iPad専用にデザインするということはどういうことか

iPad miniの登場でタブレットに最適化されたウェブサイトが必要になってきました

スマートフォンとiPadなどのタブレットが急速に普及したため、同じコンテンツを異なるスクリーンサイズに合わせてデザインする必要が出てきました。その中でもスマートフォンは先に普及し、またスクリーンサイズがPCと大きく異なるため、スマートフォン専用のサイトを用意したり、あるいはスマートフォン専用のアプリを用意することが多くなりました。

一方でiPadなどのタブレットでは事情が複雑です。

iPadのSafariは横幅が980pxのウェブサイトであれば縦向きの画面に納められるようにデザインされています(実際のピクセル数は768pxしかないのですが、980pxのサイトを768pxに圧縮します)。しかしこれだとリンクが非常に小さくなるので、リンクをタップするときにかなり神経を使います。AppleのiOS Human Interface Guidelinesではボタンのサイズを44px x 44px以上にすることが推奨されていますが、それよりもずっと小さくなります。

今までの10インチのiPadであれば、それでも何とかなりました。神経を使えばリンクをクリックすることができました。しかし7.9インチのiPad miniになるとさすがに難しくなります。画面の拡大縮小をしないとPCウェブサイトのリンクはクリックできません。

そろそろタブレットに最適化されたウェブサイトが必要になってきたのではないでしょうか。

タブレット専用のサイトを作るべきか、それともPC用のウェブサイトを作り替えるべきか

国内のスマートフォンの普及率はまだ50%以下です。したがってすべてのユーザをカバーするようなウェブサイトを作るためには、1) PC用, 2) スマートフォン用, 3) フィーチャーフォン用のウェブサイトが最低でも必要になります。さらにタブレット専用のウェブサイトを作るとなると4種類のウェブサイトを作ることになり、かなりつらくなってきます。

やはりタブレット専用のウェブサイトを作るよりは、PC用ウェブサイトと共用のものが作れれば楽です。そうなると7.9インチのiPad miniでも快適に見られるようなPC用ウェブサイトを追求することになります。

PC用のウェブサイトは無駄だらけ?

以下に示すのはasahi.com用のiPadアプリの一面です。

Skitch

以下はPC用ウェブサイトのトップページです(赤枠は私が付けました)。 Skitch

内容を比較するとiPadアプリの一面の内容はPC用ウェブサイトの赤枠だけです。ざっと見たところ、PC用ブラウザの画面の1割程度だけがiPadアプリの一面に使われています。PC用ウェブサイトの赤枠以外は、iPadアプリではすべて省かれているのです。

なぜiPadアプリではPC用ウェブサイトのコンテンツの9割を省くことができたのでしょうか。PC用ウェブサイトのトップページコンテンツの9割は無駄なのでしょうか。

PC用ウェブサイトはナビゲーション用リンクが異常に多い

先ほどのPC用ウェブサイトのトップページを内容ごとに色分けしました。

赤がiPadアプリの一面にもあった、いわゆる「新聞の一面記事」です。青はナビゲーションです。カテゴライズしたナビゲーションではなく、「もしかしたらこんなことに興味があるんじゃないかな?」ということでリストアップされたものです(カテゴライズしたナビゲーションはトップメニューにあります)。そして緑が広告です。さらに黄色は他のページ(この場合は社会欄)の抜粋リンクです。

2012 12 30 18 24 asahi com PC web

こうしてみると青のナビゲーションリンクが異常に多いことがわかります。また下にスクロールしていくと、黄色の他ページ抜粋リンクが延々と続きます。

青のナビゲーションリンクの目的は、人気記事を前面に出すことです。少しでも読者におもしろがってもらえる内容を早めに見せておくためのリンクです。

黄色の他ページ抜粋リンクは、トップメニューを経由しなくても、下にスクロールするだけで他ページの内容が見られるようにした工夫です。クリックするよりもスクロールした方がユーザは楽だろうという配慮です。これもナビゲーションリンクの一種です。

iPadアプリにはこういう青と黄色のリンクに相当するものがほとんどありません。

PC用ウェブサイトもナビゲーションリンクを減らせば簡単にiPad向けになる

PC用ウェブサイトのナビゲーションリンクを省き(青と黄色のリンク)、そのページ固有のコンテンツに絞ればフォントサイズを大きくすることができ、iPad miniでも簡単に操作できるものになります。そのためには以下のことを考慮すれば良いはずです。

  1. トップナビゲーションメニューを経由したページ切り替えを楽にし、黄色の他ページ抜粋リンクを不要にする。
  2. 青色のリンク(ランキングなど)は別のページにまとめ、これもトップナビゲーションメニューから簡単に移動できるようにする。

トップナビゲーションは必要か

実はトップナビゲーションメニューも不要かもしれません。Asahi.comのiPadアプリではトップナビゲーションメニューは前面に出さず、実際の新聞の紙面のページを送る間隔で、1ページずつ、すべてのページを切り替えていくのがメインのナビゲーション形式です。ページ切り替えは素ワイプジェスチャーで行います。

このナビゲーションは全体を眺めることに重点を置いています。ナビゲーションメニューの中から特定のカテゴリーを選んで、そのページに移動するのではなく、すべてのページをざっと眺めながら興味を引いたコンテンツを見るのに向いています。このナビゲーションをうまく実装できればメリットは明確です。いままでコンテンツをつまみ食いしていたユーザが、全体を眺めてくれるようになるのです。

