プロ野球の勝率と年俸の関係

プロ野球の2013年平均年俸と2012年勝率をプロットしてみました。

セ・リーグとパ・リーグが全然違います。

Probaseball money vs wins

セ・リーグは平均年俸と勝率がキレイに相関しています。お金持ち球団が高年俸の選手を集めることで勝利を重ね、その一方で貧乏球団は高年俸の選手が奪われ、どんどん弱くなっています。

パ・リーグはまず平均年俸が競っています(セ・リーグの阪神レベル)。そして勝率と特に相関していません。

もう一つ、ここ数年の各球団の順位をプロットしました。パ・リーグは順位の変動が激しいのに対して、セ・リーグがかなり固定化してしまっているのがわかります。

今のセ・リーグとパ・リーグの一番の違いはこれだと思います。

スクリーンショット 2013 04 24 11 21 17

iTunes Storeの国際展開の強さ

AppleのFY13 2Qのカンファレンスコールを聞いて、一番興味深かったのはiTunes Store (App Storeも含む)の強さでした。

iTunes StoreについてはAsymcoのHorace Dediu氏が深く分析していて、成長のスピードおよび規模の大きさで非常に注目に値するとしています。誕生した当初は”break-even”で運営しているとしていたiTunes Storeですが、その後大きく成長しています。カンファレンスコールでは売り上げが2Qだけで4.1 billion USD(おおよそ4千億円)になったと紹介していました。売り上げの仕組みが違うので単純な比較はできませんが、楽天の2012年12月期の年間売り上げが単体で1,637億円ですので、iTunes Storeがどれだけ大きいかがわかります。

Horace Dediu氏はiTunes StoreとAmazonの比較もしています。ただしアマゾンは全体の売り上げは公開するものの、デジタル配信の売り上げは公開していませんので、単純比較はできません。

NewImage

なおGoogle Playはデータが全く公開されていませんので、情報がありません。

AppleのカンファレンスコールではiTunes Storeが多数の国で展開していることも紹介されました。音楽:119国、映画:109国、書籍:155国、アプリ:155国。このあたりはWikipediaに既に詳細に記載されていました。うち、有料の音楽が購入できるのは60強の国です。アプリは190の国で購入できます。Google Playもまた多数の国(134)で展開していますが、アプリしか買えない国がほとんどで、その他のデジタルコンテンツが買える国は極めて少数(14国)です。

Amazonについては詳しく調べていないので断言できませんが、Wikipediaを見る限り、Amazonのウェブサイトがある国がそもそも10程度しか無いようです。デジタルコンテンツの配信もこれらの国に限られているのだろうと私は想像しています。

なお比較のためにPlayStation Storeも確認しましたが、おおよそ50の国で展開しているようです。

デジタルコンテンツ配信におけるAppleのイノベーション

これだけAppleが強い背景には地道な努力がもちろん大きいのでしょうが、Appleがかなりイノベーションをしてきたことも忘れてはいけません。

違法音楽ダウンロードに各レーベルが戦々恐々としている時代に、世界でいち早く有料の音楽配信サービスを展開したのがiTunesです。アプリを配信するApp Storeのコンセプトを大きく成長させて、メインストリームにしたのもAppleです。

こういうイノベーションを先駆けたおかげでこれだけデジタルコンテンツ配信に強いのでしょう。

Samsungが偽りのレビューをWebに書くように学生を動員していた件

HTCの製品を批判するように、Samsungが学生アルバイトを動員していたという報道がBBCにありました。

台湾の公正取引委員会が調査に乗り出していて、Samsungはこの件を既に認めています。

Samsungを非難することは簡単です。しかし事実はそんなに単純ではないでしょう。おそらくは氷山の一角です。

そこでこの件からいろいろと類推してみようと思います。もちろん当たっていないこともあるでしょうが、背景の理解の助けになると思います。

Samsungという会社が問題を起こしたことの重み

Android陣営の中で、唯一まともに利益をたたき出しているのがSamsungです。他の会社は利益が出ない上、販売数も伸び悩んだり、逆に落ち込んだりしています。

当然ながら、どうしてSamsungだけが一人勝ちできるのだろうかという疑問がありました。いろいろな原因が考えられます。例えばHorace Dediu氏は販売チャンネル、広告宣伝とプロモーション、そして製造能力を挙げています。

今回の事件からわかることは、手段を選ばない、仁義なきマーケティング戦略もSamsungの成功の理由の一つだということです。

HTCに対してやるんだから当然Appleにもやっているはず

SamsungがHTCだけを非難していたはずがありません。当然ながら他のライバルに対しても同様なことはやっているはずです。Appleはその一つですし、普通に考えればAppleに対してこそ一番強力なネガティブキャンペーンを張っていたはずです。

