オープンの方が高い理由

「オープンな規格にして、競争を促進した方が安くなるはずだ!」

多くの人がこのことを信じています。

でもこれはかなり間違っているのではないでしょうか。

確かにオープンで競争が激しかったものが「たまたま」安かったというケースはあります。しかしオープンであることと競争が激しいこと、そして価格が安いことは実際にはかなり独立した事柄であって、オープンであることの結果として競争が激しくなる訳でもなければ、オープンであることによって価格が安くなる訳でもありません。逆にクローズドであれば価格が高くなる訳でもなく、競争が阻害される訳でもありません。

タブレットはApple iPadが安い?

最近で言えばAndroidタブレットとして発表されたSamsung Galaxy Tabの例があります。まだ日本でのGalaxy Tabの価格は正式に発表されておらず、情報があるのはイギリスだけですが、iPadの方がSamsung Galaxy Tabより高くなってしまっているのです。

Samsungが使用しているAndroid OSはオープンソースであり、無償で使うことができます。Samsungは独自のOSを開発しなくてすんだのです。しかもiPadが発売されたのは一年近く前なので、後発として成功するためには積極的な価格戦略が重要です。しかもAppleはブランド力が強く、多少高くても製品が売れます。AppleのiPadはクローズドなシステムであり、競合他社からある程度遮蔽されています。その上Appleは利益幅を大切にしますので、無理な価格設定はしません。

以上を踏まえ、「オープンな方が安くなるはずだ」という考え方に立つと、どう考えてもSamsungの方が安くてしかるべきです。Android OSはオープン、それもパソコンにおけるマイクロソフトのWindowsよりもさらにオープンです。相変わらずクローズド戦略をとるAppleより当然安くならなければなりません。

でもそうなっていないのです。逆にApple iPadの方が安いのです。

どうして理屈通りにいかないのでしょうか。どうしてオープンなのに安くならないのでしょうか。

理由は簡単です。

理屈が間違っているのです。

価格はどうやって決まるの?

詳しいことを抜きにして、常識的な話だけをします。

価格を決める要因は大きく

  1. 競合価格
  2. 製造コスト要因
  3. 戦略的要因

です。

この中でも1.の競合価格は常に非常に意識されます。別名、市場価格です。末端顧客にとっては非常に分かりやすいのが競合価格ですので、価格設定のときはまず最初にこれを意識するのが一般的です。よほど明確な差別化ができていない限り、あるいは競合のブランド力が弱くない限り、競合価格を無視するということはあり得ません。逆に競合価格だけで価格設定をすることは珍しくありません。

製造コストはもちろん大きな要因です。しかし通常は「守り」的な意味を持ちます。価格は基本的には競合を元に考えるのですが、ここで設定した価格で本当に利益が出るかどうかを確認するときに製造コストを確認することになります。特に日本のように伝統的に製造現場が強く、マーケティングが弱い場合は、製造コストは最後に確認しがちです。

最近のちゃんとしている企業であれば、製造コストを元に最終的な価格を設定するのではなく、逆に最終的な価格を最初に決めて、そしてその価格で十分な利益が出るように製造方法を組みます。つまり製造コストが価格を決定するのではなく、価格と製造コストが先に決まっていて、それから製造方法が決めます。AppleがiPadの開発を行ったときはこの方法をとったと語っていました。

戦略的価格というのは、「今は仕方ないから赤字でも我慢しよう」という状態の別名です。顧客を囲い込んで、後で別の方法で利益を改修できる見込みがあるときにとられる価格戦略です。携帯電話の本体を安く売って、後で通信費でその分を回収する場合等にとる価格設定戦略です。

さてGalaxy Tabの場合は1.の競合価格を強く意識したはずです。しかし2.の製造コストが十分に下げられず、泣く泣くiPadよりも高い価格にせざるを得なかったと推測されます。Galaxy Tabは後発であり、Apple iPadとは大して差別化できていないので、これ以外は考えられません。

もちろん戦略的価格戦略も考えられます。しかしAndroidは完全にオープンなので、顧客の囲い込みは困難です。ですからSamsungはこの戦略をとることはできませんでした。

どうしてSamsungは製造コストを下げられないのか

これもかなり単純だと予想しています。Appleの方がスケールが断然大きいのです。

iPadのOSはiPhone, iPod Touchと同じiOSで、CPUなどの部品も共通です。Apple
が出荷するであろうiPad + iPhone + iPod Touchの台数と、Samsungが今後出荷するであろうAndroid携帯 + Androidタブレットの数はどれぐらい違うでしょうか。想像するだけでも数倍は違うはずです。一桁違うかもしれません。(iPod Touchの販売台数はiPhoneと同レベルです。iPhone対Androidのシェアは情報源によってはかなり競っているというものもありますが、僕はNielsenのデータに信頼を置いています。もちろんAndroid携帯は複数メーカーから販売していますので、各メーカーのシェアはAndroid全体のシェアの数分の一です。)

