成功する会社は良いアイデアを潰せる

今回もBob Suttonのブログから。

Steve Jobsは次のように語ったそうです。

The thing I remember best was that Jobs advised them that killing bad ideas isn’t that hard — lots of companies, even bad companies, are good at that. Jobs’ argument went something like this: What is really hard – and a hallmark of great companies – is that they kill at lot of good ideas. Sure, this is tough on people who have come-up with the good ideas as they love them and don’t want to see them die. But that for any single good idea to succeed, it needs a lot of resources, time, and attention, and so only a few ideas can be developed fully. Successful companies are tough enough to kill a lot of good ideas so those few that survive have a chance of reaching their full potential and being implemented properly.

私が一番良く記憶しているのは、Steve Jobsの以下のアドバイスです。悪いアイデアを潰すのは難しくありません。悪い会社を含めた多くの会社でこれはできています。非常に難しいのは、そしてこれは優れた会社の特徴ですが、多くの優れたアイデアを潰すことです。良いアイデアを思いついて人にとって、これはつらいことです。自分が愛しているアイデアが潰されていくのは見たくありません。しかし、一つの優れたアイデアが成功するためには多くのリソースと時間と注意が必要です。ですから、十分に時間をかけられるのは少数のアイデアだけです。成功している会社はたくさんの優れたアイデアを潰すだけの勇気を持っていて、生き残った少数のアイデアが潜在的ポテンシャルを十分発揮し、正しく実施されるようにできるのです。

これには全く同感です。同時に昨日ブログに書いたように、非常に多くのアイデアを出すことの重要性も感じています。非常に多くのアイデアを生み出して、そして良いアイデアを含めて非常に多くのアイデアを潰していく過程がイノベーションには必要です。

通常はそのいずれかがおかしくなって、バランスが崩れます。

私が製薬企業に入社した1994年は、一般企業のバブルははじけていたものの、製薬企業のバブルはまだまだ膨らんでいました。各企業は最高益を更新し、研究開発においては非常に高い自信を持っていました。いつかは世界の大手製薬企業に飲み込まれ、日本の企業の淘汰が始まると言われていたものの、それが実際に始まる様子はありませんでした。

私が入社した協和発酵を含めた多くの企業は、この環境の中で多角化戦略を取りました。事業の多角化もそうですが、創薬だけをとってもターゲットする疾患の数が膨らみました。さらに分子生物学や構造生物学などの基礎研究にも積極的に取りかかり、気がつくと縦方向(基礎から応用)にも横方向(対象疾患の数)にも研究分野が広がっていました。これはSteve Jobsがいう、良いアイデアが潰せない状況です。

一方、製薬企業のバブルがようやくはじけた2000年前後になると、今度は極端な選択と集中が行われます。対象疾患を大幅に絞り込み、さらに基礎分野を大幅に減らしました。一見、これはSteve Jobsのいう良いアイデア潰しに見えますが、大きな問題がありました。というのは、ここまで絞り込みをした結果、発想力のある人間が力を発揮する場所がなくなってしまったのです。本来は選択と集中によって、極少数の生き残ったアイデアに優秀な人材と創造力が集中し、これが豊かに花開かなければいけません。しかし極端な選択と集中によって、アイデアが生まれる土壌すら枯れてしまい、生き残ったアイデアを膨らます補助的なアイデアも生まれない環境になってしまったのです。

大切なことは、勇気を持ってアイデアの絞り込みをしつつ、依然として様々なアイデアが涌き上がる環境を持続するでしょう。そのためにはアイデアやイノベーションが生まれる過程について十分に理解を深め、注意しながらバランスを保つことが重要だと思われます。アイデアがこんこんと涌き上がる環境を維持しつつ、適切な時期に適切な数までに絞り込みを行うことです。

さて、バイオの買物.comもそろそろアイデアの絞り込みをしないといけない時期に来ました。リソース不足でまともにサポートできない機能があり、それが放置されてしまっています。年内には大幅に見直す予定です。それについてはまたの機会にお話ししたいと思います。

アイデアが生まれる過程:600の思いつきから18の作品まで

Bob Suttonのブログに、良いアイデアを得るまでに必要な失敗作の数について、具体的な数字が書かれていました。

創造的なアイデアを作り出す人や組織が失敗を恐れず、日常の一部として捉えていることの例です。

紹介している例は1) おもちゃメーカーと 2)お笑い です。

1) おもちゃメーカー IDEO
1998年において、10人以下の社員が4,000のアイデアを生み出し、そのうち230はプロトタイプ化し、最終的に製品になったのは12個。

“You can’t get any good new ideas without having a lot of dumb, lousy, and crazy ones. Nobody in my business is very good at guessing which are a waste of time and which will be the next Furby.”

