Macの漢字Talkを思い出してしまった

Macが1992年頃まで採用していてOS、漢字Talk (System 6)のインタフェースに非常に良く似たものを久々に見ました。

iPhoneに対抗して、台湾のHTC社が開発し、DoCoMoやSoftbankで採用されている新しいタッチWindows ケータイのインタフェースでした。

ちなみにHTC社というのは「世界的に見ると、Windows Mobile搭載端末市場で約80%のシェアを誇る」ほどにすごい企業のようです。しかもWindows Mobileについて、すごく辛辣なことを言っています。

 このTouchFLOが生まれたのは、「ユーザーは、非常に高度で複雑、かつ退屈なWindows MobileのUIに対して不満を持っている」(チョウ氏)ことを認識したからだという。「多くのコンシューマーユーザーには、このままのインタフェースでは簡単には使えないと考えた」(チョウ氏)

以下の動画の30秒あたりを見ると電話帳が出てくるのですが、ここのフォントやスクロールバーの感覚が非常に懐かしいです。

var po = new PeeVeePlayer(“48004659/48004659peevee75045.flv”, 78, 480, 407 ); po.write();

アクションへの執着:サッカーのゴールキーパー

じっとしている方がましなことが多い。エリートサッカーゴールキーパーのアクションへの執着。
@timoreillyのTweetから
PDFはこちら

Journal of Economic Psycologyに以下の記事が出版される予定です。

Action bias among elite soccer goalkeepers: The case of penalty kicks

Abstract

In soccer penalty kicks, goalkeepers choose their action before they can clearly observe the kick direction. An analysis of 286 penalty kicks in top leagues and championships worldwide shows that given the probability distribution of kick direction, the optimal strategy for goalkeepers is to stay in the goal’s center. Goalkeepers, however, almost always jump right or left. We propose the following explanation for this behavior: because the norm is to jump, norm theory (Kahneman and Miller, 1986) implies that a goal scored yields worse feelings for the goalkeeper following inaction (staying in the center) than following action (jumping), leading to a bias for action.

サッカーのペナルティーキックでは、キックの方向を明確に見極められる前にゴールキーパーはアクションを決定します。トップリーグやチャンピオンシップでの286のペナルティーキックの方向の確率分布を調べた結果、ゴールキーパーにとってのベストの戦略はゴールの真ん中にいることです。しかしほとんどの場合、ゴールキーパーは右か左にジャンプします。

我々はこの行動の根拠を以下のように分析しています。

どちらかの方向にジャンプすることが一般的ですので、norm theory (Kahneman and Miller, 1986)によると、真ん中にいてアクションを取らなかった場合の方が、どちらかにジャンプした場合よりも、ゴールを取られたときに強く後悔します。この結果、アクションに執着します。

norm theoryは、「より一般的と考えられている行動をとったときの方が後悔が少ない」というものです。アクションを取ることが一般的と考えられている場合は、それが真に有効ではなかったとしても、アクションを取った方が後悔が少なくなります。逆にじっとしていることが一般的であれば、じっとしていた方が後悔が少なくなります。

エリートのゴールキーパーのように、非常に経験と専門性が高く、成功に対する報酬が高い場合であっても、このnorm theoryの影響を受けてしまうというのがこの論文の主旨のようです。

The action/omission bias has received attention in psychology, but hardly any in economics (one exception is Patt and Zeckhauser, 2000). We think, however, that it has very important implications for economics and management. For example, the action/omission bias might affect the decision of investors whether to change their portfolio (action) or not (inaction). It can affect the choice of managers whether to leave their company’s strategy or investments unchanged (inaction), or to change them (action). The bias may also have implications for the decision of workers whether to stay in their job (inaction) or look for a better job (action), and one’s decision whether to re-locate to another city or not. In the macro-economic level, the action/omission bias may also affect decisions made by governments and central banks whether to change various policy variables (interest rates, tax rates, various types of expenditures, etc.), or leave them
unchanged.