これだけスケールが違うと、部品の調達力に大きな違いがあります。自然と大きな値引きが引き出せます。数年前の話ですが、SamsungがAppleにiPod用のflashメモリを50%程度値引きしているということで、競合のiRiverが抗議したということもありました。iPadについても同程度に調達コストを抑えられている可能性があります。

Androidのようなオープンな規格だと、どうしても市場が分断されます。独自のOSを開発するという参入障壁がないことにより、多数のメーカーが参入します。その結果として、各メーカーの取り分が小さくなり、部品を調達する際の交渉力が弱くなってしまいます。これはオープンであることによって却って価格が高くなってしまう例です。

他にも原因はたくさんあると思います。今回はこの一例だけ紹介しますが、オープンの方が価格は高くなり、一般の常識に反してクローズドの方が価格を下げやすいこともあるのを理解していただければと思います。

オープンによって価格が下がるのはどういうとき?

オープンにすることによって価格が下がる例はもちろんあります。パソコン等が良い例です。でもこうなるためには条件があります。

それはクローズド戦略をとっていた企業が、その立場にあぐらをかいて顧客から利益を搾り取っている場合です。先に書いた例でも紹介したように、クローズド戦略をとりつつ大きなマーケットシェアを獲得した企業は、本来は有利な価格戦略を展開しやすいはずです。低価格戦略に打って出る余裕はあるはずです。しかしマーケットシェアが大きくなると、ほとんどの経営者は顧客を搾取することを始めます。価格を下げる努力を忘れ、新技術の開発の手を緩め、取れるだけ利益をとろうとするのです。ほとんどの経営者は短気目標を重視し、長期目標を軽んじる傾向があるので、これはある意味合理的な判断ではあります。通常の方法で株主利益を最大化するのであれば、このやり方が正解です。マーケティングではこのような戦略をしばしば「milking」と言います。

これに対してオープンな市場であれば、企業は顧客を搾取することができません。価格競争が起きますので、各企業はがんばって価格を下げます。だからオープンな市場は価格が安くなるのです。

さてAppleがとっている戦略は、クローズド戦略でありながら、そして巨大なマーケットシェアをとりながらも、決して顧客を搾取しない戦略です。膨大な利益が出ても価格を下げる努力を続け、そして新しいイノベーションを忘れていません。利益を最大化することを考えるのではなく、どうやったらより多くのイノベーションを起こし、より多くの人の人生に好影響を与えられるか。Appleは株主利益ではなく、Steve Jobsの妄想によって駆り立てられている会社です。こういう会社のクローズド戦略に勝つのは簡単ではありません。

確かにマッキントッシュはウィンドウズに負けましたが、あれはクローズドvsオープンの戦いではなかったのです。最大限に顧客を搾取するため、昔のマッキントッシュはべらぼうに高価でしたし、そして新しいOSの開発がうまく出来ない等、イノベーションも起こせませんでした。いくら昔とはいえ、パソコン一台で167万円って信じられますか?。Jobsを追い出した後のAppleの経営者はそういう販売戦略をとったのです。単なるクローズド戦略ではなく、顧客を搾取するクローズド戦略をとったのです。そういうのはオープン戦略に簡単に負けます。

Google CEOにとって、競合はAppleでもFacebookでもなく、Bingだ

Google CEOのEric Schmidt氏がWall Street Journalのインタビューで語ったことです。

さすがです。Googleのコアビジネスが何かをちゃんと理解し、そこにフォーカスをし続けているようです。

多くのCEOは新しい話題のことばかりを気にして、その会社の屋台骨となっている事業に注力することをしばしば忘れていますが、Eric Schmidt氏は違うようです。

「もうサーチはGoogleで決まりなんじゃないの?」と思う人が多いかもしれませんが、僕はまだまだサーチは始まったばかりだと思っています。Googleはまだ人間と同じようにウェブサイトの意味を理解することができませんし、情報を整理してまとめることができません。人間がやるよりは遥かにスピードは速いのですが、でも人間よりは精度は圧倒的に落ちます。ですから新しいテクノロジーのブレークスルーがあれば、Googleの立場がどうなるかはまだまだ分かりません。

Googleがサーチに最大限に注力してくれれば新しいイノベーションも生まれやすいので、ユーザにとっても素晴らしいと思います。Netscapeを駆逐した後にIEをアップデートしなくなったMicrosoftの例もあるので、ああならないでくれれば大助かりです。

僕にとって面白いのは”open”という言葉というか信念を繰り返して強調していることです。僕が翻訳した”The Official Google Blog”にあった“The meaning of open”というポストでは、オープンであることがどういうことか、そしてそれがどうしてGoogleに利益をもたらすかを書いています。

そのポストの中で

可能な限り産業を大きくしたいのであれば、オープンシステムはクローズドシステムに勝ります。我々がインターネットでやろうとしているのはまさにこれです。我々がオープンシステムにコミットするのは、利他主義だからではないのです。ビジネス上、オープンシステムの方が賢明だからです。オープンなインターネットは安定してイノベーションを生み出し、ユーザの増大とユーザの活発な利用を促し、産業全体を成長させるからです。

