昨日テレビ(どの局か忘れました)で室町時代式のウェディングを提供するビジネスを始めている女性が紹介されていました。室町時代のウェディングを提供するビジネスプランは、とあるコンテストでも優勝したのですが、実際にふたを開けてみると年間に6件程度ということでなかなかうまく行かないようでした。
そのテレビはすぐに切ってしまったのでその結末はわからなかったのですが、そういえば他にもビジネスプランコンテストで入賞したにもかかわらず、なかなかビジネスがうまくいかない人の話は聞くなぁと思って、ちょっと調べることにしました。
ビジネスプランのコンテストは日本に限らず、欧米でもかなり盛んなようです。ただし少なくとも米国ではMBAなどのコースの中で行われている雰囲気で、日本のように誰でも参加自由ではないことがあるみたいです。よく調べていないので、間違っているかもしれませんが。
一方でビジネスプランコンテストの入賞者が実際にどれぐらいの確率でビジネスを成功させたかという情報はあまり見ませんでした。どちらかというと、ビジネスがうまく立ち上がるか上がらないかに関わらず、「いい勉強になる」「いい人脈に出会える」という評価が多いように感じました。でも「いい勉強になる」「いい人脈に出会える」といったコメントって、失敗のときに誰もが弁解代わりに言い古されているものなので、僕はネガティブに受け止めました。
その中で一つ、多少なりとも学術的に調査されたような文献が見つかりましたので紹介します。
結論
The analysis revealed that there was no difference between the performance of new businesses launched with or without written business plans. The findings suggest that unless a would-be entrepreneur needs to raise substantial startup capital from institutional investors or business angels, there is no compelling reason to write a detailed business plan before opening a new business.
分析の結果、文書化されたビジネスプランの有り無しと新しいビジネスの成績には相関が見られませんでした。したがって投資家やエンジェルから相当額の資本金を集めなければならない場合を除き、事業開始前に詳細なビジネスプランを書く必要は特に無いと示唆されます。
他文献の紹介の中から
only a minority of entrepreneurs, including even MBAs from a preeminent business school, started
their ventures with a formal written business plan.
有名ビジネススクールMBAであっても、公式なビジネスプランを持ってベンチャーを起こした起業家はごく少数派(10-30%)に過ぎない。
調査の方法
1985 – 2003年の間にBabson大学を卒業した学部生とMBAを調査。起業家個人の情報、ビジネス内容、ビジネスプラン、ビジネスモデル、ビジネスモデルの変更内容、初期の資本、事業成績などをアンケートで調査し、330の回答を得た。
会社の収入、利益、従業員数を目的変数(成功の目安)とした。
また説明変数としては教育、業界経験、企業経験、創業者数、性別、創業年数、投資を受け入れた年(バブルの影響排除のため)、創業12ヶ月未満での投資受入額、内部・外部資本の割合としています。
これを元に回帰分析を行っています。
説明変数を個別に見たときの相関(単変量解析)
事業開始前のビジネスプラン
事業開始前にビジネスプランを用意している会社の方が収入、利益、従業員、資金受け入れ、創業年数とも多かったものの、ビジネスプランを持たなかったところとの差はわずかでした。統計的な有意があったのは従業員数だけで、それも0.1だけでした(つまりこの差は単なる偶然の可能性も高い)。
性別
収入、利益、従業員とも、男性起業家の方が女性起業家よりも多くなっていました。統計的な有意性は0.01。
教育
学部卒業起業家は収入、利益、従業員数のいずれの指標で見ても、MBA卒起業家をしのいでいました。統計的有意性は0.05。
創業者数
創業者数は収入、利益、従業員数のいずれとも強く相関し、有意性は0.001。
外部からの資金調達
外部肩調達した資金の割合は収入、利益、従業員数のいずれとも強く相関し、有意性は0.05。
重回帰分析
それぞれ収入、利益、従業員数を説明する3つのモデルを作った場合、そのいずれにおいてもビジネスプランによる効果は見られませんでした。
これらのモデルでは創業年数の説明変数が収入、利益、従業員数共に有意性0.01で寄与。その他の寄与はあまりなし。
考察の抜粋
It seems to us that university business plan competitions are being overdone. If we must have new venture competitions, the emphasis should be on business implementation. After all, do university athletics departments run play-book competitions? No, of course not. They reward the actual winners of the contest on the field of play. Entrepreneurship, just like football, is a contact sport not a classroom intellectual exercise.
どうやら大学のビジネスプランコンテストは行われすぎているようです。ベンチャーコンテストをやるとしても、ビジネスの実施に重きを置くべきです。大学の体育会では作戦ノートに基づいた競技会をやりますか?もちろんそんなことはやりません。グラウンドでの勝者が表彰されるのです。起業はアメリカンフットボールと同じです。お互いにぶつかり合うコンタクトスポーツです。教室でやる知的鍛錬ではないのです
これなら納得。僕もそう思います。