしまいますが、詳しい回答をいたします。

実は抗体だけでなく、なるべく多くの製品を掲載することがバイオの買物.comの当初からの目標です。いまのところ抗体検索をメインにしているのは、1)データが比較的規格化されている、2)メーカーからデータを比較的入手しやすい、3)ニーズが既に顕在化している、といった理由によります。

他の製品ではまずデータが規格化されていません。抗体であれば、抗原、交差性や宿主、標識物などのデータによって、抗体の性質を十分に説明することができます。一方でPCR酵素などはどういうデータがあれば良いかが明確でありません。カタログを見てもデータが記載されていなかったり、メーカー内でもデータがそろっていなかったりという状況です。

そこでバイオ百科さんなどは、抗体以外の製品については単純なテキスト検索だけを提供しています。しかし、研究者からすればこれだけではほとんど使い物にならないと私は考えています。研究者がすでに製品名や品番を知っていれば目的の製品を見つけることはできますが、そうでない場合はうまくいきません。

例えばMillipore社のMILLIPLEXの製品を検索する場合、BD社などの類似製品は”FACS Array”と呼ばれていますので、BD社のことしか知らない研究者は例えば”Bead Array”という検索語を使うことになると思います。またOEM元の”Luminex”で検索されてしまうと、コスモバイオ社とフナコシ社の製品しか検索されません。バイオ百科さんの仕組みですと、これではMillipore社のMILLIPLEX製品は引っかかってきません。

つまり単なる検索ですと、使ったことの無いメーカーの新しい商品を研究者に紹介するのはほとんどできないというのが私の考えです。

バイオの買物.comでは、この問題を解決するために http://www.castle104.com/categories/15 のような製品比較表を試験的に運用しています。しかし、これはデータ作成の労力が大きいので、一部の製品に限定せざるを得ませんでした。

秋から予定している新しいサービスは、 http://www.biocompare.com/ のように製品をカテゴライズしたものになります。これなら、ブランド名などに関係なく、製品の特性によって絞り込むことができますので、研究者はまだ使ったことの無いブランドを見つけることができます。ただしBioCompareのカテゴリー分けもいろいろと問題があり、決して使いやすくはありません。そこで、試験的に運用している比較表とBioCompareのカテゴリーをハイブリッドしたようなアプローチを考えています。最終的には 価格.com http://kakaku.com/pc/mac-desktop-pc/se_102/ のような形を目指しています。

なおどのメーカーの製品を掲載するかですが、これについて研究者の利便性を考え、バイオ百科さんやBioCompareさんのように「スポンサーの製品のみ掲載」というアプロートは採らない予定です。逆に価格.comのように、主要メーカーの製品は自社でデータを作成して掲載していくというアプローチを考えています。実は大手メーカー10社強の全製品のデータも取得済みで、現在カテゴリー分けを行っているところです。

カテゴリー分けした製品のページについては、「抗体検索」とは別のアプローチでスポンサーを募集しようと考えています。いまは「キャンペーン」ページと良く似たやり方を検討しているところです。

以上、長くなってしまいましたが、回答をさせていただきました。

新しいサービスが動き出したときにはまたご報告いたしますので、よろしくお願いいたします。

加々美直史

バイオ百科で抗体検索:僕が使いにくいと感じるところ

以前のブログで、バイオ百科の抗体検索が使いにくいとお話しました。

僕もいちおう科学者の端くれですので、方法および結果をちゃんと紹介し、皆様も追試できるようにしました。実際に僕が問題にぶち当たっているところをビデオにしましたので、ご覧ください。

インターネットで抗体を探す方法:抗体検索サイト vs. Google

理想の抗体検索システムを追求した新「まとめて抗体検索」サービスを始めましたので、ぜひご利用ください。

またこの記事を含め、ライフサイエンス研究用製品メーカーのウェブサイトのあるべき姿について書いた記事を特集ページにまとめました。あわせてご覧ください。

あなたは抗体を探すとき、抗体検索サイトに行きますか?それともGoogleでダイレクトに検索しますか?

