ChromebookがNetbookと同じ道をたどるのは割と明白

AcerのChromebookのUSでの販売が好調だという記事が出てきました。

さて、関心事は果たしてMicrosoft Windowsが廃れて、代わりにGoogleのChrome OSが主流になるかどうかということです。

これに関しては数年前にNetbookの例がありますので、答えは割と簡単に出ます。

「仮にChromebookが成功しても、Netbook程度で終わる」というのはかなりの確度で言えます。

Microsoftが反撃するというのが予想されるシナリオ

今はChromebookが売れ始めたばかりなのでMicrosoftは静観しています。しかしもしも売れ続ければMicrosoftは反撃に出ます。おそらくはNetbookの時に低価格のOSを提供していたのと同じ戦略で、低価格PC用のOSを提供し始めるでしょう。

Netbookの時は、Linux搭載Netbookのシェアが増えるのを阻止するため、Netbook限定でWindows XPを提供したり、Windows 7 Starterを提供したりしました。Chromebookに対してもMicrosoftは同じ戦略をとるはずです。今話題になっているAcer C7 ChromebookはIntel Celeronが搭載されていて、RAMも2G載せています。ハードディスクも320Gあります。十分にWindows 7を動かすことができますし、Windows 8だって動きます。Windowsを搭載する上での技術的な障害はありません。ですから反撃は技術的に可能です。

残るのは価格戦略の問題です。Microsoftが反撃する上での価格戦略上の障害があるのかどうか。AcerはC7 Chromebookを$199-$229で販売するそうですが、品質的には決して十分なものではないようです。Amazon.comで見ると、例えばAcer Aspire Oneとほぼ同等の性能でこっちは定価が$330、Amazonでは$280で販売しています。価格差は大きくありません。Microsoftがより積極的な販売戦略をたて、なおかつSkyDriveの無料使用分を付ければ十分にChromebookと価格で競争できます。しかもWindows 8を搭載したまま。

したがって今回は、もしMicrosoftが反撃を開始するとすれば、Acerなどの低スペックモデルに割安でWindows 8を供給し、そしてSkyDriveの無料使用分を追加する形で反撃することが十分に予想されます。Google Docsの対抗製品であるWindows 365の無料使用分を付ける可能性もあります。

もしMicrosoftが反撃してきて、Chromebookが厳しいという状況になってくれば、Googleは最近お得意の赤字戦略に打って出るはずです。Nexus 7タブレットやNexus 4スマートフォンで見せている戦略です。特定のメーカーと組んで、赤字をかぶる価格でより積極的な低価格品を出してくるはずです。Netbookの頃との一番の違いはここです。Netbookの時は赤字をかぶる会社は通信会社でした。E-Mobileなどと契約すれば本体価格を無料にしてくれるものがありました。Googleが赤字をかぶる覚悟でいるというのはNetbookの時にはなかったものですが、この業界は常に赤字をかぶるつもりでいる会社はいますので、最終的にはNetbook時代とあまり変わらなくなる可能性があります。

結論としては、Microsoftが反撃することは十分に可能であり、Chromebookが売れ始めれば早めに反撃を開始すると予想されます。Googleは平気で赤字をかぶる会社ですが、MicrosoftもWindowsの市場を奪われるわけには行かないので積極的に最後まで戦うはずです。最終的にはChromebookを製造販売するメーカーが息切れをするだろうと予想されます。

どうしてiPadに対してMicrosoftは反撃しなかったか

iPadはかなりWindowsを脅かしていますが、Microsoftは十分な反撃ができていません。なぜならばハードウェアが全然違うし、操作性も全然違うからです。Microsoftはおそらく十分に脅威を認識していたと思います。しかし正面から反撃する手立てがなかったのです。技術的に反撃できませんでした。iPadの類似品が作れませんでした。またGoogleみたいにiPadをそっくり真似ることをしないのは、Windowsとの関係を考えなければならないからです。この面からも類似品を作るのは困難でした。

それに対してChromebookは技術的には容易に反撃できます。WindowsやOfficeなどの戦略との関係を考えても、反撃するのは整合性があります。問題は価格戦略だけですが、これは危機感の問題です。危機感を持っていれば利益を圧迫してでも反撃に出ます。

Microsoftの牙城はどうすると崩せるのか

Microsoftの牙城を崩す試みは今まで何回となく起こっています。古くはシンクライアントがありました。Netbookも当初はLinuxを搭載する動きがあるなど、Windowsに対抗する面がありました。

でもWindowsは少しも揺るぎませんでした。なぜか。

実は1984年に若かりしBill Gates自身が語っています。

To create a new standard, it takes something that is not just a little bit different. It takes something that is really new, and really captures people’s imagination.

Chrome OSはそのレベルには遠く及びませんが、iPadは届いていたということです。

MS-OfficeがLotus 1-2-3に勝ったのはなぜか?

昔はオフィスソフトウェアといえば、Lotus 1-2-3やWordPerfectが圧倒的なスタンダードでした。MicrosoftはMS-Officeでそれをひっくり返しました。したがって市場をひっくり返すことは決して不可能ではありません。

しかしそのためにはパラダイムシフトが伴う必要があります。MS-Officeがスタンダードを奪った時のパラダイムシフトはWindows 95です。GUIが一気に普及しました。それまでのDOSとは全く違う、画期的に違うUIが生まれ、そしてMacintoshでGUI開発の経験を積んでいたMicrosoftは一気にPCの世界でもオフィスソフトウェアのトップメーカーになりました。

Bill Gatesが自ら語ったように、10年後の画期的なGUIの変化にともなってMS-Officeが一躍スタンダードになったのです。

このようなパラダイムシフトは今、PCの世界では起こっていません。Chrome OSがそれを起こす力もありません。

Galaxy Noteなど Phabletの真の価値

2012年に予想外に売れたモバイルデバイスといえばPhabletです。Phabletは5インチから6インチ程度のディスプレイを持ち、なおかつスマートフォンのようの電話ができるものです。2012年にSamsungがGalaxy Noteシリーズでこのカテゴリーを開拓しました。

大きすぎて電話として使えないという意見がある一方、絶賛する意見も多く、両極端に割れている製品です。毎月100万台売れているという推測もあり、ヒット製品なのは間違いありません。

Phabletが本当に新しいカテゴリーなのか、今後本当にヒットを続けるのかは不明です。私が一番気になるのは、売れている理由がイマイチはっきりしないことです。

Phabletの売りは画面サイズではない?