トップナビゲーションを無くしたインタフェースを実現するためには、2つのことが必要です。

  1. 素早くて滑らかなページ切り替え
  2. 大きくて目立つ見出し

このうち2番目の大きな見出しについては、各ページの余計なコンテンツ(主にナビゲーションリンク)を減らせば実現できます。しかし1番目は現在のウェブサイトの作り方では難しいところがあります。今のウェブサイトはロードするのに時間がかかりすぎるからです。逆に言うとページのロード時間を十分に減らすことができれば、トップナビゲーションを無くしたウェブサイトのデザインは実現可能になってくるかも知れません。

現在のウェブページのロードを早くするためには

iPadアプリはまず最初にすべてのコンテンツをダウンロードするので、ページ内容はすべてローカルに保存できます。だからページの切り替えが非常に素早くできます。HTML5にはブラウザ内のデータをため込むための方法がいくつか用意されていますので、これを使うとページ切り替えがかなり早くできます。

またページをロードするのにかかる時間の大部分は、実はコンテンツではなく、JavascriptやCSSだったりします。このあたりも要改善です。

直感的なページ切り替えの操作

今までのウェブサイトはページを続けてざっと眺めるのに適したUIを用意してきませんでした。ページ切り替え用のボタンを用意するものはありましたが、ボタンは小さく、マウスを移動させてクリックするのは面倒でした。それに対して、iPadアプリで使われるスワイプジェスチャーは非常に直感的で、簡単にできます。同じぐらい簡単な操作をPCでも実現できればトップナビゲーション不要なUIが作れるかもしれません。

まとめ

以上、いろいろな話をしました。まとめると以下の通りです。

  1. iPad miniの登場で、PC用のウェブサイトであってもiPad miniに最適化する必要が出てきました。
  2. iPad miniに最適化するときに重要なのは、無駄なナビゲーションリンクを減らすこと。
  3. ナビゲーションリンクを減らす中で、トップナビゲーションメニューの役割すら再検討するべきです。
  4. ナビゲーションリンクを減らすことと、ページロードのスピードを上げることは密接に関わっています。必要に応じてHTML5のデータ保存機能を活用しながら、ページロードスピードの向上に努める必要があります。

Webのフォントサイズについて

iPadのSafariはPC用のWebサイトがストレス無く閲覧できるようにデザインされていて、実際問題としてかなりその通りになっています。しかしiPad miniの登場で状況はかなり変わりました。iPadよりも画面サイズがかなり小さくなっていますので、現存のPC用のWebサイトは見づらくなっているのです。iPadだったら画面の拡大縮小をしなくても無理なく見られたものが、iPad miniだと拡大縮小が必要になってきたのです。

こうなると、PC用のWebサイトであってもフォントサイズを大きくし、PCからiPad, iPad miniのどれで見てもストレス無く閲覧できるようにした方が良さそうな気がしてきます。これについて、いくつかのポイントを挙げておきます。

  • iPadは縦向きで使った時が一番感動的に良いです。PCの画面は横長ですが、印刷された本は縦長です。目の動きの負担を考えると、各行の横幅は比較的狭い方が楽で、縦長の方がやはり読みやすいと思います。したがってiPad向きなデザインを考えるとき、特別な事情がない限り、縦向きでの使用を一番重視することになります。
  • iPad2, iPad miniの画面の縦向きの時の横幅は768pxです。一番大切な文字を読むことに関してはフォントは自動にスケールするので、実際のピクセル数はそれほど気にしなくて良いかも知れません。しかし768pxがどういう数字かはある程度考えた方が良いと思います。またiPad Safariは最大で980pxのWebサイトを自動的に縮小して768pxの実画面に納めます。最近のWebサイトは横幅が1000px以上のスクリーンを想定していますが、これらはまず第一にiPad Safariで見ると横にスクロールする必要があります。自動縮小無しiPad Safariでページを表示するためには、横幅を768pxにする必要があります。
  • Retina Displayによってフォントが鮮明になり、小さいフォントでも読みやすくなります。しかし人間の指は小さくなりません。リンクやボタンはretina displayであっても大きくしておかないといけません。
  • ボタンを快適に押すことができるサイズはAppleのiOS Human Interface Guidelinesによると44px x 44pxだそうです。例えばiPad non-retinaの実験 (横幅768px)。これはかなり大きくて、Webページのリンクは通常はテキストのフォントサイズ程度なので、前後の行間があることを考慮してもフォントサイズは15pxは最低欲しいということになります。しかし多くのWebサイトでは12px程度のサイズを使っているので、ボタンは快適に押せません。さらに横幅は1000px程度なので、これよりも20%程度画面は縮小されています。つまり既存のWebサイトのデザインでは拡大縮小しない状態ではリンクは快適に押せないのです。
  • PCの画面も最近は高解像度化が進み、画面サイズが小さくなっています。例えばMacBook Airの11インチは1366px x 768pxの解像度です。2001年から発売された白いiBookは12インチのディスプレイで1024px x 768pxだったので、同じpxサイズの文字が25%程度小さく表示されていることになります。やっぱり字が小さくなった分、読みにくくなっています。

こういう現状を考えたとき、PCのウェブデザインを考え直していった方が良いのでは無いかと思います。高解像度のノートPC画面に合わせる意味でも、iPad(特にmini)に合わせる意味でもフォントサイズを大きくしてリンクを大きくし、ボタンも大きくしていく必要があるでしょう。画面に一度に表示できる内容は少なくなりますが、現状のWebサイトの大部分はナビゲーションや広告をたくさん表示しているだけなので、工夫次第で対策が可能なはずです。

学会抄録システムの作り方:コンセプト編

学会の抄録をスマートフォンのアプリにするのが流行っています。どこでもアプリを開発して提供するようになりました。でもそれで本当に学会は良くなるのでしょうか?それともこれはただのトレンドでしょうか?