「新しくて良いアイデアを得るには、アホらしく、全くだめで、気違いじみたアイデアをたくさん出さなかればならないんだ。このビジネスでは、どのアイデアが時間の無駄で、どれが大成功するかを予測できる人はいないよ。」

2) お笑いニュース番組 The Onion
毎週のヘッドラインのネタ 18個を得るためには、普通600のネタを提案するそうです。この工程を紹介したポッドキャストもあります。
The Onionの白板はこんな感じだそうです。

僕自身はブレーンストーミングのファシリテーションをするときは、なるべく自分からばからしい提案をするようにします。自分が先に失敗をしてみせることによって、失敗しやすい雰囲気を作り出すのです。

日本のように上下関係をどうしても意識してしまうような文化圏では、上司の方から失敗してあげること大切です。変なプライドを持っている人だとできませんけどね。

漢字のコンパクトさと表の活用

“What are Chinese Tables?”

ローマ字に比べて漢字がコンパクトに言葉を表現できるおかげで、表の活用の仕方が豊かだという話。

表の中の斜線など、中国の表によく見られるものが、CSSやOOXML、ODFにインパクトを与えるかもしれないということです。


生物とオブジェクト指向:Polymorphismについて

オブジェクト指向プログラミングのインスピレーションは生物学でした。ここまで言い切れるかどうかわかりませんが、かのAlan Kayは学部学生のときに生物学を勉強し、生物のコンセプトを頭に描いていたと自分で語っています

昨日、ふといろいろなブログを読んでいるときに、Windows 95のインタフェースデザインに関わった日本人、Nakajima Satoshi氏のブログに行き当たりました。題名は「日本語とオブジェクト指向」。日本語は語順的に、名詞(オブジェクト)を先に指定し、そのあとに動詞(メソッド、メッセージ)を指定する構造になっていることから、頭を使わなくてもしゃべりやすいという主旨だと思います。酔っぱらってもタクシーの運転手に道順を指定できるのは、日本語のオブジェクト指向のおかげという感じです。オブジェクト指向の中でも、これはPolymorphismというコンセプトです。

僕自身はこのブログの見解には必ずしも賛同しません。しかしPolymorphismの大きな効果が、「動詞」(プログラミングで言えばメソッド)のボキャブラリーを大幅に減らしたとしても、表現力を落とさないで済むことだというのには全く同感です。

そして高等な多細胞生物は、限られた種類のシグナリング分子、サイトカイン、ホルモンしか持たないにも関わらず、多様な機能をコントロールする必要がありますが、これができるのはこのPolymorphismのおかげだと私は感じています

僕がシグナル伝達を勉強していた頃(90年代)は、rasだとかMAPKのような少数のタンパク質が、多様なシグナルの伝達に関わっていることが明らかになってきていた頃です。どうして互いに全く関係なさそうなレセプターの下流に、同じrasやMAPKが関係してくるのであろうか。そんなことを不思議だなぁと議論していました。もっともほとんどの人は生物をシステム的に考えるのではなく、新しい遺伝子や新しい相互作用を発見することばかりに興味を持っていましたが。

ぼくは最近はちゃんと勉強していないので、これに対する一般的な考え方がどう変化したのかはわかりません。恐らく細胞の環境や分化状態が重要だという考え方に向かったと思います。しかしオブジェクト指向プログラミングのpolymorphismの考え方からすると、これは全然不思議なことではなく、省力化を考えればむしろ当たり前な手法を生物を採用したことがわかります。

