コンテンツの消費をビジネスにするAmazon、コンテンツ制作をビジネスにするApple

Amazonの新しいKindle Fire HDの発表を見て、AppleとAmazonが今後覇権を争うようなことを言っている評論家がインターネット上にたくさんいましたが、僕はあまりそう思いませんでした。

確かにAppleとAmazonはかぶるところが多いのですが、両者のイノベーションの方向が根本的に違うのです。

AppleはIT技術を通して、コンテンツを制作するツールをプロ及び大衆に提供する会社です。これは昔ではDTP、そして最近ではiLife, iBooks Authorなどで見ることができます。iPod発売前にiTuneが出た当初も宣伝コピーは”Rip, Mix, Burn”であり、単に音楽をPCで消費するのではなく、Mixという創作活動に大きなウェイトが置かれていました。

AmazonはタブレットPCをコンテンツ配信・閲覧ツールとして位置づけていて、その意味においては確かにコンテンツを握っていることが市場で非常に大きな力になります。

AppleはiPadをコンテンツ配信・閲覧ツールとして位置ていません。近い将来にはPCに代わるデバイスとして位置づけています。iPhotoやiMovieで音楽やビデオを編集することができますし、Garage Bandで音楽を作ることができます。スケッチをしたりするためのアプリケーションもサードパーティーからたくさん提供されていますし、Pagesをはじめとして文章を書くためのアプリも充実しています。

Amazonは世の中の見る価値のあるコンテンツは市場で発売されているものであり、それはAmazonを通して買ってもらいたいと思っています。

対してAppleは、創造力は誰にでもあり、誰でも高品質なコンテンツが作れるようにすることを一貫して会社の使命と考えています。

Appleもコンテンツを消費するためのツールはあり、そこはAmazonとかぶります。iTunes, iPodとApple TVです。iPadは違います。

個人的にはAppleのようにメディアの可能性をとことん追求して、新しいチャレンジをどんどんしてくれる会社がうれしいです。メディアの可能性はたくさん残っています。Amazonにように既存コンテンツの消費方法だけに注力するのは、世の中全体としては実にもったいない話です。