特定用途のパーソナルコンピュータ

このブログでも取り上げていますが、先日NPDが“U.S. commercial channels”の売り上げデータを発表しました。ネット上で話題になったのは、このデータで見る限りChromebookがよく売れているというデータでした。それに対して、私は「Chromebookが売れているという記事があるので、それを検証する」というポストの中でNPDのデータの問題点を取り上げ、以下のようにまとめました;

“U.S. commercial channels”でChromebookが売れるようになったといっても、全体としてChromebookが売れているわけではなさそうだし、どうして“U.S. commercial channels”だけが強いのかがまだわかりません。

Twitterで業界アナリストのBen Bajarin氏に尋ねてみると、以下のように教えてくれました。

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さらに有料購読しないと読めないのですが、Ben Bajarin氏は“Understanding the Market for Chromebooks”という記事も書いてくれ、解説してくれました。この記事のポイントをまとめます。

  1. Chromebookの大半は教育市場に向けて販売されています。
  2. 教育市場ではそれなりに多くのChromebookが導入されています。
  3. U.S.の教育市場ではウェブベースのプログラムが多く使用されています。
  4. 使い方としてはChromebookはオンライン教育ソフトウェア専用ポータルになっています。
  5. 「教科書」と同じような使い方になっています。
  6. Chromebookは“specific purpose device”(特定用途デバイス)として使われています。

Ben Bajarin氏のこの情報を考慮すると、NPDデータの謎が解けます。

  1. “U.S. commercial channels”というのはおそらくは日本でいう大塚商会などのように、ハードウェアとソフトウェアとセットアップと管理などをすべてまとめて納入するValue Added Reseller(付加価値再販業者)を指します。教育市場に製品を納入する業者もおそらくこれが多いのでしょう。またNPDはAmazonやDELL直販、Apple直販などのデータは収集していません。したがって今回のNPDのデータがパソコン市場全体を反映しないのは当然のことです。
  2. Chrome OSがウェブ使用統計に出てこないという謎は私もブログで取り上げています。2013年11月現在のデータを見ても、Chrome OSの使用は極めて少ないものにとどまっています。そこで「いったいChromebookは何に使われているんだ?」という疑問が湧きます。Ben Bajarin氏の情報から考えると、Chromebookは学校専用ですので、学校で使うサイト以外を閲覧するのには使われていないと考えられます。ウェブ使用統計を集計しているStatCounterは、学校で使うサイトの統計は収集できていないのかもしれません。もしそうであれば、Chrome OSがウェブ使用統計で極めて少ない謎が解けます。
  3. まだ解けていない謎は残っています。AmazonのランキングでChromebookが上位に出ている点です。教育市場に大量に納入されるChromebookがAmazonから購入されているとは考えにくいです。またAmazon購入者は一般的な用途にChromebookを使うでしょうから、もっとウェブ使用統計に反映されると期待されますが、実際にはそうなっていません。この謎はまだ解けていませんが、予想としてはAmazonのランキングが市場全体を反映していないのだろうと思います。

特定用途のパーソナルコンピュータ

Ben Bajarin氏の情報の中で凄く面白いと思ったのは「特定用途のパーソナルコンピュータ」です。

家で使用するパソコン、あるいは仕事で使うパソコンを想像するとき、パソコンというのは多用途のデバイスです。メールを書いたり、インターネットをしたり、エクセルファイルで集計をしたり、ワードで文章を書いたり、パワーポイントでプレゼンテーションを書いたり、ゲームをしたりと、パソコンは非常に多様とのデバイスです。

しかし近所の薬局やレストランに行くと、タイムカード専用や売り上げ集計専用のパソコンがレジの横に置いてあったりします。このパソコンはもちろんゲームに使われませんし、プレゼンを書くのにも使用されません。インターネットに接続するにしても、イントラネットや仕事で使うSaaSに接続するだけでしょう。単一用途ではないにせよ、極めて限定的な用途で使われているパソコンです。ただしこれらのパソコンは今までは店舗に1, 2台あるだけで、数はそれほど多くありませんでした。

