A very well written article about the current situation and future outlook of the PC and tablet business.
Lot’s of data points too.
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日本ではiPhoneなどは実質0円で買うことが可能です。実質0円というのは、2年間の通信料をキャリアが割引して、それで割引額の合計がiPhoneの本体価格と同じになるという仕組みです。つまり2年間キャリアと契約することを約束すれば、キャリアがiPhoneの代金を割引してくれるという仕組みです。
表題のインドの件は、いままではインドではこのような割引がなく、本体価格を丸ごと末端消費者が払わなかったのに対し、最近RComというキャリアがiPhone本体価格を割引してくれるようになったという話です。例えばインドでの iPhone 5S 16G本体価格は 53,500ルピー(約84,000円)であるのに対して、RComと2年契約(毎月2,800ルピー、約4,400円)を約束すれば実質 0ルピーになります。
「インドのような発展途上国でiPhoneを売っていくためには低価格のiPhoneモデルが必要だ」と多くのアナリストは述べていましたが、またしてもAppleは“Think Different”をしたことになります。
このようなアナリストが期待したほどにiPhone 5Cが安価ではなかったことからもわかるように、Appleの発展途上国での戦略は低価格モデルの導入ではなく、先進国で成功しているキャリア補填モデルであることは明白です。
RComがインドでiPhoneを実質0円から提供するというのはいったいどれだけの意義があるのか。それを知るためにはRComがどのような会社かを知る必要があります。
Wikipediaによると、RComはインドで第二のキャリアで1.5億人のユーザがいます。そしてインドで4Gを提供する準備をしている2社のうちの1つだそうです。したがってインドでは相当に大きなキャリアであることがわかります。
RComがiPhoneを実質0円にするというのは相当にインパクトがありそうです。
加えて現在RComのウェブサイトに行くと、次の画面に転送されます。このことからRComがかなり本気だというのがわかります。

最初の画面の後のトップページもiPhoneばかりが目立ちます。

間違いなくRComは本気です。
代理店、卸や問屋を相手にマーケティングやセールスを経験したことがある人なら常識ですが、メーカーは末端ユーザに製品を売る前に、まず中間業者や小売店に製品を売り込む必要があります。中間業者は必ずしも末端ユーザの利益を最優先していません。その上、中間業者が「売りたくない」「売り場に置いてやらないよ」と言ったら製品は売れません。
これは例えば安値を武器に市場に参入しようとするときに障害になります。既に販売されている高額な製品と競合するものとして安価な製品を新規に導入しようとして、中間業者はなかなかOKしません。末端顧客にメリットがあってもです。なぜならば高額な製品を売った方が中間業者は儲かるからです。営業の人はよほどのことがない限り、わざわざ高額な製品を購入し続けているユーザに安価な製品を紹介しに行きません。自分から売り上げを落としているようなものです。
Googleが安価に販売しているスマートフォンのNexusシリーズがことごとく売れていない理由はここにあります。キャリアとしては、高額なGalaxy Sシリーズを買ってくれる顧客にわざわざ安価なGoogle Nexusを紹介することはしないのです。
それではキャリアに「売りたい」と思わせるスマートフォンとはどんなものでしょうか?それはずばり、高額なデータプランを継続して購入してくれるような上客を(他のキャリアから)引き寄せてくれるスマートフォンです。そしてロイヤルティーが高く、長期継続してくれる顧客を呼び寄せるスマートフォンです。
それをやってくれるのがiPhoneです。そして今のところiPhoneだけです。
iPhoneはキャリアにとってのマーケティングツールです。広告です。客寄せパンダです。優良な顧客が手に入るのであれば、実質0円となるように補填することは十分にペイします。だからキャリアはiPhoneを買い、優良顧客に「あげる」のです。
