在宅勤務(テレワーク)について:経験者からのアドバイス

昨日のブログにテレワークの利点について、エコノミスト誌の記事を引用して紹介しました。

今日は実際にテレワークを長年実施している人物からのアドバイスを紹介します。WebWorkerDailyという、インターネットで仕事をしている人の情報交換ウェブサイトからの、“14 Things Corporations Can Learn from Seasoned Web Workers”(「長年ウェブで仕事をしている人から企業への、14のアドバイス」)という記事です。

以下には14ではなく、ポイントになる5つだけ抽出しました。

  1. 物理的に会社に来ているということと、仕事をしていることは関係ありません:会社に来ていたとしても仕事をしているとは限りません。逆に会社にいないからと言って、仕事をしていないという訳ではありません。様々なプロジェクト管理ツール時間管理ツールを使えば、管理職はテレワークしている社員の状況を簡単に知ることができます。(僕は個人的にはBasecampを使っています。紹介記事
  2. 一度も顔を合わせなくても、顧客と強い関係を持つことはできます:WebWorkerDailyに投稿している人の中には、一度も顧客に直接会わなくても、何年も商売をしている人がいます。ビデオ会議や電話、電子メールだけでコミュニケーションをすることはもはや「親しみが無い」というものではなくなっています。
  3. 社員はそれを望んでいます:職場での考え方は「仕事をするために生きている」というものから「生きるために仕事をしている」というものに変化しています。テレワークをし、出張を減らし、私生活のレベルをあげること。これは多くの社員の願いです。
  4. 高額なテレプレゼンス機器は不必要:無料や安価なテレカンファレンスのシステムは既にたくさんあります(FreeTeleconference.com, Skype, WebExなど。ぼくはMacのiChatを使いました)。これだけで十分に高い効果が得られます。高額なテレプレゼンスシステムは必要ありません。特にチャットやTwitter(「いまプレゼン作っている」とか「これから昼ご飯」などの小言を共有する超話題のシステム)を併せて使えば、その場にいる雰囲気があります。
  5. 電子的に記録が残る:テレワークに使われるツールは、大部分が記録機能をもっています。ミーティングから掲示板システムに切り替えることによって、組織内での知識の共有が簡単に掃かれます。

在宅勤務について。エコノミスト誌の記事

エコノミスト誌に在宅勤務(テレワーク)の利点と問題点について書いた英文記事がありましたので、要点を紹介します。

  • アメリカの全会社員の1/4は、昨年のうち少なくとも1週間を在宅勤務しました。そして過半数の企業で何らかの形の在宅勤務が許容されています。ヨーロッパはこれよりさらに進んでいます。
  • アメリカの3,300万人は在宅勤務可能な職に就いています。この人たちが在宅勤務をすれば、石油の輸入は1/4減らせ、二酸化炭素の排出は年間6,700万トン減らせます。通勤時間で言えば、25日間の有給休暇相当を在宅勤務によって得ることができます。
  • オフィススペースなどは社員一人当たり年間$10,000に上ると見積もられますが、在宅勤務によりこれを半分に減らせます。
  • 在宅勤務を許容することにより、より能力が高い社員をより安い給料で雇うことができます。
  • American ExpressやBritish Telecomなどの経験によると、オフィスで働く社員よりも在宅勤務の社員の方が30-40%ほど多くの仕事ができたそうです。
  • 孤独感を感じること、および仕事・家庭生活のバランスが崩れることが在宅勤務のマイナス面としてクローズアップされています。
  • 電子メール、留守番電話、電話会議とチャットが多く利用されていますが、これではぎりぎりなんとか間に合っているにすぎません。「存在感」を電子的に実現する必要があります。
  • 幸いに、ビデオ会議システムなどが安価に使えるようになってきているので、これも広く使える状態になってきています。(ここのあたりで、なんだかうさんくさいスポンサー記事に聞こえてきますが)

さて僕の感想ですが、アメリカでこれだけ利点があるんだったら、東京はなおさらだよねって思いました。根拠はざっとこんな感じです。

  • オフィススペースは東京の方が高い
  • 東京でつとめている社員は1時間を超える通勤時間で疲れきってしまうので、在宅勤務に変更することによる生産性のプラスは大きいはず(2時間半の通勤時間は、就業時間(8時間)のなんと28%です!!)
  • 東京は他の都道府県よりも社員の給料が総じて高い