今回の学会抄録システムをデザインするにあたり、かなり根本的なことを考えました。結果として現在のはやりとは逆に、スマートフォンアプリを作るという選択肢は採用しませんでした。その理由について、まだまとまりのないメモ程度ですが、以下に書いていきます。

スマートフォンユーザはどれぐらいいるのか

スマートフォンの売れ行きは絶好調で、どのキャリアも既存のフィーチャーフォン(ガラパゴス携帯)を前面に出して売ることがなくなりました。しかし我々が興味があるのはどれぐらいスマートフォンが売れているかではなく、スマートフォン使用者の割合です。

端的に言うと、学会参加者の中でスマートフォン利用者が7割を超えていなければ、スマートフォンアプリを前面に出してはいけないと思います。

古いデータになってしまいますが、2012年2月時点での調査によると全国のスマートフォン所有率はまだ2割台です。もちろん急速に増えてはいますが、それでも2012年12月の分子生物学会開催時においても4割弱にとどまるのではないかと思います。学会に参加するような人はスマートフォン所有率が高めだとは思いますが、それでもスマートフォン所有率が6割を超えるとは考えにくいです。

こう考えると、スマートフォンに特化した企画を前面に出すことはかなり問題があると思えます。

iPadユーザはどれぐらいいるのか

世界的にiPadの売り上げ台数はiPhoneの約半分です。iPhoneの売り上げ台数は全スマートフォンの売り上げ台数の半分です。したがって極めておおざっぱな見積もりですが、学会参加者中のiPad所有率はたかだか2割だと思います。したがってスマートフォンに特化した企画以上にiPadに特化した企画はバカバカしいのです。

ならばどのようなデバイスをターゲットしたIT企画にするべきか

ターゲットするべきデバイスを考える基準はすごく単純で、現時点で何が使われているかを基準に考えます。そうすると以下のようになります。

  1. ラップトップPC: 学会参加者、特に発表者は必ずラップトップPCを持っていて、多くの場合は学会会場にまで持ってきています。昨年の学会を見ても、会場の廊下で多くの参加者がPCで抄録を確認したりメールを確認したりしていました。したがってターゲットするべきデバイスの第一位はラップトップPCです。
  2. 紙 (PDF): 次に多くに人が利用するのが紙です。抄録集のPDF版を紙に印刷して、その紙を会場で持ち歩きます。またPCの画面を印刷する人もいるでしょう。紙はなんといっても特別にデバイスを買う必要が無くて安価で、また枚数が極端に多くなければ軽いです。メモも簡単にとれます。ターゲットするべき第二位は紙です。
  3. スマートフォン: スマートフォンはウェブを閲覧することもできますし、PDFを見ることもできます。持ち運びはすごく便利ですし、利用者が急増していますので、ターゲットするべきデバイスの第三位はスマートフォンです。
  4. iPadなどのタブレット: iPadは学会用デバイスとしては究極的な存在です。持ち運びは便利で立ちながら使うことが出来、ウェブもPDFも見るのに非常に適しています。メモ書きもそれほど苦労せずにできます。またプロジェクターにつないでスライドを上映することだってできます。しかしiPadの最大の欠点は利用者がまだ少ないことです。したがってターゲットするべきデバイスとしては第四位の存在です。

このリストを見てはっきりわかるのは、最近話題になっているスマートフォン用アプリは第三位と第四位の優先順位のデバイスをターゲットしているだけであるということです。学会全体の魅力を高めるという意味においては周辺を攻めているだけで、本当に重要なところには全然突っ込んでいないのです。

もしもラップトップPCと紙媒体向けのオンライン抄録が満足のいくものであれば、それはそれで良いのかも知れません。第一位と第二位に対しては既存のもので十分に満足してもらえているのであれば、第三位と第四位に注力するのは納得できます。しかし現状は違います。ラップトップPC向けのウェブサイトにしても、紙媒体向けのPDFにしても全く満足な出来ではないのです。

結果として何をどのようにターゲットしたか

いろいろな紆余曲折がありましたが、最終的には以下のデバイスをサポートすることになりました。現状の技術水準を考えたとき、ぎりぎりいっぱいのサポートができたのではないかと思います。

  1. ラップトップPC: HTML5などの最新ウェブテクノロジーを駆使し、見やすさを高める工夫も凝らしたオンライン抄録集をウェブサイトとして用意。
  2. 紙媒体: 読みやすくデザインされたPDFを提供するとともに、各セッション毎に細かくファイルを分割(計800ファイル弱)。興味のあるところだけを印刷しやすいように工夫しました。
  3. スマートフォン: ラップトップPC用のウェブサイトをベースに、スマートフォン用にデザインしなおしたウェブサイトを用意。HTML5を使い、ネットワークアクセスの負担を減らし、ある程度オフラインでも閲覧できるようにしました。
  4. フィーチャーフォン: スマートフォンの利用者は学会時点でもまだ5割程度となる見込みで、まだフィーチャーフォンを使っている人が5割ほどいるはずです。そこでスマートフォン用のウェブサイトを簡略的なデザインに変更することで、iMode用のウェブサイトを用意しました。
  5. iPad: iPadの画面サイズは768 x 1024ピクセルです。一世代前のウェブデザインでは横幅を800px以下にすることが推奨されていたため、768px用のウェブサイトを作るのは簡単なことです。そこでラップトップPC用のウェブサイトを最初から768pxでもOKなようにデザインすることで、そのままiPadに対応しました。スマートフォン用ウェブサイトと同様にHTML5を駆使し、ネットワークアクセスの負担を減らし、ある程度オフラインでも閲覧できるようにしました。