生物学とプログラミングの関係についての、僕の意見の一つでした。

Barack Obamaの大統領としての資質

私はアメリカの大統領選挙をかなりこまめにフォローしています。インターネットを介して、CNN, Time, CBS, MSNBCの報道を見ています。

残念ながら、日本では「黒人として最初の大統領」であるとか、「最初の女性副大統領候補」だとか、全くどうでも良い報道ばかりが見られます。情けないです。

さて、今日はTimeのウェブサイトに掲載された”Why Barack Obama is Winning”という記事を紹介します。

この記事が真実であるならば、今後4年間もしくは8年間はアメリカ大統領は安泰です。なぜならBarack Obamaは自分と意見の異なる他人との対話の中から学習して、じっくり考えをまとめて、自分を成長させられる人間だからです。

本当は要点を日本語で書き上げたいのですが、残念ながら時間がありません。

一つだけ紹介します;

one of the benefits of running this 22-month gauntlet is that … you start realizing that what seems important or clever or in need of some dramatic moment a lot of times just needs reflection and care.

この22ヶ月間もの戦いの長所の一つはこうです。重要だとか適切だとかに見えることや、なにかドラマチックなアクションが必要に見えることであっても、たいていはそうではないと理解できるようになるのです。多くの場合は注意深くじっくり考えてから対応するだけで良いのです。

僕の前の上司の一人は、売上が下がるとすぐに「どうなっているんだ!アクションは!アクションは!」と騒いでいました。MBAを持っている割には、モノをじっくり考えて、分析する力がゼロの人でした。そういえばMinzbergは”Managers, not MBAs”という著書で、MBA教育の弊害として、即断即決の習慣を挙げていたような記憶があります。

ウェブサイト管理委託の失敗:それは最初から見えていた

僕が前の会社で作成したウェブサイトを、僕の退職を機に保守管理を外部委託して、そして1年後に様々な問題が噴出してしまっている件については、すでにブログに何回か書きました。

僕は自分で開発してしまうので、IT系の外部委託はあまり経験していないのですが、バイオの研究受託(研究者に依頼された研究を行う業務)を担当していた時期がありますので、外注の仕事の危なさは肌で知っているつもりです。製薬企業によっては結構えげつないところもあるので、本当にヤバいことになって、大変な思いをしたこともあります。

実はウェブサイトの保守管理を外部委託した1年前から、自分の経験と照らし合わせて、この外部委託は危険だと感じた点は何点かありました。ちなみに外注プロジェクトの失敗ポイントをシリーズ化したウェブサイトがありましたので、ぜひ読んでおくことをお薦めします。

これは失敗するなと思ったポイント;

  1. 向こうは赤字プロジェクトのつもりでいました。僕が所属していた会社は600人規模の結構大きな会社でしたので、担当の営業は、目の前のプロジェクトをまとめることよりも、その先の商機に興味を持っていました。
  2. 現状のシステムについてのヒアリングをしないうちから見積書が出てきました。その見積書は当然ながら、猛烈におおざっぱなものでした。しかも見積もり金額は、われわれがなんとなしに話した予算とぴったり一致していました。あやし〜〜〜。もっとひどいことに、要求仕様書を書いて渡しておいたにもかかわらず、それを読んだ気配すらありませんでした。
  3. 当然ながら、契約も非常におおざっぱでした。
  4. 我々の技術力は非常に不足していました。僕はウェブ開発ができましたが、僕以外にウェブ技術に詳しい人は誰もいませんでした。したがって僕が退社すれば丸投げ状態になってしまいます。プロジェクトの進捗を理解できるだけの技術力がありませんでした。
  5. マイルストーンが決まっていませんでした。管理を委託するというだけで、それが具体的にどのような作業を指すのか、そして各作業がどのようなスケジュールで行われるべきかが決まっていませんでした。
  6. 契約後に一回担当者と電話で話をしましたが、僕が書いたソースコードをほとんど見ないうちから、僕にいろいろ相談していました。しかもちょっときつく言ったら、もう二度と電話してきませんでした。全く骨のない奴でした。

これは失敗するなと思いながらも、僕自身は1月もすれば退社する身分でしたので、事を荒立てても後始末ができるわけでもなく、できるだけ引き継ぎをがんばるしかありませんでした。僕には外注先を選定する際に意見する権限は無く、外注先の管理は他部署が担当することになっていました。