米国の教育現場では、生徒全員に1台のパソコンを支給するという流れがあります。これは非常に高価なプロジェクトですので、近年パソコンの値段が下がったことで初めて現実的になったものです。これも限定的な用途で使われるパソコンです。

近年Androidのタブレットの躍進が著しいのですが、大半のAndroidタブレットはビデオ専用に使われているという話があります。これもまた限定的な用途で使われているパソコンと言えます。

我が家にはiPadが2台あります。ほぼ子供専用です。ウェブサイトを見たり、メールを書いたりするのにはほとんど使用しません。これも特定用途のパソコンです。

どうやら「特定用途のパーソナルコンピュータ」が急速に増えている感じです。理由は価格が下がったこと、それから場所を取らないからでしょう。そしてパソコンの売り上げ統計だとかマーケットシェア分析の時には「特定用途」のものと「多用途」のものがすべてまとめて集計されてしまいますので、訳がわからなくなります。業界のトレンドが正確に読めなくなってるのです。

日本の通信関連で占うのなら、ガラケーがどうなるかでしょ

年末なので2014年はどうなるのかを予想してみるのが一つのお決まりです。そして日本の携帯電話を含めた通信分野に関していえば、占うべき課題はガラケーの将来、そして日本の携帯電話メーカーの将来がまず第一ではないでしょうか。

  1. 9月26日にパナソニックが個人向けスマートフォン開発からの撤退を発表
  2. 7月31日にNEC (NEC・カシオ・日立) がスマートフォンの開発と生産から撤退を発表
  3. 残るはシャープ、ソニー、富士通、京セラ (情報通信総合研究所)
  4. ドコモがiPhoneの取り扱いを開始した

これだけのことがあれば、残された日本の携帯メーカーは2014年を乗り切れないのではないかと心配してしまいます。

その一方でガラケーを使い続ける人にも今年はスポットライトが当たりました。ガラケーには根強い人気があるということです。NHKでは「ガラケーの逆襲」という番組もやりました。

そう考えると2014年のシナリオとして以下のことが考えられます。

  1. 日本の携帯電話のうち、スマートフォンから撤退する会社が後2つぐらいは出るかも知れません。
  2. ただしスマートフォンから撤退しても、パナソニックのようにガラケーを売り続けるかもしれません。
  3. スマートフォンの市場は飽和し、スマートフォンとガラケー共存の時代になるかも知れません。

これはこれで構わないのですが、世の中の進歩という意味ではいささかつまらないシナリオです。そこで「占う」というよりも「現実的な希望」という意味で、2014年にこうあって欲しいというシナリオを描きたいと思います。

スマートフォン or ガラケー ではない

ガラケーを愛用し続ける人が挙げる理由は大まかに次の2つです;

  1. ガラケーの方が月額料金が安い
  2. ガラケーの方が電池が持つ
  3. ガラケーの操作性に慣れている

このそれぞれのポイントは現在スマートフォンにはなくてガラケーにだけある特徴です。もしこれらがスマートフォンでも実現されれば、ガラケーを使い続ける理由がなくなります。

そこでこれを検証したいと思います。

どうしてガラケーの方が安いのか

ガラケーを作るためのコストは実のところ、結構高いのです。信頼性のある情報をウェブで見つけるのはなかなか大変なのですが、ケータイの開発現場にいたという人のこのブログに情報がありました。

私はケータイの開発現場にいたので、2万円未満のケータイの実現性は何となくわかります。ケータイのハイエンド機種と中位機種の中身に大差ありません。核となるチップやファームウェアは同じものを使用し、音源チップやLCDの変更などでコストを削っています。このやり方でさらに半額以下にするのは至難です。端末の価格はメーカーの原価だけでは決まりません。販売店やキャリア、運送業者なども利益を出す必要があります。

