2011年12月の分子生物学会で発表してきました

2011年12月の分子生物学会で発表してきました。

講演を聴きに来てくださった方、ポスターを見に来てくださった方、要旨だけを見た方、皆さんありがとうございました。

スライドはバイオの買物.comの公式ブログに掲載しています。

ソーシャルな要旨集システム:素案

先日書いた学会要旨集システム(学会の要旨集システムをゼロから考え直そう)について、少しずつ考えをまとめています。

今のところこんな感じ。

後でまた詰めていきますが、現時点で何か意見があれば、とてもありがたいです。

要旨集システム原案

学会の要旨集システムをゼロから考え直そう

Title312月13日から16日まで横浜パシフィコで開催された分子生物学会に参加してきました。おおよそ十年ぶりに一般参加をし、講演とポスターをしてきました(ずっとメーカーとして展示には参加していましたが、一般参加はしていませんでした)。

久しぶりに参加して思ったのですが、要旨集とかそれをオンラインで提供するシステムが非常に残念な状態でした。

そこでこのブログでは何が残念だったかをリストアップし、その解決策をゼロベースで考えたいと思います。

残念だった点

  1. ポスター会場のWiFiが全く使い物になりませんでした。学会が用意しているmbsj2011のWiFiが全く機能せず、そのため非常に多くの人がモバイルWiFiを使っていて、それも大混線していました。結果として、人が多いときは何をやってもインターネットにつながらないという状況でした。今年から要旨集やスケジュールがCDで配布されなくなったこともあったので、インターネットにつながらない状況は非常に問題でした。
  2. 「プログラム検索・オンライン要旨閲覧システム」は大部分の「要旨」がなぜか掲載されておらず、抜けていました。僕自身が書いた要旨もなぜかこのシステムには登録されておらず、見ることができませんでした。要旨が掲載されていない「オンライン要旨閲覧システム」というのはあり得ない話です。
  3. それ以外にも要旨集システムは不満が多く、10年前から何も進歩していないという印象を強く持ちました。それぞれの不満点については後述します。

要するに、相当にボロボロな状態でした。

いかにその原因についての考察を交えながら、いろいろな提案をしていきたいと思います。なるべくゼロベースで考え、理想の要旨集はどのようにあるべきかを考えたいと思います。 Continue reading “学会の要旨集システムをゼロから考え直そう”

学会の要旨集システムをゼロから考え直そう

Title312月13日から16日まで横浜パシフィコで開催された分子生物学会に参加してきました。おおよそ十年ぶりに一般参加をし、講演とポスターをしてきました(ずっとメーカーとして展示には参加していましたが、一般参加はしていませんでした)。

久しぶりに参加して思ったのですが、要旨集とかそれをオンラインで提供するシステムが非常に残念な状態でした。

そこでこのブログでは何が残念だったかをリストアップし、その解決策をゼロベースで考えたいと思います。

残念だった点

  1. ポスター会場のWiFiが全く使い物になりませんでした。学会が用意しているmbsj2011のWiFiが全く機能せず、そのため非常に多くの人がモバイルWiFiを使っていて、それも大混線していました。結果として、人が多いときは何をやってもインターネットにつながらないという状況でした。今年から要旨集やスケジュールがCDで配布されなくなったこともあったので、インターネットにつながらない状況は非常に問題でした。
  2. 「プログラム検索・オンライン要旨閲覧システム」は大部分の「要旨」がなぜか掲載されておらず、抜けていました。僕自身が書いた要旨もなぜかこのシステムには登録されておらず、見ることができませんでした。要旨が掲載されていない「オンライン要旨閲覧システム」というのはあり得ない話です。
  3. それ以外にも要旨集システムは不満が多く、10年前から何も進歩していないという印象を強く持ちました。それぞれの不満点については後述します。

要するに、相当にボロボロな状態でした。

いかにその原因についての考察を交えながら、いろいろな提案をしていきたいと思います。なるべくゼロベースで考え、理想の要旨集はどのようにあるべきかを考えたいと思います。 Continue reading “学会の要旨集システムをゼロから考え直そう”