しかし、やはり1.と2.に関係するのですが、僕が引き継ごうとしても、向こうは内容を理解することにあまり熱心ではありませんでした。

かくして、当然の帰結としてウェブサイト管理委託は大変なことになってしまったのでした。

思ったよりもひどかった委託先の仕事

以前に勤めていた会社のIT部門からまた連絡がありました。僕が作ったウェブサイトの管理を委託していた会社が、実はもっとひどいこともしていたらしいのです。これも完全な手抜き。

僕自身はITは外部に委託するよりも自分で作ってしまうので直接は知りませんが、外部委託している様子を何回か横から見ていたことはあります。今回のケースを含めていずれも失敗です。

  • PriceWaterHouse Coopersに社内のITインフラ構築を委託した例:どうもこれは担当部長の以前のコネクションで決まった話だったらしいのですが、数千万円と半年以上をかけたあげく、成果物はLotus Notesを会社のパソコンとサーバにインストールするだけだったという、本当にびっくり仰天の、嘘のような本当の話。担当者は毎日うちの会社に来ていましたが、どうも他の仕事をしていたらしい。
  • 今回の話第一弾:僕が作ったウェブサイトのPHPのプログラムを、PHP4からPHP5に移植する際に、オブジェクトキャッシュをオフにしてしまった話。オブジェクトキャッシュのコードがPHP5と相性が悪かったので、消しちゃったのです。それでサーバへの負担が(当然)重くなって、断続的に動かなくなりました。会社名は出しませんが、それなりに名の知れた会社らしいです。
  • 今回の話第二弾:僕が作ったウェブサイトの管理を委託していた会社が、予防的な管理を全くしなかったために問題が発生したという話。これ以上紹介すると危険なので、ここまでにとどめておきますが、本当に情けない話です。

もっと関わりが薄かったものまで含めれば、まだまだあります。

いずれもクライアントの技術力不足、管理能力不足が大きな原因であるとはいえ、もうちょっと何とかならないかなと思います。こう失敗が多いと、小さい会社などは怖くて最新のIT技術を導入できません。日本の企業のITは遅れているとときどき聞きますが、この状況ではそれも仕方ないでしょう。

もちろんちゃんとしたソフトハウスが多いのも事実だと思います。でもどれがちゃんとしていて、どれが駄目なのかは素人目にはわかりません。実績を見ても何の指標にもならないので、なおさらです。

弁護士や弁理士、医者とか建築士だと免許制ですよね。その他にも免許制の仕事はたくさんあります。免許制にすればいいってものではありませんけれども、IT受託も免許制にしたら良いのではないでしょうか。

日本国が世界での競争力を維持するためには、政府が何らかの形でIT業界の品質向上に手を打っていくべきだと思います。

Ruby on Railsだと保守委託もしやすそう。失敗は少ないでしょう。

ソフトウェア開発・保守の委託で失敗した例を昨日ブログに書きました。

問題はPHP4からPHP5にアップグレードする際、委託した先が勝手にオブジェクトキャッシュを外していたというものです。その結果、MySQLサーバへの負荷が増えて、ちょっと重たいページをアクセスするとすぐにパンクするようになってしまったのです。

委託先の担当者の技術力が無かった(アホだった)ということではありますが、よく考えてみるとRuby on RailsだとデフォルトでSQLをキャッシュするので(Rails 2.0以降)、何も考えていないアホ担当者をつかまされたとしてもMySQLサーバへの負荷は増えないんですよね。
(アホ,アホって繰り返しますが、どんなに優れたソフトハウスでも必ず担当者ごとの能力のばらつきがあります。悲劇はアホ担当者をつかまされたクライアントです。実績が立派な会社でも必ずアホはいますし、むしろ規模が大きい会社ほどアホはいますので、実績だけで外注先を選ぶと、こういうアホにあたります。)

Ruby on Railsだと非常に優れたフレームワークが既にあるので、独自に書くソースコードが圧倒的に少なくてすみます。自分が書いたPHPを一年ぶりに見ましたが、たいしたことをやっていない割には本当にソースコードが多いと感じました。それもRuby on Railsだとフレームワークがやってくれることがほとんど。今回問題になっているキャッシュもRuby on Railsなら全部フレームワークがやってくれます。

他人や他の会社に保守してもらう可能性があるのであれば、PHPはやめた方が良さそうですね。Ruby on Railsで行きましょう。

しかもRuby on Railsをやっている人は、一通りフレームワークの勉強をしているでしょうし、新しい開発手法に興味のある勉強家でしょうから、キャッシュの有効性を知らないなんてアホなことはないでしょう。

まだ怒りが静まらなくて、他の仕事に影響が出てしまっています。

ソフトウェア開発外注の難しさ:また失敗例を見てしまった!