キャリアはiPhoneを売っているのではありません。iPhoneを買っているのです。
通信キャリアはほぼ固定費のビジネスです。無線ネットワークを一端構築すれば、パンクしない限り、利用者が増えても増設はしません。利用者が増えてもインフラは同じで済みます。
ですから利用者が増えれば増えるほどキャリアは単純に儲かります。
逆にせっかくインフラを構築しても利用者が少なければあっという間に赤字です。それが固定費ビジネスの怖さです。
4Gネットワークが普及してくると、まずキャリアはインフラ構築のために大きな支出(固定費)を強いられます。その一方で回線に余裕が生まれます。その余裕分をなるべく優良顧客で埋めておきたい。余裕が少なくなるように顧客を増やしたい。それがキャリアの本音になります。
そこでRComは世界で一番優秀なセールスマン、つまりiPhoneを採用したのです。
Androidの急成長ぶりが注目されている一方で、日本と米国では逆にAndroidのシェアが下がり、iPhoneのシェアが上がっています。
日本にいるとその理由はよくわかります。iPhoneの方が品質が高く、そして本体価格そのものはAndroidよりも高価なのですが、キャリアからの補填で実質ではAndroidよりも安価だからです。
注目されるのは A) 世界でのAndroidの成長が継続し、iPhoneのシェアが下がっていくのか? それとも B) 日米を追いかけるように、他の国でも徐々にAndroidのシェアが下がり、iPhoneのシェアが上がる局面を迎えるか、です。どっちのシナリオが主になるかです。
そして上記の議論にしたがうと、Aが主になるのかBが主になるのかは直接的には携帯電話本体の価格や顧客の経済力によって決まるのではありません。むしろキャリアのビジネスの構造、例えば利益や次世代通信インフラへの投資によって決まります。例えば途上国のキャリアが積極的にデータ通信インフラに投資すれば、固定費が多くなり、それを埋めるための良質の固定客を積極的に集める必要があります。これはB)に傾くシナリオです。
A)のシナリオが主であり続けるならば、いずれAppleはiPhoneの価格を下げて、新興国での売り上げ拡大に走るでしょう。一方 B)のシナリオが多くなってくれば、AppleはiPhoneの価格を下げることなくシェアを拡大することができ、今まで以上に強い地位を築くことができるようになります。
Androidが登場して以来、A)のシナリオが特に途上国では主でした。しかしインドのキャリア補填が成功し、なおかつChina Mobileが中国でもiPhoneのキャリア補填を実施すれば、世界は急速にBのシナリオに傾くかも知れません。
その流れに注目していきたいと思います。
2013年10月22日のアップルイベントで新しいMacbookやiPadが発表されました。新しいMac OS XのMavericksやiWork, iLifeも発表されました。
今日は余りブログを書く時間が無いので、特に気になったことを簡単にコメントします。
これは結構大きい話です。今までもMacOS Xの価格は非常に安く、Microsoft Windowsよりもずっと手頃でした。例えばMountain LionはUS$19.99でした。初代MacOS X 10.0のCheetahはUS$129で、これも当時のWindowsと比較して廉価でしたが、手頃ではありませんでした。MacOS X 10.4 TigerはUS$129.95。この価格設定はMacOS X 10.5 Leopardまで続き、MacOS X 10.6 Snow Leopardで一気にUS$29になりました。MacOS X LionではいったんUS$69に上がりますが、MacOS X Mountain Lionでは再び下がってUS$19.99になります。
それがMavericksではいよいよ無料になりました。
どうしてそうしたかは簡単です。もともとAppleはハードウェアによる売り上げの方がOSによる売り上げよりずっと多いので、OSを無料にしても売り上げ上は大きな痛手はありません。それよりも、なるべく多くの人がOSをアップグレードしてくれることの方がビジネス上重要だとAppleは判断したのでしょう。
短期的な収益を犠牲にしてでも多くの人にOSをアップグレードして欲しい理由は、iPhoneで非常にはっきり出ています。