Androidはこれぐらいやらないと売れないのか

Samsungだけが一人勝ちできた理由は一つだけではなく、仁義なきマーケティング戦略がどれだけ効果があったのかは不明です。しかし可能性としては否定できません。

仁義なきマーケティングでもやらない限りAndroidは売れないのかもしれません。

しっぺ返し

ウソに固められたマーケティングというのは、顧客にウソをつくことです。実際に製品を手に取れば、あるいは友人の製品と比較すれば、顧客はウソに気づきます。

スマートフォンはまだ売れ始めて年月が浅く、Androidについて言えばまだ90%の顧客は一度も買い換えをしていないと推測されています。つまりウソに気づいた顧客も、ほとんどはまだ新しい製品に買い換えていません。

今はしっぺ返しがまだ来ない時期です。

しっぺ返しが最初に来る(来た?)のは例えば米国市場

しっぺ返しは最初に観測されるのは、スマートフォンが早い時期から売れていた市場です。例えば米国の市場。その点で言えばちょっと不安な材料があります。

Benedict Evans氏はAT&TとVerizonのデータを元に、Androidの売り上げの伸びがほとんど止まったという分析をしています。一方でiPhoneの売り上げは順調に増加しています。

もしかしてしっぺ返しは始まったのかも知れません。

NewImage

なおいろいろな調査会社がスマートフォンの売り上げ推計を出していますが、AT&TやVerizonのデータはそれぞれのキャリアが報告した実際の数です。Apple以外は売り上げデータを公開していませんので、推計値はかなり憶測が入っています。それに対してBenedict Evans氏が使用したのはもっとも確実なデータです。

日本では

日本では信頼性の高い推計値がありませんので、statCounterのデータを紹介します。これも正確なデータではなく、またWeb閲覧数を見たものですが、時系列で多数のデータ点が公開されているのでトレンドを見るのに役立ちます。

これを見る限り、日本でもAndroidの使用率が落ち始めています。携帯の買い換えサイクルは24ヶ月ですので、タイミングを考えるとAndroidの初期ユーザの買い換えの頃から落ち始めているようです。

StatCounter mobile os JP quarterly 200804 201302

安価を売りにしたAndroidタブレットは年末商戦にだけ強い(2013年3月の米国タブレット使用統計)

Chitikaより2013年3月の米国タブレット使用統計が公開されました。

Chitikaが2013年2月に統計を公開したときにも言及しましたが、予想通りGoogle NexusやAmazon Kindle Fireの使用が落ちています。唯一堅調なのはSamsungのGalaxy Tabletシリーズです。

2月のデータの時に紹介した私の仮説を支持するデータです。

iPadは顧客満足度が高いため、口コミなどでどんどん使用する人が増えます。それに対して今回のデータを見る限り、Androidタブレットではこの自己増殖的なサイクルが回っていないようです。年末商戦など、強いプッシュがあるときだけ売れているようです。特にSamsung製品だけが好調なことから見られるように、強いマーケティングやセールスインセンティブがによるプッシュが無いと、Androidタブレットは売れなさそうです。

現時点ではまだタブレットを初めて買う顧客が多いのですが、数年後にはリピート顧客、買い換え顧客が増えます。現状が続く限り、その時のAndroidタブレットの市場は真っ暗になります。

March_Tablet_Update_Graph

Google Glassの用途って、イヤホンで十分?

Clayton Christensen氏は”Jobs to be done”の視点でイノベーションを考えることを近年力説しています。

Steve Jobsは、新しいカテゴリーを作るためには、いくつかの重要な用途で既存製品よりも優れている必要があると語っています。

Google Glassが成功するか否かを判断する上でもこの視点が重要でしょう。つまり利用者はGoogle Glassによっていったい何が便利になるのか、利用者は何のためにGoogle Glassをかけるのかという視点が大切です。

Drew Olanoff氏はTechCrunchの記事の中でこの点に触れています。

Glass isn’t a replacement for your cell phone, since you have to pair the device with the one you have for cellular or Wi-Fi coverage. It’s not a device for watching movies or YouTube videos and it’s not going to replace your computer. You won’t be able to read full search results on the tiny screen, but you’ll be able to get to really relevant information quickly.