というのがあります。

GoogleはiPhoneを利用できない人(例えばSoftbankの電波が届かないところに住んでいる人)でもスマートフォンが利用できるようにしたいと思っているだけかもしれません。Androidそのものがどれだけのシェアを獲得するかではなく、誰もがスマートフォンが利用できるかを重視しているのかもしれません。だとすれば、iPhoneとAndroidのどちらが勝つかではなく、スマートフォンの市場全体がどれだけ拡大するかを重視することになります。

こう考えると、僕としては非常に納得がいきます。

オープンであることの意味 : “The Meaning of Open”の和訳

2009年末、”The Official Google Blog”に掲載された Jonathan Rosenberg, Senior Vice President, Product Managementの記事、“The meaning of open”を和訳しましたので、以下に紹介いたします。

この内容に賛同するかしないかは別として(私も部分的には賛同していません)、非常に示唆に富んだ文章であることは間違いないと思います。

もし何かに利用したいということであれば、引用、転載、修正は全く自由ですので、よろしくお使い下さい。

なお、この翻訳はGoogle翻訳者ツールキット (http://translate.google.com/toolkit)を使って行いました。

—– 以下翻訳 —-

オープンであることの意味

2009年12月21日3時17分00秒午後

インターネット、グーグル社、そして我々の利用者にとって「オープン」であること意味について、先週、社内にメールを送りました。オープンの精神に則り、グーグル社外にもこの考えを共有したいと思いました。

グーグル社では、オープンシステムが勝つと信じています。オープンシステムはより多くのイノベーションを生み、価値を創造し、消費者の選択の自由を拡大します。そしてより活発でより収益性があり、より競争が行われるビジネス環境を作り出します。他の多くの会社も似たようなことを言っています。自社もオープンだと宣言することがブランドの向上に貢献し、同時にリスクがないことを知っているからです。そもそも我々の業界にはオープンであることの意味が明確に定義されていません。これはいってみれば「羅生門」的な言葉です。非常に主観的でありながら、極めて重要なのです。

グーグル社内でオープンが話題になることが最近多くなっているようです。製品の議論をしているミーティングに参加しているときなどにも、我々はもっとオープンであるべきだという意見が出ます。しかしそのあと議論を続けていると、会議室のほとんどの人はオープンが良いと信じてはいるものの、具体的にそれが何を意味しているかについては必ずしも意見を共有していないことが分かります。

このような議論はかなり頻繁になってきています。そこでそろそろ全員が理解し、支持できるような形でオープンを明確に定義しなければいけないと私は思います。以下に紹介するのは私自身の経験と数人の同僚の意見を元に作成した、そのような定義です。私たちが会社を運営し、製品の判断を行う際は、ここに紹介する原則に従っています。ですからこの文章を注意深く読み、振り返り、そして議論してほしいと思います。そしてこの定義を自分のものとし、自分の仕事に活かしてください。これは複雑なトピックなので必ず議論があるはずです。議論はオープンで行ってください!自由にコメントをしてください。

我々のオープンの定義は2つの要素からなっています。それはオープンな技術とオープンな情報です。オープンな技術というのはオープンソースソフトウェアとオープンスタンダードを含みます。オープンソースを含むという意味は、我々はインターネットを成長させるソフトウェアを公開し、積極的にサポートしますということです。オープンスタンダードを含むという意味は、我々は公認のスタンダードに従い、スタンダードがない場合は(グーグル社だけでなく)インターネット全体の利益となるようなスタンダードを作り出すということです。オープンな情報というのは、我々がユーザに関する情報を持っているときは、これを利用者に有用な価値を創造するために使用し、どのような個人情報を持っているかについて透明性を持たせ、かつその情報をコントロールする権限を利用者に全面的に与えるということです。我々がやらなければならないのはこの2つのことです。多くの場合、我々はまだこれが達成できていません。しかしこのメールを出発点に、現実と理想のギャップを埋め始められることを期待しています。

我々がオープンを一貫して実践できれば(そしてできると信じています)、我々は行動を通して模範を示すことになります。そして他の会社や産業が同じくオープンを実践することを奨励できるでしょう。他の会社や産業もオープンになれば、世の中はより良くなります。