昨日、以前に勤めていた会社のIT部門から電話がかかってきました。ウェブサイトを載せているレンタルサーバをアップグレードした際に問題が発生したというのです。

ウェブサイトのオンラインカタログは私が開発し、PHP4上で動いていました。そして私が退社したのを機会に、ソフトハウスに管理を委託したのです。

レンタルサーバをアップグレードするとPHP5しか使えないので、オンラインカタログプログラムに若干の変更が必要でした。具体的にはこちらでも紹介されているように、”Fatal error: Cannot re-assign $this”のエラーが出るという問題があったのです。スピードを上げるためにオブジェクトをキャッシュするようにしていましたが、キャッシュにヒットした場合は、コンストラクタで$thisにキャッシュ中のオブジェクトを代入していたのです。

しかしこの単純なPHP4からPHP5への移行作業も、委託先のソフトハウスは見事に失敗してくれたようです。まだ100%の確証はありませんが、たぶん”Fatal error: Cannot re-assign $this”が出ないようにするために、キャッシュの部分を削ったのだと思います。おかげで、負荷がかかるとサーバがダウンするようになってしまいました(負荷が少ないときはおおむね動くので見過ごしたのでしょう)。コードを見ればキャッシュしていることは明白なので、おそらく「キャッシュしなくてもバレないだろう」という気持ちで、安易に削除したのでしょう。許せない手抜きです。

しかもPHP4からPHP5への移行作業で、1人月相当の金額を要求していたようです。むむ。許せない。

もちろんすべてのソフトハウスがこんなにいい加減だとは思いませんし、内部の人の問題も大いにあるのですが、僕が見聞きした開発外注はほぼこのような情けない結果で終わってしまっています。

ソフトウェア開発外注は難しい。そのことを経験的に知っていて、素人ながら自分でオンラインカタログのプログラムを開発したのは、実は大正解だった。改めてそう思いました。

私はいまはむしろ逆の立場になりました。主に自分のためにプログラムを開発していますが、部分的に外注も受けようと思っています。こう言う情けない話にならないように、くれぐれも気をつけなければならない。自分が怒りを買う側になっては絶対にだめだ。そう強く思いました。

それにしても、ソフトハウスの人って、他人のソースコードを読むのが苦手なのですか?

データベースにこまめに問い合わせると遅いから、まとめてバッチでオブジェクトを作っているのがわからないのか?(Railsでいうと:includeを使うように)
お前のところはそうやっていないのか?
いくらコードにコメントが少ないからって、’cache’っていうような名前の変数が使われている箇所を削除するのなら、負荷試験ぐらいしろ!!

爆発

オバマ大統領候補の演説

アメリカの大統領選挙が面白くて、ぼくはアメリカのメディアを通してインターネットで追いかけています。

オバマ氏が2008年10月17日に、Roanokeというバージニア州の中でも保守党が強い地域で行った演説がとても素晴らしかったので紹介したいと思います。

1961年生まれ、今年47歳になったばかり。若くて経験が浅いと一貫して指摘されてきたオバマ氏です。しかし、ジョン マケイン、ヒラリー クリントン氏などの強力なライバルと長く激しい選挙戦を戦っていくなかで、彼は明らかに成長してきました。最初は雄弁さと夢ばかりが強調された演説でしたが、今回の演説で夢を控えめにし、国民のニーズを捉え、具体的な政策を、説得力のある形で紹介するようになってきています。