日本では朝日新聞にこんな記事が載っていますが、とても面白いのが人事院のテレワーク研究会の報告書の要点。「上司が部下と直接顔を合わせないことに、幹部職員らが抵抗感を抱いていることが障害となっていることも想定される」、「幹部の意識改革が必要」。

それは幹部の意識の問題なのか、幹部が新しい通信技術の活用法を理解できていないのか。僕は断然後者だと思いますね。平成19年度年次経済財政報告「−生産性上昇に向けた挑戦−」にもありますが、日本は経営幹部のITレベルが低すぎる。

日本の企業幹部のITリテラシーのなさが、ここでも日本の未来の足かせになっている、と僕は感じました。

日本語になった4Qアンケートシステム 11.7%の回答率

4Qアンケートシステムはウェブサイトに訪問してくれるお客様に対して、簡単なアンケートを実施するもので、ユーザの目的達成度や満足度を知る有用なツールです。これについては既に何回かこのブログで取り上げています。(1, 2, 3, 4, 5)

このアンケートシステムは当初は英語版しかなかったのですが、最近日本語版が用意されました。バイオの買物.comでは7/22からこの日本語版に切り替えましたので、簡単に回答率について報告したいと思います。

2008/7/22のブログでも紹介しましたように、英語版ではおおよそ3.1%の回答率でした。それが日本語版ですと、

7/22 – 7/28の期間で

23回答 x (100%/20%) / 980 ユニークユーザ = 11.7%

* 100% / 20% というのは、訪問者の20%にしかアンケートが表示されないため

となりました。

英語版に比べて、日本語版にした結果、回答率は約4倍に上昇。そして得られた11.7%という回答率というのは、景品無しのアンケートとしては実に驚異的な数字だと思います。以前にメーカーで働いていたときに行っていたメールで参加を促すキャンペーンでは、景品を付けてもこんな数字にはなりませんでした。

ということで、この4Qアンケートシステムを他人に勧める上でもう迷いはありません。

皆さん、特にメーカーのウェブサイトを運営している方は、ぜひこのアンケートシステムを導入して、お客様の生の声をご確認ください。このシステムは無償ですし、いまのところお客様から「こんなの邪魔だ」というコメントは一切いただいていませんので、躊躇する理由は無いと思います。

またわからない点がありましたら、私が可能な限りお答えしますので、ぜひご連絡をください。

バイオ関連のすべてのウェブサイトが、より良いものになっていくことを切に願っています。

あるベンチャーの7つの決定的失敗

Wall Streetの元投資家で、複数のベンチャー企業の取締役になっている Roger Ehrenbergが、Monitor110という投資情報を集積する技術を開発していたベンチャー企業の失敗について語っているブログがありましたので、一部紹介します。(翻訳調で書きますが、実際には一部分のみを書き出しています)

Rogerは7つの決定的失敗 (Seven Deadly Sins) があったと解説しています。

  1. 最後の決断を下す、一人のリーダーが欠けていたこと(リーダー2人体勢の問題)
  2. 技術を担当する組織と、製品を担当する組織の区別が曖昧だったこと
  3. PR を早くやりすぎた、多くやりすぎたこと
  4. お金がありすぎたこと
  5. 顧客との距離が十分に近くなかった
  6. 市場の現実に対応するのに遅すぎた
  7. 会社と取締役会とで、戦略の不一致があったこと

リーダー2人体制について

Jeffという技術出身の人が技術と製品を担当し、RogerはWall Street投資家の経験を生かして資金集めをするという体制でした。でも結局、本当に難しい決断はこの体制では下せませんでした。JeffもRogerも組織の方向性を変える権限が無かったのです(失敗#1)。

製品を出すこと vs. 研究プロジェクト

より良い製品を開発するまで待つか、それとも不十分な製品をとりあえず出して、フィードバックを集めるか。そのとき、前者を選んでしまいました。後から考えると後者を選ぶべきでした。前者を選んだことによって、顧客との距離が開いてしまいました(失敗#5)。また技術担当と製品担当の区別が曖昧だったために、技術先行の研究プロジェクトが長く続いてしまったのです(失敗#2)。何となくは気付いていたのですが、起業家としての経験不足で遠慮してしまってか、アクションを起こせなかったのです。