オープンシステムは勝利します
我々の立場をより詳細に説明するために、オープンシステムが勝利するということをまず強調したいと思います。伝統的な訓練を受けたMBAは、クローズドなシステムを作り、それを普及させることによって持続可能な競争的優位を築き、そしてプロダクトライフサイクルに沿って利益を搾り取ることを教育されています。したがって彼らにとっては、オープンシステムが勝利するというのは直感に反します。伝統的な考え方では、会社は顧客を囲い込むことによって競合他社を閉め出すべきです。戦術的にはいくつかの異なるアプローチがあります。カミソリの会社はカミソリのホルダーを安く売り、刃は高く売ります。昔のIBMはメインフレームを高くし、ソフトウェアも…高くしていました。いずれにしても正しく運営されたクローズドシステムは多くの利益をもたらします。また短期的には良くデザインされた製品を生み出しますが(誰でも分かる例としてはiPodとiPhone)、クローズドシステムにおけるイノベーションはいずれ小さな前進しか生まなくなります(4つ刃のあるカミソリは3つ刃のカミソリよりそんなに良くなっていますか?)。なぜなら現状を維持することが目的だからです。クローズドシステムは常に慢心を生みます。顧客の維持が楽にできるようになってしまえば、楽をしてしまうのです。

オープンシステムはこの逆です。競争が激しく、もっと変化が早いです。オープンシステムでの競合優位は顧客の囲い込みから生まれるのではありません。変化の激しいシステムを誰よりもよく理解し、より良い、よりイノベーティブな製品をつくることによって競合優位が生まれるのです。オープンシステムで成功する会社はイノベーションが早く、同時に思想面でもリーダーです。これは簡単なことではありません。とても大変なことです。しかし行動の素早い会社は何も恐れることはありません。そして成功すれば、大きな株主価値を生むことができます。

オープンシステムは新しい産業を生み出すことができます。オープンシステムでは一般大衆の知性がときはな、各会社はビジネス戦術だけでなく製品の優劣に基づいて競争し、イノベーションし、勝敗を付けるようにしむけられます。ヒトゲノムの解読はその一例です。

Wikinomicsという本でDon TapscottとAnthony Williamsは1990年代の半ばに私企業がDNA配列データをたくさん発見しては特許出願し、その情報を誰がいくら払ってアクセスできるかをコントロールしていたことを紹介しています。ゲノム情報を私企業が所有することによってコストがかさみ、創薬の効率が落ちました。そして1995年にはメルク社とワシントン大学のゲノムシーケンスセンターはMerck Gene Indexというオープンなイニシアティブを作り、ゲームのルールそのものを変えました。わずか3年間で800,000の遺伝子がパブリックドメインに公開され、まもなく同様な行動的なイニシアティブが生まれました。この業界では初期のR&Dはクローズドな研究室で行うのが伝統的であり、メルク社のオープンなアプローチは業界全体のカルチャーを変えただけでなく、医薬開発のスピードを速めました。この成果により世界のどこの研究者であっても、オープンな遺伝情報に制限なくアクセスできるようになりました。

またオープンシステムはすべてのレベル(OSレベルからアプリケーションレベルまで)でのイノベーションを可能にします。それに対してクローズドシステムでは一番上のレベルでしかイノベーションできません。ですからある会社が製品を出荷する際、もう一つ別の会社の善意に頼る必要がないのです。例えば私が使用しているGNU Cコンパイラにバグがあれば、オープンソースなので自分で修正することができます。バグレポートを送って、修正がタイムリーに行われることを祈らなくていいのです。

したがって、可能な限り産業を大きくしたいのであれば、オープンシステムはクローズドシステムに勝ります。我々がインターネットでやろうとしているのはまさにこれです。我々がオープンシステムにコミットするのは、利他主義だからではないのです。ビジネス上、オープンシステムの方が賢明だからです。オープンなインターネットは安定してイノベーションを生み出し、ユーザの増大とユーザの活発な利用を促し、産業全体を成長させるからです。Hal Varianの"Information Rules"という著書には、これに当てはまる数式があります:

報酬 = (市場に提供されるすべての付加価値) * (我社の付加価値のシェア)

他の条件を同一と見なしたとき、10%のシェア増大と10%の市場全体の拡大は同じ結果を生みます。しかし我々の市場では市場全体の10%の拡大の方がより多くの報酬を生みます。なぜなら産業全体にスケールメリットをもたらし、生産性を向上させ、すべての競争相手のコストを下げるからです。我々が安定してすばらしい製品を提供し続ける限り、我々は市場全体とともに繁栄します。シェアは小さくなるかもしれませんが、パイは大きくなるのです。

別の言い方をすれば、グーグル社の将来はインターネットがオープンであり続けることに依存しています。そして我々がオープンを推し進めることよって、グーグル社を含めたすべての人が恩恵を受ける形でウェブが拡大するでしょう。

オープンな技術
オープンの定義をするためには、インターネットの土台となった技術:オープンスタンダードとオープンソースソフトウェアの話から始めなければいけません。

オープンスタンダード
ネットワークが繁栄するためにはいつの時代もスタンダードが必要でした。19世紀の初めにアメリカに鉄道網が敷かれ始めたとき、線路幅の規格は異なるものが7つありました。当初はネットワークが繁栄することはありませんでした。それぞれ異なる鉄道会社が標準幅の4フィート8.5インチに同意して始めて、鉄道網が繁栄し西に拡大することができたのです。(この場合、規格戦争は本物の戦争でした:アメリカ内戦で南部連合国が合衆国に負けると、南部の鉄道会社は11,000マイルの鉄道を強制的に変更させられたのです)