ソフトウェアとしては以下のようなコンポーネントになります。

  1. ウェブサイト: マスターデータベースを兼ねたウェブサイトです。一つのデータベースからPC用、スマートフォン用、フィーチャーフォン用のデータが自動的に作成されます。PDF作成用のXMLファイルもこのデータベースからエキスポートします。ウェブアプリ開発でよく使われるMVC (Model-View-Controller)のデザインパターンを使っているため、PC用、スマートフォン用、フィーチャーフォン用のウェブサイトは大部分のコードが共通で、Viewコードだけを個別に用意しています。
  2. PDFファイル作成: PDFファイルはAdobe IndesignへのXML流し込みで作成しています。そこでInDesign用のテンプレートファイルおよび自動流し込みのためのAppleScriptを用意しています。
  3. Javascriptフレームワーク: ウェブサイトの一部ですが、別個に取り上げるだけの大仕事でした。学会のように大勢が集まる場所でのWiFi環境はズタズタのことが多く、せっかくウェブサイトを用意してもそれに接続できないという問題が起こります。HTML5ではWebStorage APIやWeb SQL APIなどがあり、ローカルでデータを保管できるようになっています。しかしサーバへのリクエスト、レスポンスをローカルへキャッシュ、キャッシュからの読み出し、キャッシュのinvalidationなど一連の作業を管理してくれるフレームワークはほとんどありません。そこで独自に新しいフレームワークを作る羽目になりました。

まとめ的な話

雑多な話をしているのでまとめと言いながらあまりまとめっぽくないのですが、言いたいことをここでずばり解き放つとこんな感じ。

「ろくなPC用ウェブサイトも作らずにスマートフォン用アプリを開発しているやつらは何もわかっていない。」

分子生物学会の新しい抄録集システムの開発をしました

昨年の12月の分子生物学会に参加して、ITインフラをさんざんディスり、提案をしました。

  1. 学会にソーシャルをどうやったら持ち込めるか
  2. 学会の要旨集システムをゼロから考え直そう
  3. ソーシャルな要旨集システム:素案

そして今週あのときのブログ記事の思いを現実にするために半年間がんばった成果が日の目を見ました。

日本分子生物学会 第35回 年会 オンラインプログラムサイト(学会後しばらくしたら消えます)

まだβ版で、バグをとったり、修正したり、機能追加したりなどで仕事がたくさん残っているので詳しくは話しませんが、簡単に機能と技術について…

  1. 学会プログラムとしては世界で初めて、Facebook的な「いいね!」があります
  2. 学会プログラムとしては世界で初めて、著者名ごとにデータを整理しています
  3. PC版、スマホ版、ガラケー版の3つのサイトを完全に同調して作っています
  4. 学会プログラムとしては世界で初めて、コメントが書き込めます。著者自身も書き込めるので、例えば直前の変更とか、研究室ウェブページへのリンクはここにはれます
  5. まだ完全にスイッチオンしていませんが、ウェブサイトでありながら、オフラインでの閲覧を実現します
  6. 「夜ゼミ」という電子掲示板で、飲み会の参加募集ができます

結構、12月時点にブログで考えていたことが実現できました。

技術的には以下のことをやっています。

  1. 名寄せ支援システム:学会のデータは著者名ごとにIDなんて振っていないので、名寄せをしなければなりません。原則としてはマニュアルな作業ですが、それを支援するシステムを用意しています。
  2. モバイルおよびデスクトップを兼ねたJavascript framework, Kamishibai.js:スマートフォン向けのJavascript frameworkはいくつかありますが、オフラインでの閲覧をしっかりサポートしたものは皆無です。特に日本分子生物学会のように数千の演題があって、データが膨大なウェブサイトをサポートしたものはありません。1) 万以上のページがあっても平気、2) 部分的にオフラインでの閲覧が可能、3) Javascriptはあまり書かなくていい、4) メチャクチャ小さいのでレスポンスがいい、というJavascript frameworkです。ゼロから作りました。ページをスライドさせるイメージでKamishibai.jsと名付けています。

この2つの技術はいずれもバイオの買物.comを運営する上で重要でしたので、そこがうまく応用できました。

一番低く見積もっても世界一のことができました。

後は気を抜かず、完成させて、学会そのものがちゃんと成功するように注力します(あまりブログ書かないで)。

スマートフォン市場の異常さ

先日のApple vs Samsungの訴訟を受け、またそれに対するいろいろなリアクションを見ながら、スマートフォン市場の特殊性について考えてみました。

以下、メモ;