しかもこのときにFinancial Times紙 (世界的に権威のある英国の経済新聞)の一面に載ってしまったのです(失敗#3)。そのため、なおさら中途半端な製品を出すことが出来なくなってしまったのです。またお金も集めやすくなったので、顧客との距離を置きやすくなったのです。

お金がありすぎた

お金がありすぎたために、非効率な組織構造と的確でない決断を続けることができました(失敗#4)。ケチケチとした利益志向になるようなプレッシャーが無かったのです。お金が潤沢にあったので、製品を顧客に見せる必要がありませんでした。本質的な技術上の問題があっても、それを直視するのが遅れました。お金がありすぎたことが根本原因で、他の6つの決定的失敗を繰り返す羽目になったと言っても過言ではないでしょう。これが教訓で、いまではこの問題に非常に神経質です。ある会社が、真に必要な金額以上に資金を集めようとしていたら、強く反対します。

投資家の期待 vs. 市場の現実

失敗#6, #7に関連して。

お金を集めたときは、ウェブから自動的に情報を取り出し、それぞれの情報の信憑性と有用性を解析するシステムというビジョンを売り込んでいました。でも実際にやってみると、これは技術的に大変なことでした。信憑性の低い情報が混ざり、カテゴリー分けがおかしくなり、信憑性解析アルゴリズムがうまく当てられなかったりと散々でした。

そこで顧客に近い社員は全く違うアプローチを提案しました。情報のリアルタイム自動解析技術を売る会社としてではなくて、解析済みで品質管理も行われた情報を売るようにしたいと。

しかし、失敗#1と失敗#2の影響もあって、これは社内の分裂を招きました。何ヶ月間も社内で議論が行われ膨大なコストがかかりました。最終的には方向性を変えましたが、会社の士気は大幅に下がり、経費インパクトも大変なものでした。

4Qアンケートシステムは良いよ(アップデード)

バイオの買物.com4Qというところのアンケートシステムを使用していることは、以前にブログ(1, 2, 3)でも紹介しています。

いままでは始めて間もない頃の結果でしたが、今回は2ヶ月ほど運用した後の結果について紹介したいと思います。

まず結論ですが、とても良さそうというのが感想です。

日本語化

いままでは日本語に対応していなくて英語だけだったのですが、先日、日本語に対応しました。
インタフェースは英語のままですが、日本語のアンケートを作成することが可能になりました。
本日 2008/7/22 からバイオの買物.comでも日本語のアンケートの運用を開始しました。

いままでの結果

回答数

回答率やアンケートが表示された回数についてはレポートの中には出てきませんが、a) レポートが20%の訪問者に表示されるようにしていること、b) Google Analyticsの解析結果と合わせて考えると、7月で

16回答 x (100%/20%) / 2,550 (7月ユニークユーザ数) = 3.1%

の回答率になっていると思います。

英語であることを含めて考えると、景品無しのアンケートとしては驚異的に高い回答率と言えると思います。バイオの研究者に対する販促資料などでは、日本語化するだけで10倍ぐらいは回答率が上がるので、この4Qのアンケートも日本語化することによって数倍は回答率が上がると予想されます。

満足度

満足度は以下のような形でレポートされます。

overall satisfaction.png

バイオの買物.comについて言えば、真ん中の「普通」という評価しかもらっていないので、早く80ポイントの「とても良い」ぐらいになるようにしたいものです。でも「悪い」という評価じゃなくてほっとしています。

7月で少し良くなっていますが、これは製品を比較するという明確な目的意識を持って訪問してくれていることが良いのではないかと思っています。Googleで表示されるときに【比較】という文字がしっかり表示されるようにしたこと、またGoogleから来た場合に限り、画面に大きく「このサイトは製品比較サイトです」と宣言するようにしたことが良かったかもしれません。

目的達成度

ウェブサイトに来た訪問者は必ず何らかの目的があるわけですが、それが達成できたかどうかを確認するための質問です。これは以下のような形でレポートされます。

task completion.png

4Qで非常に重視している指標です。どんなにきれいでナビゲーションがしやすいウェブサイトであっても、訪問者の目的が達成できなければ意味がない。だからこそ、目的達成度を中心にアンケートを作ろうと4Qは考えているようです。