1974年にVint Cerfと同僚らがアメリカ合衆国のいくつかのコンピュータネットワークを接続する際、(後にTCP/IPとなった)オープンスタンダードの使用を提案しましたが、これはこのような前例のあることでした。どれだけの数のネットワークが存在するかははっきり分からなかったので、"Internet"(これはVintが名付けたのもだが)はオープンでなければなりませんでした。どんなネットワークであってもTCP/IPを使って接続することができました。そしてその時の判断の結果、現在ではインターネット上に6億8100万ほどのホストが存在しています。

利用者の選択の自由を確保する上では相互互換性が必須ですので、開発社向け製品については我々はオープンスタンダードで作ります。したがって、グーグル社のプロダクトマネージャーと技術者は可能な限りオープンスタンダードを使用するべきです。オープンスタンダードがまだ無い分野に挑戦しているときは、オープンスタンダードを作りなさい。オープンスタンダードがまだ十分でない場合は、それを改善し、改善点をなるべくシンプルにし、ドキュメンテーションも可能な限り充実させなさい。我々のグーグル社だけでなく、利用者および産業全体を常に優先させるべきです。あなたたちはスタンダード策定団体と協力し、我々が行った改善点が公認スタンダードの一部となるように努力するべきです。

我々は以前からこれを実践しています。Google Data Protocol(XML/Atomに基づく我々の標準APIプロトコール)を作っていたころ、我々はIETF Atom Protocol Working Groupと協力し、Atomの仕様策定を共に行いました。また最近ではW3Cと協力して、ブラウザ上で位置情報を利用したアプリケーションが簡単に作れるように、標準の位置情報APIを作成しました。このスタンダードは我々だけでなく、すべての人の役に立ちます。そしてとても面白いアプリケーションが何千もの開発者によって作られ、利用者の手にわたることでしょう。

オープンソース
先に述べたアプリケーションの大部分はオープンソースソフトウェアで作られるでしょう。オープンソースソフトウェアはここ15年間のウェブの爆発的な成長の原動力です。ここにも前例はあります。「オープンソース」という言葉が生まれたのは1990年代の終わりですが、産業を活性化するために重要な情報を共有しようという発想はインターネットのずっと前から存在していました。1900年代の初め頃、アメリカ合衆国の自動車産業は特許のクロスライセンス協定を結び、メーカー間で特許がオープンにかつ自由に共有されました。この協定以前は、ツーサイクルガソリンエンジンの特許の保持者たちが産業全体を事実上閉じ込めてしまっていました。

今日のオープンソースは昔の自動車メーカーの「パテントプール」よりも大幅に発展し、グーグル社を支えているLinux, Apache, SSHなどの高度なソフトウェアコンポーネントの開発につながりました。実際、我々の製品を運用する上で、何千万行ものオープンソースコードが使用されています。また我々はオープンソースにこの恩を返しています。我々は世界最大のオープンソースソフトウェア提供者です。合計2000万行のコードに達する、800以上のプロジェクトを提供しています。Chrome, Android, Chrome OSとGoogle Web Toolkitの4つはそれぞれ100万行以上のコードです。またMozillaとApacheをサポートするチームもありますし、250,000以上のプロジェクトをホスティングしているプロジェクトホスティングサービスも提供しています(code.google.com/hosting)。これらの活動によって社外の人間が我々のプロジェクトに協力し、我々がより良い製品を提供できるだけではありません。もし我々が十分にイノベーションできなければ、社外の人間が我々のソフトウェアを土台に自らの製品を作ることもできるのです。

我々がコードをオープンソースするときはApache 2.0ライセンスを使用します。つまり我々はそのコードをコントロールしないということです。他人がそのオープンソースコードを入手し、修正し、閉じ込め、自分のものかのように出荷することもできます。Androidはこの典型例です。複数のOEMはこのコードを入手し、すばらしいものを作り上げています。このアプローチにはリスクもあります。ソフトがお互いに互換性の無い、複数の系統に分かれることがあるからです(ワークステーション用のUnixがApollo, Sun, HPなどに分岐したのを思い出してください)。Androidではこうならないように努力しています。

開発者用のツールをオープンソース化することには努力を惜しみませんが、すべてのグーグル製品がオープンソースだという訳ではありません。我々の目標はインターネットをオープンにしておくことです。これによって選択の自由と競争を奨励し、利用者や開発者が囲い込まれてしまうのを防ぎます。多くの場合、特に検索や広告関連製品などでは、オープンソース化はこの目標の実現に役立ちませんし、むしろ利用者に害をもたらします。検索と広告関連市場は既に競争が激しく、利用者も広告主も選択の幅が広いですし、囲い込まれてもいません。これらのシステムを公開してしまえば、アルゴリズムをだまし、検索結果や広告品質ランキングを人為的に操作することが可能になり、すべての人にとっての品質を低下させてしまうのは言うまでもありません。