例えば価格.comのレビューを見る限り、一番のメリットは電池の持ちの良さという意見が多いです。次いでスピードが多く、画面のサイズはさほど多くない印象です。

画面の大きさは実質的な差になっていない

実際、画面が大きいとは言え、タブレットのようにPC向けのウェブサイトをストレスなく見られるほどには画面は大きくありません。頻繁にズームする必要があるのはスマートフォンと変わりません。またアプリはタブレット用のものではなく、スマートフォン用のものを使います。同じレイアウトの画面が引き伸ばされて表示されます。大画面のメリットはそれほど大きくないのではないかとも言えます。

以下はiPhone 5 (4インチ), Galaxy Nexus (4.65インチ), Galaxy Note 2 (5.5インチ)で同じウェブサイトを見たスクリーンショットです(寸法を合わせています)。Galaxy Note 2では確かに文字が大きく見えますが、小さい文字が読めないのは同じで、結局ズームする必要があります。

スクリーンショット 2013 01 28 11 39

アプリの方がさらに差がありません。Galaxy Note 2はGalaxy Nexusの画面をそのまま拡大しただけです。フォントは大きくなっているので老眼の人には優しいのですが、表示されるメール件数もほとんど差はありません。iPhone 5と比べても差が無いと言えます。

Gmail 2013 01 28 11 43

電池の持ちは良い

LTE対応スマートフォンの電池の持ちの悪さはかなり厳しく言われており、Galaxy Note 2などのPhabletの電池の持ちが大きなセールスポイントになるのはうなずけます。

例えば電池の持ちが非常に悪いということで評判の悪かった富士通のArrows X LTEは電池容量が1460mAhです。画面サイズは4.3インチ。それに対して、画面サイズが4.5インチのGalaxy S II LTEが1850mAh。画面サイズが4.8インチのGalaxy S IIIは2100mAh、5.3インチのGalaxy Noteで2500mAhとなっています。

また連続待ち受け時間についてはこの記事にまとめがありますが、待ち受け時間はGalaxy SII LTEが250時間、Galaxy SIIIで270時間、Galaxy Noteで310時間と改善されています。

価格.comのレビューを見る限り、この電池容量の違いは大きな違いとなっているようです。

UIのスピード

UIのスピードが遅いのは長らくAndroid機の大きな悩みでした。最新のAndroid機はこれはOSのバージョンアップとCPUのマルチコア化でこれを解消してきています。Galaxy Note IIは4つのCPUコアを持ち、またGalaxy SIIIの最新モデルも4つのコアを持っています。UIは大きな改善をしています。

上記より、phabletカテゴリーは画面サイズで規定されていますが、訴求点は画面サイズではない可能性が高いと私は考えています。

これはネットブックと同じ状況

ネットブックの時も、売れている原因とネットブックの定義が合いませんでした。

ネットブックの定義はAtomなどの低パワーCPUを心臓とし、画面サイズが10インチ以下のラップトップでした。これは人工的に押し付けられた制限であり、このスペックに収めない限り、Windowsを低価格で搭載することができませんでした。またインテルも制限を課していて、画面サイズが10.2インチ以下でないとそもそも低価格のAtom CPUが搭載できませんでした。

ネットブックの定義は画面の小ささとCPUスペックの低さでしたが、訴求点はこれではなく価格の安さでした。ネットブックの定義は低価格を実現するための手段に過ぎず、あべこべな状態でした。

参考:ネットブックとラップトップの比較 2009

Phabletも訴求点と定義があべこべ

Android携帯がiPhoneに追いつくためにまず必要だったのは、UIの滑らかさでした。AndroidはCPUパワーの使用効率が悪いため、iPhoneと同じ滑らかさを実現するためには強力なCPUが必要でした。しかしそのためには消費電力が犠牲になりました。それを補うために電池容量を拡大し、それを納めるために電話全体のサイズを大きくしました。

またLTEが登場しAndroid機はいち早くこれを採用しましたが、LTEは3Gよりも消費電力が大きくなります。消費電力増大を補うために各メーカーは電池を巨大化する必要があり、スマートフォンのさらなる巨大化でそれを補いました。

なおiPhoneの場合は、消費電力増大および電池容量増大を嫌って、LTEの消費電力がより少なくなる部品が供給されるようになるまでは採用せず、一年間見送りました。

このようにAndroidスマートフォンの巨大化は電池容量の問題と密接に関係しており、Phabletもその延長線上にあると考えることができます。そうなるとPhabletの真の訴求点と、Phabletカテゴリーの定義があべこべになっていると言えます。

カテゴリーの定義と訴求点がひっくり返っていることの危うさ

カテゴリーの定義と訴求点があべこべですと、ちょっとした技術革新でカテゴリーが消滅する可能性があります。例えばAndroidスマートフォンの電池の持ちを改善する技術が生まれると、Phabletカテゴリーが急速に魅力を失う可能性があります。これがあべこべな状態の危うさです。