日本国民には雄弁な演説というスタイルは一般的になじまないのかもしれません。しかし日本のいまの政治家は、それ以前の問題として国民のニーズすら理解できなくなっているように思います。その結果、重要法案とされているものは国民にとってどうでも良いものばかり。オバマ氏のように国民のニーズを汲み取り、国の方向性を示し、具体的な政策を雄弁に提案できる政治家がいれば、小泉人気など全く吹き飛んでいくほどの支持を国民から得られるのではないでしょうか。

ということで、そのオバマ氏の演説の中から僕が気に入った部分を取り上げていきたいと思います。

The credit crisis has left businesses large and small unable to get loans, which means they can’t buy new equipment, or hire new workers, or even make payroll for the workers they have. In households across the country, it’s getting harder and harder to get a loan for that new car or that startup-business or that college you’ve dreamed of attending. Wages are lower than they’ve been in nearly a decade. You’re paying more for everything from gas to groceries, but your paychecks have flat-lined.

金融危機によって大企業も小さい企業も融資が受けられなくなっています。その結果、新しい機器の購入ができず、新規に社員を採用することが出来ず、既存の社員の給料すら支払えない状況になっています。家庭においてはローンを組むことが困難になり、新車を買ったり、新しいビジネスを始めたり、夢に見た大学に進学したりすることができなくなっています。給料は10年間で最低の水準です。ガソリンから日用品まで価格は高騰しています。しかし給料はそのままです。

世界を揺るがしている金融危機は、かなり難解です。特にウォール街の危機が実体経済に与える影響がわかりにくく、どうして国民の税金で金融機関を援助しなければいけないのかが納得されづらいです。オバマ氏は、これをわかりやすい言葉で解説することをずっと心がけています。

一方で日本の政治家はこの金融危機を国民にしっかり説明することなく、行政の専門家が議会の事前承認を得ること無く公的資金を利用できる体制作りを先行させています。

The rescue plan that passed the Congress was a necessary first step to easing this credit crisis. It’s also important that we continue to work with governments around the globe to confront what is truly a global crisis. But now we need a rescue plan for the middle class. If we’re going to rebuild this economy from the bottom up, it has to start on Main Street – not just the big banks on Wall Street. That’s why I’ve outlined several steps that we have to take right now to help folks who are struggling.

First, we’ve got to act now to create good paying jobs. We’ve already lost three-quarters of a million jobs this year, and some experts say unemployment may rise to 8% by the end of next year. That’s why I’ve proposed a new American jobs tax credit for each new employee that companies hire here in the United States over the next two years. That’s how we’ll create good, new jobs here in Virginia and all across America.

先日議会を通過した金融の救済計画は、金融危機を解消するために必要な第一段階でした。この世界的な危機と対決するために、世界中の政府と協調して活動することも重要です。しかし今必要なのは、中流の人のための救済計画です。この国の経済をボトムアップで作り直すのなら、ウォール街の大銀行ではなく、皆さんが住んでいる街から始めないといけません。そこで、いま苦しんでいる国民のためにいくつかのステップを用意しています。

まず最初に、いまこそ給料の良い仕事の創出に取りかからないといけません。既に今年だけで75万の職が失われています。来年には失業率が8%になると言っている専門家もいます。これに対抗するために、アメリカで採用される新しい社員に対して、二年間、税品を軽減する措置を提案しました。こうやってバージニア州を初め、アメリカ中で良質の新しい仕事を作り出すのです。

金融危機に際して公的資金を投入し、国民に多大な負担を要求するわけですが、その国民はというと安い給料と高騰する生活費で貧窮しています。その国民を救済するメッセージを持っていない政治家なんて、本当はあり得ないはずです。

日本も過去に多額の公的資金を金融機関に注入しました。でもその間に国民の生活を豊かにする施策があったかというと、逆に国民生活を貧窮させ、金融機関を潤す超低金利政策、そして正社員採用を減らし企業を優遇する政策があっただけです。

If I am President, I will invest $15 billion a year in renewable sources of energy to create five million new, green jobs over the next decade – jobs that pay well and can’t be outsourced; jobs building solar panels and wind turbines and fuel-efficient cars; jobs that will help us end our dependence on oil from Middle East dictators.

