Galaxy S4の標準ブラウザが1年前のChromiumをforkしているかも知れない件

先日、Galaxy S4の標準ブラウザのUser Agent Stringに“Chrome”の文字列が入っているのを知りました。

情報源はたかおファン氏のブログです。

Galaxy S4 (SC-04E)のChromeのUser Agent Stringは

Mozilla/5.0 (Linux; Android 4.2.2; SC-04E Build/JDQ39) AppleWebkit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/27.0.1453.90 Mobile Safari/537.36

そしてGalaxy S4 (SC-04E)の標準ブラウザのUser Agent Stringが

Mozilla/5.0 (Linux; Android 4.2.2; ja-jp; SC-04E Build/JDQ39) AppleWebkit/535.19 (KHTML,like Gecko) Version/1.0 Chrome/18.0.1025.308 Mobile Safari/535.19

参考にGalaxy S3 (SC-06D)の標準ブラウザのUser Agent Stringは

Mozilla 5.0 (Linux; U; Android 4.0.4; ja-jp; SC-06D Build/IMM76D) AppleWebkit/534.30 (KHTML,like Gecko) Version/4.0 Mobile Safari/534.030

さらに標準ブラウザのアドレスバーに“chrome://version/”と入力すると、Chromeに似たバージョン表皮がされるということなので、たかおファン氏はSamsungが独自にChromiumをforkしたのではないかとしています。そうなるとforkしたのはChrome 18 (2012-03-28リリース)。結構古いバージョンで、Chrome for Androidがβ版から抜ける以前のバージョンです。

ことの背景

このあたりの背景については、2013年5月にブログを書きました(英語)。それに補足する形で、背景をまとめました。

  1. “Jelly Bean” (Android 4.1)以降、GoogleはAndroidの標準ブラウザ(いわゆるAndroid stock browser)を外し、Chromeを標準ブラウザとしました。
  2. GoogleはJelly Beanのリリース以降は、Chromeを標準ブラウザとしたとされています。しかし実際にはJelly Bean搭載デバイスであっても、依然としてAndroid stock browserを標準ブラウザとしているものが大半です。Jelly BeanでもOSにはAndroid stock browserのエンジンが搭載されており、web viewを使ったときはChromeではなくAndroid stock browserのエンジンが使用されます。
  3. Android stock browserはオープンソースですが、Chromeはオープンソースではありません。ChromeはAndroid OSには含まれていませんし、Chromeをプレインストールするためには別途Googleとライセンス契約を結ぶ必要があります。Chromeのオープンソース版としてChromiumプロジェクトがあり、Chromeはこれをforkしたものです。

Samsungの判断の背景

SamsungがChromiumをforkしたのならば、それは完全に納得のいくことです。

  1. Samsungとしては単にChromeを搭載するのでは差別化ができません。Samsungは独自の機能をもったブラウザを作りたいと思っています。
  2. 独自のブラウザのベースとしては、a) Android stock browserベースのものを作る、b) Chromiumプロジェクトをベースに作り、c) 独自にWebKitベースのものを作る、が考えられます。Chromeはオープンソースではないので、これをベースにはできません。
  3. 2013年5月時点では、私はSamsungがc)を選択すると予想していました。なぜならTizen OS用ブラウザがHTML5テストで好成績を収めていたからです。TizenブラウザをベースにAndroidに移植するのではないかと予想していました。
  4. 結果的にはSamsungはb)を選択した模様です。

それでこれは良いことなのか困ったことなのか

Android stock browserはバグが多かったり、サポートしていないHTML5, CSS3の機能が多かったりしたので、Androidをサポートする場合にはもともとかなり神経を使いました。Androidは古いバージョンが依然として使われていることも多いので、Androidをサポートする限りは新しい機能があまり使えないと覚悟していました。使うにしても、実機で十分にテストする必要がありました。

今回のSamsung Galaxy S4の標準ブラウザはChromeに似ているとはいえ、バージョンが古いものです。これほど古いバージョンについては、web上で情報を見つけることができません(例えばCan I useにも古いChrome Androidの情報はありません)。しかもテストするには実際にGalaxy S4を使うしかなく、他のデバイスで代用することができません。