ネットブックの場合、画面の小ささは一つの魅力でしたが、最大の魅力は低価格でした。しかし今販売されているノートパソコンを見ると、今ではネットブックと価格差がありません。Atomと1GB RAM, Windows 7 Starterのネットブックを買わなくても、5,000円追加するだけでWindows 8を搭載したAMD CPUのラップトップが買えますし、2万円を追加すればCore i3, i5と4GB RAM, Windows 8を搭載した機種が変えます。人工的な制限があるネットブックには全く魅力がなくなっています。

Phabletも同様です。画面サイズの大きさは、本当にあるニーズを満たすものではなく、電池容量を稼ぐために「人工的」に追加された機能と考えることができます。

本当の必要なのは電池容量です。

小さくても十分な電池容量の機種は近いうちに登場するか

Androidは常にiPhoneを追いかけています。そしてUIの滑らかさなど、最新の機種では追いつきつつあります。しかしCPUパワーの使用効率は明確に悪く、Galaxy SIII αの場合は4コアCPUを1.4GHzで動かしています。それに対してiPhone 5は2コアCPUを1GHzで動かしています(参考資料:ただしCPUのクロック数は可変のため一概に比較が難しい)。電池容量はGalaxy SIIIが2,100mAhに対してiPhone 5が1,440 mAhですが、電池の持ちのテストでは拮抗しています。

このように、AndroidでiPhoneと同様のUIの滑らかさを実現するためには、まだまだ大きな電池が必要なようです。

しかししばらくすれば、十分なCPUパワーを低消費電力で引き出せる製品はでてきます(ムーアの法則により)。したがってより多くのCPUパワーを必要とするような技術革新が起きない限り、低消費電力化は自然と進みます。ただ電池容量の問題はまだまだ大きいので、それを補うだけの電力消費改善はしばらく時間がかかるかも知れません。

裏技

本当に必要なのが大画面化でなく、電池の持ちであるならば、別の裏技が生まれる可能性があります。HTC miniはその一つの可能性を提示しているように思います。

電池を持たせることが主で、大画面が従であるならば、本体を大きくしつつ、手元の子機を小さくする発想が生まれます。無駄に大画面の電源を入れる必要も無く、電池の持ちはより一層長くなります。

今後、もっと割り切ったような製品も登場してくるかも知れません。

それもある意味、楽しみです。

低価格のタブレットは破壊的イノベーションになるか

ドコモからも9,975円のタブレットが発表されたように、相変わらず赤字でタブレットを売るのが流行っています。タブレットを赤字で売る代わりに電子書籍やビデオ、アプリなどのコンテンツで儲けを出そうというのが戦略です。問題は終着点として最終的にiPadに勝てるようになるのか、それともAppleの絶対的な立場は揺るがず、別の市場でコンテンツ消費に特化したタブレットが生き残るのかどうかです(今の電子辞書のように)。

破壊的イノベーションによってマーケットの覇者が入れ替わる仕組みはClayton Christensen氏が”Innovator’s Dilemma”で理論的に解説していて、イノベーションにおけるスタンダードな理論になってきています。こに理論に即して話しますが、この理論をどう適用するかは人によってまちまちなので、あくまでも一つの解釈ということになります。

前提は技術水準がニーズを飛び越していること

Innovator’s Dilemma が起こるには前提があるとChristensen氏は述べています。それは技術水準が進化した結果、かなりの部分の消費者のニーズを飛び越してしまっているということです。つまりもっと性能が限定的なものでも十分に顧客が満足できるという状態に達していることが必要です。

どうしてこれが必要かというと、破壊的イノベーションはまず既存の主力企業が最初は脅威を感じないことから始まるからです。主力企業が「ローエンドは他企業に任せてよい」と思うことから破壊的イノベーションは始まります。そういうローエンド市場がそもそも存在することが必要です。

iPadが発表される前にネットブックがPC市場で爆発的に売れましたが、ネットブックはローエンドPCでした。これが爆発的に売れたということはPC市場全体が顧客のニーズを飛び越していたことを強く示唆していました。CPUパワーが大幅に落ちるタブレットにPC市場が飲み込まれつつあるのは、その延長線上のことです。

AmazonのKindle FireやGoogle Nexus 7の場合は性能的にiPadを目標にしています。iPadと同等以上の性能をプロモーションしています(スペック上では確かに超える部分もあります)。そうしないと顧客は買ってくれないのです。つまりまだまだタブレット市場では顧客ニーズを飛び越す技術水準には到達していません。少なくとも先進国市場ではローエンド市場は存在しません。Kindle FireもNexus 7もローエンド製品ではなく、ハイエンド製品を赤字でもいいから安く売ろうという試みです。

ローエンド市場が存在しないということは、Appleは決してハイエンド市場に逃げないし、市場で何ら譲歩しないことを意味しています。

マーケットリーダーが対抗できないような戦略が必要

マーケットリーダーに勝つためには、マーケットリーダーが対抗できないような戦略を採用する必要があります。マーケットリーダーは力が強く資源も豊富なので、そに気になれば新規参入企業を一蹴できます。それをさせないというのが破壊的イノベーションの妙です。

マーケットリーダーが新規参入企業を許してしまう理由は利益構造だったり、要求水準が非常に高い代わりに利益も良い顧客を重視しすぎたりすることだったりします。いろいろありますが、とにかく対抗できない必然的な理由があります。

問題はAppleがGoogleやAmazonに対抗する気になれるか、そして効果的に対抗できるかです。つまり電子書籍配信やビデオ配信、音楽配信など、GoogleやAmazonが利益に源泉にしようとしているサービスをAppleも立ち上げ、そして対抗できるかです。答えは簡単。Appleはもうこれらをずっと前からやっていて、音楽配信に関しては大成功しています。Amazonは電子書籍では成功していますが、それ以外ではまだまだです。GoogleはYouTubeなどの無料サービス以外ではこれといった成功はなく、基本的にはまだお金を払ってもらうのを苦手としています。