Steve Wozniak on Siri “search engines should be replaced by answer engines”

Siri heroSteve Jobsと共同でアップル社を創設したSteve Wozniak氏が好んでLos Gatos, CaliforniaのApple storeの前に並び、徹夜でiPhone 4Sの発売を待ったそうです。

ただでもらえるのに、いつまでも子供心を忘れないとても素敵な人です。

彼が最も引かれているのは”Siri”。並んでいるときに受けたインタビューで以下のように答えています(3:40頃)。

To Siri I could say what are the prime numbers greater than 87. Google doesn’t understand “greater than”, but Wolfram Alpha does. So I would get the right answer. And that’s what I really want in life. I don’t want all these, you know, get me to the way to the answer, to the books that have the answer, get me to a web page that has the answer. I don’t want that. I say search engines should be replace by answer engines.

私がバイオの買物.comで目指しているのも同じことです。

Googleのおかげで検索エンジンが劇的に良くなったとはいえ、ライフサイエンスの研究用製品を探したり調べたり比較したりする方法としてはGoogleは全く不十分です。

単純な検索機能だけを提供しているいろいろな研究用製品ポータルは同じかもっとレベルが低いです。検索しか無いと言うのは、少なくとも研究用製品に関してほとんど役に立たないと同義です。

Siriのような人工知能は必要ないと思っていますが、人間がキュレーションしたデータセットはSiriと同様に必須です。データセットをがんばって作り、そして自然言語解析は無理だとしても、非常に工夫されたインタフェースで答えを提供していくこと。バイオの買物.comはそういうことを目指しています。

RSSの著作権について

Images先日バイオの買物.comのサービスに関連して、メーカーのオンラインカタログの著作権とバイオの買物.comでその情報を使用することについて書きました(「カタログの著作権について」)。

今回はバイオの買物.comのニュースセミナーキャンペーンのサービスの著作権について、私の考えを紹介します。特にRSSを使用して収集している情報について議論します。

はじめに

まずはっきりしておかなければならないことは、現在の著作権法は日本においても、また米国などの海外においてもインターネット時代に追いついていないということです。時代に追いつけず、グレイエリアがたくさん残っています。

そのためコンテンツの著作権を保有している側が訴訟を起こす場合、紙媒体に適用されていたのと同様の著作権を主張する可能性が高いということです。「情報がインターネットに公開されていたのだから、複製されるのは前もってわかっていたはずだ」とか「再利用がしやすいRSSに載せたのだから、事実上の著作権放棄になる」などの理由で著作物を複製して使用することは、将来においては可能かもしれませんが、現時点では著作権侵害と判断される危険性が高いと言えます。

日本ではインターネットの情報を活用したビジネスを実現するためにインターネット情報検索サービスにおける複製などを可能にする法改正が行われましたが、これはRSSフィードの単純な収集と表示をカバーしていると考えるのは、ちょっと無理があるでしょう。

本題に入る前にわかってもらいたいのは、インターネットに公開されているかどうか、あるいは紙媒体でしか提供されていないかどうかは現時点ではあまり意味を持たないということです。加えて日本では著作物を創作した時点で著作権が発生しますので、コピーライトマークなどの表示はなくても関係がありません。したがってインターネットに公開されているどんな情報であっても、明確に著作権が放棄されている場合を除き、著作権には十分に注意する必要があります。

情報アグリゲーションをする際の注意事項

著作権のことを考慮した場合、インターネット上の様々な情報を集積するポータル的なウェブサイト(バイオの買物.comを含む)は何に注意すれば良いか。米国のものですが、よい記事が見つかりましたので紹介します。

この記事ではHarvard大学のNieman Journalism Labに投稿されたKimberly Isabellの記事What’s the law around aggregating news online? A Harvard Law report on the risks and the best practicesを紹介し、解説しています。

紹介されているベストプラクティスは

  1. Reproduce only those portions of the headline or article that are necessary to make your point or to identify the story.
  2. Do not reproduce the story in its entirety.
  3. Try not to use all, or even the majority, of articles available from a single source. Limit yourself to those articles that are directly relevant to your audience.
  4. Prominently identify the source of the article.
  5. Whenever possible, link to the original source of the article.
  6. When possible, provide context or commentary for the material you use.