2万円未満で新機種を販売するには、最初からそれが可能な開発手法が必要です。仕様の割り切り、設計の外注、製造の外注、直販、エアダウンロードのあり方、販売期間の設定、等々。

一方でスマートフォンは開発競争が激しいせいか、それとも部品が少なくて製造しやすいせいか、世界ではかなり安価なものがSIMロックフリーで販売されています。性能的も特にWindows PhoneのLumia 520などは好評です。Lumia 520はSIMロックフリーで2万円以下で売られ、今では1万円ぐらいまで値下がりしています。

こう考えると少なくとも2014年時点において、スマートフォンの端末価格はガラケーの端末価格を下回ります(ずっと前からそうだったという話もありますが)。

そうであるならば、スマートフォンの通信量をソフトウェア的に抑制し、ガラケーと同じような通話・メール中心の安価な料金プランを用意することは可能なはずです。ウェブを見たりFacebookを見たりする時にはWiFiを使ってもらえば良いのです。

細かい技術ハードルはいくつもあるでしょうが、ハード的にも通信環境的にも非常に整備されている現状では大した問題ではないだろうと想像されます。

実はGoSmart MobileというT-Mobileのサービスの一つが、無料のFacebook接続プランというのを1月から提供する予定です。通話料のみのプラン(25 USD)を利用している顧客でも、Facebookだけは追加料金無しでアクセスできるサービスです。

Facebookをキャリアメール、もしくはLINEに置き換えると日本人にはわかりやすいと思います。通話料のみのプランだが、キャリアメールとLINEだけは使い放題。他のインターネットサービスは有料。

是非こうなって欲しいと思います。

スマートフォンの電池をもっと持たせる方法はないか?

スマートフォンの電池を長持ちさせるのは技術的には簡単ではなさそうです。iPhoneも処理能力は飛躍的に進化していますが、電池の持ちはそれと比べて余り進化していません。

ただ手段が尽くされたという状況でもなさそうです。例えばiPhoneとAndroid端末を比較すると、iPhoneは半分ぐらいしか電池容量がないのに動作時間では大きく負けないという結果もあります。2014年にはまだ大きな期待はできませんが、徐々に電池の持ちは改善していくかも知れません。

操作性の問題

操作性については慣れの問題があります。そしてガラケーの操作がしやすかったかと言えば決してそうでもなかったという気もします(先日、父のドコモのらくらくホンの使い方がわからなくて苦労しました)。何とも言えないところがあります。

「らくらくスマートフォン」で強く感じるのですが、「楽にする」ということと「覚えたいと思わせる」ことはセットで考えないといけません。「楽にする」を強調する余り、魅力的な機能を削ってしまうと「覚えたいと思わせる」ことができません。

そして顧客にアンケートをとると決まって「楽にする」系の解答が多くなる一方で、「覚えたいと思わせる」系の解答は少なくなります。「覚えたいと思わせる」機能はまだ実現されていないことなので、顧客はまだニーズを感じていませんから。

このあたりはApple以外はほとんど実績がないところなので、なかなか進歩がないかも知れません。

まとめ

こうあって欲しいことの中で、一番実現可能なのは最初の通話料の問題だと思います。もちろんキャリアとしてみれば「稼げるだけ稼ごう」というのがあるので、余り積極的にはやってくれないかも知れません。

一方でガラケーで何とかしのぐというのも凄く不自然な状態です。利益的にも不利なはずです。2014年に何か新しい方向性が生まれたら良いなと思っています。

Moto Gがどれぐらい売れているかを推測してみる

昨日のポスト「Windows Phoneについて思うこと」の中で、Windows Phoneが成功するための1つの戦略、low-end disruption戦略について解説しました。そしてlow-end disruptionが成功するかどうかはまず最初にはMoto Gが売れないこと、さらにその次にSamsungが有力な対抗馬(同価格帯で同等以上の性能)を出せないことにかかっていると述べました。