日本国内の抗体検索サイトについては以前のブログで紹介しましたが、今回は抗体検索サイトを利用せずに、ダイレクトにGoogleで検索する方法について話したいと思います。

ここでいうGoogleで検索する方法というのは、つまり “CD4 抗体”もしくは”CD4 antibody”のキーワードでGoogleすることを指します。

面白いことに、コスモバイオのウェブサイトなどをを利用して抗体を検索するのと、Googleで直接検索するのとでは、全く異なるのです。例えば “CD4 抗体”でGoogle検索すると、Beckman CoulterのサイトやMiltenyi Biotechのサイトは出てくるのですが、コスモバイオのサイトはやっと3ページ目に、あまり関係がないと思われる「Tregマーカー 細胞表面にある4型葉酸受容体抗体:コスモ・バイオ」というページが出てくるだけです。コスモバイオが取り扱っているCD4 抗体のページは出てこないのです。

どうしてそうなってしまうのかという技術的な問題については、後で機会があれば詳細に解説したいと思います。今日はとりあえず、Googleで直接検索する人がどれぐらいいるのかを分析したいと思います。利用するのはAdwordsのキーワードツールです(Adwordsアカウントがないと、フルバージョンは使えません)。

いくつかの抗原で、”[抗原名] 抗体”もしくは”[抗原名] antibody”のGoogleでの検索回数を表にまとめました。数字は月間の平均検索回数です。

抗原名 “抗体”と組み合わせ “antibody”と組み合わせ
annexin 不明 390
Calcineurin 不明 91
Raf 不明 12
Ras 36 480
Caspase 不明 58
myc 170 91
CD20 170 不明
CCR3 不明 73
CD133 91 390

各抗原について、非常に乱暴ですが、平均で月間100回の検索が行われると想定しましょう。また抗原の種類は、割と知られているものだけでも数百はあるでしょう。仮に500種類あるとします。そうすると、直接Googleで抗体の検索を行うのは、月間50,000回あると計算されます。平日だけを考えますと、毎日2,000回の検索が行われている、非常におおざっぱに言えると思います。

そもそも「抗体」というキーワードだけだと165,000回の検索が行われていますし、antibodyだと27,100回の検索が行われています。「抗体」で検索しているのは、研究者以外の人が多いと思われますので、僕らの目的からすると、antibodyの27,100回の方が意味があると考えています。ちなみに「コスモバイオ」は6,600回、Googleで検索されています。

‘antibody’は27,100回検索されていますが、この数を先に推定したGoogleでの直接的な抗体検索回数、月間50,000回と比べますとかなり近い数字です。そこで、論理的にはかなり乱暴ですが、インターネットで抗体を探している人はかなり高い割合で、Googleでの直接検索を行っていると言えると思います。

そう考えると、Googleで直接検索を行うユーザは多いので、彼らを対象とした対策が必要になります。しかし、極一部のメーカーを除いて、これをしっかりやっている会社はかなりの少数派のように見受けられます。

残念な話です。

収益モデルがウェブサイトの使い勝手を決める例:バイオ百科

理想の抗体検索システムを追求した新「まとめて抗体検索」サービスを始めましたので、ぜひご利用ください。

またこの記事を含め、ライフサイエンス研究用製品メーカーのウェブサイトのあるべき姿について書いた記事を特集ページにまとめました。あわせてご覧ください。

アップデート
バイオ百科で僕が実際に抗体を検索して、使いにくくて困っているビデオをアップロードしました。

バイオの買物.comを含め、ウェブサイトの運営資金は広告収入を当てにしていることはとても多いです。

優れてウェブサイトを作り、多くにユーザが訪問してくれれば、広告収入が増えるという形です。

しかし広告料金のプラン(つまり収益モデル)を上手に設計しないと、ユーザにとって優れたウェブサイトが作りにくくなることがあります。ユーザの要望に応えるウェブサイトにすることと、収益を得るということが、互いに矛盾するケースが生まれてしまうのです。