  1. iPhoneは一夜にして携帯電話市場をがらりと変えました。携帯のデザインを一変させたばかりではなく、携帯にできること、ウェブを見ること、メールを読むこと、アプリを買うことの状況を一変させました。ユーザインタフェースを一変させました。当時はAndroidですらキーボード中心のBlackberryのような製品を想定したOSでしたが、iPhone後は方向を180度変えてタッチインタフェースを真似ました。
  2. 他の会社が注力していなかったタッチインタフェースを早い段階から研究開発していたAppleが、数多くの特許を独占できたのは自然なことです。タッチインタフェースを発明したのはAppleではないのですが、それを実際に製品に応用していくところの特許は圧倒的にAppleが保有していて、独占状況に近いです。こうなったのはひとえに他社が注目していない頃にタッチインタフェースを突き詰めたからです。
  3. それまでの携帯電話はパソコンと比較して大きく見劣りしていました。性能はもちろんのこと、ソフトウェア面でも圧倒的に単純なものでした。iPhoneはその状況を一変させます。iPhoneのOSであるiOSは、土台がMacOS Xと同じです。そしてMacOS Xで初めて導入された数多くの先進的な技術が含まれています。例えばグラフィックスやアニメーションの描写などがそれです。iPhoneは初代Macintoshから数えて20年余の技術の上に立つ製品です。パソコンで蓄積された技術を携帯に持ち込んだ製品です。しかしパソコンの世界では一般消費者向けのオペレーティングシステム技術はたった2つの会社しか持っていませんでした。AppleとMicrosoftだけです。このことが何を意味するかというと、iPhoneにまともに対抗できる製品を作れるのは基本的にMicrosoftしかなかったということです。GoogleがAndroidを開発できたのはJavaをハイジャックしたりiPhoneを真似たからであり、自社技術を積み重ねてつくることはできなかったのです。かなり近道をしているので、特許を数多く侵害したのは自然なことです。
  4. NokiaはAndroidの携帯を開発しませんでした。そうではなくWindows Phoneに賭けました。なぜかというとAndroidでは差別化は不可能と考えたからです。これについてはCNETの記事で紹介されています。実際に現時点でのAndroidの状況を見ると、Androidスマートフォンで儲かっているのはSamsungだけで、他のメーカーは差別化に苦労し、高い価格で製品が売れずに儲かっていません。(もちろん一番儲かっているのはAppleですが)
  5. SamsungだけがなぜAndroid陣営の中で儲けることができているか?もちろん社内に高い技術力を持っているのは有利だとは思いますが、むしろ大きいのは、ハードもソフトもiPhoneに似せたからではないかと思われます(SamsungはAndroidを改変して、よりiPhoneに似せました)。つまりスマートフォン市場の中では、ほぼiPhoneに似ているか似ていないかだけが差別化につながっていると言えます。

以上をまとめると、a) 知的所有権ではマーケットリーダー1社が圧倒的な有利な状況があります、 b) スマートフォン市場での差別化ポイントは、現時点ではマーケットリーダーの製品に似ているか似ていないかの1点に絞られています。これがこの市場の特殊性です。

MicrosoftのWindows Phoneが売れていけば、a)の問題は解決されます。Microsoftはパソコン関連の知的所有権をたくさん保有していますし、その一部はiPhoneでも使われているでしょう。MicrosoftはAppleとクロスライセンス契約をしていると言われていますので、Windows PhoneはAppleに訴えられる可能性がぐっと少ないです。

b)の差別化についてははっきりわかりません。NokiaはMicrosoftと早い段階からパートナーになることによって、他社のWindows Phoneでは得られないような差別化ポイントを手に入れようとしています。パートナー契約の内容に依存しますが、確かにそうなるかも知れません。Windows PhoneはiPhoneとはかなり違うユーザインタフェースなので、現在の差別化ポイントの一極集中は解消していくでしょう。

そうなればスマートフォン市場も多少はまともなものになっていくかも知れません。

3代目のiPadを見て再度考える:アップルの宿命

最初のiPadが発表された直後に私は以下のブログ記事を書きました。

  1. iPadを見て思った、垂直統合によるイノベーションのすごさとアップルの宿命
  2. iPadのこわさは、他のどの会社も真似できないものを作ったこと

その中で僕が繰り返しているのは、イノベーションが盛んに行われている時代、そしてそのイノベーションが市場に受け入れられている時代は垂直統合が勝つということです。そして垂直統合メーカーがほとんど市場から消え去っている今、アップルに対抗できるメーカーはなかなか出てこないでしょうということでした。逆にイノベーションが停滞してしまうと水平分業が有利になってきます。

したがって今後もアップルがタブレット市場をほぼ独占できるかどうかは、タブレット市場のイノベーションのスピードにかかっていると言えます。アップルにとってみればイノベーションを持続することかが最大の課題です。これはアップル一社のイノベーションという意味ではなく、市場全体としてイノベーションに対する期待が持続するかという意味です。

さて3代目のiPadが発表されましたので、その特徴を見ながら、タブレット市場のイノベーションの余地について考えてみたいと思います。

Retina Display

Retina Displayというのは、人間の目の識別能力を超えたと言うことです。つまり今のRetina Displayよりも解像度の高いディスプレイを作ったところで、もう誰も気づかないのです。

したがってディスプレイの画素数、解像度についていうと、イノベーションはここで一つの終着点を迎えたのです。

今後のイノベーションは消費電力を押さえられるかとか、どれだけ薄くできるかとかに限られてきます。エンドユーザには見えないところでのイノベーションになります。

今後のイノベーションの余地は一つ減りました。

なおRetina Displayの画素数は2048 x 1536であり、普通に販売されているパソコン(iMac 27インチを除く)の最大画素数 1920 x 1080を大幅に超えています。これをスムーズに動かすための省電力GPUの開発も相当に大変だったと想像されますので、競合メーカーから同様の解像度のタブレットが発売されるまでしばらく時間がかかるかもしれません。

消費電力

新しいiPadの電池容量はiPad2よりも70%も多いと言われています。それでやっと電池が持つ時間をiPad2と同じにできました。消費電力が激しいと言われているLTEなどをサポートするために、相当に無理をしているのでしょう。

ここにはまだイノベーションの余地が相当に残っていそうです。

処理能力

iMovieなどがアップデートされ、iPhotoも追加されました。PCで行う作業の中でもかなり重たい作業である画像・ビデオ編集がiPadでもできるようになりました。3Dゲームも十分な解像度とフレームレートが出せている様子です。