ですからあなたたちが製品を作ったり新しい機能を付け足しているとき、いったん立ち止まって考えてみてください。「このコードをオープンソース化することによって、インターネットはよりオープンになるでしょうか。利用者、広告主および協力者の選択の自由を拡大してくれるでしょうか。競争やイノベーションの拡大に貢献するでしょうか。」そうであればオープンソース化するべきです。そしてオープンソース化するときはちゃんとやってください。単にそれを公にして、忘れてしまうということはしないでください。コードを管理して、他の開発者を取り込めるだけのリソースがあることも確認してください。我々がオープンに開発して、公開されたバグトラッカーとソース管理システムを使用したGoogle Web Toolkitはこの好例です。

オープンな情報
オープンスタンダードとオープンソースの基盤によって、今日のウェブ上には膨大な量の個人情報があふれています。写真、連絡先、近況アップデートなどが頻繁にアップロードされています。情報量が膨大であることおよびそれが永久に保存されうることによって、今まで考える必要も無かった課題が生じました。すなわち、この情報をどう扱えばいいのかということです。

歴史的に、新しい情報技術は新しい商売の形を可能にしてきました。地中海の商人が紀元前3千年頃に印鑑(bullae)を発明し、出荷した製品が途中で開けられることなく目的地まで届けられるように保証しました。この結果、商売はローカルなものから遠距離なものに変わりました。同様の革新は書き言葉の到来や最近ではコンピュータによってもたらされました。約束の遵守を保証する新しいタイプの情報野のおかげで、商取引のすべてのステップにおいて、トランザクション、すなわち関係各団体が何らかの価値を得る双方同意が促進されたのです。

ウェブ上では新しい商売の形というのは、何らかの価値と引き換えに個人情報を提供することです。この取引には毎日何百万人もの人が参加しています。そして潜在的には非常に大きなメリットがあります。数年前にはなかったGPS追跡技術から得られる情報により、自動車保険業者は顧客の運転技術をリアルタイムで確認し、安全運転に対しては割引(そしてスピードの出し過ぎには超過料金)を与えることができるかもしれません。これは比較的簡単な取引です。以下ではもっと注意を要するシナリオも考えます。

例えばあなたの子供がいくつかの薬に対してアレルギーがあるとします。コンピュータが埋め込まれた注射器がその子のカルテを自動的に読み取り、看護婦が誤って薬を投与してしまわないようなシステムをあなたは承認しますか。私なら承認しますが、手首に金属のブレスレットをつけるだけで十分とあなたは考えるかもしれません。それでいいのです。人はそれぞれ異なる判断をしますし、個人情報について言えば、我々はそれぞれの判断を同様に尊重しなければいけません。

より多くの個人情報をオンライン化するのはすべての人にとって有用ではあると思います。しかしその情報の利用に際しては、産業の変化とともに成長でき、責任ある、スケールアップできるような柔軟性をもった原則にしたがって、これを行わなければなりません。オープンな技術についての我々の目的はインターネットの生態系を拡大することでしたが、オープンな情報へのアプローチはこれと異なり、インターネット生態系と関わる個人(利用者、パートナーと顧客)との信頼関係を築くことが目的です。オンラインで最も重要な通貨は信頼であり、これを築くためにはオープンな情報の三原則に沿わないといけません。すなわち、価値と透明性とコントロールです。

価値
まず第一に、我々は利用者にとって価値のある製品を作る必要があります。多くの場合、利用者についての情報があればあるほど良い製品が作れます。しかし利用者が提供する情報の対価として、我々がどのような価値を提供するのかを理解してもらわないと、プライバシーの問題が生じます。そのような場合、その価値を説明してあげれば彼らは情報提供に同意してくれるでしょう。例えば、どのようなものを購入したかの履歴を何百万もの人がクレジットカード会社に提供していますが、これは現金を持ち歩く煩わしさから解放されるという利便性の対価として同意されたものです。

我々が3月に関心ベースの広告(IBA)を提供開始したとき、これはうまく出来ました。IBA広告によって、広告はより的確で有用なものになります。これは我々が収集する情報によって創造される付加価値です。また利用者のための設定管理ツールも含まれていまして、設定ツールの中では利用者にどのような価値が提供されるかが説明されています。また設定を変更したり利用を中止したりすることもできます。設定管理ツールを利用した大部分の人は、利用を中止せず、設定を変更しました。彼らは自分の興味に合わせてカスタマイズされた広告を受け取ることの価値を理解してくれたからです。

これが私たちのデフォルトのアプローチであるべきです:我々は利用者に対して、どのような情報を知り得たか、そして我々がそれを知っていることがどうして利用者にとっても有用かを、分かりやすい簡潔な言葉で説明しなければいけません。わざわざ利用者に説明するまでもなく、自分が作り上げた製品の価値は自明であるとお考えですか。それは多分間違っています。

