Google傘下のMotorolaがMoto Gという低価格のスマートフォンを発表しました。
特徴は廉価で高機能となっており、“並外れた電話を並外れた価格で”と謳っています。
新興国をメインにターゲットしているということで
今週中にブラジルと一部欧州で発売し、数週間以内に中南米、欧州諸国、カナダ、そして一部アジアに拡大する。2014年1月前半にその他のアジア諸国、米国、インド、中東に投入する。
となっています。
さて問題は、これがうまくいくかどうかです。
とりあえずブランディング、販売チャンネル、競合を見ていきましょう。
価格
価格は179 USDとなるようです。問題はこれが高いのか安いのか。
Janaという会社が行った調査によると、まぁ何とも言えない感じです。性能的にはずいぶんと落ちますが、例えばSamsungのGalaxy Yはインドでは6000ルピー、99 USDぐらいです。
ブランディング、販売チャンネル
先ほど紹介したJanaの調査結果を見ると、「既に持っている機種」 “What brand of mobile phone do you have?”で見ても、「買えたらいいな」 “If you could buy any mobile phone in the world, what phone would you buy?”のどれで見てもMotorolaは全然イケてません。
特に「既に持っている機種」での不人気ぶりを見ると、Motorolaは有効な販売網を持っていないのではないかと思われます。GoogleはMotorolaを買収した後、昨年以降Motorola社の携帯電話をインドで売るのをやめたそうです。ただし「既に持っている機種」の結果を見る限り、販売を中止した時点でも販売網はたいしたことが無かったようです。
加えてブランディングだけ考えるも、「買えたらいいな」の結果を見る限りMotorolaブランドはほとんど価値を持っていないようです。思い切ってGoogleブランドで行かないと効果が無いんじゃないかと思えます。
競合
Moto Gの特徴は、「廉価で高機能」です。しかしその高性能は何によってもたらされているのでしょうか?スペック表を見ると1) 高解像度のスクリーン (720×1280) 2) 高速CPU (1.2GHz quad core) 3) 1GB RAM 4) 大型電池 (2070mAh) などです。Galaxy Yのスペックは 1) スクリーン 240×320 2) 830MHz CPU 3) 290MB RAM 4) バッテリー 1200mAhです。したがって高性能は主にハードウェアによってもたらされているが明らかです。
スクリーンはおそらくSamsungもしくはLG製、CPUはQualcomm製、RAMはアジアのどこかから調達でしょうから、これらのコンポーネントはMotorola内製のものではありません。
こう考えると、Moto Gと同じスペックのものを例えばSamsungが作ろうと思えば、いとも簡単に作れるだろうと想像できます。それももっと安く。
Moto Gの特徴である「廉価で高機能」が持続可能な差別化ポイントとはとても思えません。Googleが赤字覚悟で値段を設定していない限り。
総合的に考えると
マーケティングで重要なのはブランド力、製品力、価格競争力、販売力(販売網の協力)、そしてプロモーション力になります。Moto Gの場合、新興国ではブランド力、販売力がありません。Samsung Galaxy Yと比較すると価格競争力もありません。巨額の広告宣伝費をかければ効果的なプロモーションは可能かもしれませんが、Googleが相当にお金を出してあげないと無理でしょう。
唯一あるのは製品力ですが、それもあくまでも同価格帯の製品との比較であって、例えばGalaxy S4などには劣ります。中途半端であるのは間違いありません。
今後の予想
GoogleのNexusシリーズはNexus 7を除けばごくわずかしか売れていません。Motorolaが大々的に発表したMoto Xも販売不振です。Google/Motorolaにはハードウェアをちゃんと売るという実績が近年は全くありません。
評論家の間では性能と価格面で高評価だったものがなぜ売れなかったか。普通に考えると販売網が全然機能しなかったのだろうと推測されます。
Moto Gでそれが変わる気配は全くありません。おそらく最初からほとんど売れないでしょう。
仮に売れ出したとしても、Samsungは簡単に対抗策を打ち出せます。同じ性能でより安価なものが作れるでしょう。あるいは販売チャンネルの強みを活かして、Motorolaを閉め出すことも可能でしょう。
それにしても「廉価で高機能」という戦略はGoogleが一貫してNexusシリーズでチャレンジし、ずっと失敗し続けている戦略です。なかなか失敗から学びません。
他の評論
このポストを作成している間に、インドの事情に詳しいNitin Puri氏がZDNetに記事を投稿していました。
以下に引用します。
Unfortunately, Google Motorola has a tough battle ahead in India, as along with the bulkier weight of the Moto G, the pricing is not as aggressive as what other leading manufacturers are currently offering in India for the low end market. For example, Samsung’s Galaxy Young, with a 3 inch screen and weighing just 3.4 ounces, sells for only US$100 on Amazon. Furthermore, Chinese handset makers such as Huawei and ZTE already sell Android devices as low as US$100 too.
もちろんiPhoneがインドで実質0円で発売されているという点も考慮しないといけません。