For example, how many times a day do you pick up your phone to check the time or to see if you have any missed calls or text messages? I couldn’t count the times that I’ve wasted that arm motion. Furthermore, every single time you take your phone out, you’re telling the people that are around you that you have no interest in interacting with them for at least 30 seconds while you dive into your phone. Now, am I saying that having a screen above your eye is any less socially awkward? No. But it lets you access the same information quicker without having to stop what you’re doing.

It all goes back to the developers, though. They have the minds to push Glass forward as not just a geeky novelty, but as a platform to enhance our lives. I’m not going to sugarcoat it — this product has a lot of bumpy roads ahead of it. We have to assume that there are developers who can come up with big ideas, that consumers are ready for it and whether it can be at a price point that middle-America can afford.

Olanoff氏が言うには、たいしたアプリが無い現時点では、スマートフォンをいちいち取り出すよりはGoogle Glassを覗く方が楽で、逆にこれぐらいしか用途がないそうです。つまり「通知」の役割です。もちろんいろいろなデベロッパーが革新的なアプリを開発してくれればそれは変わるでしょうと。

これといった新しい用途が見つからず、依然として「通知」しか用途が無ければ、何もGoogle Glassである必要はありません。Bluetoothのイヤホンとスマートフォンの「通知」を連携させる仕組みが必要なだけです。

果たしてGoogle GlassのKiller Appは現れるのか?昔のApple IIにとってのVisiCalc、MacintoshにとってのDTPのようなものは出てくるのか?

VisicalcがApple IIで成功したのは、廉価なフロッピードライブがあったのはApple IIだけだったからです。DTPがMacintoshで誕生したのは、完全なビットマップディスプレイがあり、フォントが自由に使えたりしたのがMacintoshだけだったからです。すばらしいアイデアを持った優秀なソフトウェアデザイナーはいつの時代もいますので、Killer Appが誕生するためには、そのデバイスが何か革新的な何かを持っていなければなりません。

Google Glassだからこそできる何かとは何か。イヤホン以上のことをやるのであれば、当然それはディスプレイに関係しなければなりません。しかし今の世の中はディスプレイでありふれています。Killer Appの余地はかなり狭いように感じます。

Chromebook的戦略がうまくいく条件を考える

Chrome OS, Chromebook, Firefox OSはいずれもブラウザを中心としたOSで、アプリは原則としてブラウザの中で動きます。

今のところChrome OS戦略は全然うまく行ってなさそうですが(1, 2)、どうすればうまくいきそうかを少し考えます。

いくつかの重要な用途で、既存の製品の上を行かなければならない

「新しいカテゴリーの製品が成功するためには、いくつかの重要な用途で既存の製品に勝る必要があります。」これはスティーブ・ジョブズ氏がiPadの発表のキーノートで語った言葉です。

Chrome OSのようにブラウザを中心に据えたOSならば、まずは当然ウェブブラウズが既存の製品よりも優れていないと話になりません。

でもそのような話はあまり聞きません。

既存製品ではカバーされていないローエンドを狙う

「既存の製品の上を行かなければならない」というのは、既存製品を既に持っている顧客に売り込むのに必要な戦略です。もう一つのやり方は、既存製品をまだ所有していない潜在顧客を狙うやり方です。この場合はローエンドを狙うことになります。

ローエンドの狙い方は2つあります。なぜならば、既存製品を所有していない理由が2つあるからです。

1つは価格が高すぎるから所有していないケース。もう1つは使いこなせないから所有していないケースです。

したがってローエンドを狙うには以下の方法があります。

  1. 明確に安い価格を設定する。
  2. 徹底的に使いやすくする。

ブラウザを使ったUIは残念ながら使いやすくなることがほとんどありません。ブラウザの中で動かすというのはUI的には大きな制約になります。ほぼ必ず、UIはネイティブアプリに劣ります。したがって2番目の「徹底的に使いやすくする」というのはうまくできません。

したがって残るやり方は1番目の「明確に安い価格を設定する」です。

「明確に安い価格を設定する」にはどうするか

既存製品よりも明確に安い値段を設定するためには、機能を省くしかありません。機能を省きつつ、顧客が大切だと感じるものは残すことが必要です。しかも単純に引き算するというのであれば、既存の製品のラインアップの中で行われているはずです。したがって何か革新的なぐらいの機能の省き方が必要です。

Chrome OS的なブラウザ中心のアプローチがこのような革新的な機能省略を可能にしてくれるかどうかがポイントです。

Chromebookの場合、このような省略の試みは特に見られません。ブラウザ中心ならハードディスクがいらないのではないかと想像できますが、ChromebookはすべてハードディスクやSSDを搭載しています。Chromebookが何か大きな機能省略、コスト省略を可能にしない限り、勝ち目がありません。