透明性
次にすべての製品について、我々がどのような情報を収集し保存しているかを、利用者が簡単に調べられるようにしなければなりません。我々は最近、Googleダッシュボードでこれに向けて大きな前進をしました。Googleダッシュボードは、各Google製品(Gmail, YouTubeとSearchを含めた20以上の製品)にどのような個人情報が保管されているかを一カ所に集め、個人設定を変更できるものです。我々が知る限り、このようなサービスを提供しているインターネット企業は我々だけです。これが標準になることを期待しています。もう一つの良い例は当社のプライバシーポリシーです。弁護士だけでなく、一般の人間にも分かるように書いています。

これにとどまること無く、もっと透明性を高めるよう努力するべきです。あなたが個人向けの製品を管理していて、利用者の情報を集めているのであれば、その製品をGoogleダッシュボードに含めるべきです。すでにダッシュボードに掲載していたとしても、それで満足してはいけません。新しい機能を追加するたびに、バージョンを更新するたびに、ダッシュボードに追加できるような新しい情報(他のサイトに公開されている個人情報を含めて)があるかどうかを自分に問い直してください。

自分の製品の中での透明性を高められないかも考えてみてください。例えばAndroidのアプリケーションをダウンロードしたとします。そのアプリケーションがどのような個人情報もしくは携帯電話の情報にアクセスできるかをAndroidは教えてくれます。その情報を元にインストールを続けるか、中断するかを判断できます。あなたのどのような情報が暴露されるかを調べるのに探しまわる必要はありません。Androidはまず利用者にそのことを知らせ、判断を仰ぎます。あなたの製品もそうしていますか。どうやれば、透明性を高め、利用者をより魅了することができますか。

コントロール
最後に、私たちは常に利用者にコントロール権限を与えなければなりません。IBAの場合のように我々が利用者の情報を持っているのであれば、利用者自身がその情報を削除し、利用を中止することが簡単にできなければいけません。利用者が我々の製品を使い、我々のサーバにコンテンツを保管してくれている場合、それは利用者のコンテンツであって、我々のものではありません。利用者はいつ何時でもそのコンテンツをエキスポートしたり削除したりできなければいけません。それも無料で、なるべく簡単にです。Gmailは非常に良い例です。我々はどんなEmailアドレスへの転送も無料で提供しています。ブランドスイッチできるというのは必須の機能です。自分たちの製品の周りに壁を作るのではなく、橋を作りなさい。利用者には、真に意味のある選択肢を提供しなさい。

利用者のデータを取り扱うための既存のスタンダードがあれば、それに従いなさい。スタンダードが存在しない場合は、ウェブ全体の利益となるようなオープンスタンダードを作るように努めなさい。クローズドスタンダードの方が我々にとって利益があるように思えても、実際にはそうではないことを思い出しなさい。同時に、利用者がなるべく簡単にGoogle製品から離れられるよう、可能な手を尽くさなければなりません。GoogleはEaglesの歌の中のホテルカリフォルニアでは無いのです – いつでもチェックアウトできますし、ちゃんとその場を去ることができるのです!

Ericが2009年の戦略メモに記したように「我々は利用者を囲い込みません。簡単に競合にうつれるようにしてあげるのです。」この政策は、飛行機の非常口に似ています – パイロットでもあるCEOはこの比喩を喜んでくれるでしょう。それを使わなければならない日が決して来ないことを望んでいますが、それがあることで利用者は安心し、無ければ利用者は激怒します。

我々が – データ解放軍 (Data Liberation Front : dataliberation.org) – という、「チェックアウト」を簡単にすることが任務のチームを社内に持っているのは、このためです。データ解放軍の最近の仕事としてはBloggerとDocsがあげられます。Bloggerを去って他社のサービスを利用したい人は、自分のコンテンツを簡単に持っていくことができます。Docsの利用者は、自分の書類、プレゼンテーション、スプレッドシートをすべてZIPファイルに集めて、ダウンロードできます。データ解放軍が作業しやすいように、あなたたちの製品を作りなさい。一つの方法は利用者のデータをすべて解放する優れた公的APIを用意することです。バージョン2とかバージョン3まで待ってはいけません。製品計画会議の早い段階からこの議論をし、スタート時点からある機能にしなさい。

英国大手新聞のガーディアンデータ解放軍の仕事を取材したとき、「今までの企業間の戦いにおけるロックインという考え方に慣れた」人にとっては「直感に反する」と伝えました。確かにその通りです。古いMBA的な発想で凝り固まった人にとっては直感に反します。しかし我々がちゃんと仕事をやり遂げれば、直感に反しない日が来ます。私たちの目標は、オープンがデフォルトとなるようにすることです。人々はオープンに自然に引きつけられていくでしょう。そしてそれを期待し、要求し、手に入らないときは激怒するようになるでしょう。オープンが直感的になる日が、我々が成功を収めた日となるのです。