ただし、上記のメリットが大きな意味を持つためには条件があります。それはOSが進化し続けることです。OSが進化するからこそ開発者は新しいOSの機能を使いたいと考えます。逆に新しい機能が無ければ、開発者は古いOSのサポートの方を優先し、新しいOSの機能を使いません。
まとめると、短期的な収益を犠牲にしてでもOSを無料にする理由は、今後も積極的にMacOS Xに新しい機能をつけていくからです。逆にもしiPadを優先し、MacOS Xを収束させていこうと考えているのであれば、OSを無料にすることは戦略的には矛盾します。むしろMacOS Xユーザから最大限に利益を絞りだそうとするはずです(milking)。
なおGoogleの場合はビジネスモデルが違うので、GoogleがOSを無料化する理由は全く違います。GoogleがOSを無料にすることと、GoogleがOSのイノベーションにコミットするのは全く独立の話です。Googleの場合は、OSを有償にする選択肢がありません。Chrome OSは無料にしないと誰も使ってくれないのです。
基本的にはiPadを単にエンターテインメントのツールとしてではなく、クリエイティビティーや生産性を高めるツールとして多くの人に利用してもらいたいのが狙いだと思います。
ただこれは同時にGoogle Docsにとって、ちょっとやっかいな話です。
Google Docsの戦略は基本的にはこうです。
GoogleはAndroidにしてもGoogle Docsにしても、Google Driveにしても、あるいは古くはGoogle Readerでもそうでしたが、普通だと有料なものを無料で提供することによって利用者を増やすと戦略をとります。
一般顧客に有料なものを売るビジネスはGoogleは一回も成功させたことがありません。完全なローエンド戦略です。
そして今回のiWork, iLifeが無料になったというのがなぜ衝撃かというと、Googleよりも安価なコンペティターが出現したからです。しかも品質的にも高級ブランドイメージ的にもGoogleを圧倒しています。
iWork, iLifeにはうっとうしい広告もありません。
Googleとしては、iWorkやiLifeと対抗するのは困難です。でもローエンドで、そしてモバイルで競合するので、放っておけません。
どうするのか、ちょっと読めません。
企業の戦略を練るとき、しばしばプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントというのをやって、重点製品と非重点製品を分けます。Appleで言えば、iOSが重点製品(花形製品)でMacが非重点製品(金のなる気)ではないかという結論になります。そしてCloudは問題児となります。
しかしAppleはこんな分析を全くしていなさそうです。すべての製品に全力を注いでいるように感じられます。そのおかげでちょっと驚異的な相乗効果が生まれている。そんな様子です。
Chris Lacy氏がAndroidのフラグメンテーションについてGoogle+で語っています。
要点は以下の通り;
Chris Lacy氏のコメントはもっともです。
ただし一つだけ制限があります。
フラグメンテーションが問題になるのは、最先端のぎりぎりのすごいことをやるときです。例えばウェブで言えば、ブラウザサポートが不十分な最先端のHTML5, CSS3を使うときはフラグメンテーションが大きな問題になります。一方でInternet Explorer 8でもサポートしているような普通のHTMLとCSSだけを使うのであれば、フラグメンテーションは問題になりません。
また細部にこだわったデザインを行うときもしかりです。ウェブで言えば、デザイン性に非常にこだわったウェブサイトは固定幅でデザインされていることが多く、レスポンシブ・ウェブ・デザインはしていません。ブラウザウィンドウのサイズそのものは変更できませんが、ページの大きさそのものを固定して、レイアウトが崩れないようにしています。
実際のどれだけの開発者がここまでこだわったアプリ作りやウェブサイト作りをしているかはわかりませんが、Appleの方針はこだわる人をサポートすることです。可能な限り最高のアプリケーションを開発しようという人、iOSデバイスの新しい可能性をとことん追求しようという人をサポートすることです。理由は簡単です。
Because the ones that are crazy enough to think they can change the world, are the ones who do.