1.については、著作物に該当しない範囲あるいは引用と認められる範囲に限定しなさいということです。新聞記事などの見出しが著作物にあたらないという日本の判決もありますし、また無断引用(部分的な短い断片の利用など)は法的に認められた権利です。

2.は1に関連します。創作性が認められ、著作権の保護の対象となる文章であれば、例えば全文ではなくても引用の範囲を超える可能性は高く、著作権を侵害する可能性が高くなります。全文を複製するのはもっと危険だということです。

3.については、集積した情報に対してどれぐらい付加価値をつけたかの議論だと思います。集めた情報をそのまま掲載するというのは付加価値をつけたことにならず、単なるコピーとなります。しかし新しい価値を提供するためにその著作物を引用したというのであれば、新しい付加価値をつけたことが認められ、使用が認められることがあります(日本でも米国でも)。

4, 5については、著作権保有者が損害を被ったという主張をなるべく避けるための措置だと思われます。米国では損害が無ければフェアユースの範囲とされます。日本にはフェアユースの概念はありませんが、著作権保有者が損害を被らないのであれば当然訴訟を起こされる確率が減りますので、注意するべき点です。なお新聞記事をアグリゲーションすれば新聞社のウェブサイトにトラフィックを誘導でき、新聞社に取ってはプラスなはずだという議論がありますが、Google Newsの訪問者の44%はクリックスルーをしないという調査もあり、本当に新聞社のウェブサイトにトラフィックを誘導できるかどうかは議論の余地があります。

6.については3の付加価値をつけることに関連すると思います。

バイオの買物.comの場合はどうか

ニュース・セミナー・キャンペーン

バイオの買物.comのニュースセミナーキャンペーンサービスでは各メーカーのトップページなどから最新情報を集め、セミナーやキャンペーンについては開催日ごとに整理をし、掲載しています。情報源は100以上あります。

まず当然のことではありますが、各ヘッドラインまたは記事から情報源のウェブサイトへのリンクは用意しています。バイオの買物.comは研究者とメーカーをつなげることを基本理念としていますので、如何に多くの訪問者をメーカーサイトに誘導するかは大きな課題と考えています。加えて新聞記事を集積して掲載する場合と異なり、これらのサービスがメーカーに損害を与えることは無いだろうと考えています。

またコンテンツについて言えば、大部分のものは表題のみもしくはごく短い解説文を掲載しているだけです。これらについては著作権保護の対象にならないだろうと考えています。

なおメーカーが提供しているRSSフィードに多量の情報が含まれているケースがあります。この場合は著作権保護の対象となるものが、バイオの買物.comに掲載されてしまう可能性があります。

まとめてカタログ

バイオの買物.comのまとめてカタログまとめて抗体検索については先の記事「カタログの著作権について」でほぼ解説しています。

結論

結論として、ニュース・セミナー・キャンペーンにしてもまとめてカタログなどにしても、概ね著作権保護の対象とならないと我々は考えています。

ただし前の記事でも書きましたが、バイオの買物.comが目指すのは、研究者とメーカーの双方に取ってメリットのある仕組みです。もし我々の活動が研究者もしくはメーカーの利益を損ねているのであれば、その活動を続ける意味はありません。

もしも我々の活動が研究者もしくはメーカーの利益を損ねているのであれば、著作権法に関わらずご連絡ください。協議の上、適切な対処方法を考えたいと思っています。

最後に

RSSの登場でインターネットの情報の再利用が簡単になったため、RSSになっているものはどこで利用してもいいのではないかという空気すらあるのがインターネットの現状ではないかと思います。しかし上記で議論しましたようにインターネットは依然として古い著作権法が適応されますので、RSSであろうが何であろうが、再利用の際は著作権法を意識する必要があります。