まずはMoto Gについてですが、GoogleはNexusやMotorolaの販売台数に一切公開してきていませんので、今後も公式なコメントが出るとは期待しにくいです。あくまでも推測として現状を考えてみます。

状況証拠としては以下のことがあります;

  1. Moto Gは途上国やヨーロッパを狙って開発されました。そして当初はブラジル、メキシコ、チリ、アルゼンチン、イギリス、ドイツ、フランスとカナダで発売し(2013年11月中旬)、段階的に米国を含めた30ヶ国に広げていくというローンチ戦略が予定されていました。
  2. しかし2013年11月26日に速くもその計画が変更されました。すぐに米国で発売が発表され、開始されました。
  3. Moto Gの在庫切れの情報はウェブには報告されておらず、流通チャンネルには十分な在庫があるようです。

シナリオとしては以下の可能性が考えられます;

ポジティブシナリオ

  1. 11月中旬の発表で思った以上に米国の反響が良かったので、米国での販売を前倒しした可能性。
  2. あるいは米国限定で発売している兄貴分のMoto Xがあまりにも散々な売り上げなので、急遽Moto Gの米国での販売を先送りした可能性。
  3. いずれにしてもMoto Gの在庫は潤沢に用意していたので、急激な変更に対抗できた可能性。

ネガティブシナリオ

  1. 途上国を中心に販売を準備したものの、顧客または流通チャンネルの反応が鈍く、急遽在庫が過剰になってしまった可能性。
  2. 実際に発売しても思ったほどは売れなくて、在庫が過剰になっている可能性。

推測

どっちにシナリオが正しいかはわかりません。しかし間違いがないのは在庫が十分にあることです。それも流通チャンネルの在庫ではなく(こっちの在庫は簡単に米国に回せない)、モトローラの倉庫の在庫です。

スマートフォンの世界で人気の機種が、発売当初からこのように在庫が潤沢というのは珍しいように思います。

Windows Phoneについて思うこと

「果たしてWindows Phoneに勝ち目はあるのか?」

多くの評論家はAndroidとiPhoneが市場を独占していることを挙げ、もはやWindows Phoneが入り込むスキはないと考えています。だからこそWindows Phoneの今後の展開に興味が尽きません。Windows Phoneがもし成功すれば、このような評論家がそもそもイノベーションや市場の展開を理解できていないという根拠になるからです。

私自身がイノベーションや市場を理解しているかどうか。私自身の理論を検証するためにはWindows Phoneの展開を予想をしてみることが重要なのです。

まずは私が考えている理論を解説します。Clayton Christensen氏の理論に強く影響された考え方です。

  1. Android (というよりはSamsung)とiPhoneが市場を独占しているのは間違いありません。いくらMicrosoftが強大とはいえ、正面から市場に入っていっても勝てません。
  2. Windows Phoneの強みはMicrosoftが作ったOS、MS-Officeの歴史的遺産、企業におけるMicrosoftの浸透度、Nokiaの製品料・デザイン力、そしてNokiaのマーケティング・流通力です。資産はたくさんあるので、それをどれだけ動員できるかがポイントです。
  3. 後から市場に入り込む場合はローエンドから入るのが一般的です。Christensen氏のいうlow-end disruptionです。ただし単に利幅を犠牲にするのではなく、ローエンドでの強みを持っていることが必要です。ローエンドから入る場合、ハイエンドユーザが要求するような高スペックを満たす必要がありません。
  4. トップブランドはlow-end disruptionに対して抵抗力がありますが、中堅ブランドはlow-end disruptionに弱い傾向があります。なぜなら中堅ブランドは今まで差別化戦略ではなく低価格戦略で勝負してきているからです。

