AppleのIntentionとiOS7のデザインについて考える

iOS 7のデザインについて、以前にもこのブログに書きました。デザイナーの多くがiOS 7のデザインを酷評しているにもかかわらず、ユーザの多くは高い評価をしているという乖離が私にとってはとても興味深いと感じています。

これを考える上で、AppleがWWDCで公開したIntentionと呼ばれているCMの言葉が非常に気になっています。

the first thing we ask is
what do we want people to feel?
 
delight
 
surprise
 
love
 
connection

Appleが製品を作るとき(Designするとき)、一番最初に考えるのが“what do we want people to feel?”だとしたら、iOS7のデザインではどういう感情を持って欲しかったのだろうか?

iOS7のデザインの議論をしている人の中で、この点を述べている人はほとんどいません。デザインとしての統一性、バランスについて議論している人は多いのですが、そのデザインが人にどういう感情を持たせるかについては議論がないのです。

使い勝手について議論している人はいます。ボタンを立体的にすることによって、「これはボタンだよ」というのを強調しているのがiOS 6でしたが、iOS 7ではそれが無くなってすべて平面的になっています。そのため、どこがボタンかがわかりにくくなったという議論です。これは使い勝手の議論としては確かにそうなのですが、やはり感情の議論がありません。

私が知る限り、感情の点を挙げているのはMatt Gemmell氏だけです。彼はブログの中でこう述べています

iOS 7 is much, much lighter – in the colour sense, and consequently also in visual weight. Breathable whitespace is everywhere, and is used to unify and homogenise previously disparate interface styles.
 
The overall impression is of brightness and openness.

Where there were previously gloomy cubbyholes and low ceilings, there are now floor-to-ceiling windows, skylights, and clean surfaces.

昔からAppleを見てきている人は、Appleが一貫してUIの使いやすさにこだわってきた会社だと知っています。MacOS 1 – 9までは、コンピュータグラフィックスの能力が十分ではなかったこともあり、UIは必然的に平面的でした。アイコンもボタンも非常にシンプルでした。その分、デザインの一貫性を徹底させて、わかりやすいUIを実現していました。ただその一方でひどく地味で、Windows 95が出てきた頃には古くさくなっていました。

Steve JobsがNeXTで作っていたUIは、コンピュータグラフィックスの進化に合わせて徐々に写実的になってきました。写真的なアイコンを使い、立体的なUIになってきました。そしてそれはMacOS Xにも引き継がれました。

iOS6までは、NeXT以来の流れでUIがデザインされていた感じです。

iOS7はNeXT UIとの決別です。NeXT以来の写実的なアイコンとの決別です。そして古いMacOS以来の使いやすさへのこだわりとの決別でもあります。もちろん使いやすさを捨てているわけではないし、それは別の方法で確保すると思いますが、使いやすさよりもまずは感情を優先させているのではないかと思います。

かなり大きな違いです。

ウェブデザインからサイドバーをなくしていこう

2013年1月に[iPad専用にデザインするということはどういうことか](https://naofumi.castle104.com/?p=1925)というブログを書き、その中でPC用のウェブデザインが実は無駄だらけだと述べました。そしてその無駄を省いていくことで、iPadに適したウェブサイトが自然にできてくると議論しました。

先日、[Squarespace](http://www.squarespace.com/)でテンプレートを開発しているEric Anderson氏が、やはり[サイドバー不要論](https://medium.com/design-ux/167ae2fae1fb)を展開していました。

解決策として;

1. 関連リンクはブログポストの後に付ければ良い。
2. 検索窓はヘッダーかフッターに付ければ良い。
3. アーカイブは専用ページに用意すれば良い。

このブログはまだサイドバーなしにしていませんが、Eric Anderson氏の述べていることは全くその通りだと思います。近々、サイドバーをなくしていきたいと思います。

安価を売りにしたAndroidタブレットは年末商戦にだけ強い:その2(2013年5月の米国タブレット使用統計)

[4月の書き込み](https://naofumi.castle104.com/?p=2089)で、Chitikaのデータを使って年末商戦でシェアを伸ばしたAndroidタブレットが、徐々に使われなくなっていることを紹介しました。

そのとき、以下のように考察しました。

> iPadは顧客満足度が高いため、口コミなどでどんどん使用する人が増えます。それに対して今回のデータを見る限り、Androidタブレットではこの自己増殖的なサイクルが回っていないようです。年末商戦など、強いプッシュがあるときだけ売れているようです。特にSamsung製品だけが好調なことから見られるように、強いマーケティングやセールスインセンティブがによるプッシュが無いと、Androidタブレットは売れなさそうです。

昨日[Chitikaの5月のデータ](http://chitika.com/insights/2013/may-tablet-update)が出てきて、同じ傾向が続いていることが示されています。

1. クリスマス商戦でAndroidのWebアクセスシェアが上昇し、iPadのが下がりました。
2. 2013年に入ってからはiPadがじりじりWebアクセスシェアを伸ばしAmazon Kindle FireとGoogle Nexusは落としています。
3. Samsung Galaxy Tabは2013年に入ってからも徐々にWebアクセスシェアを伸ばしています。

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iOS7デザインの評価でデザイナーが顧客から乖離している可能性について

iOS7でiOSのデザインが大幅に変更になり、多くのデザイナーから相当に批判的な意見が出ています。

例えば『iOS 7異説:「素人くさいアイコンをデザインしたのはだれ?」』という記事がZDNet Japanに掲載されるなど、デザイナーたちはかなり言いたい放題な印象です。

でも実際のユーザはiOS 7を絶賛しています。

数万人にインターネット上でアンケートを取ったところ、2対1でiOS7のアイコンに人気があったそうです。

なぜか?