「クリックスルーがあるから、複製されるとかえって良いよ」という良く聞く議論はまずフェアユースが無い日本では法的に意味を持ちませんし、米国でも特にニュースサイト関連では主張が通らない可能性があります。

バイオの買物.comでは上述のベストプラクティスを意識しつつ、また著作権法と関連の裁判・判例の行方に注目しつつ、引き続きメーカーと研究者の双方に取って結うようなサービスを提供していきたいと考えています。

カタログの著作権について

Copyrightバイオの買物.comではメーカーのウェブサイトから情報を収集し、それを集約した上でカテゴリー分けなどを独自に行い、バイオの買物.comのウェブサイトに掲載しています。

このとき、当然気になるのは著作権の扱いです。

このブログでは、我々が著作権の問題をどのように考えているかを紹介したいと思います。

直リンクの問題

社団法人 著作権情報センターのウェブサイトの中にずばり回答があります。

結論を先にいえば、リンクを張ることは、単に別のホームページに行けること、そしてそのホームページの中にある情報にたどり着けることを指示するに止まり、その情報をみずから複製したり送信したりするわけではないので、著作権侵害とはならないというべきでしょう。

「リンクを張る際には当方に申し出てください」とか、「リンクを張るには当方の許諾が必要です」などの文言が付されている場合がありますが、このような文言は道義的にはともかく、法律的には意味のないものと考えて差し支えありません。ホームページに情報を載せるということは、その情報がネットワークによって世界中に伝達されることを意味しており、そのことはホームページの作成者自身覚悟しているとみるべきだからです。リンクを張られて困るような情報ははじめからホームページには載せるべきではなく、また載せる場合であっても、ある特定の人に対してのみ知らせようと考えているときは、ロック装置を施してパスワードを入力しなければ見られないようにしておけばよいだけのことではないでしょうか。

ただしリンクを張ってたのウェブページに移動するのと、iFrameタグなどを使ってたウェブページの情報が自分のホームページのフレームに取り込まれるのは別の話のようです。

したがってバイオの買物.comでは、利用者の利便性を考慮して可能な限り直リンクを使用しています。

メーカーの製品情報は著作物にあたるか

著作権法10条2項は「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第1号に掲げる著作物に該当しない」と規定しています。

また社団法人 著作権情報センターのウェブサイトでは「標語、キャッチフレーズのようなものが著作物として保護されるかどうかは、一概にいえませんが、通常は保護されないと考えられます。」(標語、キャッチフレーズ、題名などは著作物になりますか?)や「異論もあるでしょうが、一般には見出し自体は著作物に該当しないと考えられるケースが多いのではないでしょうか。」(新聞記事の見出しの著作権)の記載があります。

このことを根拠に、製品名、容量、価格、保存方法など、製品の基本的な属性を紹介した文章については著作権は無いとバイオの買物.comでは考えています。また製品を紹介した文章は場合によっては著作物になる可能性があると考えていますが、この場合は連絡をいただければ製品紹介の記述をバイオの買物.comに掲載しないようにいたします。

キャンペーン、セミナー、その他のニュースについても同様に考えています。

検索を目的とした情報収集や著作物の複製は著作権の侵害にあたるか

社団法人 著作権情報センターのウェブサイトのQ&Aの中に「このことが将来におけるインターネット情報社会の萎縮要因にもなりかねないとの懸念から、平成21年の法改正により、当該サービスを提供する目的のために必要と認められる限度において、権利者の許諾を得ることなく自由にできるようになりました。」とあります。法改正は著作権法第47条の6を指します。