以上を元に、Windows Phoneに勝ち目がある戦略を考えます。

Low-end disruption戦略

Windows Phoneが低スペックなローエンド機に強みを持っているのはLumina 520で照明されています。定価で170 USD(もちろんSIMロックフリー)のこのデバイスはスペック的にはRAMが512MBしかなく、CPUはDual-core 1GHzと低スペックです。それにも関わらずUIがヌルサクと評判です(1, 2)。もちろん最新のWindows Phone 8が搭載されています。ちなみにこのスペックはAndroidだったら普通、Android 4.0を搭載できないスペックです。したがってWindows PhoneはAndroidよりもローエンド機に向いているのは間違いなさそうです。(Android 4.4 KitKatも512MB RAMで動くように改良されていますが、実際に試したというレビューがまだないので、何とも言えません)

スマートフォンのローエンド戦略は途上国をターゲットすることになります。途上国ではNokiaのブランドと流通チャンネルが大きな強みです。Windows Phoneはこれに乗ることができますので強みがあります。

Windows Phoneの最大の弱みはアプリが少ないといわれている点です。しかしローエンドでは主要なアプリさえあれば十分なはずです。そしてそれはおおむね実現できていそうです。TwitterもFacebookもLinkedInもTumblrもAmazonもAmazon KindleもEvernoteもWhatsAppもあります。地図アプリもあります。LINEもあります。もちろん完全ではありませんが、主要アプリはかなりカバーできています。

こう見るとWindows Phoneはlow-end disruption戦略を実行するのに十分な準備ができているように思えます。実際大きく販売が伸び、ヨーロッパの主要国ではシェアが10%を超え、USでは5%に近づいてきているというKantarの報告があります。

Low-end disruptionが今後も継続できるかどうかを見るには以下のことがポイントになります;

  1. 原則としてブランド力も流通力もないMoto Gが売れるとは考えにくいのですが、万が一売れるとなればLumina 520の勢いをとめる力にはなります。
  2. Lumina 520の真の対抗馬が出るかどうかはSamsungの今後の新機種にかかっています。Samsungの現行製品ではLumina 520の価格帯のものはGalaxy Y (3インチ画面、800MHz CPU、180MB RAM、Android 2.3)とかGalaxy Ace(3.5インチ画面、800MHz CPU、158MB RAM、Android 2.3)です。あるいはちょっと高くなるとGalaxy S (4インチ画面、1GHz CPU、768MB RAM、Android 4.0)があります。Lumina 520に対抗できないのもうなずけます。今後KitKat 4.4を搭載したSamsungの低価格機がどれぐらいの値段で発売され、どれぐらいのヌルサク感が出るかがポイントです。
  3. Samsungの新KitKat機が十分な性能を出せないとなると、Androidがそもそも低スペック機に向かないのではないかということになります。Googleが今後改良を続けても解消できないことも考えられます。こうなるとローエンドでの勢いは止められなくなります。

ローエンド機を売ることから出発し、徐々にミッドレンジに入り込むというのがlow-end disruptionの展開です。そのためには、Windows Phoneが徐々に力を付けていくことが必要です。そしてその力というのはおそらくはアプリの数と品質でしょう。アプリの数と品質がそこそこのレベルに達するとミッドレンジに力強く攻め込めるようになります。

アプリの数を見ていけば、将来的にdisruptionまで到達するかどうかが見えてきます。

企業での強み、MS-Officeの強みを活かす戦略

現時点ではこの戦略は可能性としてあるものの、具体的には見えてきていません。スマートフォンよりはタブレットの方で先にこの戦略は展開されるだろうと思います。

Chromebookが売れているという記事があるので、それを検証する

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アップデート

U.S.でIT業界のアナリストをしているBen Bajarin氏にいろいろ確認をし、新しいポストに掲載しました。

  1. “U.S. Commercial channels”というのは、日本でいえば大塚商会のように、企業や政府機関、教育機関にソリューションを卸しているところのようです。
  2. Chromebookはほとんどが教育機関に売られているようです。
  3. Chromebookは“specific-purpose”であり、教科書代わりに使われているようです。