もしかしたらデザイナーの考え方が、実際のユーザの心理から乖離してしまっているのか?

私のようにもともとデザインにあまり興味がなく、アップルを通して初めてデザインの重要性を感じた人間にとって、デザイナーがユーザの心理を理解できていないとしても驚きません。デザイナーの独りよがりとしか思えず、使う側としたら少しも便利じゃないものは世の中にたくさんある感覚はあります。アップルもまたデザイン優先で使い勝手が犠牲になった製品をいくつも作ってきました。

さて本当のところはどうなのか。気にしながらiOS7のトレンドを今後も見ていきたいなと思います。

技術革新がなくてもイノベーションが起こることについて

ソマリアの電子マネーの話がThe Globe and Mailのウェブサイトに紹介されていました。

“How mobile phones are making cash obsolete in Africa”

ソマリアで使われている仕組みは以下の通りです。

  1. 通信会社のTelesomに一定の金額を預けます。この金額の中から電子的な支払いが行われます。
  2. 利用者が製品を購入する際、a) 3桁の電話番号でサービスに接続、b) 4桁の暗証番号を入力、c) 店固有の番号(Zaad number)を入力、d) 支払金額を入力 という操作をします。道端の露店もZaad numberを店頭に表示しているそうです。
  3. すぐに利用者(製品を買う人)と店の人の携帯電話にテキストメッセージが送られ、支払金額が表示されます。これをもって取引終了。

音声通話(番号入力はトーン入力と思われる)とSMSなどのテキストメッセージサービスさえあればできる仕組みです。SMSなどのテキストメッセージは日本だとDoCoMoのショートメール(1997年)以来利用可能ですので、ソマリアの仕組みを実施するための技術基盤は10年以上前から整備されていたと言えます。

これを見て痛感させられるのは、NFCのような新しい技術がなくても電子マネーは十分に実現可能で、むしろローテクから入った方が素早く、末端まで普及する可能性が高いということです。

実はインターネットが普及し始めたころもやはり最初は普通の電話回線でした。1990年代後半のインターネットというのは、ADSLとか光ファイバーではなく、音声の電話線を使ってやるものでした。1998年に発売された初代のiMacを見ても電話回線用のモデムが標準装備(33.6 kbits/s)でしたし、iMacのコマーシャルで使われていたのはそのモデムでした。インターネットが特に米国で各家庭に普及するようになったのは、電話回線を通してでした(アメリカは近距離電話なら固定料金だった)。

そう考えると、新しいサービスを提供するのに新しいインフラに依存するよりも、既存のサービスで何とか動くようにするのが正しいのではないかと感じます。Suica、パスネットのようにサービスがある程度集中管理できるときはそうではなくても、各家庭、各店舗までインフラが必要になる場合は絶対にそうです。

NFCに依存した日本の電子マネーシステムでは各店舗がNFC読み取り機器を用意する必要があります。大きな店舗やフランチャイズでは電子マネーの導入は進んでいますが、そこから先はなかなか進みません。ですからNFCのようなものじゃなくて、もっとシンプルなものが必要なのだろうと思います。そうすればもっと普及するのに、もったいないなぁと思います。

次のAndroid Key Lime Pieがローエンドをターゲットするかもしれない話

4月3日の「Androidの方向転換予想:Andy Rubin氏の降格を受けて」と題したブログで、私はAndroidの今後の方向性が以下のポイントに集約されるだろうと予想しました。

  1. ネイティブアプリからHTML5にシフト
  2. Apple特許の利用を減らす
  3. ローエンドマシンでも動作するようにする

そしてこれはAndy Rubin氏の目指していたAndroid戦略(「Androidを最高のOSにする」)からの方向転換であり、「Googleの利用を可能な限り広める」というGoogle本来の戦略からの当然の帰結だとしました。

特に3については、Firefox OSをはじめとした各種の新しいOSに対抗するための予防的な意味があると述べました。

そして3番目の点について、まだまだ噂の段階ですが、ちょっと話が出てきたので紹介します。

VR-ZoneのPreetam Nath氏は以下のようにレポートしてます。

  1. Android 5.0 Key Lime Pieは10月に公開予定。
  2. Key Lime Pieは512MBのRAMでも動作する。Android 4.0以降は1G RAMを必要としていましたので、Key Lime PieはAndroid 2.3しか動作させることができなかったローエンドのデバイスでも動作することになります。(ちなみにiOSもMicrosoft Windows Phoneも512MB RAMで十分に動作します。