つまりGoogleやAmazonのような戦略はAppleも十分に採れて、その気になればAppleの方がうまくできる可能性だってあります。Appleが対抗的にiTunes storeのコンテンツの価格を下げれば、GoogleもAmazonも対抗値下げを余儀無くされ、コンテンツで回収するというビジネスモデルが立ち行かなくなります。

Kindle Fireはどうなって行くのか

この日経BPの記事がすべてをまとめているような気がします。待ちわびたKindle Fire HDはちょっと残念な端末だった

  1. サイズも重さもイマイチで、開発投資が不十分。
  2. アプリはAndroidと同じものであっても再度Amazonから買わないといけない。

Kindle FireでAmazonが狙っているのはiPadの代替ではないし、Nexus 7の代替でもなさそうです。破壊的イノベーションはおろか、タブレットとして成功することすら狙っていない感じがします。でもそうなるとまだまだ値段が高すぎます。おそらくはiPadが進化する傍で、ひたすら価格を下げて行くのではないでしょうか。機能の差がどんどん広がって行っても。そうやって電子書籍やポータブルDVDプレイヤーのような製品になって行くのだろうと思います。

Google Nexus 7はどうなって行くのでしょうか

Google Nexus 7の場合は違う使命があります。Googleとしては本当はハードウェアがやりたいのではなく、自分たちが損をかぶらないとiPadにいつまで経っても追いつかないからハードを作ったという経緯があります。本当はハードはメーカーに任せるつもりだったはずです。

したがって、Google Nexus 7は性能的に優れている使命があります。そして現時点では赤字で売らないとiPadに対抗できないので、赤字をかぶり続けるはずです。Amazonの場合はタブレットの性能を犠牲にして価格を下げるという戦略が採れますがGoogleはそれができません。Nexus 7は常にiPadを目指さなければならず、ローエンドからの破壊的イノベーションは仕掛けられない使命を持っているのです。

Nexus 7のような赤字で売る製品は、Googleとしてはなるべく早くやめたいはずです。Androidタブレットを各メーカーが自力で売れるようになれば、やめようと思っているはずです。でもその芽はまだありません。ズルズルと可能な限りの最高の製品を赤字で販売し続けるのだろうと思います。

2013年はAndroidタブレットの赤字合戦

ドコモがAmazonに対抗して9975円のタブレットを販売するという話で、もう訳がわからなくなってきました。

AmazonやGoogleが赤字で売るようになった訳ですから、Androidタブレットの値下げ合戦は歯止めが無くなっています。もともとAmazonやGoogleはコンテンツ販売で設けるという戦略を立てていたようですが、コンテンツ販売に社運をかける会社が増えれば、当然これにも値下げ合戦が飛び火します。

コンテンツ販売についてはAmazonに一日の長があるような印象を受けますが、それは送料無料や当日発送などで差別化が可能な物理的な商品の場合であって、電子的な取引では特にAmazonに利があるわけではありません。Amazonも価格で下をくぐられてしまえば、対抗せざるを得ません。

ということで2013年はAndroidタブレットの値下げ合戦を越えて、コンテンツの値下げ合戦が始まりそうです。それもGoogleと同じようにコンテンツ販売が本来の商売では無いものの、仕方なくこれに参入してくる、体力のある企業が多くなりそうです。

ポストPCってどんなイノベーション?

「イノベーション」という言葉はかなり意味が広くて、乱用されています。「イノベーション」という言葉は非常にイメージが良いので、ビジネスのロンダリングにも使われます。つまり本当は道徳的に問題のあるビジネスであっても、「イノベーション」という言葉を使えば良く聞こえます。ですから一年前にブログの中でGoogle、Amazon、Appleの「イノベーション」を簡単に区別し、分類しました

一年経ってまた読み直してみると、方向性は同じももの、違いがより極端になったと感じます。

Googleのイノベーション

前回のブログでは、現在のGoogleのイノベーションはかなりつまらなくなっていて、他の企業が成功させたビジネスを真似て、無償で配ることだと紹介しました。GMail, Google Apps, Androidを例に出しました。

2012年で変わったのは、「無償」では足りなくなってしまったことです。2011年の間に、「無償」だけではiPhone, iPadに対抗できないことがわかってきました。そこで2012年の後半からは「赤字で売る」ということをGoogleは始めました。Nexus 7を赤字で売って、何とかタブレット市場にAndroidを浸透させようとしています。

その一方でAndroidで直接利益が出せているのはSamsungだけという不思議な関係が生まれています。(GoogleもMotorola買収によるハードを作るようになりましたが、赤字)

Amazonのイノベーション

AmazonのイノベーションもGoogleと同じように「赤字で売る」ことにかなり注力するようになってきました。もともと超薄利多売で、会社規模の割にはほとんど利益が出ない会社ですが、それがどんどん顕著になってきています。

2012年はGoogleもAmazonも「赤字で売る」ことに懸命になっていた一年でした。

Appleのイノベーション

Appleのイノベーションは、今まで存在しなかったものを作り上げ、分かりやすく一般消費者に浸透させることです。もちろん毎年iPhone, iPadのような画期的な製品は作れませんが、驚異的に薄いiMacを発表したりするなど、今までのやり方を継承しているように見えます。また競合が「赤字」に懸命になっていても、引き続き良い製品を作ることに集中しているように思います。

本当にイノベーション?