(送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等)
第四十七条の六 公衆からの求めに応じ、送信可能化された情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。以下この条において同じ。)を検索し、及びその結果を提供することを業として行う者(当該事業の一部を行う者を含み、送信可能化された情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、当該検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、送信可能化された著作物(当該著作物に係る自動公衆送信について受信者を識別するための情報の入力を求めることその他の受信を制限するための手段が講じられている場合にあつては、当該自動公衆送信の受信について当該手段を講じた者の承諾を得たものに限る。)について、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行い、及び公衆からの求めに応じ、当該求めに関する送信可能化された情報に係る送信元識別符号の提供と併せて、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物(当該著作物に係る当該二次的著作物の複製物を含む。以下この条において「検索結果提供用記録」という。)のうち当該送信元識別符号に係るものを用いて自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該検索結果提供用記録に係る著作物に係る送信可能化が著作権を侵害するものであること(国外で行われた送信可能化にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知つたときは、その後は、当該検索結果提供用記録を用いた自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行つてはならない。

この法改正により、メーカーの製品情報のうちで著作物に相当する部分についても、ある程度はバイオの買物.comで承諾無く使用可能だと判断しています。

ただしメーカーの製品情報の内容の詳細さはメーカーごとに大きく異なり、「当該サービスを提供する目的のために必要と認められる限度」をどう判断するかは難しいと考えています。したがって連絡をいただければ、著作権に関わる記述をバイオの買物.comに掲載しないようにする形で対応します。

情報収集そのものは著作権の侵害にあたるか

平成21年の法改正で以下のように記されています。

第四十七条の七

著作物は、電子計算機による情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう。以下この条において同じ。)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行うことができる。ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない。

つまり情報収集や解析・加工し、製品をカテゴリー分類するなどの目的に使用することは問題無いとされています。

まとめ

上記の著作権に関する考察から、バイオの買物.comで行っている活動、つまりメーカーなどのウェブサイトから情報を収集・集約して整理する活動は、著作権法による制限を概ね受けないと考えています。

ただしバイオの買物.comが目指すのは、研究者とメーカーの双方に取ってメリットのある仕組みです。もし我々の活動が研究者もしくはメーカーの利益を損ねているのであれば、その活動を続ける意味はありません。

もしも我々の活動が研究者もしくはメーカーの利益を損ねているのであれば、著作権法に関わらずご連絡ください。協議の上、適切な対処方法を考えたいと思っています。

抗体検索サイトのリストと評価

バイオの買物.com まとめて抗体検索

僕が作っているサイトです。相当にいろいろなことを考えて作っていて、はっきり言って世界最高を狙っています。他のサイトにもいろいろな機能はありますが、そのどの機能も取り入れつつ、より優れたものに改変しているつもりです。

目標が達成されているかどうか、それはこのページを見ているご自身で判断ください。Twitterの @naofumi もしくは @BioKaimono に感想をいただければうれしいです。

Exact Antigen 改め Labome.jp

ここは遺伝子名を入力すると、抗体だとかsiRNAだとかタンパク質だとかが検索できるシステムになっています。日本語のは動作が安定していませんが(2011/8/3現在)、英語版のlabome.comは一応動作しています。ロボットでメーカーサイトから自動的に情報をとったり、あるいはスポンサーから情報をもらったりしていると聞いています。
labome.jpは一応日本語を使っていますが、製品の価格は全部USドルですので、日本のサイトとしては役に立ちません。

Biocompare

ページのトップからAntibody Searchを探して抗体検索のページに移動します。

Biocompareは知名度があるだけにメジャーブランドも小さいブランドも含め、非常に多くのメーカーの製品をのせています。残念なのは価格がほとんど敬さされていないこと。US価格すら載っていません。

また検索システムは昔ながらもので、最初にドロップダウンメニューから検索条件を入れていきます。ただ検索に少し時間がかかりますので、たくさんの絞り込みをするのは疲れます。