私が大統領になったら、再利用可能なエネルギーの開発に$150億ドル(1.5兆円)を投資します。これによって環境関連の500万の仕事が創出されます。これらの仕事は給料が高く、アウトソーシングもされない仕事です。ソーラーパネルを作ったり、風力発電施設、低燃費自動車を作ったりする仕事です。この仕事によって、我々は中東の独裁者に頼らなくてすむようになるのです。

オバマ氏は、最高の経済対策は新しい仕事を生みだすことだと主張してきました。特に企業が仕事を海外にアウトソーシングしている現状を放置できないと繰り返しています。そこで海外にアウトソーシングできないような高い技術力を要する仕事をいかにして生み出すかについて、その戦略を明確にしています。

オバマ氏は新しい時代のアメリカを支えるべき新しい産業を予見し、そこで必要となる技術力の高い仕事の創出をしていく戦略を思い描いています。

一方の麻生政権はというと、彼らの景気対策は何十年前と同じ、減税と道路などの公共建設事業しか考えません。お金をばらまくことによって、市場がなんとか解答を見いだしてくれるだろうという考え方です。どちらかというと高度経済成長の日本を支えた輸出産業とゼネコンを支える政策です。その一方で将来の日本で最も重要になってくる産業、例えば高齢者福祉産業の惨状は放置したままです。省エネルギー技術など、日本が国連から最も期待されている役割にだって積極投資するわけではありません。

And we’ll give every child, everywhere the skills and the knowledge they need to compete with any worker, anywhere in the world. I will not allow countries to out-teach us today so they can out-compete us tomorrow. It is time to provide every American with a world-class education. That means investing in early childhood education. That means recruiting an army of new teachers, and paying them better, and giving them more support in exchange for higher standards and more accountability.

そして我々はアメリカの子供に、世界のどの労働者にも負けない技術と知識を与えます。アメリカの今日の教育が他国に劣っているがために、将来の我々の労働者が他国に競り負ける状況は許しません。すべてのアメリカ人が世界トップレベルの教育を受けなければ手遅れです。このためには幼少からの教育に投資しなければいけません。新しい先生たちを採用して、より高い給料を支払い、より多くのサポートを与えなければいけません。その代わりに先生たちにはより高い水準を要求し、成果に対してより責任を持ってもらわなければなりません。

グローバリゼーションおよび途上国の経済発展によって、アメリカを初めとする先進国が享受してきた豊かさが失われていくことが危惧されています。企業は途上国の安い労働力を求めて、次から次へと仕事をアウトソーシングします。あるいは海外での生産にシフトします。その結果、先進国の労働者は途上国の労働者と直接競争することになり、給料がどんどん安くなったり、仕事を失ったりしてしまいます。これに対抗する手段は、自国の労働者の能力水準を高め、途上国の労働者には簡単に置き換えられないようにすることしかありません。

日本のワーキングプア問題はまさにここにあります。日本の労働者の賃金水準が上がらない理由、日本企業が派遣という形で安い使い捨ての労働者を集めている理由は、途上国の安い労働との競争です。日本の労働者は途上国の安い労働者との価格競争にさらされ、そして一生懸命働いているにもかかわらず、貧しくなってしまっているのです。

一方で日本の教育水準は下降の一途をたどっています。ゆとり教育が悪者にされていますが、日本の教育に対する投資が先進国で最低だということの方がよっぽど問題でしょう。教員採用試験の異常な倍率を見ても、金銭的な投資をすればすぐに優秀な人材が採用できることは明らかです。ワーキングプア問題の根本的な解決策として、そして日本が将来にわたっても豊かな生活ができるための土台として、いまこそ教育への投資を積極的に行うときでしょう。

まとめ

世界競争力ランキングで日本がまたランキングを下げたことが先日報じられました。アジアでも日本は一番ではなく、シンガポールに遅れをとっています。

日本の技術の革新性、科学者・技術者の能力の高さはまだ高く評価されています。その一方で政治が大きく足を引っ張っています。プロ野球の楽天ゴールデンイーグルズの野村監督が繰り返し述べている言葉に「組織はリーダーの力量以上には伸びない」がありますが、日本もそろそろ付けが回ってくる頃です。

「日本にもオバマ氏のような立派な政治家が現れないかなぁ〜」

そんな思いで今日もアメリカの大統領選挙を、アメリカ人以上にじっくりとフォローしてしまいました。