もっと具体的にいえば、Appleが大切にしたい開発者というのは、iOSの限界にチャレンジし、圧倒的に優れたアプリをiOSのためだけに開発し、iOSプラットフォームの差別化に寄与してくれる人たちです。ですから彼らの挑戦をAppleは大切にしています。
普通の開発者にとってはフラグメンテーションは問題にならないかも知れませんが、こだわりのある開発者にとっては問題になるのです。
8月5日に、タブレットの出荷台数が落ち込んだという調査が発表されました。データは下記の通り(単位は100万台)。

Appleが新製品をまだ発表していないという大きな理由はあるにせよ、まだまだ始まったばかりのタブレット市場でこのような販売台数減少が見られるのは驚きです。特に1Q13から2Q13にかけての落ち込みはAppleだけではなく、SamsungもAsusもそうなったというのは業界全体のトレンドを示唆しています。
まだまだポストPC時代に突入したと断じるのは時期尚早ではないか?もしかしたらタブレットはPCと入れ替わるほどには売れないのではないかと思わせます。
個人的には私はまだまだPC (というかMacBook AirとiMac)がメインの仕事道具ですし、デスクワークを中心としている人はほとんどがそうだと思います。私にとってタブレットは家に帰ってくつろいでいるときのためのデバイスです。
したがってタブレットは必需品ではなく、娯楽のデバイスです。タブレットとPCははっきりした使い分けがあります。市場の大きさを考えても、仕事のためにPCを使う市場と比べれば、娯楽のためにタブレットを使う市場はどう考えても小さそうです。
私だけでなく、多くの人がタブレットを娯楽中心で使っているというデータはStatCounterのウェブ利用統計から得られます。

上に示しているのはPCとタブレットのウェブ利用統計です。以下のことがわかります。
週末に利用が増えるというのは家庭で娯楽に使われていることを示唆しています。
以上のように、現時点ではタブレットはPCと入れ替わるように成長しているのではなく、PCとは別の市場を形成しているように思えます。その市場は、家庭の中で娯楽としてインターネットやゲームなどを楽しむ市場だろうと思います。PCの市場の大きさははっきりわかりますが、タブレットが形成しているこの新しい市場の大きさはまだ不明です。ある程度飽和している可能性も否定できません。
ここ数日間、朝日新聞に「IT!おまえはどこへ」というシリーズがあって、ソニーでプレイステーションに関わった久多良木健 氏や、ドコモでiModeに関わった夏野剛 氏がインタビューに応じています。(1,2,3)
これからも日本のITで大きな存在の人間が登場するのでしょうが、今までのところかなりいまいちな印象です。
なぜかというと久多良木氏も夏野氏も単にSFのような世界観を述べているだからです。単なる「アイデア」、つまりこうなったら面白いなということ、もしくは「現代のトレンドはこうだな」というのを述べているにすぎません。
彼らはスティーブ・ジョブズ氏よりはジョン・スカリー氏っぽい気がします。スカリー氏は1987年にKnowledge Navigatorというコンセプトを打ち出し、いくつものコンセプトビデオを制作しました。両氏にはスカリー氏の雰囲気があります。
その一方でスティーブ・ジョブズ氏のいろいろなインタビューを聞いても、10年先の世界の話はまずしません。そんな先のことはわからないというスタンスをとります。
インタビューでのスティーブ・ジョブズ氏が言うのはむしろこうです;
You know, one of the things that really hurt Apple was after I left John Sculley got a very serious disease. It’s the disease of thinking that a really great idea is 90% of the work. And if you just tell all these other people “here’s this great idea,” then of course they can go off and make it happen.
And the problem with that is that there’s just a tremendous amount of craftsmanship in between a great idea and a great product. And as you evolve that great idea, it changes and grows. It never comes out like it starts because you learn a lot more as you get into the subtleties of it. And you also find there are tremendous tradeoffs that you have to make. There are just certain things you can’t make electrons do. There are certain things you can’t make plastic do. Or glass do. Or factories do. Or robots do.
Designing a product is keeping five thousand things in your brain and fitting them all together in new and different ways to get what you want. And every day you discover something new that is a new problem or a new opportunity to fit these things together a little differently.
And it’s that process that is the magic.