これ以上の処理能力はもういらないんじゃないかと思われるレベルです。

今後も処理能力は向上するでしょうが、そろそろオーバースペックになりそうな感じです。そういう意味では、処理能力についてはイノベーションの余地があまり残っていないと言えます。

OS

OSの基本的な部分については、既にマルチタスクが実現されています。またタッチによる操作も特別な進歩を見せていません。

イノベーションの余地がもうあまりなさそうな印象です。

ネットワークの速度

まだまだネットワークの速度も信頼性も不十分です。たださすがのアップルもここを垂直統合に取り込むことはそれほどはやらないでしょう。

Siri

一番イノベーションの余地がはっきりしているのはSiriによる音声認識です。Siriの聞き取り精度はまだまだで、しょっちゅう間違えられます。Siriでできる操作も天気とかスケジュール管理ぐらいで、まだまだSiriは実用的とは言えません。その一方でネットワークに大きな負担をかけますし、裏では多数のサーバが動いているなど、多大の処理能力が必要です。

要するに、Siriは性能的にはまだまだだし、それなのにコンピュータパワーをすごく必要としています。イノベーションの余地がすごく残っているのです。

ちなみにSiriが残しているイノベーションの余地は簡単に思いつくものだけでも以下のものがあります。

  1. 精度を上げる
  2. ネットワークにつなげなくても動くようにする(Siriの音声認識ぐらいはローカルでやる)
  3. iOSのほぼすべての操作を音声でできるようにする。

まとめ

iPadが発売されて2年が経ち、猛烈な勢いでイノベーションが起こりました。当初は処理能力が足りず、コンテンツ作成は無理だろうと言われていましたが、今ではコンテンツ制作だって十分可能です。それどころかディスプレイの画素数は、市場のPCのほとんどすべてを凌駕するまでになりました。

しかしアップルにとっては喜べることばかりではありません。イノベーションの余地がなくなり、新機能が市場でオーバースペックになっていくと、垂直統合モデルは利点が減り、欠点ばかりが露呈します。これはその昔にマックがたどった道でもあります。

Siriが戦略的に非常に重要なのは、イノベーションの余地を新たに生んでいるという点です。こういう挑戦をアップルが続け、それが市場に受け入れられている間は垂直統合が勝ち続けるでしょう。

Ruby 1.9.2 CSV でInternal Encodingを指定するとおかしくなる件

今日これで数時間潰してしまったのでメモ。

Ruby 1.9のCSVでShift-JISのファイルを読み込むときのバグです。

[ruby]
# encoding: UTF-8

require ‘csv’

CSV.foreach(‘test.csv’, row_sep: “n”, encoding: “SJIS:UTF-8”) do |row|
puts row.join(‘:’)
end

CSV.foreach(‘test.csv’, encoding: “SJIS:UTF-8”) do |row|
puts row.join(‘:’)
end
[/ruby]

ファイル”test.csv”は以下のもので、行末は”n”でエンコーディングはShiftJISで保存してあります。

[text]
今日は,2月末なのに,東京でも,大雪でした

[/text]
ruby 1.9.2-p290で実行すると

[text]
NaoAir:Desktop nao$ ruby test.rb
今日は:2月末なのに:東京でも:大雪でした
/Users/nao/.rvm/rubies/ruby-1.9.2-p290/lib/ruby/1.9.1/csv.rb:2027:in =~': invalid byte sequence in UTF-8 (ArgumentError)
from /Users/nao/.rvm/rubies/ruby-1.9.2-p290/lib/ruby/1.9.1/csv.rb:2027:in
init_separators’
from /Users/nao/.rvm/rubies/ruby-1.9.2-p290/lib/ruby/1.9.1/csv.rb:1570:in initialize'
from /Users/nao/.rvm/rubies/ruby-1.9.2-p290/lib/ruby/1.9.1/csv.rb:1335:in
new’
from /Users/nao/.rvm/rubies/ruby-1.9.2-p290/lib/ruby/1.9.1/csv.rb:1335:in open'
from /Users/nao/.rvm/rubies/ruby-1.9.2-p290/lib/ruby/1.9.1/csv.rb:1201:in
foreach’
from test.rb:19:in `’

[/text]

のようになります。最初の”row_sep”を指定したものはうまくいきますが、”row_sep”を指定していない方はエラーが出ます。

理由は”row_sep”で行末記号を指定してあげないと、CSVは自分で先読みをして行末記号を推定しようとしますが、この処理がエンコーディングによってはバグを起こすようです。

解決策は最初の例のように行末記号をしてあげる、そもそも自動推定をさせないこと。あるいはCSVにtranscodeさせるのをやめ、CSVから得られた個々の結果を個別に#encodeしてあげること(下例)。
[ruby]
CSV.foreach(‘test.csv’, encoding: “SJIS”) do |row|
puts row.map{|c| c.encode(‘UTF-8’)}.join(‘:’)
end
[/ruby]

あるいはRuby 1.9.3ではこのバグは修正されているようですので、1.9.3にアップグレードすれば問題なく処理されます。

なぜ日本にリーダーがいないと言われるのか、ちゃんと論理的に議論しようよ

先ほどNHKで「シリーズ日本新生 : 生み出せ!“危機の時代”のリーダー」という討論番組をやっていましたが、会場でプレゼンとかをしている人の論理があまりにもめちゃくちゃなので、耐えられずに消してしまいました。

「日本にリーダーがいない」というのはよく言われる話です。でもその原因をちゃんと論理的に考えている人はほとんど聞きません。またリーダーがいないから日本がだめになっていくんだという議論についても、本当にそうなのかを論理的に述べている人も見かけません。単なる憶測や思い込みで話している人がほとんどです。