Chromeに似ているので、Android stock browserよりはバグが少なく、HTML5やCSS3の機能が使えるだろうと期待はできます。しかしテストが面倒になった分、開発者にしてみればSamsung Galaxy S4の標準ブラウザは迷惑です。

やはり開発者の立場でいえば、総合的にはマイナスと言えるでしょう。

今後

今後もAndroid stock browserの開発が進まなければ、Samsung同様にChromiumをforkするメーカーは出てくるでしょう。どのバージョンをforkするかはそれぞれバラバラになる可能性があり、いろいろなバージョンのChromiumが混在する事態になりかねません。来年ぐらいになれば、ちゃんとwebに情報があるChrome version 27ベースのforkになるので、安定してくると思います。しかし現状では実機でテストしなければわからない状態と言えます。

Chrome version 27以降をベースとしたforkが増えれば、AndroidのHTML5, CSS3は大きく改善します。AndroidのChromeがAndroid 4.0以降でインストール可能とはいえ、実際に使われているケースは圧倒的に少数派です。大部分のユーザはAndroid 4.0以降でも標準ブラウザを使っています。それがChromiumベースになるのはありがたいことです。

まとめると、今後はAndroid stock browserが使われなくなり、Androidのブラウザ フラグメンテーションがますますひどくなります。しかしChromiumの高いバージョンがベースとなっていけば、web開発者としては実用上、負担は軽減されます。

Samsung携帯によるWeb使用がiPhoneを抜いた話

Samsung携帯によるWeb使用がiPhoneを抜いたという話が話題になっています。

情報元はStatCounterが出したレポート(StatCounter Internet Wars Report)です。

Top 10 Mobile Vendors from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

ただしこれだけだとよくわからないことがあります。というのはSamsungはハイエンドからローエンドのモデルを持っていて、それに対してiPhoneはハイエンドモデルだけです。果たしてSamsungはハイエンドでiPhoneとガチンコ勝負をして好成績を収めているのか、それともiPhoneが戦っていないローエンドでユーザを増やしているのか。その区別が重要です。

これについてはStatCounterも言及していて、米国や英国などではAppleの圧倒的な優位が続いています。

Top 10 Mobile Vendors in North America from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

それならば、Samsungはいったいどの地域で伸ばしたのでしょうか?

ヨーロッパ

ヨーロッパを見るとAppleの優位は続いていますが、Samsungはシェアを拡大しています。そしてどこからシェアを奪っているかというとRIMです。RIMだけがシェアを大きく落としていることがはっきりしています。

Top 10 Mobile Vendors in Europe from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

アジア

アジアを見ると、今度はNokiaが大幅にシェアを落としていることがわかります。その分をSamsungと”unknown” (おそらく中国などのメーカー)が補っている形です。

Top 10 Mobile Vendors in Asia from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

南米

南米を見ると、アジアと同様にNokiaが大幅にシェアを落としています。その分をSamsungが取っているという形になっています。

Top 10 Mobile Vendors in South America from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

アフリカ

アフリカもNokiaが大幅にシェアを落とし、その分をSamsungが補っていることがわかります。

Top 10 Mobile Vendors in Africa from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

まとめ

  1. SamsungはAppleとのガチンコ対決で勝利しているのではありません。先進国市場においてはAppleの方がまだまだ強くて、Samsungは追いつけていません。
  2. SamsungはAppleがほとんどプレゼンスを持たない途上国市場で、以前までのリーダーであったNokiaやRIMからシェアを奪って成長しています。
  3. 上記から、Samsungがシェア拡大をできたのは主として途上国で売られているローエンド機の貢献度が大きく、「古いNokiaよりは良いから買った」というのが主な購買動機だろうと想像されます。

注記

StatCounterのアクセスログ解析を提供する会社で、300万以上のウェブサイトにインストールされているそうです。そのデータを元に分析をしています。データはraw dataに近いものだといわれています。カウントされるのはページビューです。

同じようなサイトとしてNetMarketShareがあります。こっちも同じようなデータで分析を行っています。StatCounterとの大きな違いは a) ビジター数をカウントしていること、b) 国ごとに重み付けをしているということです。国ごとの重み付けの必要性は、NetMarketShareのデータ点が世界に均等に散らばっているわけではないことに由来します。例えばイギリスのウェブサイトからのデータが多ければ、当然イギリス人からのアクセスが多くなります。そのバイアスを無くそうとしています。