赤字で売るというビジネスモデルは昔からあり、悪用されてきた歴史も有り、不正競争防止法などで規制の対象になっています。ハイテク分野だからGoogleやAmazonのやっていることはイノベーションと呼ばれることがありますが、かなり微妙だ思います。競合の排除をしているだけで、全体にプラスにならない可能性があります。

ポストPCについて思うこと

これだけスマートフォンやタブレットが話題になってくると、ポストPCという話題が当然出てきます。でもポストPCという言葉の定義ははっきりしていないし、「イノベーション」と同様に乱用されている言葉です。

同じような枠組みでポストPCを少し考えたいと思います。

既存の製品を代替するだけのポストPC

大半の評論家のイマジネーションはここでまでしかありません。ポストPC時代というのを、タブレットがラップトップPCに変わるものととらえています。あるいはもっとイマジネーションに乏しい人は、タブレットでメールをやったり、Facebookやったり、映画を見たりすることをポストPC時代と考えています。

でもこんなのメチャクチャつまらなくて価値のない考えです。既存のものに入れ替わるだけでは全然面白くありません。こういう評論家が考えていることは、スマートフォンもしくはラップトップで既に実現していることばかりです。ポストPC時代になれば、安価にそれを楽しむことができたり、あるいは歩きながらできたりするということだけが新しい価値です。

でもたぶんこういうことを考えているのは評論家だけではなく、Apple以外のどの会社もそうだろうと思います。どんな業界でもそうですが、独創性豊かなトップ企業と二番煎じ企業の間にはそれぐらい大きなギャップがあります。バイオの業界で言えば、ABIとRoche, Promega, Bio-Rad, Takaraらなどのギャップと同じような感じです。トップ企業がヒトゲノムをどう読むかを考えているときに、二番手以下はどうやったら価格でくぐれるかを考えています。

コンピュータの世界に戻ると、2013年はAppleが真剣にポストPCを模索し、GoogleとAmazonは「赤字販売」をどうやって継続するかを工夫していくのだろうなと思ったりしています。たぶんAppleが出していく考えは多くの人が考えているポストPCとは全く違うのだろうなと思います。

iPhone, Mac, Androidの週末・平日での使用量

StatCounterのデータを見ると、いろんなデバイスやOS、ブラウザが週末と平日とでどのように使われているかを知ることができます。

iPhoneは平日使用され、Androidは週末に使われる

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解釈に困るデータですが、iPhoneが平日に多く使用されるのに対して、Androidはその逆の傾向が出ています。すごくキレイな逆相関です。

対照として米国のデータも出しますが、特にそのような傾向はありません。

Us iphone android weekend vs weekday

日本とアメリカの市場の大きな違いは最大のキャリア(日本ではドコモ)がiPhoneを扱っているかいないかですが、それを考えてもますます謎が深まるばかりです。ドコモのユーザが平日よりも週末にスマートフォンを使う理由があるとも思いません。

唯一考えられるのは、会社でiPhoneを支給している会社が多いのに対して、会社でAndroidを支給しているのが明確に少ないのかも知れません。ドコモの企業ユーザはAndroidに乗り換えるよりは、現行のiModeで十分と考えているのかも知れません。

もしそうだとするならば、今後この企業ユーザがいずれドコモのAndroidを使うようになるのか、それともKDDI/SoftbankのiPhoneに乗り換えるのか、ドコモにとってはかなり重要なポイントになりそうです。

なお、日本企業が支給する携帯はまだ圧倒的に非スマートフォンであるデータが2012年の7月に発表されています。

いくつかの国でも見ましたが、日本と同じようにiPhoneとAndroidで休日・平日の使用がキレイに分かれている国はなかなかありません。Singaporeなどは多少似ています。Spainではむしろ逆の傾向が見られます。

PCのOSの休日・平日の違い

同じような解析をPCのOSで行ったのが以下のグラフ。まずは日本のデータ。

PC OS weekday vs weekend 4

Windowsの中でもWin7とVistaは週末に使われる傾向にあり、Win XPが平日に使われる傾向があります。日本の企業は未だにWin XPを多く使っているようです。Macは平日に使われることが多く、職場での利用がメインのようです(個人的にはこの結果は意外でした)。日本のiOS (iPad)の利用はまだ少ないようですが、特に平日と休日の差は見られませんでした。

次に米国のデータ。

US desktop OS weekend vs weekday 2

米国では職場でもWin7が浸透してきているようで、平日と休日の差が無くなっています。Win XPを使っているのは主に職場のようです。Vistaは休日に良く使われています。Macは日本と違い休日と平日の差が無く、米国の方が家庭にも浸透しているようです。さらにiOS (iPad)は週末に使用が多くなるようです。

オフライン(ローカル)で使えるWebサイトって何を指すのか?

HTML5にはアプリケーションキャッシュストレージなど、オフラインアプリケーションを実現するための機能が用意されていますが、そもそもオフラインアプリケーションって何なんだろうって考えてみたいと思います。なぜかというと、オフラインアプリケーションと一言で言っても、どこまで「オフライン」である必要があるのかに差があるからです。

まずWebサイトを分類したいと思います。

  1. 閲覧をメインとしたサイト: WikipediaAsahi.comなどの新聞サイトがこれに該当します。
  2. 個人用にカスタマイズしたコンテンツをメインにしたサイト: Facebook, Twitter, LinkedInなどがこれに該当します。
  3. データ入力や加工をメインにしたサイト: GmailGoogle Docsがこれに相当します。

以下、それぞれについて考えていきます。

閲覧をメインにしたサイト

1の閲覧をメインにしたサイトについてはオフラインへのアプローチは2通り考えられます。一つはサーバから帰ってくるHTMLをそのままキャッシュすることです。もう一つはAPIでデータをJSONなどの形式でダウンロードし、これをキャッシュすることです。そして画面に表示するときはJSONデータからDOMを作ります。

どっちを選択するかに関わらず、このようなサイトに共通しているのは、ブラウザ側ではModelを持つ必要が無いということです。保存する内容はページの内容だけですので、ModelはせいぜいPage一つです。わざわざクライアントサイドのMVCフレームワークを用意する必要がありません。