スティーブ・ジョブズ氏が言うのは、実際に製品を作っていくと、最初の「凄いアイデア」は様々に形を変え、最初のものとは大きく形を変えるということです。デザインの過程で様々な制限にぶつかり、問題を克服したり、新しい可能性が見えたりするからです。
そしてこのように具体的に製品をデザインしていく過程こそが“Magic”だとスティーブ・ジョブズ氏は語っています。この過程を表現するのに使っている言葉は“Craftsmanship”、つまり「職人の技能」「職人芸」です。
将来を見通すヴィジョンを持つと礼賛されるスティーブ・ジョブズ氏ですが、その本人はヴィジョンに偏るのをdiseaseと形容しています。そしてより重要なのは職人が生み出す“Magic”だとしています。
その意味を我々はよくよく考えなければなりません。
iOS 7の紹介ビデオの中で、Jonathan Ive氏がいろいろ大切なことを言っていますので、そのメモ。
True simplicity is derived from so much more than just the absence of clutter and ornamentation. It’s about bringing order to complexity.
Distinct functional layers help establish hierarchy and order, and the use of translucency gives you a sense of your content.
In many ways, we have tried to create an interface that is unobtrusive and differential. The design recedes, and in doing so actually elevates your content.
AppleのFY13 2Qのカンファレンスコールを聞いて、一番興味深かったのはiTunes Store (App Storeも含む)の強さでした。
iTunes StoreについてはAsymcoのHorace Dediu氏が深く分析していて、成長のスピードおよび規模の大きさで非常に注目に値するとしています。誕生した当初は”break-even”で運営しているとしていたiTunes Storeですが、その後大きく成長しています。カンファレンスコールでは売り上げが2Qだけで4.1 billion USD(おおよそ4千億円)になったと紹介していました。売り上げの仕組みが違うので単純な比較はできませんが、楽天の2012年12月期の年間売り上げが単体で1,637億円ですので、iTunes Storeがどれだけ大きいかがわかります。
Horace Dediu氏はiTunes StoreとAmazonの比較もしています。ただしアマゾンは全体の売り上げは公開するものの、デジタル配信の売り上げは公開していませんので、単純比較はできません。

なおGoogle Playはデータが全く公開されていませんので、情報がありません。
AppleのカンファレンスコールではiTunes Storeが多数の国で展開していることも紹介されました。音楽:119国、映画:109国、書籍:155国、アプリ:155国。このあたりはWikipediaに既に詳細に記載されていました。うち、有料の音楽が購入できるのは60強の国です。アプリは190の国で購入できます。Google Playもまた多数の国(134)で展開していますが、アプリしか買えない国がほとんどで、その他のデジタルコンテンツが買える国は極めて少数(14国)です。
Amazonについては詳しく調べていないので断言できませんが、Wikipediaを見る限り、Amazonのウェブサイトがある国がそもそも10程度しか無いようです。デジタルコンテンツの配信もこれらの国に限られているのだろうと私は想像しています。
なお比較のためにPlayStation Storeも確認しましたが、おおよそ50の国で展開しているようです。
これだけAppleが強い背景には地道な努力がもちろん大きいのでしょうが、Appleがかなりイノベーションをしてきたことも忘れてはいけません。
違法音楽ダウンロードに各レーベルが戦々恐々としている時代に、世界でいち早く有料の音楽配信サービスを展開したのがiTunesです。アプリを配信するApp Storeのコンセプトを大きく成長させて、メインストリームにしたのもAppleです。
こういうイノベーションを先駆けたおかげでこれだけデジタルコンテンツ配信に強いのでしょう。
