iTunes 10 でロゴからCDがなくなりました。最初のiTunesのバージョンからiTunes 9まではずっとCDと音符を重ねた同じデザインで、時々音符の色が変わるぐらいの変化しかありませんでした。
それがiTunes Music Storeで販売している音楽の数がCDの売上げを上回ったらしく(KeynoteでSteve Jobs氏が言及)、もうCDはいらないだろうという話でした。
今となってはずいぶん昔の話になってしまいましたが、2001年1月にiTunesの最初のバージョンが発表された頃に思いを馳せてしまいました。
iTunesを発表するまでは、Apple社はパソコンにCD-RW(読み書き)ドライブを搭載することをかたくなに拒んでいて、横込みだけができるCD-ROM、もしくはDVDの再生ができるDVD-ROM(読み込みのみ)を全パソコンのモデルに搭載していました。それに対してWindowsの世界ではCD-RWが一般的になっていて、音楽CDを多くの場合不法にコピーすることが多くなっていました。Apple社は常々クリエイターやアーティストの側に立ってきたメーカーなので、CD-RWを搭載しなかったのは彼らに対する遠慮もあったのでしょう。批評家やユーザからはCD-RWを標準搭載するように要望されても、Appleは決して搭載しませんでした。
それがiTunesを発表したときにがらりと戦略を変えました。アーティストに遠慮していてはだめだと。新しい音楽消費の形態を世の中に提案していかないと、パソコンそのものの進歩の可能性が失われると思ったのでしょう。CD-RWの標準搭載を始めたばかりではなく、“Rip, mix, burn”というプロモーションまで行いました。単純にCDの違法コピーがしやすくなったというのではあまりにもまずいし、何の価値も提供していません。そこでそうではなく、CDの音楽を選んでカスタムのCDを作ることに価値があるとプロモーションしたのです。ただ”Rip”は誤解されやすい言葉だったので、わざわざAppleのホームページに解説もありました。
このiTunesの発表をきっかけに、Appleは“Digital Hub”戦略を打ち出し、そしてまもなくiPodを発売します。そのiPodからiPhoneに行って、iPadに行ったのはもう皆さんも知っていることです。アーティストやレーベルに音楽消費の新しい形態を提案するのはiTunes Music Storeにもつながりました。
いろいろ考えさせられます。