番組をちゃんと見ていないので、本当は批評する資格はないのですが、一般的な話として自分の考えを紹介します。

日本の問題をなるべく論理的に考えてみましょう。 Continue reading “なぜ日本にリーダーがいないと言われるのか、ちゃんと論理的に議論しようよ”

デジタル教科書とか電子黒板について思うこと

デジタル教科書とか電子黒板とかが割と話題になっていて、自分もいろいろな理由で興味があります。Facebookでもみんなのデジタル教科書教育研究会というグループに参加させてもらっていて、特に現場の人の意見を聞きたいと思っています。

それで備忘録的な意味で、現時点での自分の考えを少し書きとどめようと思います。議論をしたいのであればFacebookなどでやるつもりですが、今回はそうしません。あくまでも現場を全く知らないけど、いろいろな授業を受けてきた自分の経験に基づいて話したいと思います。

「デジタル教科書」、「電子黒板」という名前が悪い

何が悪いかというと、既存の「教科書」や「黒板」を置き換えようという発想が良くないです。「教科書」にしても「黒板」にしても、長く教育現場で使われており、どうやって活かすかは各先生たちがさまざまな工夫をしながら身につけています。親の世代も「教科書」と「黒板」で育っていて、それをデジタルなもので置き換えることには抵抗を感じるはずです。また「教科書」は価格も安く、「黒板」はすでの学校に備わっているので事実上無料です。

こう考えると、既存の「教科書」を「デジタル教科書」で置き換えるのは、変化への抵抗という精神面でもまた価格面でも全く無理な話です。やるだけ無駄と言えます。もちろん「教科書」の代わりにiPadを持ち歩けばランドセルが軽くなるという話はありますが、その程度の理由で何万円もするiPadを子供に持たせるということはほぼあり得ません。

「電子黒板」はもっと話がおかしくて、価格があまりにも高いので「黒板」に置き換わるはずがないことは誰もが認識しています。それで「電子黒板」にどういう役割が期待されているかというと、マルチメディアを活用した副教材ということなのですが、これだったら昔から学校に置いてあったテレビと同じ役割です。したがって「電子黒板」と呼ばずに、「○×テレビ」という名前をつけるべきです。

「教科書」「黒板」ありきだから「デジタル教科書」、「電子黒板」という名前がつく

「デジタル教科書」、「電子黒板」という名前がどうして使われるか、どうして「○×テレビ」という名前がつかないか、その理由を考えてみます。

一つ考えられるのは、「教科書」「黒板」というものが学校教育に不可欠だという常識(常識だからといって、後述するようにそれが正しいわけではありません)がありますので、「デジタル教科書」、「電子黒板」という名前にすればなんだかとても重要な役割を担うように聞こえるという可能性です。「○×テレビ」という名前にしてしまったら、無くても教育上は支障が無いように認識されてしまいます(仮に実態は「○×テレビ」であったとしても)。同様に「デジタル副教材」よりは「デジタル教科書」としてしまった方が重要そうに聞こえるのでしょう。

でもちょっと立ち止まって考えて欲しいのです。そもそも「教科書」とか「黒板」って必須なのでしょうか。これらを使わない教育の形というのはあり得ないのでしょうか。「教科書」「黒板」にとらわれず、ゼロから教育を考え直した場合、必要なのは何なのでしょうか。そのときにデジタル技術が果たす役割は何でしょうか。そいういう発想が本当は必要だと思います。

ちなみに僕が30年以上前に受けたイギリスの現地の小学校の授業では「教科書」はありませんでした。また少なくとも3年生になるまでは「黒板」を使いませんでした。

1, 2年生の頃は机で島を作って、英語や算数の授業では問題集みたいなものを各自で解いていました。わからなかったら先生が回って教えてくれました。

3年生になって歴史とか地理の授業をやりましたが、「教科書」はなく、先生が独自にいろいろな授業を用意してくれているように見えました(裏でどういうことがあったかわかりませんが)。そして「黒板」を使わず、先生は口頭でいろいろな歴史の話をしてくれます。それを生徒は必死にメモをとり、そして授業の最後は先生が出題した問題を解きます(問題といってもかなり自由記述に近い)。必死にメモをとり、すぐに問題を解くので、授業内容は良く頭に残りました。僕は未だにこの授業の形態が一番好きで、人の話を聞きながら必死にメモをとる(板書を写すのではなく)のが大好きです。

少なくとも僕にとっては「教科書」「黒板」ありきということはありませんし、これらを使わずに効率的に授業をすることはいくらでも可能だし、その方が効果がでるのではないかと考えています。

デジタルって本当はもっとすばらしい

デジタルのすばらしさって、既存のものに置き換わることじゃないんです。今まで存在しなかったことを可能にするのがデジタルの良さなのに、「教科書」「黒板」ありきという既存の枠組みの中で考えてしまったら思考が狭くなってしまいます。

例えばデジタル技術の発達により、写真やビデオを撮ったり編集したりすることが画期的に簡単になりましたし、何よりもフィルム代が全くかかりません。iPod Touchのような2万円程度の機材があれば、それだけで子供はロバート・キャパにもなれますし、スティーヴン・スピルバーグにもなれます。またアニメの作成を支援してくれるソフトを使えば、宮崎駿にもなれてしまうのです。

これを学校の授業に活かさない手はないと思いますが、どうでしょうか。身の回りを観察したり、おもしろく感じたことを映像に納めたり、他人に説明したり、起承転結を構想したりなど、いろいろな力が身につくはずです。