このようなサイトで一番大きな問題はデータ量ではないでしょうか。Wikipediaであればすべてをローカルに保存するわけにはいかず、一部だけをダウンロードすることになります。それでも数千ページを保存すれば相当な容量になります。このデータを効率的にサーバから出力し、ブラウザ側で処理し、ローカルに保存していくかは簡単ではありません。

個人用にカスタマイズしたコンテンツをメインにしたサイト

実際問題、こういうサイトではオフラインの閲覧はほとんど実現できていません。例えばHTML5をやめてnative Appを開発していくということで話題になったFacebookのiPhone用アプリですが、オフラインで見られるのは以前に閲覧した内容のキャッシュです。先読みしてローカルにページを保存することはしません。したがってオフラインでやれるのは見直しだけです。

Twitter, LinkedInのiPhone用Nativeアプリも同じです。

ただ「いいね!」などはオフラインでも押すことができて、オンラインになるとその変更がサーバに送られることを期待しましたが、テストしてみたところ反映されていませんでした。

もともとこのようなソーシャルネットワークアプリはタイムラインを中心としたUIなので、タイムラインさえキャッシュすればほとんど用が足りると発想をしているのだと思われます。いずれにしてもオフラインではたいして使えないのが現状です。

このようなサイトを実現する方法は「閲覧をメインにしたサイト」とよく似ています。サーバから帰ってきた内容をキャッシュすれば良いのです。ただし内容が変更されることが頻繁にあるので、ネットワーク接続があれば積極的にデータを更新することになります。

データ入力や加工をメインにしたサイト

GmailやGoogle DocsはもともとデスクトップのemailクライアントやMS Officeをウェブ用に作り替えた製品であり、完全にオフラインで動作するようにGoogleがかなり開発をしてきた製品です。

これらの特徴は、様々に加工した後に作られるドキュメントが非常に独立していることです。デスクトップのアプリであればドキュメントはファイルシステム上のファイルであり、属性としてはタイムスタンプやフォルダー名、ファイル名、そして権限ぐらいです。Facebookの書き込み、コメント、いいねと違い、複雑なリレーションがありません。

このようなWebサイトはデータを加工するのには複雑なJavascriptを使う必要がありますが、一方でサーバとやりとりするデータはかなり境界がはっきりしていて単純です。この際に便利なのがクライアントサイドのJavascript MVCフレームワークです。ブラウザの中で複雑な処理が行われデータが加工されていきます。上述の「閲覧をメインにしたサイト」「個人用にカスタマイズしたコンテンツをメインにしたサイト」と異なり、ブラウザはデータに対して受け身ではなく、積極的にデータを作り、改変します。ブラウザ内での処理が複雑になりますので、MVCフレームワークの必要が出てきます。

このように、どのようなWebサイトでオフライン閲覧を実現しようとしているかによって、どこまでやるべきか、どこまでやれるかがかなり分かれます。

さて私が考えているのはソーシャル機能を持ったオンライン抄録集ですので、1, 2の機能を併せ持ったものになります。それを実現するために何が必要かを考えていきます。

ソーシャル機能を持ったオンライン抄録集ではブラウザ側のMVCは必要ない

オンライン抄録集は根本的には「閲覧をメインにしたサイト」ですので、各ページのデータをローカルに保管すれば十分です。ソーシャル機能については「個人用にカスタマイズしたコンテンツをメインにしたサイト」と同じように考えますので、普通に考えればオフラインでソーシャル機能を提供する必要はありません。したがってサーバのレスポンスをキャッシュするアプローチで十分です。

もし一歩先を行って、「いいね!」などをオフラインでも可能にしようと思うと、ブラウザの中にModelを作っていく必要が出てきます。しかしModelの数は少なくて済むと思われますので、全面的にクライアントサイドMVCを導入するのは無駄だと考えられます。

残念ながら適当なフレームワークがない

残念ながらこういう目的のJavaScriptフレームワークは存在しないのが現状です。Sencha Touchはローカルにデータを保存することができますが、完全なクライアントサイドMVCフレームワークなので今回の目的に合いません。

jQuery Mobile, jqMobiなどはサーバ側にHTMLの生成を任せているフレームワークで、クライアントサイドにModelを持つ必要の無いものです。しかし主眼はNativeアプリと似たようなUIをブラウザ内で実現することであり、ページをローカルにキャッシュする機能はありません。

オフラインでも使えるwebサイトを作るために

現在取りかかっているプロジェクトと関連しますので、ローカル(オフライン)でも使えるWebサイトを作るためのポイントをまとめてみました。

データをため込むにはHTML5のアプリケーションキャッシュとストレージを使う

ローカルで使えるWebサイトを作るには、データをローカルに保管することが必須です。HTML5では保管方法がいくつか用意されていて、大別するとアプリケーションキャッシュストレージになります。

静的なファイルはアプリケーションキャッシュで

完全にローカルで使えるWebサイトを作るためには、HTML5のアプリケーションキャッシュを使う必要があります。最初に問い合わせるURLはこのアプリケーションキャッシュに入れます。これをやらないと、URLを入力した時点でブラウザはサーバに問い合わせをし、ネットワークが繋がらなければエラーになります。

アプリケーションキャッシュは便利ですが、例えば1ページでも更新されるとキャッシュ全体をクリアしなければならないなど、頻繁に更新される内容には不向きです。あくまでも静的なファイルに使用します。

ただし、Webサイトのトップページはしばしば動的なページです。更新情報やお知らせなどを掲載することが一般的です。そうなると最初に問い合わせるURLは静的ではなくなります。

この問題を解決するためには、最初に問い合わせるURLではウェブページのフレームワークだけを返し、更新情報などはストレージから読み込むんで、Javascriptで埋め込むことになります。

