採用面接というのが如何に難しくて、そして思いの他に役に立っていないかを示している論文を紹介します。
The Validity and Utility of Selection Methods in Personnel Psychology: Practical and Theoretical Implications of 85 Years of Research Findings
Psychology Bulletin, 124-2 (1998), 262-274
Frank L. Schmidt (University of Iowa), John E. Hunter (Michigan State University)
これは様々な研究をまとめた総説です。
- 様々な調査を平均した結果、偏差値60以上の優秀な社員(正規分布で平均より1SD以上)は、スキルレベルが低い仕事で生産性が19%高く、スキルレベルの高い仕事で生産性が32%高く、管理職もしくはプロフェッショナルでは生産性が48%高いようです。
- 採用した人物が成功するかどうかを予測する最も有効な指標は、その人の知能や認知力です。これは管理職やプロフェッショナルな仕事ほど有効性が高いです。
- 試しに仕事を実際にしてもらうという試験も有効ですが、これは経験者にしか適応できず、また現実的ではないことが多いのが欠点です。
- その他、誠実さとまじめさが有効な指標です。
- 実際の仕事に合わせてしっかり準備・実施された面接は有効性が高いのですが、そうでない面接は効果がありません。
- 経験年数(その間の実績を問わない)は、採用した人物が成功するかどうかを予測する上では、ほとんど効果が認められません。ただし、5年未満であれば相関が見られます。(経験年数5年までは能力が直線的に向上しますが、それ以降は頭打ちになります)
大雑把な結論としては、知性の試験と誠実さやまじめさを計るか、あるいは知性の試験としっかりと準備された面接を行うことが良いとしています。

Predicting job performance: A comparison of expert opinion and research findings
International Journal of Forecasting, 5 (1989), 187-194
Stephen Dakin (University of Canterbury, Christchurch, New Zealand), J. Scott Armstrong (The Wharton School, University of Pennsylvania, Philladelphia, USA)
こっちの論文はニュージーランドの人材プロフェッショナルの意見と、上述の論文の研究結果を比較したものです。
上述の研究結果とは対照的に、人材プロフェッショナルは経験や面接(研究結果では無効とされたもの)に重きを置き、知性を軽視しているという結果になりました。

今までの経験
最後に僕の経験を少しだけ。
ライフサイエンスのいろいろな会社やその他の会社を含めて、面接はそれなりにたくさんやってきました。ほとんどは途中入社のための面接です。
その中で後者の論文に書いてある通り、履歴書の他、準備がほとんどされていない面接、もしくは経験年数が採用に使われていました。面接の準備については、外人の方が努力していて、結構いい質問も多くもらいました。しかし、日本人による面接はいずれもいい加減なものでした。
日本人の気質的にもいろいろ詮索するようなことを聞きにくいでしょうから、なかなか難しいところです。
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