タブレット市場についての気になる情報

アップデート:
Ben Bajarin氏が中国市場でのタブレットに使用形態についてもう少し詳細に書いています。結論は同じですが、こちらも参考になります。

タブレット市場っていろいろよくわからないことがあるのですが、いくつか気になる情報があったのでリストアップします。

中国でAndroidタブレットはどのように使われているか?

Benedict Evans氏のブログの中で、Androidタブレットの中で特に売り上げが急増しているのが “unactivated Android” であることが紹介されています。この“unactivated Android”というのは主に中国で売られている$75-$150のAndroidタブレット(Googleから正式に認定されていなく、Google Playとかにアクセスしないタブレット:グラフではピンク色)です。

それでこの“unactivated Android”が何に使われているかというと、ほとんどビデオを見るために使われているそうです。したがってこれらはiPadの競合ではなく、どっちかというとテレビの競合だということです。

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ここから以下のことが類推できます;

  1. AndroidのタブレットのiPadの競合となって来ているという話がありますが、それは違うかも知れません。iPadはPost-PC市場で売られているのに対して、Androidタブレットは全然違う市場で売れているからです。これはEvans氏がブログで述べている見解です。
  2. GoogleのNexusがごくわずかしか売れていません。相当に安価であっても、高性能なAndroidタブレットの市場は小さそうです。存在するのは超安価で性能もそこそこなAndroidタブレットの市場だけ。高性能タブレットの市場はiPadが独占している模様です。
  3. タブレットの販売が急増し、PCを脅かしているという話があります。しかしiPad自体はそれほど売り上げが伸びていません。タブレット市場のうちiPadだけがPost-PCであるならば、まだまだPCは強いよ、それほどPost-PCは強くないよと言えます。ただし、これはiPadの売り上げがどのように展開するか、例えばクリスマスシーズンに大きく売り上げが伸びるかどうかに関わっています。

iPadの2013 Q3の売り上げはまたしてもあまり伸びていない

IDCから3Q13のタブレットの売り上げ推定が出ました。iPadは前年同月比で1%しか伸びませんでした。ただし2Q13のときは売り上げ減でしたので、それよりは若干良い結果です。

2Q13のときはSamsungもAsusも前期比で売り上げを減らしていましたが、3Q13ではSamsungもAsusも売り上げを大幅に増やしています。

新型iPadの発表がなかなか無かったので3Q13の数字が伸びなかった可能性が有り、また売り上げの季節性が非常に強いので、はっきりしたことは4Q13のiPadの数字を見るまでわかりません。

今のところは「騒がれているほどタブレット(特にiPad)は売り上げが伸びていない」とだけは言えそうです。

Androidタブレットはどのように売られ、どのように使われているか

IDCのレポートには、この他、Androidタブレットがどのように売られているか、どのように使われているかを示唆するコメントもあります。

Samsung once again secured the second position with shipments of about 9.7 million units. The company, which owes a measure of its tablet success to its ability to bundle them with other successful Samsung products, such as smartphones and televisions, grabbed 20.4% of the worldwide market.

つまりSamsungのタブレットが売れている(Android陣営の中ではダントツに売れている)理由は、一部にはスマートフォンやテレビとバンドルできるからだというのです。

Samsungタブレットの多くはおまけかも知れないのです。

また“unactivated Android” (white box tablet)については、

“White box tablet shipments continue to constitute a fairly large percentage of the Android devices shipped into the market,” said Tom Mainelli, Research Director, Tablets at IDC. “These low cost Android-based products make tablets available to a wider market of consumers, which is good. However, many use cheap parts and non Google-approved versions of Android that can result in an unsatisfactory customer experience, limited usage, and very little engagement with the ecosystem. Android’s growth in tablets has been stunning to watch, but shipments alone won’t guarantee long-term success. For that you need a sustainable hardware business model, a healthy ecosystem for developers, and happy end users.”

超安価なAndroidタブレットは顧客満足度が低く、あまり使われていないそうです。

不健全なタブレット市場

タブレット市場は劇的に成長していて、PCを脅かしているという話があります。しかし中身を見ると、特にAndroidのタブレット市場はおかしなことが多く、非常に不健全な状態です。iPadも思ったほど成長していません。

この状態で果たしてタブレットはPCに代わる存在になるのでしょうか?本当にPost-PC時代が到来するのでしょうか?それともタブレットもまたnetbookのように、一瞬で消えて無くなる存在になるのでしょうか?

その答え如何でMicrosoftやIntelの運命が変わります。

今後の展開に注目です。

Chromebookは教育現場で売れているのか?

先日のAppleのQ4報告の中でTim Cook氏は

We see Chromebooks in some places,

と述べ、

but the vast majority of people are buying PC/Mac or an iPad.

と語っています。つまりChromebookはほとんど使われていないと言っています。

2013年の2月には“Chromebooks Now Embraced By More Than 2000 Schools”という記事がJason Evangelho氏によって書かれ、Forbesに掲載されました。

さて、アメリカには学校はどれぐらいあるのでしょうか?