検索システムで特徴的なのは蛍光色素の選択の仕方です。同じ蛍光波長のものでも、メーカーによって使用する蛍光色素は大きく異なります。特に緑や赤の領域は同じような蛍光色素がたくさんあります。そこでBiocompareでは蛍光波長によってグループ分けし、Blue, Green, Yellow, Orange…などと選択できるようにしています。これは非常に便利です。

海外サイトですので、製品が見つかったとしても価格や果たして日本で売っているのかどうか輸入販売店を探すまではわかりません。

Antibodies-online.com

ここは小さな抗体メーカー(140社)をたくさん集めて、オンラインでの販売も行っているウェブサイトです。大手のメーカーは登録されていません。代金の請求や物流も小さいメーカーに変わってやってくれるそうです。インターネット上の輸入代理店(フナコシ、コスモ)みたいなものでしょうか。

検索システムはファセットナビゲーションは取り入れていますので、絞り込みはしやすいです。

あとメーカーによっては実験データ(ウェスタンとは組織染色の画像)が表示されます。

海外サイトですので、製品が見つかったとしても価格や果たして日本で売っているのかどうか輸入販売店を探すまではわかりません。

コスモバイオ

輸入商社大手のコスモバイオの抗体検索システムです。

製品は非常に多いので、その点は良いです。しかし検索システムはすべてのキーワードをユーザが自分で考えないといけないため、ちょっとドキドキしながら博打を打つような検索体験になります。その他、この検索システムはいろいろと問題があります。一例を「抗体検索の絞り込み条件は『選択式』が正しい」のブログに詳しく書いてあります。

製品が多いし、日本価格も表示されていますので製品が見つかれば良いのですが、見つけるまではかなりがんばることになりそうです。

フナコシ

輸入商社大手のフナコシの抗体検索システムです。

Biocompareの検索システムとよく似ていて、可もなく不可もなくと言ったところです。コスモバイオのものと異なり、例えば標識物はキーワードを入力するのではなく、リストの中から選択する形になります。

しかし残念ながらBiocompareのように蛍光波長でグループ分けせず、蛍光色素のブランドでグループ分けしています。例えば “Alexa Fluor”とか”Cy”とかいうグループ分けです。正直、これじゃ何の色が選ばれるのか全くわかりません。

取扱商品はコスモバイオとそれほど重ならないので、製品を探すときは両方使うことになると思いますが、ウェブサイトとしてどっちが好きかと言えば圧倒的にフナコシの方が好きです。

試薬.com

このウェブサイトは名前がメーカー横断検索サイトのようですが、和光純薬が輸入販売している製品が検索できるだけです。その製品数も限られていますので、横断検索サイトとしてはあまりお勧めできません。

検索システム自体は可もなく不可もなく。Biocompareやフナコシと良く似たシステムです。

バイオ百科

ここは横断検索サイトでコスモバイオの製品もフナコシの製品も、そしてシグマアルドリッチやアブカムの製品までも取り入れていますので、母数としては巨大です。在庫がわかるのも良いです。

ただし検索システムはかなり不思議なものです。

使い勝手が悪いというか、どうもスポンサーに遠慮しているのではないかという気がします。またシステム自体がこれほど多くの抗体を想定した作りになっていませんので、かなり検索が遅くなってしまっています。検索条件を入力するインタフェースはそのものはBiocompare的なもので、可もなく不可もないものです。

このサイトの不思議さについてはブログで紹介してます。

  1. 収益モデルがウェブサイトの使い勝手を決める例:バイオ百科
  2. バイオ百科で抗体検索:僕が使いにくいと感じるところ

最後に

僕が作っている新「まとめて抗体検索」はシステムとしてはダントツに良いとは思います。取り扱いメーカーの拡充もしていく予定です。

それ以外で良さそうなものと言えば、Biocompareではないでしょうか。ただ日本の輸入代理店を探すのが大変なので、Biocompareで見つけた後はフナコシ、コスモバイオ、あるいはバイオ百科で検索しないといけません。バイオ百科はキーワード検索は不思議なことが起こりますが、カタログ番号検索なら問題なくやってくれるので、ここでカタログ番号検索をするのが一番楽かもしれません。