Firefox OSは、ブラウザ中心にOSの階層構造を考え直すことによって、より低スペックのデバイスでも十分な性能が出るとしています。これが実現すれば、明確に安い価格設定が可能になるかも知れません。ただし現状では実現可能性が未知数です。

まとめ

ブラウザ中心にすることで、何が省略可能になるか。どのような革新的なコスト削減が可能になるか。

これがはっきりしていればブラウザ中心のOSの勝ち目があり、これが曖昧なら絶対に勝てない。そんな状況だろうと思います。

GoogleのNexusが売れていない

GoogleのNexus 7を中心に、GoogleのNexus戦略はあまりうまくいっていなさそうだという話をこのブログで何回かしています。要するに話題性とは裏腹に、Nexus 7はあまり売れていなさそう(使われていなさそう)なのです。

  1. 北米における2013年2月のタブレットの使用統計
  2. タブレットにおけるAndroidの追い詰められた現状

さらにそれを裏付けるデータが、Googleが公開しているデータの分析から明らかになりました。

Nexus tablet sales: not many

もうかなり間違いないです。Nexusはあまり売れていません。

Chromebookは今どれだけ使われているのか

Chromebookは一番うまくいってもNetbookと同程度にしかならないということは以前にこのブログで書きました。

GoogleはChromebookの売り上げやChrome OSがどれだけ使用されているかについて全くデータを公開していませんが、NetMarketShareが最近、ChromebookのWeb使用統計を分析し始めたようです。

まだChromebookの使用率があまりにも低くて、NetMarketShareが一般に公開しているレポートには登場しませんが、NetMarketShareの広報の人が一部を公開したそうです。

For the week of 4/8 – 4/14, ChromeBook has 0.023 percent weighted worldwide usage. Because it rounds to less than 0.1 percent it’s not showing up in our reports.

同様のデータはStatCounter GlobalStatsからも公開されています(USのデータ)。グラフには出てきませんが、CSV形式のデータをダウンロードするとChrome OSのデータが出てきます。

数字は違いますが、Chrome OSのシェアが非常に少ないのは同じです。なおここのiOSとかAndroidのデータはスマートフォンを除いたタブレットのデータです。

Chrome OSがあまり使われていないというのは十分に想定されていたことですので、特に言うことはありません。ただ、GoogleがChrome OSという方向性を追求し続けているのは事実ですので、今後どのように展開しようとしているかは興味深いです。

Operating System Share(%)
Win7 55.49
MacOSX 11.37
WinXP 10.95
WinVista 9.16
Win8 5.07
iOS 4.87
Linux 1.11
Android 1.01
Win2003 0.49
Playstation 0.16
Unknown 0.14
Chrome OS 0.05
Nintendo 0.03
Win8 RT 0.02
Win2000 0.02
webOS 0.02
BlackBerry OS 0.02

日立のV字回復に見る、アジア新興工業国に負けない日本の製造業の姿

2009年に国内の製造業で過去最大の赤字を計上した日立がV字回復しています。

ポイントはいろいろありますが、私が注目しているのは以下の点です。

  1. 社会インフラ関連に近いグループ会社は本体に近づけ、そうでない会社は遠ざける
  2. 携帯電話、液晶、ハードディスク、テレビ事業などを売却あるいはそこから撤退
  3. 「米GE、独シーメンスと互角に戦えるインフラ企業になる」

なぜそこに注目するか。簡単に紹介します(いつかもっと詳しく書きたいと思っていますが)。

  1. 日本の電機メーカーが苦しんでいるのは、アジア新興国が十分な品質の安い製品を製造できるようになったため。
  2. 日本のメーカーが得意なのは「過剰品質」とも言われるほどの高い技術力。ただしそれを必要としないぐらいに電子技術が発達した。
  3. メーカーが一番の強みとする技術は、その会社が成長した頃に使われていた技術。日本の電気メーカーはアナログ的なもの。今のアジア新興メーカーはデジタルなもの。したがって日本の電機メーカーは総じてアナログ的なものに強みがある。
  4. 一般消費者は「過剰品質」の使い道がない。しかしB to Bの場合、非常に品質の高い設備を用意することによって、具体的な競争力であるとか収益を上げていくことができる。「過剰品質」は消費者向けには無用だが、ビジネスやインフラ向けには価値がある。