その中で、バイオの買物.comはまだまだ訪問者の期待の応えることができていないことがわかります。60%の訪問者しか目的を果たせていないわけですから。今後は内容をますます充実させること、特に要望が高い製品の情報を充実させることをしていきたいと思っています。

これが80%ぐらいになれば、リピートの訪問者も増えて、とても幸せな感じになってくるでしょう。そこが目標です。

主目的の分布

これはかなり細かいレポートになっています。バイオの買物.comを訪問している顧客の目的はいったい何なのか、これを理解するためのレポートです。

purpose.png

これでわかるのは、6月(Jun)と7月(Jul)を比較して、’Learn about products’と’Compare Products’を目的としているユーザ数が逆転していることです。つまり、6月は製品について学習したい顧客が多く、7月は製品を比較したい顧客が多かったようです。

現在のバイオの買物.comは製品について学習したい人のための情報は不十分で、製品を比較するための作りを重視していました。7月の方がそのような顧客をしっかりと呼び込むことができたようです。

また7月はサイト内リンクとサイト外リンクをともに充実させ、「比較」をより前面に出しました。例えば、6月までは、「このサイトで製品比較ができる」ことすら気付かずに帰ってしまう可能性の高い構成になっていました。サイト内リンクの充実でそれを防ごうとしました。

主目的の分布については、さらに「目的を達成できた人のそもそもの目的は何だったか?」「目的を達成できなかった人のそもそもの目的は何だったか?」「目的ごとの満足度は?」というレポートも出してくれています。

score by purpose.png

まとめ

とても簡単な質問のアンケートですが、どんな目的の人をGoogleから呼び込んで、どのような心の準備をしてもらうか、これがしっかり意識できるようになりました。またどの分野を強化していけば満足度を高められるかがとてもはっきりわかるので、次の方向性を迷わず決定できます。

日本語かによってN数も大幅に増えること、さらに記述式の回答も増えることが期待されるので、今後がとても楽しみです。

4Qはまだβ版なので、使いにくいところはいくつもあります。わからないことがあったら、僕にでも気軽に質問してください。

バイオメーカーのための一番効果的なSEO対策

SEOというのはSearch Engine Optimizationの略で、Googleなどで検索したときに、自社ウェブサイトが一番上に表示させるための方法論と対策です。

例えばSCGFに対する抗体を探したい研究者が、Googleで「SCGF抗体」と入力したとします。そうするとこんな検索結果になります。Abcam社の抗体が一番上に表示されます。

そうするとこの研究者はまず間違いなくAbcamの抗体を調べに行きます。GoogleのおかげでAbcam社のSCGF抗体が売れる訳です。

こうやって自社のウェブサイトがGoogleで上位に表示されると、売り上げが伸びそうだというのはよくわかると思います。

さて、どうやれば自社のウェブサイトを上位に表示させることができるのでしょうか?

SEOコンサルタントという業種がいて、彼らは何百万円をもらいながら、キーワードを解析したりしてGoogleでのランキングを向上させるように努力します。しかし、彼らが主に扱っている業界とバイオの業界とは大きく異なります。当然SEO対策も大きく異なります。

そこで、僕がウェブサイトを運用しながら感じている、バイオのためのSEO対策のポイントを紹介したいと思います。

少しだけでも日本語化する

まず、日本人がよく使うキーワードだけでも日本語化したウェブサイトを用意する必要があります。上述のAbcam社のウェブサイトは実際にはほとんど英語なんですが(つまり全く和訳していない)、抗体というキーワードだけは翻訳されています。だから上位に出るのです。

またGoogleは日本語のウェブサイトを優先的に上位に表示します。例えば”real time PCR”を普通に日本からGoogle検索すると、このような結果になります。一方で、US英語圏の人が”real time PCR”で検索すると結果は全然違います。同じ”real time PCR”という言葉ですが、USで上位に表示されていたものが日本語では全然上位に出ません。