アクション/オミッションのバイアスは心理学では注目されていますが、経済学ではほとんど注目されていません(例外としてPatt and Zeckhauser, 2000)。しかし、我々はこれが経済学および経営学に大きな示唆を与えると考えています。例えば、アクション/オミッションのバイアスは、ポートフォリオを変える(アクション)か変えないか(オミッション)と考えている投資家の判断に影響を与えます。会社の戦略や投資をそのままにするか(オミッション)、変えるか(アクション)を考えている経営者の選択に影響を与えます。従業員に取っては、会社にそのまま残るか(オミッション)、より良い仕事を探すか(アクション)にも影響するかもしれません。また別の都市に住み替えるかの判断にも影響するかもしれません。マクロ経済学のレベルでは、政府や中央銀行が金利、税金、公共支出を変えるか、それともそのままにするかにも、このアクション/オミッションのバイアスは影響を与えるかもしれません。

バイオベンチャーと金融危機

San Diegoのバイオベンチャーの話ですが、バランスシートを分析しながら、金融危機で運転資金がなくなりそうな企業をピックアップしている記事がありました。

見ているのは非常に簡単な指標で、現時点でどれだけの現金を所有しているか、そしてそれをどれぐらい使っているかです。

なお、Eun Yangが10月に発表したレポートによると、株式公開されていて利益が上がっていない248のバイオベンチャーのうち、半数の企業は1年分の運転資金が残っていないとのことです。

上述のレポートでは、San Diegoに所在地があり株式公開されているベンチャー企業のうち23の企業を分析しています。その結果、現金$100 M (約100億円)を持っている企業はわずか10社だったということです。

金融危機によって資金調達や借り入れが非常に困難になっていきますので、運転資金を自前で持っていない企業は破綻の危機に直面することになってしまいます。

私は日本のベンチャー企業の資金繰りの状況を知りませんが、アメリカ以上に利益を出しているところは少ないので、金融危機で大きな影響がでてくることが予想されます。

アップデート
ちょっとグーグルしたら、僕が知らないだけで、既にいろいろ情報がありました。

株式市場は考えるだけ無駄?

TwitterでTim O’ ReillyのTweetから。Patterns and the Stock Market

毎日、ニュース番組には株式アナリストが登場していろいろコメントしています。

「昨日行われた大統領選挙への期待感から市場は大きく値上がりをしましたが、今日は実質経済の指標が発表されたのを受けて投資家が落胆し、あわてて売りに転じる展開となりました。」などのように言っているやつです。

いつも思いますが、精神薄弱な子供の日記を読んでいるようです。

今回はあれは無駄だよという話です。

ちなみにこれは株式だけなく、例えば営業・マーケティング部が毎月の売り上げの数字を社長に報告したりするときにも、全く同じように行われています。人間は本質的にランダム性の取り扱いが苦手で、統計的に理解しようとしないようです。

The market, after all, is a classic example of a “random walk,” since the past movement of any particular stock cannot be used to predict its future movement. This inherent randomness was first proposed by the economist Eugene Fama, in the early 1960’s. Fama looked at decades of stock market data in order to prove that no amount of rational analysis or knowledge (unless it was illicit insider information) could help you figure out what would happen next.

株式市場は結局は「ランダムウォーク」の典型例です。ある銘柄の過去の動向を元の、その将来の動きを予想することは不可能だからです。このランダム性を最初に主張したのは1960年代はじめのEugene Famaです。Famaは数十年間の株式市場のデータを分析して、合理的な分析や知識(インサイダー情報以外の)をどれだけ当てはめても、次の値動きは予想できないと証明しました。

Alas, the human mind can’t resist the allure of explanations, even if they make no sense. We’re so eager to find correlations and causation that, when confronted with an inherently stochastic process – like the DJIA, or a slot machine – we invent factors to fixate on. The end result is a blinkered sort of overconfidence, in which we’re convinced we’ve solved a system that has no solution.

残念ながら、人間の脳は、物事に説明を付けないではいられません。その説明が無意味であってもです。実質的にはランダムな現象であっても、関連性や因果関係を探そうとします。それがダウ平均株価であってもスロッタマシーンであってもです。我々はいろいろな因子を発明して、それに注目します。その結果、我々は本来的には解が存在しないシステムであるにもかかわらず、解を導いたと信じ込み、一時的な自信過剰になるのです。

Look, for example, at this elegant little experiment. A rat was put in a T-shaped maze with a few morsels of food placed on either the far right or left side of the enclosure. The placement of the food is randomly determined, but the dice is rigged: over the long run, the food was placed on the left side sixty per cent of the time. How did the rat respond? It quickly realized that the left side was more rewarding. As a result, it always went to the left, which resulted in a sixty percent success rate. The rat didn’t strive for perfection. It didn’t search for a Unified Theory of the T-shaped maze, or try to decipher the disorder. Instead, it accepted the inherent uncertainty of the reward and learned to settle for the best possible alternative.