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「Googleの激安ノートPC「Chromebook」のシェアが急増、WindowsノートPCを脅かしている実態が明らかに」と題した記事がGigazineに掲載されていたので、その内容を検証します。

まずGigazineの記事を詳しく見ていきます。

引用しているのはNPDグループのレポートです。元のウェブページも見ながら、検証で重要なポイントを拾い上げてみました。

  1. 調査内容は2013年1月から11月までの間に全米流通ネットワーク (U.S. commercial channels)で販売されたデスクトップPC・ノートPC・タブレット端末の台数です。この“commercial channels”が何を指すのかは今ひとつはっきりわかりません。例えばメーカーの直販ウェブサイトが含まれているかどうかがわかりません。
  2. Gigazineも引用しているグラフには“Preconfigured desktop and notebook sales only”の注記があります。ユーザがハードディスク容量やメモリの容量を変えているものは別だということです。このことからデータにメーカー直販ウェブサイトは含まれていないのではないかと推測されます。
  3. “U.S. commercial channels”で発売されたのは2012年1-11月で14.4 million台のdesktop, notebook, tabletです。参考にGartnerはUSのPC販売台数を1Q13で14.2 million台2Q13で15.0 million台3Q13で16.1 million台としています。なお参考までに4Q12は17.5 million台なので、4Qに販売台数が伸びる季節性はあるようです。Gartnerの調査はNPDと異なりtabletを含みませんので(Gartnerはtabletの世界的な出荷台数を2013年10月時点でPCの303 millionに対して184 millionと見ています)、NPDが見ている“U.S. commercial channels”というのは、米国のPC市場の10-20%程度になるのではないかと私は見ています。つまり“U.S. commercial channels”というのは全体のPC販売台数の極一部でしかないと思われます。
  4. NPD自身は2013年6月30日–9月7日の調査でChromebookがU.S.で175,000台売れたとしています。そして同期間のPC販売台数の3.3%を占めたとしています。それに対して“commercial channels”の下記の表を見ると、chromebook / (PC + chromebook) = 9.6% / 73.3% = 13%なので、“commercial channels”のchromebookのシェアはPC全体の13%となります。両方ともNPDのデータなのですが、大きな乖離があります。

以上を考えると、“U.S. commercial channels”というのがどうもくせ者のように思えます。“U.S. commercial channels”といのは米国においてはかなりマイナーはPC販売の形態であり、市場全体とは異なる傾向を示しているようです。下記の表で見る限り、Apple Notebooksもかなり少なめに出ています(“U.S. commercial channels”では1.8% / 73% = 2.5%, NPDの2013年6月30日–9月7日調査では20.3%)。

DELLは原則直販ですし、Appleも直販が多いでしょう。Gartnerのメーカー別U.S.シェアとNPDの“U.S. commercial channels”の表を比較しても、際立つのは“U.S. commercial channels”にはDELLがいないこと、そしてLenovoが相対的に多くなっている点です。

“U.S. commercial channels”でChromebookが売れるようになったといっても、全体としてChromebookが売れているわけではなさそうだし、どうして“U.S. commercial channels”だけが強いのかがまだわかりません。コンピュータのことがよくわからない顧客が、圧倒的な値段の安さ、もしくは販売員の薦めで買っているだけの可能性も否定できません。少なくとも現時点でMicrosoftに対して脅威になるというのは時期尚早ではないでしょうか。

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CMSの役割について考える

最近ライフサイエンスの研究試薬・機器メーカーのウェブサイトを画期的に良くするサービスを準備していて、その関連でメーカーのウェブサイトを良く眺めています。

そうする中でCMSの存在が気になります。どういう風に気になるかというと、あまりクライアントの役に立っていなくて、むしろウェブサイトを悪化させているのではないかと感じているのです。

ポイントはメーカーのウェブサイトの特徴です;