バイオの業界だとほとんどが外資ですから、どこのメーカーも英語のウェブサイトならそれなりのものを持っています。それを完全に日本語に訳すことはできないとしても、少しでも日本語化しておくだけで、Googleでの表示位置は全然変わってきます。その日本語かの程度はAbcam社の例を見てもわかるように、ほんの少しだけでいいのです。

検索しなくてもアクセスできるようにする

さて、先のSCGF抗体の話ですが、これはコスモバイオ社でも取り扱っています。日本語のウェブページもしっかり用意されています。

でもGoogleの検索結果にはどこを探しても見当たりません。

その理由は、コスモバイオ社のウェブサイトでは、検索以外の方法でSCGF抗体にありつくことが出来ないからです。Googleは世界中のウェブサイトを巡回していますが、検索キーワードを自動的に入力するという芸当はさすがにできません。ですから、コスモバイオのSCGFについてはGoogleは全く知らないのです。当然、検索しても表示されません。

特に抗体などを扱っているバイオメーカーは、得てしてこのようなウェブサイトを作ってしまっています。ユーザの利便性を考えて検索機能を用意するのはもちろん必要ですが、「Googleの利便性」も考えてあげた仕組みも用意する必要があります。それが検索しなくてもアクセスできるようなサイトマップです。

ユーザ認証はなるべく減らす

例えばBio-Radはユーザ識別機能を盛んに(しかもおかしな方法で)利用していて、Googleに無視されてしまっています。例えばBio-RadのqPCR用の製品に”iQ Supermix”というのがあるのですが、これで検索するとこんな結果になります。つまりうちのバイオの買物.comが一番上で、Bio-RadはQ&Aサイトにしか行きません。Bio-RadのQ&Aサイトから該当製品のカタログサイトにいくことはできませんので、カタログ番号の確認すらできず、とても都合が悪い状況です。製品を買いたいお客様を逃してしまいます。

これがなぜ起こるかというと、ユーザ識別機能のせいです。http://discover.bio-rad.co.jp/をクリックするとBioRadのホームページにいきますが、そのときにURLはすごく変なものになってしまいます。僕はいまやったら、http://www.bio-rad.co.jp/B2B/BioRad/br_community_home.jsp?BV_SessionID=@@@@2044248699.1215668559@@@@&BV_EngineID=cccdadeeiilkdkhcfngcfkmdhkkdfll.0&loggedIn=false&country=JP&lang=Japanese&divName=Life+Science+Research になりました。ここのSessionIDというところにユーザ識別コードが入っているのです。でもGoogleが巡回したときはこのユーザ識別機能がうまく対応しないのです。そこでGoogleは遮られてしまい、結果としてBio-RadのページはほとんどGoogle検索で引っかかってきません。

Q&AサイトがGoogleで引っかかるのは、Q&Aサイトは日本独自のサイトで、個人識別機能がないためです。

海外メーカーのサイトは最近このような個人識別機能などを盛んに利用するようになっています。ネットショップ機能を実装し始めているからです。しかもたぶんとてもプログラミングが下手な業者に頼んだのでしょう。AmazonなんかはGoogleに完璧に引っかかるようにしつつネットショップを実現しているのに、バイオのメーカーはGoogleを遮断してしまっているところが多いです。ロシュもその一つです。Googleの検索からはRocheのウェブサイトのどこかにはいけますが、Fugeneの価格になかなかありつけません。

最後に

大手じゃないバイオメーカーですと、日本支店で独自にウェブサイトを立ち上げたりするのは困難で、英語のウェブサイトに頼ることになってしまいがちです。しかし、それでは非常に多くの顧客を逃してしまいます。

上記の手法は、ほとんど翻訳作業をしなくてもGoogleからの顧客をグンと増やす方法です。人間がやる作業ではなく、プログラムを使った工夫で実現できるものです。

Castle104社ではSEOに課題を抱えるバイオのメーカーのために、それぞれの状況に合わせてカスタマイズされたプログラムを作ることもできます。お悩みでしたら、ぜひ一度、気軽にお問い合わせください。

BTJの「人財」サイトはまじめにやっているの?