その例として、「バイオ百科」というウェブサイトを見ていきたいと思います。

バイオ百科は抗体メーカー(商社)数社の製品をデータベースに登録し、限定的ではありますが、横断的な検索を可能にするウェブサイトです。特に抗体を探すときに有用です。登録しているメーカーが少ないので、BioCompareの抗体検索に比べれば抗体の網羅性は低いのですが、コスモバイオとフナコシの抗体が入っているので、小さいメーカーはかなりカバーされています。

しかしこのサイトで非常に残念なのは、検索インタフェースの使い勝手です。

「CD133」で検索を行った例で解説します。

biohyakka1.png

まず気付くことは、製品が全くランダムに並んでいることです。製品名で見ても、メーカー名で見ても、包装サイズで見ても、価格で見ても、全く何で見てもランダムに並んでいます。
並べ替えるには再度検索を行う必要があるのですが、検索条件のメニューは以下の通りです。

biohyakka2.png

ユーザが一番望むであろう「価格順」というのが無いのです。

どうしてランダムに製品を並べるのか。どうして価格順に表示させないのか。

さてここからは想像になりますが、ユーザにとって不便なインタフェースのままになっている理由を考えたいと思います。どうしてバイオ百科は不便を承知で、ランダムな表示順にしたり、価格順の並べ替えを用意しなかったりしたのか。

製品を掲載するにあたり、バイオ百科ではまず比較的高額なセットアップ費用を支払う必要があります。そして小額ではありますが、毎月の固定料金を支払います。

僕はこの料金システムがバイオ百科の自由を束縛し、ユーザ本意のウェブサイトを作りにくくしていると考えています。

まずは高額なセットアップ費用です。高額な費用を支払った以上、広告主であるメーカーはバイオ百科に対して強い発言権を持つようになります。自社に都合の悪いサイトの改良をしようとすれば、拒否できるだけのパワーを広告主は持つことになります。すべての広告主が納得するような改良は簡単にはできないでしょうから、サイトの改善スピードが遅くなってしまいます。

一方、もしバイオ百科がセットアップ費用を取っていなかったとします。そのとき、広告主に都合は悪いけれども、ユーザにとっては便利な機能(例えば価格順の表示)を追加しようと考えたとします。その結果として一部の広告主の反感を買ったとしても、その広告主に外れてもらうようにするだけでいいのです。文句を言う広告主の製品は載せてあげませんよと。広告主もセットアップ費用を支払っているわけではないので、損はありません。それに対して広告主がすでに高額なセットアップ費用を支払ってしまっていると、広告主はもとをとろうと考えますので、簡単には外れてくれません。広告主は引き下がらずにしつこく文句を言う可能性がありますし、仮にそうではなくても今後のビジネスにしこりを残すことになります。

月額の固定料金も問題です。広告主は一定の費用を毎月支払うわけですから、各広告主の製品をなるべく均等に表示する義務が発生します。メーカーのアルファベット順に並べてしまうと、いつも同じ会社が上位に表示されてしまうので、広告主間で不公平が生まれます。製品名のアルファベット順に並べても、同様の問題が発生する可能性があります。価格順に並べた場合は、安売りメーカーが優先して表示されるので、高い品質とブランド力を持っていて価格を高めに設定しているメーカーは広告を出してくれなくなります。

バイオ百科で製品をランダムに表示しているのは恐らくこのためでしょう。

一方GoogleのAdwordsのように、訪問者がリンクをクリックする回数に応じて課金するシステムであればこの問題はかなり軽減されます。並べ替えの関係でたくさん表示されるメーカーは多くの広告費を支払いますし、少ししか表示されないメーカーは広告費をあまり支払いません。したがって広告主間の不公平感は生まれません。価格順に並べても問題ありません。真に高い品質とブランド力を持っているメーカーであれば、検索条件で指定してもらえるはずですから、表示してもらえるはずです。検索条件で指定してもらえないメーカーは、実はブランド力が思ったほど無かったという、それだけのことです(もちろん、ウェブサイト側は検索条件でメーカーを指定しやすいように工夫していることが前提ですが)。