National Center for Education Statisticsによると、2009年時点で、アメリカの学校は 公立 98,817, 私立 33,366, 大学など 6,742校あるそうです。計138,925 校です。2,000/138,925 = 1.4%となります。

Tim Cookが述べた “some places” というのはおおよそ1.4%レベルを指しているのだろうと推測されます。1.4%というのはStatCounterによると、アメリカ市場全体におけるLinuxのウェブ使用率に相当します。

2013年10月22日のアップルイベントを見て

2013年10月22日のアップルイベントで新しいMacbookやiPadが発表されました。新しいMac OS XのMavericksやiWork, iLifeも発表されました。

今日は余りブログを書く時間が無いので、特に気になったことを簡単にコメントします。

Mavericksが無料になった

これは結構大きい話です。今までもMacOS Xの価格は非常に安く、Microsoft Windowsよりもずっと手頃でした。例えばMountain LionはUS$19.99でした。初代MacOS X 10.0のCheetahはUS$129で、これも当時のWindowsと比較して廉価でしたが、手頃ではありませんでした。MacOS X 10.4 TigerはUS$129.95。この価格設定はMacOS X 10.5 Leopardまで続き、MacOS X 10.6 Snow Leopardで一気にUS$29になりました。MacOS X LionではいったんUS$69に上がりますが、MacOS X Mountain Lionでは再び下がってUS$19.99になります。

それがMavericksではいよいよ無料になりました。

どうしてそうしたかは簡単です。もともとAppleはハードウェアによる売り上げの方がOSによる売り上げよりずっと多いので、OSを無料にしても売り上げ上は大きな痛手はありません。それよりも、なるべく多くの人がOSをアップグレードしてくれることの方がビジネス上重要だとAppleは判断したのでしょう。

短期的な収益を犠牲にしてでも多くの人にOSをアップグレードして欲しい理由は、iPhoneで非常にはっきり出ています。

  1. ユーザは最新の機能を利用することができ、満足度が上がる。
  2. 新しいOSには開発者にとって便利な機能(API)がたくさん用意されており、より簡単により高度なアプリケーションが開発できる。
  3. 古いOSを使用する人が減れば、開発者は古いOSをサポートする必要が無く、負担が大きく減る。その上、積極的に新しいOSの機能が活用できる。

ただし、上記のメリットが大きな意味を持つためには条件があります。それはOSが進化し続けることです。OSが進化するからこそ開発者は新しいOSの機能を使いたいと考えます。逆に新しい機能が無ければ、開発者は古いOSのサポートの方を優先し、新しいOSの機能を使いません。

まとめると、短期的な収益を犠牲にしてでもOSを無料にする理由は、今後も積極的にMacOS Xに新しい機能をつけていくからです。逆にもしiPadを優先し、MacOS Xを収束させていこうと考えているのであれば、OSを無料にすることは戦略的には矛盾します。むしろMacOS Xユーザから最大限に利益を絞りだそうとするはずです(milking)。

なおGoogleの場合はビジネスモデルが違うので、GoogleがOSを無料化する理由は全く違います。GoogleがOSを無料にすることと、GoogleがOSのイノベーションにコミットするのは全く独立の話です。Googleの場合は、OSを有償にする選択肢がありません。Chrome OSは無料にしないと誰も使ってくれないのです。

iWork, iLifeが無料になった

基本的にはiPadを単にエンターテインメントのツールとしてではなく、クリエイティビティーや生産性を高めるツールとして多くの人に利用してもらいたいのが狙いだと思います。

ただこれは同時にGoogle Docsにとって、ちょっとやっかいな話です。

Google Docsの戦略は基本的にはこうです。

  1. パソコンのユーザはMicrosoft Officeを使っていることが非常に多い。
  2. Microsoft Officeを使う代わりにウェブで同じ作業をしてくれれば、そこにGoogleの広告を掲載することが可能になる。これがGoogle Docs。
  3. Google広告を掲載することにより、Google Docsは無料にできる。
  4. 非常に機能が多いMicrosoft Officeに完全に対応するのは無理なので、Google DocsはMicrosoft Officeの簡略版にとどめる。つまり機能は落ちるけど、無料だからいいやというローエンド製品。

GoogleはAndroidにしてもGoogle Docsにしても、Google Driveにしても、あるいは古くはGoogle Readerでもそうでしたが、普通だと有料なものを無料で提供することによって利用者を増やすと戦略をとります。

一般顧客に有料なものを売るビジネスはGoogleは一回も成功させたことがありません。完全なローエンド戦略です。

そして今回のiWork, iLifeが無料になったというのがなぜ衝撃かというと、Googleよりも安価なコンペティターが出現したからです。しかも品質的にも高級ブランドイメージ的にもGoogleを圧倒しています。

iWork, iLifeにはうっとうしい広告もありません。

Googleとしては、iWorkやiLifeと対抗するのは困難です。でもローエンドで、そしてモバイルで競合するので、放っておけません。

どうするのか、ちょっと読めません。

Appleはすべてが本気だ

企業の戦略を練るとき、しばしばプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントというのをやって、重点製品と非重点製品を分けます。Appleで言えば、iOSが重点製品(花形製品)でMacが非重点製品(金のなる気)ではないかという結論になります。そしてCloudは問題児となります。

しかしAppleはこんな分析を全くしていなさそうです。すべての製品に全力を注いでいるように感じられます。そのおかげでちょっと驚異的な相乗効果が生まれている。そんな様子です。

IE10にアップグレードしているユーザが多くてありがたい話

StatCounter browser version partially combined JP quarterly 201001 201304

IE9が浸透するのも決して遅くはなく、2年間のスパンでIE8のユーザが切り替わっていきました。それに対してIE10はより勢いがありそうだというグラフです。日本に限っていえば、1年間で切り替わりそうです。

ありがたいことです。

IE8のユーザが依然として多いのはWindows XPではIE8までしか動かないのが主因ですが、自分のウェブサイトの分析を見ると、OSがWindows 7でもIE8を未だに使っている人が多いようです。

これも自分のウェブサイトの分析結果ですが、Windows XPでIE8を使っている人は大学関係者にも多いようです。これはおそらくXPしか動かないNetbookなどを使っているためでしょう。一方でWindows 7でIE8を使っている人は圧倒的に企業です。

ウェブ開発者としてはなるべく多くの人に > IE10に切り替わって欲しいです。IE10は本当に良いブラウザです。

本当はIE8のサポートをそろそろやめたいと思っているのですが、微妙なところです。