アニメを作るソフトなどを使えば、子供たちに日本史物語や地理物語をいろいろ作らせることができます。これだけやらせれば、学校で習ったことは一生記憶に残るのではないでしょうか。

もう一つ、電子メールを使ったり、ブログを読んだり書いたり、FacebookやTwitterを使っている人なら皆感じていることですが、デジタルによってコミュニケーションの形が大きく変わりました。いろいろな人のいろいろな意見を簡単に知ることができるようになりましたし、自分の意見を他人に伝えることが自由にできるようになりました。このコミュニケーションも授業に生かせるのではないでしょうか。

例えば今までだったら学校の宿題で読書感想文を書かされても、読んでくれるのは先生だけでした。そうではなく、学校内のLANでブログシステムを運用すれば、読書感想文はみんなで読んで、みんなで議論するものになる可能性があります。自分はこう読み取ったけど、友人Aは違うように読んでいたんだ。彼はそういうものの考え方をするのか。そうやって自分の考えのポジションを知ることができるし、他人との意見の違いも尊重できるようになるのではないでしょうか。親しい友人でも、なかなか思考回路を理解することはないのですが、そのレベルでのコミュニケーションを可能にしてくれるのがデジタルの一つのすばらしさだと思います。

その一方でデジタルな問題集というのは当たり前だし、子供たちもやってくれるとは思いますし、効果も高いとは思いますが、あまりにも退屈な発想です。必要だと思いますが、デジタル時代の子供を育てるという夢のような話からすると、あまりのもわくわく感のないことです。

もうちょっと幅広く、夢を広げて考えてみましょう。

朝日新聞「アサヒコム」終了、「有料版」に一本化のニュースを受けて

J-Castニュースに『朝日新聞「アサヒコム」終了、来年初めに「有料版」に一本化有力』という記事が掲載されました。(興味深いことにJ-Cast自身は「1.5時情報」というコンセプトのニュースサイトで、基本的には自社で取材はせず、新聞などをベースにコメントを追加するサイトのようです。)

さて、無料の「アサヒコム」を終了することによって購読者数がどうなるか、今後存続していけるのかどうかという様々な憶測がウェブで流れていますが、僕は僕なりの考えを紹介します。

  1. 新聞が提供する情報は民主主義に不可欠だった: 民主主義が成功するための前提条件として、民衆が世間の情勢を知らなくてはなりません。正しい情報を持たない人が、リーダーを選ぶ際に正しい判断ができるはずもないからです。したがって新聞が存続できるかどうか、あるいは同等の役割を果たすメディアが出てくるかどうかは民主主義のためにはとても重要な問題です。Steve Jobs氏もAll Things DigitalのD8のインタービューでまさにこのことに言及しています。
  2. 取材などのニュース収集は広告収入だけで可能か: 広告収入だけに頼ってニュースを配信する試みは別に新しいことではなく、テレビの民放がずっとやってきたビジネスモデルです。残念ながらそのクオリティーは下がる一方で、近年ではまさに目を覆いたくなるような報道番組ばかりになってしまっています。もちろん新聞の取材力も高いとは言えません。しかしテレビの報道はそれよりも格段にひどい状況です。少なくとも民放テレビという過去の例で見る限り、広告収入に頼った報道に民主主義の未来を託す気にはなれません。
  3. ネットの情報は無料が多いのは、情報に価値が無いからではない。: スマートフォンを使っている人は、毎月6-7千円を支払っています。光ファイバーでインターネットに接続している人は毎月おおよそ5千円を支払っています。テレビ(衛生を含む)を持っている世帯は、毎月NHKに3千円支払っています。こう見ると、我々は情報を得たり、コミュニケーションするためのハードウェアやネットワークに毎月かなり多くのお金を支払っています。ハードにこれだけのお金を払いつつ、コンテンツが無料であることを期待するのはあべこべな話です。インターネットに接続したときに我々が欲しいのは情報であって、情報がなければインターネットに接続する価値はありません。我々はハードが欲しいのではなく、ソフトが欲しいのです。だから情報にも毎月数千円のお金を支払う状態こそがバランスのとれたものであるともいえます。
  4. ネットは課金システムが未熟: Steve Jobs氏の巨大な業績の一つはiTunes Music Storeです。当時Napsterなどの違法音楽ダウンロードサイトが隆盛を極め、音楽レーベルは戦々恐々としていました。そのときSteve Jobs氏は違法音楽ダウンロードサイトが使われるのは、利用者がみんな無料で音楽を手に入れたいからではないことを見抜きました。問題なのは利用者が音楽にお金を払いたくないからではなく、売る仕組みがないからだと考えました。だからiTunes Music Storeを作って、音楽のデジタル版が適正な金額で簡単に入手できる仕組みを築き、爆発的な成功を収めたのです。Steve Jobs氏は新聞でもiTunes Music Storeと同じことをやるべく、iPadでNewsstandを提供しています。まだ成功と言える状態ではありませんが、Steve Jobs氏の着眼は一貫しています。僕もインターネットは課金システムが未熟だと考えています。

以上の理由から、僕は朝日新聞の判断を応援します(朝日デジタルも購読しています)。非常に難しい局面であり、試行錯誤しながら何とか乗り越えてもらいたいと思っています。

ただし本当に必要なのは、報道のイノベーションです。印刷や配達が不必要になり、参入障壁がなくなった分、本来ならば新しい一次報道のメディアが参入してきてもおかしくありません。ただ既存企業が無料だと、low-endからの破壊的イノベーションは困難です。既存の新聞がネット版を有料化することによって、ようやくそのチャンスが巡ってきたかもしれません。