また月額の固定料金の場合は、バイオ百科自身のインセンティブが低くなることが言えると思います。ユーザにとって便利なサイトを作ることよりも、広告主にとって都合のいいサイトへと重点が移ってしまう可能性があります。事実、今回紹介したもの以外にも、バイオ百科にはびっくりするような不便なところがありますが、なかなか改善されません(CD4を検索してみてください)。

以上、自分のバイオの買物.comを棚に上げて、他のウェブサイトの悪口を言ってしまいました。でも言いたかったのは悪口ではありません。

言いたかったのは、収益モデルをよくよく考えておかないと、広告主に自社の自由を束縛されてしまうということです。そして本当の顧客であるウェブサイト訪問者からフォーカスが外れてしまって、使いやすいウェブサイトが作れなくなってしまう可能性がありますよということです。

そういうことに注意しながらデザインしているバイオの買物.comの収益モデルについては、また別の機会に紹介したいと思います。

コスモバイオの製品(抗体)検索システム、移行の不具合(もっとがんばれコスモバイオ!)

コスモバイオ社のウェブサイトに、製品検索システム移行の不具合について解説がありました。

要点は

  1. 製品検索システムを新しくしました。
  2. そうしたらURLが変わりました。
  3. 古いURLをアクセスするとエラーが出ます。
    CosmoBioSearchError.png
  4. なので、古いURLをお気に入りに入れていた人は、新しいURLと入れ替えてね。

と、こんな感じです。

一般の人は「ふむふむ」と納得して、古いURLを新しいURLに変更するかもしれませんが、僕のようにウェブで仕事をしている人からすれば、「ちょっと待て!」という感じです。

だって、古いURLにアクセスした人を新しいURLに自動的に飛ばせば良いだけでしょう?

ウェブ技術に詳しい人であれば、チョチョイのチョイでできることです。
例えばウェブサーバとしてApache2を使っていれば、以下のコードをconf設定ファイルのどこかに入れておけば良いはずです。このような処理はリダイレクションと呼びます。(設定はLeopardでテスト)


  RewriteEngine On
  RewriteRule cosmo_search_p http://search.cosmobio.co.jp/qs/FormArticle.do?ServerKey=Primary&Usq= [R=301]

これをやってしまえば、古いURLでアクセスしてきたユーザであっても、何も気付かずに、変更があったことすら意識することすらなく、新しい検索システムが使えるのに。

コスモバイオの対応のもっと大きな問題

実は、以下に紹介するように、もっと大きな問題があります。
それはGoogle対策です。

Googleは、比較的アクセスが多いサイトについては、下図のように内部リンクも用意して、利用者の利便性を計っています。

CosmoBioGoogle.png

そして、僕が赤く囲んだ「抗体検索」のリンクは、新検索システムに移行してから2週間後の8月18日時点でも、まだ古いURLを指しているのです。

ちなみに「コスモバイオ 抗体検索」でGoogle検索すると、下図のようになります。
CosmoBioGoogle2.png
これもあまりいい状態ではありませんね。

いずれ時間が経てばGoogleも気がついて修正してくれますが、ちょっとしたことで回避できる問題なので、とてももったいないと思います。

さらに非常に技術的に細かい話になるのですが、コスモバイオ社のエラーメッセージページはHTTP status codeの200 「ちゃんとページが見つかりましたよ」というステータスを返しています。一般にエラーページはHTTP status codeの4xxとか5xxを返すのですが、コスモバイオ社のウェブサイトはそうなっていません。このままではGoogleとしてもエラーが起こっていることに気付くことができないので、Googleがちゃんとしたページを示すまでにはかなり時間がかかってしまう可能性があります。
CosmoBioHTTPStatus.png