Samsungが提供するAndroidデバイスは実に27種類のスクリーンサイズをカバーしています。これを紹介したDerek Kessler氏のTweetがTwitterで盛んにRTされました。
これに対してAppleのiOSは3.5, 4, 7.9, 9.7インチの4つのスクリーンサイズしかありません。
どっちの戦略が正しいのか、様々な議論があると思います。しかし忘れてはならないのは、Appleも昔は目もくらむほどの多数ので製品を販売していたことです。
Everymac.comには過去に販売されたMacの情報がすべてアーカイブされています。Steve Jobs氏が復帰する前の1996-7年頃には、デスクトップだけでも以下の製品ラインがありました。
それをバサッと整理して、有名な4製品グリッドに絞ったのです。
近年のマーケティング戦略に関する本を読むと、顧客の趣向が多様化し、多品種少量製品が重要になってきているという主張が多いのではないかと思います。1990年代のApple社は、当時の競合他社と同じようにこの戦略を採っていました。Samsungの現在の戦略もこれを継承しているように思います。
Steve Jobs氏の戦略はこの真逆でした。思いっきり製品を絞り込んで、少数の製品にフォーカスしました。しかも興味深いことに、一般的なマーケティングでは真っ先に登場する「予算」という切り口は使わず、プロフェッショナルとして使用するのか、およびノート型かデスクトップ型かの2つの切り口しか使いませんでした。
Appleが成功し続けるためにはより大きな画面をもったiPhoneが必要だとか、低価格のiPhoneを作らないと新興国市場で勝てないという外野の意見はますます大きくなっています。しかしAppleの幹部の多くはSteve Jobs氏が4製品グリッドを導入した時期も経験しています。製品が多すぎてフォーカスを失い、死にかけたApple、そして製品ラインを4つに絞り込んで復活を遂げたAppleを知っています。
Appleは別に宗教のように少数の製品にフォーカスをしているのではありません。それほど遠くない昔には多品種少量生産をし、そして臨死体験をしたのです。Appleは実体験に基づいて、少量多品種の危険性を知っています。そう、たぶんSamsung自身よりも。
iPad生誕3周年ということで、3年前に自分がどのような予想を立てたかを振り返ってみようと思います。
そもそもこのブログは自分の考え方がどれだけ確かなのか、自分はどれだけ世の中の流れを正確につかめているかをはっきりさせるために書き始めています。もし自分が世の中を正確に把握できているのであれば、それなりに高い確率で予言が的中するはずです。逆に予言が的中しないということは、世の中を理解できていないということです。そういう意味でもiPadの発売当初に自分が立てた予想を見返すのは重要です。
私が書いたのは以下のポストです;
その中で以下のような予想をしています。
普通に考えたら、iPadと対等な製品を開発するのに5年はかかるのではないでしょうか。そのときはもちろんiPadも進化しているはずです。
…
iPadのすごいのは、アイデアがすごいのではなく、アップル社以外に作れないのがすごいのです。
…
iPadがどれだけ売れるかはまだ分かりません。でもかなり売れる可能性もあります。売れるとしたら、その市場セグメントはしばらくアップルが何年間も独占します。iPhoneがスマートフォンを席巻しているよりもさらに激しく、そのセグメントを独占してしまうでしょう。そういう大きな構造変化を起こしてしまう危険性を、iPadは持っていると思います。
そしてその根拠としてアップル社の垂直統合のすごさをあげています。
アップル社の垂直統合というのは、CPUからハードの組み立てからOSからアプリケーションソフトからオンラインショップまでのすべてをアップル社が持っているということです。そしてiPadにおいてはこのすべてのアップル社製になっています。アプリケーションソフトは確かに3rdパーティーが作ったものが非常に多いのですが、その流通チャンネルをアップル社が完全に握っているという意味ではやはり垂直統合モデルの一部と考えても良いと思います。
3年前の言葉ですが、2013年の今の状況を正確に予測できたことがわかります。特に「iPadと対等な製品」というのを「iPadと同等の人気がある製品」と定義すれば、3年たった今も対等な製品は全く現れていないと言えます。
また多少なりともiPadの人気に食い込んでいるのがAmazon Kindle Fireですが、これが成功しているのはハードウェアとコンテンツ販売を統合しているからであって、これもまた垂直統合の一つです。つまり水平分業しているところはどこもiPad人気に食い込めず、唯一垂直統合を試みたところが一つ成功しているだけです。垂直統合に着眼したことの正しさの裏付けにも思えます。