HTML5 History APIは使わない

Javascriptを使ってページ内容を更新する場合、backボタンやブックマークを正常に動作させるためにURLを書き換える必要があります。その方法はURLのハッシュフラグメントを書き換える方法と、HTML5のHistory API (pushStateなど)を使う方法があります。

pushStateを使うとハッシュフラグメントではなく、URLの本体を変更します。この方が従来のWebと親和性が高いという理由などから、現在ではHistory APIを使った方法が推奨されています。

しかしこれはローカルWebアプリには使えません。最大の理由はアプリケーションキャッシュがうまく使えないからです。

例えばhttp://my_server.com/をアプリケーションキャッシュに保管しいても、http://my_server.com/path_to_page_1, http://my_server.com/path_to_page_2というURLにアクセスしようとするとアプリケーションキャッシュのページは使われません。通常通り、http://my_server.com/path_to_page_1, http://my_server.com/path_to_page_2をサーバに要求します。

それに対してhttp://my_server.com/#!path_to_page_1, http://my_server.com/#!path_to_page_2のようなURLになっていれば、まず最初にアプリケーションキャッシュのhttp://my_server.com/が呼び出されます。そのあとpath_to_page_1path_to_page_2のコンテンツはストレージから読み込むか、あるいはAJAXでサーバに問い合わせることができます。

その他、Androida 4.0のデフォルトブラウザがHistory APIをしっかりサポートしていないという問題もあります。

ストレージの選択

ストレージはいくつもAPIが用意されていますが、ブラウザのサポートを考慮すると実際に使えるものは限られています。

一番広くサポートされているのはwebStorageです。これは非常に単純なkey/value型のストレージです。IE8でさえサポートされています。しかしwebStorageの大きな問題は容量の少なさです。Safariだと5Mbyteが上限です。これでは日本分子生物学会の抄録などは収まりません。経験的に数百演題の学会であればwebStorageでも十分ですが、1000を超えたらwebStorageでは不十分です。

次にサポートされているのはWeb SQL Databaseです。50M byte以上のデータをため込むこともできます。またSQLでクエリが書けるので、いろいろな使い方ができます。ただしWeb SQLは今後は規格を更新しないことが決まっています。Web SQLの大きなポイントは、FirefoxやIEなどのデスクトップ用ブラウザではサポートされていないものの、スマートフォンのブラウザで広くサポートされている点です。

最も期待されるのはWeb SQLに変わるIndexed DBですが、こっちはまだサポートするブラウザが少なく、特にスマートフォン用ブラウザではサポートされていません。

上記を考えると、ストレージとしては第1にWeb SQL Databaseを優先させ、サポートしたいブラウザや保管したいデータ量を考慮してIndexedDBもしくはwebStorageをサポートするのが妥当な選択だと言えます。

まとめ

完全にローカルなWebサイトを作るために必要なコンポーネント、どのHTML5テクノロジーを使うかの話をしました。特に重要なのは、一般的に推奨されている History APIは使えないということだと思います。

もちろんコンポーネントを選定しただけではまだまだ話は始まったばかりです。解決しなければならない問題はたくさんあります。これについてはこれから少しずつ紹介していきます。

解決しなければならない問題のリスト

  1. ハッシュフラグメントのフォーマット
  2. out-of-dateになったページをどうやって更新するか
  3. データの同期をどうやって行うか

statCounterの統計 201301

statCounterという、ウェブ使用統計が簡単にわかるサイトがあります。この統計をちょっと見てきます。

米国PC用ブラウザ(含むタブレット)の統計

StatCounter US browser 2013 01 06 17 24

  1. クリスマスになるとIEの使用率が減ってChromeの使用率が上がります。
  2. それに対してFirefoxの使用率は目立った変化はありません。
  3. iPadの使用率はクリスマスで大幅に上昇。1月になっても継続しています。
  4. Androidの使用率は大幅に上昇。しかしベースが非常に低い。

米国モバイル用ブラウザ(スマートフォンやフィーチャーフォン)の統計

StatCounter mobile browser 20130106

  1. 米国ではAndroidが2012年を通して使用率が減少する傾向。対してiPhoneの使用率が上昇する傾向。
  2. 2012年のクリスマス期はその傾向が特に強く出ました。

iPad専用にデザインするということはどういうことか

iPad miniの登場でタブレットに最適化されたウェブサイトが必要になってきました

スマートフォンとiPadなどのタブレットが急速に普及したため、同じコンテンツを異なるスクリーンサイズに合わせてデザインする必要が出てきました。その中でもスマートフォンは先に普及し、またスクリーンサイズがPCと大きく異なるため、スマートフォン専用のサイトを用意したり、あるいはスマートフォン専用のアプリを用意することが多くなりました。

一方でiPadなどのタブレットでは事情が複雑です。

iPadのSafariは横幅が980pxのウェブサイトであれば縦向きの画面に納められるようにデザインされています(実際のピクセル数は768pxしかないのですが、980pxのサイトを768pxに圧縮します)。しかしこれだとリンクが非常に小さくなるので、リンクをタップするときにかなり神経を使います。AppleのiOS Human Interface Guidelinesではボタンのサイズを44px x 44px以上にすることが推奨されていますが、それよりもずっと小さくなります。

今までの10インチのiPadであれば、それでも何とかなりました。神経を使えばリンクをクリックすることができました。しかし7.9インチのiPad miniになるとさすがに難しくなります。画面の拡大縮小をしないとPCウェブサイトのリンクはクリックできません。

そろそろタブレットに最適化されたウェブサイトが必要になってきたのではないでしょうか。

タブレット専用のサイトを作るべきか、それともPC用のウェブサイトを作り替えるべきか

国内のスマートフォンの普及率はまだ50%以下です。したがってすべてのユーザをカバーするようなウェブサイトを作るためには、1) PC用, 2) スマートフォン用, 3) フィーチャーフォン用のウェブサイトが最低でも必要になります。さらにタブレット専用のウェブサイトを作るとなると4種類のウェブサイトを作ることになり、かなりつらくなってきます。

やはりタブレット専用のウェブサイトを作るよりは、PC用ウェブサイトと共用のものが作れれば楽です。そうなると7.9インチのiPad miniでも快適に見られるようなPC用ウェブサイトを追求することになります。

PC用のウェブサイトは無駄だらけ?