BTJの「人財」サイトについて、Webmasterの宮田 満さんから。

情報が古いのは僕らのせいじゃないよ。掲載している人のせいだよ。彼らはけしからん。という趣旨の案内がありました。

BTJは少なくとも企業からの案内に関しては結構な掲載料をもらっているはずです。大学などからはもしからしたら無料かもしれないけど、それでも広告収入につながっているはずですから、「うちは知らんよ」という姿勢はあまりにも無責任です。

アップデート:
研究者個人が募集する場合を除いては有料らしいです。

しかも誠意やエチケットの問題と片付け、「この世界は狭いので、こうした情報は速やかに共有されてしまいます。」とBTJ Webmasterの宮田さんが脅しまで入れている始末。でも、実際にはほとんどの掲載者は単に忘れているか、もしくは面倒なだけではないでしょうか?それなのにこんなに悪者扱いするのですか?

古い情報が残ってしまわないで、常に鮮度の高い情報だけが残るようにするのは、これはメディア側の責任です。少なくとも古い情報はそれとわかるように、メディア側で工夫しないといけません。

労力をかけなくてもこれを実現する方法はいくらでもあるはずです。例えばこまめに掲載者に自動メールを送って、その返信が無ければ自動的に人材募集記事を消去するとか。

> 皆さんの誠実な対応を期待します。

この言葉はBiotechnology Japanにそのままお返ししたいと思います。

製品のカテゴリー分け

このブログは、自分で悩んでいることをつらつらと書いたものになるので、まとまりのないものになります。読んでしまってから後悔しないように、あらかじめ断っておきます。

悩んでいるのは製品のカテゴリー分けです。特に製品というよりも、各メーカーが提供している学術資料であるとかをまとめて整理するためのカテゴリー分けです。バイオの買物.comの比較表のところで使うものです。

何を悩んでいるかを解説できるほどに頭が整理できている訳ではないので、まずはバイオの製品カテゴリー分けがうまくいっていない例を紹介しています。

うまくいっていないカテゴリー分け:BioCompare

BioCompareは多数のメーカーの猛烈な数の製品を階層的にカテゴリー分けしています。しかもカテゴリーはかなり細かく分断しています。例えばPCR用の耐熱性DNA polymeraseのところは15のサブカテゴリーに分かれています。

BioCompareトップページ

しかもTaq DNA PolymeraseだけではNativeとRecombinant、さらにdNTPがキットに含まれているものという3つのサブカテゴリーにわかります。いまの例なんて特にそうなんですが、カテゴリーの重なりや独立性にはこだわっていないようで、目的の製品がどこにあるのか、大いに悩んでしまうような分類になっています。

BioCompare Thermostable Polymerases

ユーザの立場から見たらすごくわかりにくいカテゴリー分けですが、実際にデータを入力する立場から考えるとその気持ちは非常に良くわかります。単純な話、階層的にかつ独立性のあるカテゴリー分けというのはほとんど無理な話で、必ず訳が分からなくなるのです。そしていったん訳が分からなくなったら、もう後はずるずると易きに流れて、「えい、どこかにとりあえずしまっておけ」という感じのカテゴリー分けになるのです。

どうしてカテゴリー分けが狂うのか

階層的なカテゴリー分けをしているのは、Biocompareもそうですが、ほとんどのメーカーのウェブサイトがそうです。コスモバイオのようにカテゴリー分けをそもそもあきらめて、検索だけ提供すればいいやと開き直っているメーカーも一部にはありますが、たいていのメーカーはとりあえず製品を階層的にカテゴリー分けします。

インビトロジェンなんかは合併に次ぐ合併をしたせいもあり、全製品を統合してカテゴリー分けするのではなく、とりあえず合併した会社をそれぞれ別々のカテゴリーに分けています。

invitrogen product central

僕がいたロシュも、リアルタイムPCR試薬・機器とその他の試薬が別々のグループに分かれていたので、かなり重なりがあるにもかかわらず、最も上流で枝分かれをしています。