もう一つ大きな違いは、NetMarketShareが公開しているデータでは”Mobile”はタブレットとスマートフォンの和です。それに対してStatCounterはタブレットは”Desktop”に数えています。

どっちが正確な数字かは一言では言えませんが、結果はかなり違います。今回のStatCounterのデータに対応するNetMarketShareのデータが無いため、StatCounterのデータの信憑性については不明です。

スマートフォン市場が飽和するとどうなるか

昨日、「スマートフォン市場が飽和する予感」という書き込みをしました。

MMD研究所から出た調査結果で『フィーチャーフォンユーザーの63.0%がスマートフォンに必要性を感じていない』となっていたためです。

なお2013年5月時点のフィーチャーフォンユーザは56.7%と推定されています。したがって単純に63.0% x 56.7% = 35.7%と計算すると、携帯電話ユーザの35.7%がスマートフォンの必要性を感じていないということになります。

そうなると 100% – 35.7% = 64.3%ですので、70%あたりでスマートフォンユーザ比率が頭打ちになることが予想されます。

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もちろん単純にそうはならない理由はいくらでもあります。

  1. そもそもフィーチャーフォンが売られなくなる可能性。
  2. スマートフォンの電池の持ちが良くなり、障害とならなくなる可能性。
  3. データ通信をあまり使わない人のための、安いデータプランが登場してくる可能性。

ここでは最終的にスマートフォン比率がどうなるかの議論ではなく、市場が飽和していくことでどのような変化が起こるのか、マーケットシェアがどのように変化していくのかを考えてみたいと思います。

コモディティー化するか

市場が飽和するときに起こる変化として、よく言われるのがコモディティー化です。そしてこれが最終的に価格競争につながっていくという考えがあります。したがって市場が飽和していくと、安い方の製品が売れるようになるというものです。

しかし私が感じるのは、コモディティー化というのは市場の成熟度によって起こるものではなく、早期から既に起こっているということです。

例えば激しい価格競争に見舞われた液晶テレビについては、当初から各社間の差別化は少なく、どこのものを買っても差はありませんでした。これは市場の飽和度によって増減したのではなく、早期からそうでした。

加えて液晶パネルの製造は巨額の設備投資が必要で、一端工場を作ってしまうとなかなか生産量を減らすことができないため、決死の思いで販売数を伸ばそうとするという性質もあります。

一方で一眼レフカメラの世界は市場が飽和していっても、なかなか価格競争に見舞われません。オートフォーカスの時代も、デジタル一眼の時代でも、技術の発展により一定の低価格化は起こりますが、これは製造原価に見合ったものであり、赤字を垂れ流す状態にはなりません。

市場が飽和しても激しい価格競争に陥らない理由は、各社間の差別化がはっきりしていて、どこのものを買っても良いという状態になっていないからです。

例えばパーソナルコンピュータの世界では、1990年代前半まではNECが大きな差別化ができており、海外の安いパーソナルコンピュータが入ってきても日本市場では成功できませんでした。差別化というのは日本語処理能力の高さでした。日本のNEC以外のメーカーも、大きなシェアを取ることができませんでした。

状況が変わったのはDOS/VやWindowsなどの登場で、ハードウェアとソフトウェアの進歩により、海外の安いパーソナルコンピュータでも十分に日本語が扱えるようになりました。そうなるとNECの差別化ポイントは消え失せてしまい、一気に価格競争の波にのまれてしまいました。

こう考えるとスマートフォン市場が飽和したからといってすぐにコモディティー化が起こり、すぐに価格競争が起こるということはありません。あくまでも差別化の有無が重要です。

スマートフォンの場合、Android陣営ではGalaxyが大きな差別化を実現できており(Androidというどこでも使えるOSを使っているにもかかわらず)、またAppleのiOSは完全に独立した世界を気づき上げ、大きな差別化を実現しています。