ちなみに私自身が担当したバイオメーカーのウェブサイトでは、新規リニューアルする際、可能な限り、上記のようなリダイレクションを行いました。心配したのはまさにGoogleの検索結果であって、Googleから来た人が迷わないようにすることが最大の目的でした。

コスモバイオ社はまぁまぁウェブでがんばっていますが、このことを含め、ウェブ技術にあまり詳しくなさそうな点がいくつか見受けられます。もう少しがんばってくれるといいのですが。

もっともこれはコスモバイオ社に限らず、多くのバイオメーカーに共通の問題です。

ちなみに古いURLはhttp://search.cosmobio.co.jp/cosmo_search_p/search_gate2/search/s97is.dll?Action=FormGen&ServerKey=Primary&Template=p_all_search.hts&Usq=、新しいURLはhttp://search.cosmobio.co.jp/qs/FormArticle.do?ServerKey=Primary&Usq=。コスモバイオ社のウェブサイトは「検索命!!」という作りになっていますので(というか、検索以外の方法では決して見つけられない製品が非常に多いという別の問題があります)、もう少しURL自身をきれいにした方がいいようにも思います。これも先ほど紹介した「チョチョイのチョイ」でやれるのですから。

抗体検索サイト リストと評価

このポストは2008年7月に書いたもので古くなってしまっていますので、随時アップデートするページとしてバイオの買物.comからみた製品検索サイト リストと評価のページを作りました。

バイオの買物.comの「まとめて抗体検索」が大幅にリニューアルしました。最新のウェブ技術とトップブランドの抗体で、「瞬間的」に抗体を見つけてください。
リンクはこちら

この記事を含め、ライフサイエンス研究用製品メーカーのウェブサイトのあるべき姿について書いた記事を特集ページにまとめました。あわせてご覧ください。

以下は2008年7月に書いたもので、内容が古くなってしまっています。ご注意ください。

日本では抗体を検索するときにはコスモバイオ、フナコシなどのウェブサイトを利用することが多いかと思います。でもこの2社は、日本に支店を持っていないような小さい抗体メーカーばかりを扱っているので、BD Pharmingenのような大手は引っかかりません。

コスモバイオ、フナコシ、試薬.com、バイオ百科など、みんな同じです。どれも小さい抗体メーカーのみ扱っています。

大手メーカーも小さいメーカーも全部まとめて検索してくれるサイトが欲しくありませんか?

僕が運営しているバイオの買物.com まとめて抗体検索はこれを目指したものになっています。でもその話をする前に、アメリカの抗体検索サイトと日本の抗体検索サイトについて紹介したいと思います。

アメリカの抗体検索サイト

アメリカではメーカー直販が一般的ですので、コスモバイオ,フナコシ、試薬.com (和光純薬系列)のような輸入販売代理店は存在しません。その分、小さい抗体メーカーは自社製品をPRするのに苦労します。そういうこともあってか、良質の抗体検索サイトがあります。そしてBD Pharmingenのような大手もこれらの抗体検索サイトに登録しています。

抗体を製造しているメーカーは非常に多く、The Antibody Resource Pageというウェブサイトに300社以上がリストアップ(リスト1, リスト2)されています。

メーカー横断的な抗体検索サービスを提供しているウェブサイトとしては

  • Biocompare Antibody Search: ここは抗体だけでなく、バイオ研究関連の非常に多くの製品を掲載していますが、中でも抗体検索が役に立ちます。大手メーカーの製品もばっちり検索されます。使い方について、ライフサイエンス統合データベースセンターの統合TVに紹介されています。
  • ExactAntigen: ここは登録だけでなく、ロボットでメーカーウェブサイトを自動的に巡回しています。メーカーだけでなく非営利団体や大学研究室の抗体までも含めて22,000のモノクローナル抗体を掲載しています。大手メーカーもばっちりです。また抗体のレビューも用意されています。詳しくはAbout ExactAntigenから。
  • Antibodies Online: ここは小さな抗体メーカーをたくさん集めて、オンラインでの販売も行っているウェブサイトです。大手のメーカーは登録されていません。出荷と請求はやらないので、ヤフオクのようなサイトと言ったところでしょうか。