このようにユーザの立場ではなくメーカーの都合でカテゴリー分けをすることによって、カテゴリー分けが狂ってしまうというケースが一つにあります。

もう一つには階層的なカテゴリー分けの限界があります。階層的なカテゴリー分けは、基本的には一つの属性を基準にして、ユーザに複数のものから一つの道を選択させるものです。ですから複数の属性があり、複数の階層にまたがる製品はどっちのカテゴリーに入れることもできず、悩んでしまうのです。例えばBioCompareの耐熱性DNA polymeraseの例では、Pfu DNA PolymeraseとかTgo DNA Polymeraseの他にHigh Fidelity Polymerasesというカテゴリーがありますが、PfuもTgoもHigh Fidelity Polymeraseの一種なので、カテゴリーがおかしくなります。さらにHot StartのPfu Polymeraseも発売されていますが、これはいったいどっちに入ってくるのか、さっぱりわかりません。

それでもBioCompareが階層的なカテゴリー分けをするのは、メーカーの情報を割とそのまま載せているからだと思います。メーカーは印刷物のカタログを作る関係で、必ず階層的なカテゴリー分けをします。その階層化されたカタログをメーカーがBioCompareに渡して、「これを掲載して」と言っている訳ですから、BioCompareも階層的にカテゴリーに突っ込むのが作業的には楽なのでしょう。ユーザにとってはわかりにくくても。

バイオの買物.comの試み

バイオの買物.comでは、BioCompareのようにカテゴリー分けの問題をテキトウに済ますのではなく、WebとかDesktopサーチで使われているようなコンセプトを応用していこうと思っています。BioCompareの製品比較表のカテゴリー分けは意識的に細かくせず、大雑把なところでとどめています。そこからさらに絞り込むためには、カテゴリー分けに頼るのではなく、メタデータ(製品スペック)による絞り込み検索を実行するようにしています。

castle104 query form

 

そしてこれに加えて、そろそろダグというメタデータもつけようと思います。

製品スペック的なメタデータは、ある程度限定された範囲で説明できる機能について、特に数字を比較するときなどに役立ちます。例えばPCRで何キロベース伸びるとか、プラスミドDNAがどれだけ回収できるのかです。でも一方で、非常に広がりがあるものについては弱いです。例えばトランスフェクションが成功した細胞はどれか。この場合は何千という細胞株をスペックに用意するのは大変ですし、そもそも有無だけで抽出する訳ですから、数字の比較はしません。学術資料がどの分野の実験について書かれているか、というのも同様です。ノーザンとかサザン、in situハイブリダイゼーションというのをそれぞれ別々のスペックにしていたらとても大変です。

ということで、取り扱いメタデータによって、スペック的に取り扱うかタグ的に取り扱うかを選べるようにしていこうと思います。

その一方で、いろいろな手法が混在してしまってユーザが混乱してしまわないように、いろいろ工夫しないといけません。これもチャレンジですね。

Railsのacts-as-taggable-onがなかなか良さそうなので、これを使っています。

抗体検索サイト リストと評価

このポストは2008年7月に書いたもので古くなってしまっていますので、随時アップデートするページとしてバイオの買物.comからみた製品検索サイト リストと評価のページを作りました。

バイオの買物.comの「まとめて抗体検索」が大幅にリニューアルしました。最新のウェブ技術とトップブランドの抗体で、「瞬間的」に抗体を見つけてください。
リンクはこちら

この記事を含め、ライフサイエンス研究用製品メーカーのウェブサイトのあるべき姿について書いた記事を特集ページにまとめました。あわせてご覧ください。

以下は2008年7月に書いたもので、内容が古くなってしまっています。ご注意ください。

日本では抗体を検索するときにはコスモバイオ、フナコシなどのウェブサイトを利用することが多いかと思います。でもこの2社は、日本に支店を持っていないような小さい抗体メーカーばかりを扱っているので、BD Pharmingenのような大手は引っかかりません。

コスモバイオ、フナコシ、試薬.com、バイオ百科など、みんな同じです。どれも小さい抗体メーカーのみ扱っています。

大手メーカーも小さいメーカーも全部まとめて検索してくれるサイトが欲しくありませんか?