その一方で、キャリアが製品価格を大きく補填して販売しているため、製品そのものの価格戦略が不可能になっています。

したがって現在のスマートフォンの市場は価格競争を仕掛けることが困難か不可能に近い状態です。

Late Majorityの消費性向

市場が飽和してくると購買者層が変化していきます。Early AdopterやEarly MajorityからLate Majority、Laggardsへのシフトです。飽和が見えてきた現時点ではLate Majorityの消費性向が重要になります。

問題は差別化がはっきりしているスマートフォン市場において、Late Majorityがどのような動きをするかです。特に価格競争が起きていない状況です。

顧客満足度が高く、使いやすいと定評のある製品にLate Majorityが流れるのは必然ではないでしょうか。Early Majorityなら冒険心のある顧客が多かったと思いますが、Late Majorityではそういう人はもういません。

スマートフォン市場が飽和する予感

『フィーチャーフォンユーザーの約6割がスマートフォンに必要性を感じていない』という調査結果がMMD研究所から出たそうです。

  • 約8割のフィーチャーフォンユーザーがスマートフォン購入を決めていない
  • フィーチャーフォンユーザーの約6割がスマートフォンに必要性を感じていない
  • フィーチャーフォンユーザーがよく利用する機能は「通話、メール機能」、インターネット利用は約2割
  • フィーチャーフォンユーザーの半数以上が3年前以上に購入した端末を使い続けている

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この人たちに何を提供すれば良いか

ではこの人たちは何を買ってくれるのかと前向きに、建設的に考えてみます。

  1. 月額料金が低い製品。
  2. 電池が長持ちする製品。
  3. 通話ができる製品。
  4. メールが使える製品。
  5. カメラが使える製品。

もちろん現時点ではこの条件を満たすのがフィーチャーフォンしかなくて、それでフィーチャーフォンを使い続ける訳なのだが、同じ条件を満たしたスマートフォンがあれば良いのではないかということも言えるので、そのあたりを考えるべきだと思います。

月額料金

月額料金を安くするためには、本体価格を抑えることとデータ通信料を少なくすることが重要でしょう。本体価格についてはスマートフォンの方がむしろフィーチャーフォンより安い(例えばGalaxy S2が$250に対して、フィーチャーフォンは4万円)といわれていますので、問題はデータ通信料に絞れます。

この人たちが必要としているデータ通信は「メール機能」ですので、「メール以外はバックグラウンドで通信しない。それもキャリアメールだけ。」というスマートフォンを作れば良いのではないかと思います。そしてこの料金はフィーチャーフォント同じでメール件数に応じるようにすれば分かりやすいと思います。

電池

電池を長持ちさせるには、CPUの性能を落とし、画面を小さくし、バックグラウンドでの動作をやめさせればかなり持つようのになるはずです。

WiFi

メール以外のデータ通信は通常は完全にオフにして、WiFiと接続しているときだけインターネットができるようにすれば十分です。アプリのダウンロードなどのスマートフォンとしての魅力は、これだけでかなり実現できます。

最後に

上記のようなスマートフォンが必要とされているのはキャリアだってわかっているはずです。なのにどうしてこういう機種が出ないのか?

最大のネックは「メール以外はバックグラウンドで通信しない。それもキャリアメールだけ。」、こういうカスタマイズができないのか、それとも分かりにくいのか。

そのあたりが気になります。

AppleのiOS 7紹介ビデオからデザインコンセプトを学ぶ

バックアップ

iOS 7の紹介ビデオの中で、Jonathan Ive氏がいろいろ大切なことを言っていますので、そのメモ。

True simplicity is derived from so much more than just the absence of clutter and ornamentation. It’s about bringing order to complexity.

Distinct functional layers help establish hierarchy and order, and the use of translucency gives you a sense of your content.

In many ways, we have tried to create an interface that is unobtrusive and differential. The design recedes, and in doing so actually elevates your content.