私は日本の既存の電機メーカーがデジタルで新興アジアメーカーと戦うのは基本的に負け戦になると考えています。特に消費者向け製品では価格競争に巻き込まれるだけです。

日本の古い電機メーカーがやらなければならないのは、「過剰品質」が重視されるビジネス・医療・インフラなどの市場で、アナログ的な電子技術が依然とした活躍している分野の製品を提供し、そこにフォーカスすることです。

これが私の考えです。

こう考えると、家電のエコポイントというのは全くばかげた政策で、日本の電機メーカーに誤った経営判断をさせる政策に思えます。大切なことは、日本の古い家電メーカーにデジタル家電をあきらめさせることです。

人事の罠:アップルストアを大成功させたロン・ジョンソンはなぜJCペニーで大失敗したか

アップルストアを成功させたロン・ジョンソンが、百貨店大手JCペニーのCEOを17カ月で解任されました。売上高が25%落ち込み、株価が57%下落するという惨憺たる結果でした。

結果論は参考にならない

どうして彼が失敗したか、ウェブ上には様々な議論があります。ただしすべて結果論です。結果論は誰でも言えます。そして自然科学では予測が重視されていることからもわかるように、結果論をいくら並べてもなかなか真実には近づきません。

例えばアップルの取締役も務めたビル・キャンベル氏は「過去にどこで働こうと、製品を移行するときには、どうやってマイナス面を制限するか常に考えるものだ。彼はまったくそうしなかった」と述べています

このブログ記事にはウェブ上のいくつかの意見をまとめています。

  • 「CEOの経験はなく、ファッションやアパレル事業の知識は限られたものでした」
  • 「どんな人がJCペニーで買い物をして、何を求めているのかという理解がありませんでした」

結果論から得られるものはありません。

ロン・ジョンソン氏はいったい何をしたのか

それではいったいロン・ジョンソン氏はJCペニーで何をしたのでしょうか?以下にいくつかの記事から結果論的な記述を無視し、事実だけを取り出してみます。

Business Insiderの記事から。

  1. Johnson’s vision featured trendier brands and a more intimate boutique-like shopping experience to replace their standard rows of overcrowded clothing racks.
  2. Ending discount sales

TUAWの記事

  1. Johnson attempted to mimic the same type of atmosphere that made Apple retail stores so successful – quality merchandise coupled with an elegant shopping experience.
  2. Johnson sought to do away with coupons, clearance racks, and sales events.
  3. Johnson attempted to incorporate designer boutiques into J.C. Penney stores.
  4. Johnson wanted J.C. Penney’s in-store boutiques to forgo cheaper options and use high quality and more expensive materials for shelving and signage.

USNews

  1. The company significantly cut back on the promotions that department store consumers have been accustomed to for decades.
  2. The lesson of the story is that, even though marketers love to hate promotions, unless you have a very highly-differentiated and premium product, they are extremely important. Promotions offer both monetary and smart-shopper appeal.

ここではっきりわかるのは、ロン・ジョンソン氏は自分自身の成功体験をほぼそのままJCペニーに当てはめようとしたということです。JCペニーをアップルストアと同じようにしようとしたのです。

アップルストアで大成功したことをJCペニーでもやろうとしたら大失敗した。それだけです。

人を結果論で採用するのは誤り

十分に情報を集めていませんが、私が強く思っていることを一つ紹介します。

過去にどれだけ成功したか、過去にどれだけ失敗したかで人の能力を測ることはできません。結果で人を計ることはできません。なぜかというと成功や失敗はその人の能力だけではなく、環境の優劣、あるいは環境との適合性、チャンスの有無などに大きく左右されるからです。したがって人を採用するとき、過去の成功・失敗で採用するのは誤りです。

その人が新しい職場に入ったときにどうなるか。その職場で成功するかどうか。予想できることは限られています。はっきりとわかるのは、その人が過去の成功体験や失敗体験を元に判断をし、行動を起こすということです。多少の修正はあるものの、基本的には今までと同じようなことを考え、同じようなことを行うだろうということです。人間は原則として過去の体験を元に行動をします。過去の成功体験を踏襲する癖があります。

その行動が新しい職場にマッチするかどうか。その判断の責任は採用する側にあります。

ロン・ジョンソン氏の場合、アップルストアが成功したから彼を採用したのであるとすれば、それは採用側の根本的ミスです。成功・失敗という結果論で採用するのは誤りです。

もしJCペニーをアップルストアのように変革したいと思ってロン・ジョンソン氏を採用したのであれば、採用としてはそれは正解です。問題はそもそもの戦略です。アップルストアのように変革したいという戦略そのものが正しかったかどうかが問われます。