日本の抗体検索サイト

日本では基本的にメーカー横断的なウェブサイトはバイオ百科、そして僕が提供しているバイオの買物.comだけだと思います。バイオの買物.comはBiocompareのシステムを利用しているので、大手を含めてほとんどの製品が登録されていますが、バイオ百科はコスモバイオ、フナコシ、DSファーマ、アブカムの販売している抗体のみを掲載しています。

ただし日本では比較的大きな輸入販売元が、世界中の小さい抗体メーカーの製品をまとめてくれているので、以下の輸入販売元のホームページからたくさんのメーカーの抗体を検索することができます。ただし大手メーカーの製品は登録されていません。

最後に感想

日本の抗体検索サイトは、現時点ではコスモバイオ、フナコシや和光などの輸入販売元がほぼ独占しているような状態です。でも、これらの輸入販売元は、ほぼ間違いなく米国価格の2-3倍の価格設定をしています。そして国内に支店があれば責任を持ったサポートや値引きなどもしてくれますが、輸入販売元だとそれもなかなかしてもらいにくいです。

ですからこのような輸入販売元が、日本市場であまり強い力を持つのは好ましくないと思います。

それに対してBiocompareやExactAntigenの日本版のような横断的抗体検索サイトがあれば、日本の研究者は輸入販売店が取り扱っている製品だけではなく、日本支店がある大手メーカーの抗体も効率よく見つけることができます。おかげでよりよいサポートやサービスを受け、より安価に抗体が購入できるようになるでしょう。

バイオの買物.comが目指しているのはこの方向です。

BioCompareの抗体検索が今日も遅い

BioCompareの抗体検索が、だいたい日本の10時半になるとめちゃくちゃ遅くなるようです。ここ平日2−3日使っているのですが、ずっとそんな感じです。

日本のウェブサイトだとコスモ・バイオの抗体検索も遅いし、よく落ちている気がします。

それにしても今の時間はアメリカでは西海岸で夜7時ぐらいで、東海岸だったら夜10時ぐらいのはずなんで、遅くなる理由がよくわかりません。中国が目覚めることと関係しているのだろうか。

 

バイオの製品比較サイト Biocompare

アップデートその2
この記事を書いてから、私が作っているバイオの買物.comはかなりアップデートしています。是非ご覧下さい。

アップデート
Biocompareの抗体検索に、日本のメーカー情報を連動させたサイトを作りました。まとめて抗体検索にありますので、試してみてください。
製品の機能と価格の比較もできます。

英語版しか無いのですが、ライフサイエンス製品の比較サイトとしてBiocompareというものがあります。ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS)統合TVサイトビデオによるBiocompareの解説もあります。またJun Seita氏のブログにも紹介されています。

どうも抗体検索機能を高く評価している人が多いようです。

Biocompareはこのようにライフサイエンスで一番有名な製品比較サイトであり、事実上唯一のものです。ライフサイエンスの製品は多くのメーカーから多くの製品が販売されているので、このようなウェブサイトがあるというのは非常にありがたいのは間違いの無いことです。しかしBiocompareは比較サイトとしては本当に十分なものでしょうか。例えば価格.comと比べるとどんなものなんでしょうか。

結論を先に言うと、Biocompareは価格.comなどに比べれば、製品比較サイトとしてはずいぶんとレベルが低いと言えると思います。以下、解説します。

カテゴリー分けに依存しすぎていて、カテゴリーが細かすぎる

例えばPCR用の酵素を探したいとします。そのときは Molecular Biology > PCR/Real-Time PCR > PCR Reagents までいきます。さらにここから > Thermostable Polymerases に入る分けですが、ここに入ったときのカテゴリー分けが実にびっくり。