Androidの次期バージョン 4.3 から示唆されること

GoogleはAndroidの開発スピードを落としていると考えられる

先日のGoogle I/Oで公開されることが期待されていたAndroid 4.3ですが、実際には公開されることがありませんでした。その代わりにGoogle Play MusicだとかGoogle Mapsの強化などについて発表されたようです。

Androidのバージョン履歴を見るとAndroid 4.2のSDK公開が2012年11月ということで、まだ半年ちょっとしか経っていないので特に間隔が空いているわけではないことがわかります。しかしAndroid 4.3はコードネームが4.2, 4.1 (2012年6月)に続いて”Jelly Bean”だと言われており、一年以上を同じコードネームで引っ張ったのはAndroidの歴史では異例と言えます。

しかもAndroid 4.3もまた”Jelly Bean”がコードネームだと言われています。そうなると”Jelly Bean”がもしかすると1年半ほど最新のAndroidであり続ける可能性があります。

継続して同じコードネームを使っていることからも想像されるとおり、Android 4.3の変更点はあまり多くないだろうと予想されています。

Andy Rubin氏の元では半年に一回は新しいコードネームのリリースがあったのに、彼がAndroidプロジェクトから外されたら開発スピードはどうも落としているように感じられます。

Androidの開発スピードを落とすのはGoogleの全体戦略である可能性

その意図はいったいなんでしょうか。少し考えてみます。

  1. Andy Rubin氏の頃のAndroidは、とにかくiPhoneに追いつくための必死の開発でした。それがJelly Beanでとりあえず追いついたとGoogleは考えたのかも知れません。もしそうならば、大幅に刷新されたiOS 7に追いつくためにも再度開発のスピードを上げていくかも知れません。
  2. Andy Rubin氏をAndroidから降ろし、代わりにSundar Pichai氏にAndroidも担当させるようにした背景にはAndroidの方向転換があるのではないかと私は以前に推測しています。その一つに「Androidが一番魅力的なOSである必要はない」が新しい方針の一つではないかと述べました。もしこれが事実ならば、Androidの開発スピードを落としたのは戦略的であり、なおかつiOS 7が登場しても開発スピードを上げない可能性があります。
  3. Android 4.3の先にあるAndroid 5.0にリソースを集中させているのかも知れません。しかしウワサを見る限りではAndroid 5.0もそれほど大きな刷新が予定されていないようです。むしろスマートフォン用のOSとしてではなく、腕時計とかそういうデバイスを狙っている可能性があります。

この中で私は2と3の可能性が高いと感じています。そして2と3が同時に起こっていると考えています。

つまりこうです。

  1. そもそもGoogleは、ウェブ検索とそれに連動している広告事業を収益の柱としていて、それ以外の事業ではインターネット利用者を増やすためのものでした。検索と広告を除いて、収益性を重視するのではなく、むしろ価格で競合を排除する戦略が一貫して取られています。
  2. その中で考えると、Android事業のそもそもの狙いはスマートフォンによるインターネットの利用を増やすことでした。そしてインターネットの中でも、Googleの広告が掲載されているウェブサイトが利用されるようにするのが狙いでした。
  3. スマートフォンによるインターネットの利用、特にGoogleのサイトの利用を拡大するのに必要なのはiPhoneに対抗することではなく、a) iPhoneユーザにGoogleのサービスを利用してもらうこと、b) iPhoneが買えない顧客セグメント向けのスマートフォンを提供すること、です。仮にAndroidがiPhoneに勝利しても、それでインターネットの利用が増えるわけではありません。
  4. Androidの目的を考えると、まだスマートフォンを買っていないユーザ、高くて買えないユーザを狙うのが正しい選択です。したがってローエンドにフォーカスするべきです。
  5. ただし大きな問題は、ローエンドのユーザはウェブ利用率が少ないことです。またコンテンツをあまり買わないということです。したがってローエンドを狙う戦略は収益力の限界があります。
  6. そうなると新しい市場を開拓して、比較的裕福な人を顧客にできるようにしないといけません。比較的裕福な人は既にインターネットにどっぷりつかっていますが、さらにどっぷりつかるようにさせたいというのがGoogleの狙いになります。だから車の中とか、腕時計とか、テレビとかをGoogleは狙います。
  7. しかしこういう新しいコンシューマ市場の開拓は簡単ではなく、特に末端顧客にお金を払ってもらうものに関してはGoogleはことごとく失敗しています(低価格で既存市場に入り込むのはそこそこ成功していますが)。