とりあえず3年前の予想が今のところ当たっていそうなので、私の着眼点が正しかった可能性が高いと言えます。ならば同じ着眼点でさらに先を予想してみることができます。
私は3年前に述べたことをもう少し引用します。
特に問題なのはワードプロセサーと表計算ソフト、プレゼンテーションソフトのいわゆるオフィス系ソフトです。いまのところWindowsの世界で使われているオフィス系ソフトはほとんどマイクロソフトオフィスだけです。Google Appsという選択肢はありますが、まだまだ一般化している状態ではありません。そしてフリーのOpen Officeなどもありますが、無料だという以外には魅力のない製品です。ですからiPadに十分に対抗できるような製品(iWorkが使えるという意味で)を作るには、やはりマイクロソフトオフィスを載せることが、少なくともここ数年のスパンで見たときには必要になります。
アップル社の垂直統合の中でも特に真似るのが難しいのは、OSとアプリケーションソフトの両方を作るノウハウだと述べました。3年前のブログではアプリケーションソフトとしてオフィスソフトウェアのことだけを述べましたが、これはiPhotoやiMovieなどのマルチメディア系のソフトについても当てはまります。
私の3年前の予想では、アプリケーションソフトを含めた垂直統合ができない限り、iPadに対抗できる製品は作れないとしています。そしてこれを実現できる可能性がある会社はMicrosoft社とGoogle社であるとしました。そこでMicrosoftとGoogleの現状を見てみます。
GoogleはAndroid OSをかなり改善してきました。もちろんiOSという明確なターゲットがあって、基本的にはそれを真似れば良いし、それを法律ギリギリのところでやってきましたので改善は難しいことではありませんでした。その一方でアプリケーションソフト、つまりAndroid用のGoogle Docs(Google Drive)というのはあまりパッとしません。未だにプレゼンテーションソフトが無いなど、今時のオフィス業務をカバーできる状況ではありません。
MicrosoftはWindows 8の販売が不調と報じられ、また新タブレットのSurfaceもあまり売れないと言われているなど、まだ戦う体勢が整っていません。Androidと異なり、Microsoftは単にiOSを真似るのではなく、新しいアプローチを試みました。そのためにタブレット用の新OSの開発だけで時間がかかり、ようやくスタートラインにたった状況です。
このように3年たった今でも、GoogleおよびMicrosoftは未だにアプリ−ケーションソフトを含めた垂直統合でiPadに対抗できる状況にありません。したがって3年前の予想の通り、まだまだiPadの独占は続くでしょう。
私は当初はiWorksなどのオフィスアプリケーションを中心に考えていましたが、実際のiPadの使用状況を考えるとその視点は狭かったようです。iPadで実際によく使われているのはオフィスアプリケーションばかりではアンク、むしろブラウザやメール、写真、Facebook、Twitterなどです。それでも結果として予想が当たったのはなぜでしょうか。
考えてみれば当たり前ですが、スマートフォンやタブレット、そしてPCを使っているとき、私たちが実際に接するのはOSそのものではなくアプリです。アプリの善し悪しがそのデバイスのエクスペリエンスの善し悪しを決めます。オフィスアプリケーションだけでなく、すべてのアプリがそうです。
OSの主な役割は、アプリ開発の土台を提供することです。MacWrite, MacPaint以来、25年間のアプリ開発の経験を持つアップルはその土台がどうあるべきかをよく知っています。自らがOSの開発と、その上で動作するアプリの開発の両方を行っているので、アプリ開発の優れた土台が作れます。そしてサードパーティーのアプリ開発を的確に支援できます。
新しいモバイルOSはいくつも誕生しています。PalmのWebOS、FirefoxのFirefox OS、SamsungらのTizen OSなどがそうです。しかしOSの役割を考えれば考えるほど、優れたOSが作るためには豊かなアプリ開発経験が不可欠に思えます。新しいOSを作っているところが一番欠けているのは、このアプリ開発経験かも知れません。
2010年時点で、私は「iPadと対等な製品を開発するのに5年はかかるのではないでしょうか」と述べました。これを修正します。2013年の現時点からさらに5年かかりそうだというのが新しい予想です。本当はもっともっと時間がかかりそうな気がしていますが、ITの世界で5年以上先を予想するのはさすがに難しいので、5年に留めます。
修正の理由は以下の通り;