以下のエレガントな実験を紹介します。T字型の迷路にネズミをおき、右側もしくは左側にエサをおきます。エサを置く場所はランダムに決定されますが、60%の確率で左側におかれるようになっています。さてネズミはどのように反応したでしょうか。ネズミは左側の方が分がいいことをすぐに理解し、その結果いつも左側に行きました。その結果、成功率は60%です。ネズミは完璧を求めませんでした。「T字型迷路の統合原理」を発見したり、この乱雑さの裏に隠れた暗号を読み解こうとはしませんでした。ランダムさをそのまま受け入れ、そしてできうる限りの選択をしました。

The experiment was then repeated with Yale undergraduates. Unlike the rat, their swollen brains stubbornly searched for the elusive pattern that determined the placement of the reward. They made predictions and then tried to learn from their prediction errors. The problem was that there was nothing to predict: the randomness was real. Because the students refused to settle for a 60 percent success rate, they ended up with a 52 percent success rate. Although most of the students were convinced they were making progress towards identifying the underlying algorithm, they were actually being outsmarted by a rat.

同じ実験をYale大学の学部生で行いました。ネズミと違い、彼らのでかくなった脳みそは、褒美の位置を決定するパターンを、無駄に探そうとしました。予想を立てては、予想と現実のずれから学習しようとしました。問題は、予想するべきものが何もなく、真にランダムだったということです。学生たちは60%の成功率に満足できなかったがために、結果として52%の成功率になってしまったのです。学生たちは、裏に隠された原理の解明に向けて少しずつ前進していると確信していましたが、実際にはネズミに負けていたのです。

So don’t listen to those talking heads telling you why the market rose or fell. They’re just like those Yalies, convinced they’ve found a pattern where none exists.

ですから、株式市場が上がった原因や下がった原因をしゃべっている頭でっかちの解説者の言うことを聞いてはいけません。彼らはあのYale大学の学生と同じです。パターンが存在しないにも関わらず、パターンがあると確信してしまっているのです。

検索フォームはGETにするべきかPOSTにするべきか

GETの利点と言えば、

  1. 検索結果をブックマークしたり、URLをコピーしたり、リンクを作ったりできます。POSTを使っている場合は、検索トップページにしか移動できません。
  2. アクセスログにクエリーが保存されますので、どのような条件で検索されたかを後で分析することができます
  3. GETはプロキシサーバでキャッシュされますので(キャッシュが恩になっていれば)、サーバへの負担が減らせます

ということで僕は圧倒的にGETにするべきだと思いますが、世の中のウェブサイトを見ると、POSTを使っているウェブサイトがかなり多いです。

W3Cでも

  • Use GET if:
    • The interaction is more like a question (i.e., it is
      a safe operation such as a query, read operation, or lookup).
  • Use POST if:
    • The interaction is more like an order, or
    • The interaction changes the state of the resource in a way that
      the user would perceive (e.g., a subscription to a service), or
    • The user be held accountable for the results of the interaction.

となっていますので、GETを使った方がいいと思いますが。GoogleやYahooもGETを使っています。

ということで、皆さんにお聞きしたいのですが。
POSTを使った方が良いというケースはどのようなケースでしょうか?