ちょっと普通に考えると訳が分からない分かれ方になっています。例えばOther Thermostable Polymerasesというカテゴリーが出てきますが、TgoとかTflというのがどんなpolymeraseなのかはPCRマニアでもなかなか知らないはずです。そして実はTgoというのはRocheが発売している非常にFidelityが高いPCR酵素なのですが、これは左にあるHigh Fidelity Polymerasesのカテゴリーには入っていないのです。

提携していないメーカーの製品は載せていない

同じPCR用酵素の中で例えば High Fidelity Hot Start Polymerase を見ると、9つのメーカーの製品が紹介されています。そして下の方に

というのが表示されて、リストアップされていないけど該当する製品を取り扱っているメーカーが表示されています。

繰り返します。下の方に表示されているメーカーの製品はBiocompareの製品リストの中に含まれていません。しかもその中には、PCR酵素で有名なStratagene、それほど有名ではないけど比較的知られているClontechも含まれています。

もっと悲惨な例もあります。Plasmid Purification Kits (Midi)になんとQiagenがない。なんじゃそりゃ〜〜〜!!

つまりBiocompareは情報を提供してくれたメーカー(Biocompareにお金を払わないといけないのかどうかは不明)の製品は載せますが、そうでないメーカーは載せていないのです。Biocompareには網羅性が基本的にありません。Biocompareを見たって言っても、実は一番有名な製品を見逃してしまう可能性は高いのです。

絞り込み抽出条件はメーカー名のみ

驚くべきことに、Biocompareの絞り込み検索はメーカー名しかありません。

これに対して価格.comはこんなに絞り込み条件があります。

大部分の製品は価格が載っていない

どっちみち日本の価格ではなく、アメリカでの価格なので直接関係はないのですが、Biocompareの大部分の製品は価格が掲載されていません。

これはかなり う〜ん という感じです。

比較するスペックが少ない

一覧表で表示されるスペックが非常に少ないです。どうやって比較するんだという感じです。例えば以下の例では、PCR酵素の容量しか書いてません。容量だけ書いてあっても、価格が書いてない訳ですから、いったい何を比較すればいいだって感じです。

これに対して価格.comでは

もう比較のしやすさが月とスッポンです。

ユーザレビューが書き込めない

決定的に重要なことですが、Biocompareでは製品ごとに書き込みをすることができません。価格.comやAmazonでは、製品ごとにユーザが自由に製品をレビューしたりできます。しかしBiocompareにはその機能がありません。

研究者というのは基本的にはメーカーの言うことよりも他の研究者のいうことを圧倒的に信じます。サイエンスというのがpeer reviewの上に成り立っている以上、これは当たり前のことです。なのにユーザがレビューを書き込めないのはBiocompareにとっては大きな欠点と言えると思います。

結論

今回はBiocompareの一側面しか見ていませんが、”compare” = 「比較する」という所においてかなり弱いことがはっきりわかると思います。

どちらかというと「あっ、こんな製品もあったのか」という発見には便利なのですが、そこから掘り下げて具体的にどの製品を購入するかを判断するためには、結局ユーザは相当な不便を強いられることになります。

ライフサイエンスの世界ではBiocompareの競合となる製品比較サイトが無いので、まぁ現状ですませているのでしょうが、製品比較サイトとしては決してレベルの高い作りにはなっていないと言っていいと思います。

まぁ、ひとことで言うと

Bio “compare” ではなく Bio “見つかるかもしれないし、見つからないかもしれない” という名前の方がbiocompareのサイトを正しく表現していると思います。

この記事を含め、ライフサイエンス研究用製品メーカーのウェブサイトのあるべき姿について書いた記事を特集ページにまとめました。あわせてご覧ください。