そもそもAndroidの新バージョンはちょっと虚しい

もう一つ大きな戦略よりもむしろ現実を直視した事実として、Androidの新しいOSを開発するのはかなりむなしいところがあります。せっかく新しいものを作っても、利用する人の割合が少ないからです。未だにAndroid 2.3が一番利用者が多いことからもわかるように、Androidの新しいOSが出てきてもインパクトは少ないのです。

それよりはChromeアプリとかGoogle Mapsとかを改良した方がマシです。少なくともAndroid 4.0以上の人には利用してもらえます。

近未来予想

以下のシナリオを考えます。私の中ではかなり可能性の高いシナリオです。

  1. Googleはスマートフォン用のAndroidをフォーカスから外し、開発スピードを落とします。
  2. それに代わって、自動車、テレビ、腕時計、ゲーム機などでAndroidが使われるように開発のフォーカスを移します。
  3. しかしGoogle TVの大失敗、Nexus Qの大失敗、そしてスマートフォンだってほとんどサムスンの一人勝ちになってしまったことなどを踏まえ、ハードウェアメーカーは以前ほどはGoogleと積極的に組まないでしょう。
  4. 結果として初期のモデルはあまり売れず、GoogleとしてはNexus戦略で腕時計、ゲーム機に参入するでしょう。しかし自動車、テレビはGoogleが持つノウハウでは入り込めず、あまり打つ手がないでしょう。
  5. そうこうしているうちにAppleはこのどれかで成功し、新規市場を開拓します。
  6. GoogleはまたAppleが創造した市場に入り込み、低価格路線で対抗していきます。
  7. もしGoogleがスマートフォン市場のフォーカスを永く欠く状態が続けば、Firefox OSなどが入り込むスキが生まれます。もちろんローエンドで。
  8. ただしGoogleとしてはローエンドスマートフォンの市場に侵入されても、特に強力に対抗するインセンティブは必ずしもありません。収益への影響が少ないからです。

ポイントはGoogleがAndroidの開発をフォーカスから外し、新しい市場に注力していく可能性です。そして今までの実績でいうと、新しい市場の開拓には失敗し続けていることです。

AppleのIntentionとiOS7のデザインについて考える

iOS 7のデザインについて、以前にもこのブログに書きました。デザイナーの多くがiOS 7のデザインを酷評しているにもかかわらず、ユーザの多くは高い評価をしているという乖離が私にとってはとても興味深いと感じています。

これを考える上で、AppleがWWDCで公開したIntentionと呼ばれているCMの言葉が非常に気になっています。

the first thing we ask is
what do we want people to feel?
 
delight
 
surprise
 
love
 
connection

Appleが製品を作るとき(Designするとき)、一番最初に考えるのが“what do we want people to feel?”だとしたら、iOS7のデザインではどういう感情を持って欲しかったのだろうか?

iOS7のデザインの議論をしている人の中で、この点を述べている人はほとんどいません。デザインとしての統一性、バランスについて議論している人は多いのですが、そのデザインが人にどういう感情を持たせるかについては議論がないのです。

使い勝手について議論している人はいます。ボタンを立体的にすることによって、「これはボタンだよ」というのを強調しているのがiOS 6でしたが、iOS 7ではそれが無くなってすべて平面的になっています。そのため、どこがボタンかがわかりにくくなったという議論です。これは使い勝手の議論としては確かにそうなのですが、やはり感情の議論がありません。

私が知る限り、感情の点を挙げているのはMatt Gemmell氏だけです。彼はブログの中でこう述べています

iOS 7 is much, much lighter – in the colour sense, and consequently also in visual weight. Breathable whitespace is everywhere, and is used to unify and homogenise previously disparate interface styles.
 
The overall impression is of brightness and openness.

Where there were previously gloomy cubbyholes and low ceilings, there are now floor-to-ceiling windows, skylights, and clean surfaces.