  1. メーカーウェブサイトのボリュームの大半は製品ページであって、これはほとんど更新することがありません。更新するとしても印刷版のカタログと同期させることが(本来は)必要なので、どこかで更新履歴がまとまっていないと印刷版との同期がおかしくなります。
  2. メーカーウェブサイトの更新の大半はキャンペーンや新製品です。どれも新しいページの作成が必要です。特にキャンペーンページはデザインが重要なので、ウェブデザイナーに依頼します。製品担当が直接ページを作成することはありません。新製品の場合、注力製品であればイメージなども多いので、やはりウェブデザイナーに依頼するのが無難です。

CMSの最大の「売り」は、ウェブデザイナー以外の人がコンテンツを直接書き込めることですが、少なくともメーカーのウェブサイトの場合はそのニーズがそもそもないと感じています。

そうなるとCMSの欠点ばかりが見えてきます。CMSの欠点についてはYahoo知恵袋に良くまとまっていますが、一言で言えばCMS導入業者への依存度が凄く強くなることです。

総合すると

  1. CMSはメーカーにとってはメリットがない
  2. CMS導入業者にとっては継続的に管理費やカスタマイズ費がもらえるので、メリットだらけ

もちろんCMSには他にもメリットがありますが、そのほとんどはDreamWeaverのようにサイト管理機能が充実しているソフトウェアを使えば同等以上のことができます。

  1. CMSはテンプレートでデザインの統一性が保てます。DreamWeaverにもテンプレート機能が充実しています。そしてCMSのテンプレートとDreamWeaverのテンプレートの最大の違いは、CMSだとプログラマーが変更しなければならないのに対して、DreamWeaverのテンプレートはウェブデザイナーが変更できる点です。
  2. CMSに機能拡張をすれば、価格などの情報をデータベースから引っ張ったりできますので、常に最新の価格情報を保証することができます。しかしこれはまず非常に高価です。そしてカスタムなので業者依存がますます強くなります。このあたりは私たちが新しく用意しているサービスを利用すると、うんと安くできます。業者依存も生じません。

DreamWeaverの場合、一番のメリットはこれがデザイナーの標準ツールだということです。デザイン力が高い人材を探すとき、あるいはウェブサイト担当者を変更しればならないときにはこれは凄く重要です。確実に、簡単に、そして安価に引き継ぎが可能です。

もしもそれでもCMSを利用するのであれば、業者依存を生じさせないために、広く普及しているオープンソースのCMSを利用するべきだと考えます。世の中で圧倒的に普及しているCMSはWordPressですので、原則としてWordPressが第一候補です。明確な理由(Wordpressで実現できない機能)がない限り、それ以外のCMSを使うべきではないでしょう。

もちろん「CMSを使うべきかどうか」はケースバイケースで変わります。例えばこのブログはWordPressで動いていますし、Castle104のホームページもWordPressです。

気をつけなければならないのは、「業者は業者依存を増やしたい。なので彼らはCMSを導入したがる」という点です。

Androidのウィジェットの役割について考えてみる

ずっと知らなかったのですが、HTCがHTC Senseをデザインする際に行った調査の概要がHTC Blogに掲載されています。

  • Most people don’t differentiate between apps and widgets.
  • Widgets aren’t widely used – weather, clock and music are the most used and after that, fewer than 10% of customers use any other widgets.
  • Most of you don’t modify your home screens much. In fact, after the first month of use, approximately 80% of you don’t change your home screens any more.

要するにAndroidユーザのほとんどはWidgetを使わないそうです。使うとしても天気と時計と音楽で使うだけだそうです。

さて、それで手元のGoogle Nexus 7 (Android 4.4.2 KitKat)を初期化してホーム画面を確認すると、以下のようになっていました。

Screenshot 2013 12 24 09 49 45

ホーム画面は5枚あるのですが、上記の画面の右隣だけが何か入っていて、入っていたのは以下の写真です。

Screenshot 2013 12 24 09 49 54

どれもGoogle Play (アプリや書籍、音楽、ビデオを購入するためのGoogleのサービス)のWidgetです。

AndroidのWidgetはだれのため?