なお、まだこの表には大手抗体メーカーの抗体検索システムを掲載していませんが、徐々に掲載していく予定です。はっきり言って、大手抗体メーカーの方がずっと先を行っているケースが多いです(輸入商社や比較サイトはうちを除いて停滞気味?)。

いい言葉です:『イノベーションというのは「未来にある普通のものを作ること」』

上杉周作さんがTwitter上に以下の言葉を書き込んでいて、あっちこっちでretweetされていました。

Innovation s

どこに書いてあったか覚えていないのですが、Steve Jobs氏とかはあたかも未来を見て来たかのようにイノベーションを語るそうなので、なるほどねって思いました。

イノベーションとはなにか?私は主に Clayton Christensen の著書を読んだり、あるいはApple社の遍歴を見ながら、以下のことではないかと思っています。

  • イノベーションは、人々の生活を豊かにするものです。豊かにしないものはイノベーションにはなりません。また革新的でなくても、生活を大きく改善できるものであれば、それはイノベーションです。
  • 多くの人が昔から思いついていることであっても構いません。また試作機を誰かが作ったものであっても良いのです。この段階ではまだイノベーションは起こっていません。イノベーションが起こるのは、製品が市場に出て、多くの人に受け入れられたときがスタートです。(Macの原型、PARCのAltoのことです。そしてJobs氏が言っていた”Real artists ship!”の言葉のことです。)
  • イノベーションが起こるのは、多くの人がその製品を使い始めたときです。その製品が人々の生活を良い方向に変えていったときです。どんなに革新的な技術であっても、人の生活を変えなければイノベーションにはなりません。

上杉のTweetの「未来にある普通のもの」というのはそういう意味です。未来の普通の人が普通にその製品を使っている。そうでないものはイノベーションではないのです。使われている技術が新しいかどうかは、基本的には無関係です。

私が作っている「バイオの買物.com」もそういうイノベーションを目指しています。新しいかどうかが問題ではありません。大切なのは、生物学の研究者にとっては新しいサービスであること、そして便利だと思って使ってくれることです。さらに、今までは製品比較をあまりせずに試薬を選んでいたのが、バイオの買物.comがあるからこそ多くの研究者がじっくり選ぶようになってくれれば、その時点でイノベーションが始まると私は思っています。

蛇足ですが最近気になっているので、ロボットを例にとります。

  • お掃除ロボットのRoombaはイノベーションだと思います。大腸菌程度のセンサーと頭脳しかありませんが、それでも見事に床をきれいに掃除してくれます。床掃除を毎日することが苦でなくなります。
  • 逆に日本(だけ?)で開発され、マスコミに取り上げられる二足歩行ロボットはイノベーションではありません。かなり複雑で高度な技術が使われていると思いますが、これはまだ遊びの段階です。

Wikipediaの”Innovation”の項も興味深いです。

In business, innovation can be easily distinguished from invention. Invention is the conversion of cash into ideas. Innovation is the conversion of ideas into cash. This is best described by comparing Thomas Edison with Nikola Tesla. Thomas Edison was an innovator because he made money from his ideas. Nikola Tesla was an inventor. Tesla spent money to create his inventions but was unable to monetize them. Innovators produce, market and profit from their innovations. Inventors may or may not profit from their work.

残念ながら日本語Wikipediaの「イノベーション」を見ますと、

これまでイノベーションは、よく「技術革新」や「経営革新」、あるいは単に「革新」、「刷新」などと言い換えられる。これは1958年の『経済白書』において、イノベーションが技術革新と訳されたことに由来するといわれている。当時の経済発展の要因は技術そのものであったため、イノベーションは「技術革新」と訳されたのかもしれない。

日本では英語版Wikipediaに書かれていたような”Invention”と”Innovation”の区別はあまりないのかもしれません。だとするならば、これも日本の製造業の調子がいまいち上がらない理由の一つと言えるでしょう。