昔からAppleを見てきている人は、Appleが一貫してUIの使いやすさにこだわってきた会社だと知っています。MacOS 1 – 9までは、コンピュータグラフィックスの能力が十分ではなかったこともあり、UIは必然的に平面的でした。アイコンもボタンも非常にシンプルでした。その分、デザインの一貫性を徹底させて、わかりやすいUIを実現していました。ただその一方でひどく地味で、Windows 95が出てきた頃には古くさくなっていました。

Steve JobsがNeXTで作っていたUIは、コンピュータグラフィックスの進化に合わせて徐々に写実的になってきました。写真的なアイコンを使い、立体的なUIになってきました。そしてそれはMacOS Xにも引き継がれました。

iOS6までは、NeXT以来の流れでUIがデザインされていた感じです。

iOS7はNeXT UIとの決別です。NeXT以来の写実的なアイコンとの決別です。そして古いMacOS以来の使いやすさへのこだわりとの決別でもあります。もちろん使いやすさを捨てているわけではないし、それは別の方法で確保すると思いますが、使いやすさよりもまずは感情を優先させているのではないかと思います。

かなり大きな違いです。

ウェブデザインからサイドバーをなくしていこう

2013年1月に[iPad専用にデザインするということはどういうことか](https://naofumi.castle104.com/?p=1925)というブログを書き、その中でPC用のウェブデザインが実は無駄だらけだと述べました。そしてその無駄を省いていくことで、iPadに適したウェブサイトが自然にできてくると議論しました。

先日、[Squarespace](http://www.squarespace.com/)でテンプレートを開発しているEric Anderson氏が、やはり[サイドバー不要論](https://medium.com/design-ux/167ae2fae1fb)を展開していました。

解決策として;

1. 関連リンクはブログポストの後に付ければ良い。
2. 検索窓はヘッダーかフッターに付ければ良い。
3. アーカイブは専用ページに用意すれば良い。

このブログはまだサイドバーなしにしていませんが、Eric Anderson氏の述べていることは全くその通りだと思います。近々、サイドバーをなくしていきたいと思います。

安価を売りにしたAndroidタブレットは年末商戦にだけ強い:その2(2013年5月の米国タブレット使用統計)

[4月の書き込み](https://naofumi.castle104.com/?p=2089)で、Chitikaのデータを使って年末商戦でシェアを伸ばしたAndroidタブレットが、徐々に使われなくなっていることを紹介しました。

そのとき、以下のように考察しました。

> iPadは顧客満足度が高いため、口コミなどでどんどん使用する人が増えます。それに対して今回のデータを見る限り、Androidタブレットではこの自己増殖的なサイクルが回っていないようです。年末商戦など、強いプッシュがあるときだけ売れているようです。特にSamsung製品だけが好調なことから見られるように、強いマーケティングやセールスインセンティブがによるプッシュが無いと、Androidタブレットは売れなさそうです。

昨日[Chitikaの5月のデータ](http://chitika.com/insights/2013/may-tablet-update)が出てきて、同じ傾向が続いていることが示されています。

1. クリスマス商戦でAndroidのWebアクセスシェアが上昇し、iPadのが下がりました。
2. 2013年に入ってからはiPadがじりじりWebアクセスシェアを伸ばしAmazon Kindle FireとGoogle Nexusは落としています。
3. Samsung Galaxy Tabは2013年に入ってからも徐々にWebアクセスシェアを伸ばしています。

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iOS7デザインの評価でデザイナーが顧客から乖離している可能性について

iOS7でiOSのデザインが大幅に変更になり、多くのデザイナーから相当に批判的な意見が出ています。

例えば『iOS 7異説:「素人くさいアイコンをデザインしたのはだれ?」』という記事がZDNet Japanに掲載されるなど、デザイナーたちはかなり言いたい放題な印象です。

でも実際のユーザはiOS 7を絶賛しています。

数万人にインターネット上でアンケートを取ったところ、2対1でiOS7のアイコンに人気があったそうです。

なぜか?

もしかしたらデザイナーの考え方が、実際のユーザの心理から乖離してしまっているのか?

私のようにもともとデザインにあまり興味がなく、アップルを通して初めてデザインの重要性を感じた人間にとって、デザイナーがユーザの心理を理解できていないとしても驚きません。デザイナーの独りよがりとしか思えず、使う側としたら少しも便利じゃないものは世の中にたくさんある感覚はあります。アップルもまたデザイン優先で使い勝手が犠牲になった製品をいくつも作ってきました。

さて本当のところはどうなのか。気にしながらiOS7のトレンドを今後も見ていきたいなと思います。