大きければ大きいほどよい理由
クローズドシステムは良く知られていて利益があがります。ただし、それをコントロールする人だけの利益です。オープンなシステムは混沌としていて利益があがります。ただし、そのシステムを理解し、誰よりも早く行動できる人だけの利益です。クローズドシステムは早く成長します。それに対してオープンシステムはゆっくり成長します。ですからオープンシステムに賭けるには、長期的展望に立つために必要な楽観的精神、意思、そして手段が必要です。幸いなことに、Googleではこの三つがそろっています。

我々にはリーチの広さ、技術のノウハウ、大規模プロジェクトへの渇望がありますので、大きな投資と必要とし、かつ短期的な明確なリターンが無いような大プロジェクトに挑戦できるのです。我々が世界中の道路を撮影しているおかげで、千マイル遠くは慣れた地点からでも、引っ越しを検討しているマンションの近隣を調べることができます。我々は何百万もの本をスキャンし、広くアクセスすることが可能にしています(出版社と著者の権利に配慮しながら)。他のサービスでは数百メガバイトしか提供していないのに、我々は1ギガバイト(今では7ギガバイト)の容量を無償で提供するメールシステムを作り上げることができます。我々は51の言語で書かれたウェブページを瞬時に翻訳することができます。我々は検索データを分析し、公的衛生機関がインフルエンザの発生をより早く探知できるのを手助けできます。我々はより高速ブラウザ(Chrome)、より優れたモバイルオペレーティングシステム(Android)、そして全く新しいコミュニケーションプラットフォーム(Wave)を作り上げ、そして世界の誰もがそれを土台とし、カスタマイズし、そして改良できるようにオープンにできるのです。

これらのことができるのは、それが情報についての課題であり、我々はその課題を解決するのに必要なコンピュータ科学者、技術、そして計算処理能力を持っているからです。そして我々がこれらの課題を解決すると、さまざまなプラットフォーム – ビデオ、地図、モバイル、PC、音声、エンタープライズ – がより良くなり、競争が激しくなり、イノベーティブになります。我々はしばしば大きすぎると非難されることがあります。しかし大きいからこそ、我々は不可能に挑戦することができるのです。

しかし我々がオープンであることに失敗すれば、すべてが無駄です。ですから、常にオープンになるように自分たちに言い聞かせなくてはなりません。我々は業界に役立つようなオープンスタンダードに貢献していますか。我々が自社のコードをオープンソース化できない理由は何ですか。我々は利用者に価値と透明性とコントロールを提供していますか。なるべく頻繁に、なるべく多くをオープンにしなさい。そしてその是非を問う者がいたら、オープンにすることのメリットを説明してあげるだけでなく、オープンにすることが最善であることを説明してあげなさい。オープンというのはまだ始まったばかりの21世紀のビジネスとコマースを変革するアプローチです。そして我々がオープンを広めることに成功すれば、これから数十年間のMBAのカリキュラムが書き直されるでしょう。

オープンなインターネットは世界中の人々の暮らしを変えます。すべての人の手元に世界中の情報を届け、すべての人に言論の自由を与える可能性を持っています。以前にインターネットの将来に関する私のビジョンをメールで送りましたが(そして後にブログにも掲載しました)、その中にもこの予想が含まれていました。しかし今はビジョンの話をしているのではありません。アクションについて話しています。オープンなインターネットを阻害する抵抗勢力を忘れてはいけません。アクセスを管理する政府、自分の利益のために現状を維持しようとする企業などです。彼らは強力です。もし彼らが勝ってしまえば、インターネットは断片化され、停滞し、価格は高く、そして競争が少なくなるでしょう。

我々のスキルとカルチャーを持ってすれば、こうなってしまうのを防ぐことができますし、防ぐ責任があります。技術は情報を提供する力があると信じています。情報は、善を施す力があると信じています。そしてこの善がなるべく多くの人の生活に影響を与えるためには、オープン以外に道はないと信じています。我々は技術の可能性を楽観視しており、オープンによって生じる混沌は、すべての人に利益をもたらすと信じています。そして機会があれば、オープンを押し進めるように戦います。

オープンは勝利します。まずインターネットで勝利し、次に生活の多くの方面に広がっていくでしょう。例えば政治の未来は透明性です。商取引の未来は情報の対称的な行き来です。文化の未来の自由さです。科学と医学の未来はコラボレーションです。エンターテイメントの未来は参画です。ここに紹介した未来の姿は、いずれもオープンなインターネットが前提です。

グーグル社のプロダクトマネージャーとして、我々が死んでも存続し続けるものをあなたたちは作っています。また我々の誰一人として、グーグル社がどれほどに成長し、人々の生活にどれだけ影響を与えるかを想像し尽くせる人はいません。そう考えると、どれだけのネットワークが「インターネット」に加わるかを正確に把握できず、デフォルトをオープンとした盟友、Vint Cerfと我々は同じです。Vintは誰が見ても正しかったのです。我々もきっと正しいと信じています。