顧客サイドからいえばWidgetはほとんど必要ありません。でもAndroidのホーム画面はWidgetを表示するのが役割です。それでどうするか?

  1. HTCはBlinkFeedをトップ画面にして、Widgetの設定をしていなくても強制的にニュースやSNSアップデートの情報をトップ画面に表示しています。顧客サイドでは必要を感じていないものをトップに持ってきているので、Widgetの押し売りと言っても良いでしょう。
  2. Googleが押し売りしているのはGoogle Playに関するWidgetです。何だろうと思ってクリックするとGoogle Playに誘導されて、ビデオや書籍を薦められます。
  3. 手持ちのAU Galaxy SII WiMAX (Android 4.0.4)の場合は時間と天気のWidgetがトップページに表示されます。それ以外にはAUサービスのWidgetやSamsung関連のWidgetが並びます。

こうしてみるとAndroidのWidgetは結果的にユーザのための機能ではなく、メーカー(OEM)、そしてキャリアのための機能であったことが悲しいほどに鮮明に見えます。Google自身でさえ、ユーザのためにトップ画面を使っているのではなく、Google Playのプロモーションに使っているわけですから。

Chromebookは何台売れているのか?

Chromebookが何台売れているのかについて、Googleは一切公開していません。

そんな中で、結構売れているのではないかという憶測があります。例えばGoogleの副社長のCaesar Senguptaは米国の教育地区の22%がChromebookを使っていると語っていますし、Amazonのランキングで上位に入っている)という話もあります。

一方でChromebookの販売台数に関する情報はごくわずかなのですが、芳しくありません。

例えばNPDの調査 (2013年6月30日 – 9月7日)によると

Chromebooks, which didn’t exist in 2012, added almost 175,000 units to the market this year and provided all the growth in the challenged notebook market; entry-level Windows notebooks (under $300) increased 14 percent, and Windows touch notebooks accounted for 25 percent of Windows notebook sales.

NPDはさらに表を使って、Chromebookのインパクトを示しています。

スクリーンショット 2013 12 18 5 57 17

また以下の数字と比較することもできます。

  1. Appleは2012年1年間で18,158,000台のMacを売り上げました。(Macworldより)
  2. 2012年の第4四半期で、世界のPCの出荷台数は 90,300,000台。米国だけで 17,505,607台。(Gartnerより)

このことから言えるのは

  1. Chromebookは一定の数は売れているようですが、Windowsを脅かすレベルではありません。
  2. Amazonのランキングから想像するとChromebookはもっと売れているように思ってしまいますが、そうではなさそうです。全く売れていないというわけではないのですが、それほどは売れていません。

もう一つ面白い統計は、Chromebook 11がリコールされたことで明るみに出た数字です。HPとGoogleはChromebook 11を2013年の10月から販売し、11月には製品不良のために出荷停止しました。そしてリコール対象の台数は145,000台だそうです。単純に比較はできませんが、NPDのデータの同程度の台数であり、それを裏付けるものと考えても良いと思います。

GoogleのAdSenseの売り上げが落ちているという話

Googleのウェブ広告は、Google検索で表示されるAdwords広告、それと一般のウェブサイトで表示されるAdSense広告があります。

そのうち、Adsenseの売り上げが落ち始めているという話が報道されました。

結構重要な話です。AdSenseは昨年のGoogleの売り上げ$43.7 billionの実に29%も占めているわけですから。

どうしてAdSenseの売り上げが落ちているのか、原因は想像の域を出ません。このまま落ち続けるのかどうかもわかりません。

ただ、個人的にはAdSenseの精度が非常に悪いと感じていて、本来ならウェブページのコンテンツにマッチした広告だとか、あるいはユーザの個人情報にマッチした広告を表示してくれるはずなのですが、それが全くできていないとは感じていました。Googleのアルゴリズムがうまく機能していないといった印象を受けていたので、あまり驚いていません。

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