僕が運営しているバイオの買物.com まとめて抗体検索はこれを目指したものになっています。でもその話をする前に、アメリカの抗体検索サイトと日本の抗体検索サイトについて紹介したいと思います。

アメリカの抗体検索サイト

アメリカではメーカー直販が一般的ですので、コスモバイオ,フナコシ、試薬.com (和光純薬系列)のような輸入販売代理店は存在しません。その分、小さい抗体メーカーは自社製品をPRするのに苦労します。そういうこともあってか、良質の抗体検索サイトがあります。そしてBD Pharmingenのような大手もこれらの抗体検索サイトに登録しています。

抗体を製造しているメーカーは非常に多く、The Antibody Resource Pageというウェブサイトに300社以上がリストアップ(リスト1, リスト2)されています。

メーカー横断的な抗体検索サービスを提供しているウェブサイトとしては

  • Biocompare Antibody Search: ここは抗体だけでなく、バイオ研究関連の非常に多くの製品を掲載していますが、中でも抗体検索が役に立ちます。大手メーカーの製品もばっちり検索されます。使い方について、ライフサイエンス統合データベースセンターの統合TVに紹介されています。
  • ExactAntigen: ここは登録だけでなく、ロボットでメーカーウェブサイトを自動的に巡回しています。メーカーだけでなく非営利団体や大学研究室の抗体までも含めて22,000のモノクローナル抗体を掲載しています。大手メーカーもばっちりです。また抗体のレビューも用意されています。詳しくはAbout ExactAntigenから。
  • Antibodies Online: ここは小さな抗体メーカーをたくさん集めて、オンラインでの販売も行っているウェブサイトです。大手のメーカーは登録されていません。出荷と請求はやらないので、ヤフオクのようなサイトと言ったところでしょうか。

日本の抗体検索サイト

日本では基本的にメーカー横断的なウェブサイトはバイオ百科、そして僕が提供しているバイオの買物.comだけだと思います。バイオの買物.comはBiocompareのシステムを利用しているので、大手を含めてほとんどの製品が登録されていますが、バイオ百科はコスモバイオ、フナコシ、DSファーマ、アブカムの販売している抗体のみを掲載しています。

ただし日本では比較的大きな輸入販売元が、世界中の小さい抗体メーカーの製品をまとめてくれているので、以下の輸入販売元のホームページからたくさんのメーカーの抗体を検索することができます。ただし大手メーカーの製品は登録されていません。

最後に感想

日本の抗体検索サイトは、現時点ではコスモバイオ、フナコシや和光などの輸入販売元がほぼ独占しているような状態です。でも、これらの輸入販売元は、ほぼ間違いなく米国価格の2-3倍の価格設定をしています。そして国内に支店があれば責任を持ったサポートや値引きなどもしてくれますが、輸入販売元だとそれもなかなかしてもらいにくいです。

ですからこのような輸入販売元が、日本市場であまり強い力を持つのは好ましくないと思います。

それに対してBiocompareやExactAntigenの日本版のような横断的抗体検索サイトがあれば、日本の研究者は輸入販売店が取り扱っている製品だけではなく、日本支店がある大手メーカーの抗体も効率よく見つけることができます。おかげでよりよいサポートやサービスを受け、より安価に抗体が購入できるようになるでしょう。

バイオの買物.comが目指しているのはこの方向です。

統合データベースプロジェクト講習会に参加しました

統合データベースプロジェクト講習会: AJACS本郷1に参加してきました。

このプロジェクトの目的は、自分が感じたなりにひとことで言うと、バイオ関連の膨大な情報を研究者が使いこなせるためのインフラ作りです。僕自身がバイオの買物.comを通して目指しているものも、研究試薬・機器関連の膨大の情報の整備です。ですから非常に興味がありますし、手法的にも類似した点があるのではないかと思っています。統合TVに取り上げていただいたこともあり、何らかの形で関わっていきたいと思っているプロジェクトです。

具体的な講演,講習内容はウェブサイトに掲載されていますので見てみてください。

実際のデータ解析プロジェクトや検索システムの構築の話も興味深かったのですが、僕自身が一番面白かったのは、全体に「使命感」と「いらだち」を強く感じたことです。

論文を出すことばかりを重視して、研究成果がどのように活用されていくかを十分に考えない現状に対する憂い。これに対して、自分たちでなんとか情報を整備して、すべての人の共有財産となるように仕掛けていきたいという使命感。でもまだまだこの考えが十分に認知されていないため、布教活動を含めて、やることが山積しているといういらだち。

使命感といらだちが混じった状態は、まさに僕が一番好きな状態です。
自分が「生きている」ことを実感できるから。

とても勇気をもらいました。
ありがとうございました。