ちなみにバイオのウェブサイトで調べてみました。

GET派

POST派

ごちゃ混ぜ派

  • BioCompareのAntibody SearchここはほとんどのパラメータはGETで送っていますが、メーカーごとの絞り込みをするとき、そこだけはPOSTになります。

長さは重要です!454シークエンサーの面白い広告

Roche Applied Scienceの454シークエンサーの広告。

“Size Matters”というのはアメリカではよくあるギャグで、男性の下半身の大きさへのこだわりを意味しています。

そして “Length Matters”。

lengthmatters.png

「ふしゅう」「みぞうゆう」から見える、裸の王様 麻生太郎

麻生首相の漢字読み違えが多発しています。
朝日新聞読売新聞

僕も漢字が苦手(高校卓球のチーム紹介をしているときに「千歳烏山高校」を「しまやま」と読んでしまった武勇伝あり)ですので親近感がわかなくもないのですが、その僕の漢字力をさらに下回っているようです。

漢字力が足りないだけなら、原稿を平仮名で書けばいいので、恥ずかしいという以外は特に問題はありません。

もっと大きな問題は、これで麻生太郎が裸の王様であることが判明した点です。

麻生総理の、この熟語を学ぶ中学生、高校生以来50年ほどの人生で、いったい何回「踏襲」を「ふしゅう」と読んだことでしょうか?私が唖然とするのは、誰一人として、それを彼に注意できなかったということです。裸の王様のまま、中学生から大人になってしまったのでしょうか・・・・。

ふしゅうより

ただ、これが外相時代からの間違いということになると、かなり問題だと思います。

ということは、周りの誰も、指摘していないってことですよね(まさか、何度言われても覚えられないなんてことではないでしょうから)。

周りの人が、こんな些細なことすら指摘できない人というのは、かなり問題があるかと思います。漢字が読めないなんてことより、こっちの方がよほど問題ではないでしょうか

自分の経験で言うと、組織のトップが裸の王様だと、これはもうどうにもならないですよ。全く打つ手はありません。

あーめん

お金のことを考えるだけで、人は独立と努力を好むようになる

ミネソタ大学の心理学者Kathleen D. Vohsが書いた研究論文(要旨全文)。

モノポリーのゲームをさせたり、おもちゃのお金を与えたり、お金のスクリーンセーバーを見せたりして、お金のことを考えさせた群と、対照群の比較。

その結果、お金のことを考えされた人たちは、1) 人を助けることが減り、2) 座るときの他人との距離が増し、3) 一人で仕事をしたがり、4) 助けを呼ぶことが減りました。一方で、5) より多くの仕事をし、6) 困難な仕事でもあきらめにくくなりました。

どっちのタイプが好きかは価値観の問題です。

あなたはどっちが好きですか?

ちなみに僕がイギリスで小学校の8年を暮らしてから、日本に帰ってきたときの印象で言えば、日本は「お金のことを考えさせた群」にかなり近いと感じます。

売り上げ予想(売り上げ予算)は無駄だ

一般の企業で行われている売り上げ予想は相当にいい加減です。

現状分析よりも社内政治の方が幅を利かせています。会社の現状よりも社長の願望の方が強く反映されます。社長の願望に対して現場がどれだけ抵抗をするか、あるいは社長にゴマをするかで売り上げ予想や予算が決まっていきます。

これは別に社長や管理職が無能だということではなく、政治の方がしばしば現状よりも強いという世の中の仕組みによるところが大きいです。

私が経験した上述とほとんど同じことをまとめたブログがあったので紹介します。

Forecasting Can Be a Waste of Time

  • 社長は投資家向けにバラ色の売り上げ予想を見せたがります
  • そのためには、営業から上がってきた予想は無視されます
  • したがって、下から上がってきた予想を足し合わせ、経営陣と調整していくのは時間の無駄です

Why “Scientific Forecasting” Flops

  • 科学的に売り上げを予想する方法はありますが、これはたいてい無視されます
  • 科学的に売り上げ予想されると、営業は自分のノルマ(目標)を調整できなくなります(低いノルマを勝ち取ることができれば、ボーナスが弾みます)
  • 科学的に売り上げ予想されると、営業マネージャーはノルマを使って部下をコントロールすることができなくなります
  • 科学的に売り上げ予想されると、マーケティング部の活動の効果がないことがばれてしまいます
  • 製造部と経理部は長くて痛い経験より、営業部が少しでも関与した売り上げ予想は、全く信用に値しないと確信しています
  • 科学的に売り上げ予想されると、社長は投資家に対して好業績予想を示すことができなくなるのを恐れています

How to Fix Your Forecasting

  • 顧客視点で営業プロセスを見直しましょう
  • CRMで営業プロセスを管理しましょう
  • 売り上げ予想と営業のモチベーション管理は切り離しましょう
  • 正確だけど一見控えめな予想を出す人を罰するのではなく、賞賛しましょう