以下に示すのはasahi.com用のiPadアプリの一面です。

Skitch

以下はPC用ウェブサイトのトップページです(赤枠は私が付けました)。 Skitch

内容を比較するとiPadアプリの一面の内容はPC用ウェブサイトの赤枠だけです。ざっと見たところ、PC用ブラウザの画面の1割程度だけがiPadアプリの一面に使われています。PC用ウェブサイトの赤枠以外は、iPadアプリではすべて省かれているのです。

なぜiPadアプリではPC用ウェブサイトのコンテンツの9割を省くことができたのでしょうか。PC用ウェブサイトのトップページコンテンツの9割は無駄なのでしょうか。

PC用ウェブサイトはナビゲーション用リンクが異常に多い

先ほどのPC用ウェブサイトのトップページを内容ごとに色分けしました。

赤がiPadアプリの一面にもあった、いわゆる「新聞の一面記事」です。青はナビゲーションです。カテゴライズしたナビゲーションではなく、「もしかしたらこんなことに興味があるんじゃないかな?」ということでリストアップされたものです(カテゴライズしたナビゲーションはトップメニューにあります)。そして緑が広告です。さらに黄色は他のページ(この場合は社会欄)の抜粋リンクです。

2012 12 30 18 24 asahi com PC web

こうしてみると青のナビゲーションリンクが異常に多いことがわかります。また下にスクロールしていくと、黄色の他ページ抜粋リンクが延々と続きます。

青のナビゲーションリンクの目的は、人気記事を前面に出すことです。少しでも読者におもしろがってもらえる内容を早めに見せておくためのリンクです。

黄色の他ページ抜粋リンクは、トップメニューを経由しなくても、下にスクロールするだけで他ページの内容が見られるようにした工夫です。クリックするよりもスクロールした方がユーザは楽だろうという配慮です。これもナビゲーションリンクの一種です。

iPadアプリにはこういう青と黄色のリンクに相当するものがほとんどありません。

PC用ウェブサイトもナビゲーションリンクを減らせば簡単にiPad向けになる

PC用ウェブサイトのナビゲーションリンクを省き(青と黄色のリンク)、そのページ固有のコンテンツに絞ればフォントサイズを大きくすることができ、iPad miniでも簡単に操作できるものになります。そのためには以下のことを考慮すれば良いはずです。

  1. トップナビゲーションメニューを経由したページ切り替えを楽にし、黄色の他ページ抜粋リンクを不要にする。
  2. 青色のリンク(ランキングなど)は別のページにまとめ、これもトップナビゲーションメニューから簡単に移動できるようにする。

トップナビゲーションは必要か

実はトップナビゲーションメニューも不要かもしれません。Asahi.comのiPadアプリではトップナビゲーションメニューは前面に出さず、実際の新聞の紙面のページを送る間隔で、1ページずつ、すべてのページを切り替えていくのがメインのナビゲーション形式です。ページ切り替えは素ワイプジェスチャーで行います。

このナビゲーションは全体を眺めることに重点を置いています。ナビゲーションメニューの中から特定のカテゴリーを選んで、そのページに移動するのではなく、すべてのページをざっと眺めながら興味を引いたコンテンツを見るのに向いています。このナビゲーションをうまく実装できればメリットは明確です。いままでコンテンツをつまみ食いしていたユーザが、全体を眺めてくれるようになるのです。

トップナビゲーションを無くしたインタフェースを実現するためには、2つのことが必要です。

  1. 素早くて滑らかなページ切り替え
  2. 大きくて目立つ見出し

このうち2番目の大きな見出しについては、各ページの余計なコンテンツ(主にナビゲーションリンク)を減らせば実現できます。しかし1番目は現在のウェブサイトの作り方では難しいところがあります。今のウェブサイトはロードするのに時間がかかりすぎるからです。逆に言うとページのロード時間を十分に減らすことができれば、トップナビゲーションを無くしたウェブサイトのデザインは実現可能になってくるかも知れません。

現在のウェブページのロードを早くするためには

iPadアプリはまず最初にすべてのコンテンツをダウンロードするので、ページ内容はすべてローカルに保存できます。だからページの切り替えが非常に素早くできます。HTML5にはブラウザ内のデータをため込むための方法がいくつか用意されていますので、これを使うとページ切り替えがかなり早くできます。

またページをロードするのにかかる時間の大部分は、実はコンテンツではなく、JavascriptやCSSだったりします。このあたりも要改善です。

直感的なページ切り替えの操作

今までのウェブサイトはページを続けてざっと眺めるのに適したUIを用意してきませんでした。ページ切り替え用のボタンを用意するものはありましたが、ボタンは小さく、マウスを移動させてクリックするのは面倒でした。それに対して、iPadアプリで使われるスワイプジェスチャーは非常に直感的で、簡単にできます。同じぐらい簡単な操作をPCでも実現できればトップナビゲーション不要なUIが作れるかもしれません。

まとめ

以上、いろいろな話をしました。まとめると以下の通りです。

  1. iPad miniの登場で、PC用のウェブサイトであってもiPad miniに最適化する必要が出てきました。
  2. iPad miniに最適化するときに重要なのは、無駄なナビゲーションリンクを減らすこと。
  3. ナビゲーションリンクを減らす中で、トップナビゲーションメニューの役割すら再検討するべきです。
  4. ナビゲーションリンクを減らすことと、ページロードのスピードを上げることは密接に関わっています。必要に応じてHTML5のデータ保存機能を活用しながら、ページロードスピードの向上に努める必要があります。