最後に

僕が目の当たりにした、売り上げ予想(目標)づくりの無駄

  • 二重目標:ある事業部で普通の目標と「チャレンジング目標」の二重設定しました。普通の目標を使って予算は作るし、営業のノルマを決めます。しかしこの目標は低いと社長に文句を言われてしまうので、事業部長は「チャレンジング目標」を設定してかわそうとしました。その「チャレンジング目標」は全く何にも使われませんでした
  • 過剰な時間投入:ある事業部では売り上げ目標作りだけのために何日も何日も投入していました。それも当事者を含めたミーティングをしながらではなく、数人で密室で。出てきた目標はもちろん納得性がありません。しかも、その予算をどうやって達成するかを議論する時間は完全になくなってしまいました。おかげで経費予算は単純に例年通りと自動的に決定されてしまいました。
  • 確信犯1:まだ実体のないビジネスにいきなり1億円の売り上げ目標を設定。ふたを開けてみると1円も売り上げはありません。日本の社長が本社の社長に渡すための予想で。売り上げが足りないという問題点を、数ヶ月でも先延ばしするための工作。
  • 確信犯2:事業部長が営業のノルマをこれ以上引き上げられなくなってしまったときの最後の手段です。営業部が関与していないビジネスの売り上げの水増し。このビジネスの顧客は自ら予算が昨年を下回ることを示唆しているに、対前年150%の売り上げ予想を提出しました。

アップル社をやめた役員は、その後成功しているか?

アップル社をやめた役員が、新しく入った会社で成功しているかどうかを分析した記事です。

  • NeXT時代からSteve Jobsとともに歩んで、アップル社のハードウェアとiPodを担当し、Palm社ではR&Dとエンジニアリングを担当している John Rubinstein。
  • John Rubinsteinの後任としてアップル社のハードウェアを担当し、Dell社でiPodのコピーを作ろうとしているTim Bucher。
  • アップル社のInteractive Media Groupを担当し、ソニーに引き抜かれたTim Schaaff。

みんななかなか思うようにいかないようです。

でもこれは世の中で一般的なことだと僕は思います。

人が仕事で成功するかどうかは、その人の能力そのものよりも環境が大きな影響を与えます。なぜならば Aという環境でうまくいくことも、Bという環境ではうまくいかないことが多いからです。アップル社でうまくいった行動がソニーでうまくいくとは限らないし、Dellでもうまくいきません。

野球の野村監督は貧乏で弱小なチームを強くすることには確実に成功しています。しかし阪神のように注目度の高く、お金もある(幹部も口うるさい)人気球団では力を発揮できません。

中途入社で人を採用するとき、その人の前の会社での実績などを見ることは多いのですが、単に成功したか失敗したかを見るのではなく、その環境・コンテキストを見ることが重要です。そして何よりも、成功したか失敗したかという結果だけを見るのではなく、その人がいったいどのような価値観を持っていて、どのような行動をとったかに注目した方がいいでしょう。

同じ人であっても、得られる結果とか実績はおかれた環境によって大きく変わってしまいます。しかし、その人の価値観と行動は驚くほどかわりません。人間というのは自分の思考・行動パターンを変えるのはかなり苦手です。

野村監督であれば、自分の野球理論を授業するのはわかっています。彼はそれ以外の監督スタイルはできないのです。従ってその球団の選手がその理論を素直に受け入れるような選手かどうかで結果は大きく変わります。野村再生工場が機能することによって、野村監督は選手から大きな信頼を得ています。逆に外部からFAを取るような球団ですと、野村再生工場が不要になって、監督が選手の信頼を受けるチャンスが減ります。

逆に言えば、自社に中途採用の人を招き入れる管理職の人は、自分の会社の状況を正確に理解し、新しく雇い入れる人に何をしてもらいたいかを具体的に良く考えておかなければいけません。そして、価値観と過去の行動をベースに人を採用するべきです。

業務を理解できていない無能な管理職は実績だけで人を採用しがちですが、そういうことをすると会社の中は価値観がバラバラになり、整合性のない行動が行われるようになります。