mixiはどうやって会員を増やしていったか

私はMixiで生命科学関連のコミュニティーに参加していますが、なんだか余盛り上がっていない気がします。バイオ関係のメーリングリストもバイオインフォマティックス関連が主で、ウェットのものでメジャーなものはほとんどないような気がします。
ウェットなもので言うと 医科学・分子生物学の集い、バイオインフォマティックス関係だとbioinformatics-jpぐらいかなと思います。

どうして、活発なコミュニティーが無いんだろうとちょっと不思議です。最近の生物学は非常に高度に細分化されていて、学会に行っても他の分野のセッションは全然聞かずに、関連の深い話題の話だけ聞いているひとが多いと聞きます。自分がよく知っていて、直接会って顔もよく知っているコミュニティー意外との接触を積極的に行わない風潮があるのでしょうか?私自身は製薬企業出身で、そうなるとあまり一つの分野に深く入りすぎる訳に行かないので、どうしても多くの分野の話を聞くことになります。ですから正直、私にはよくわからないところがあります。

その一方で異なる分野の人間と接触することによってクリエイティビティーが刺激されるということは、芸術の世界では非常に当たり前の話になっていますし、バイオの関係でもそのような経験をした人は多いと思います。私はいろいろな分野を実際に経験していますし、マーケティングやっているときにはいろいろな分野の研究者と接することもあるので、これは確信しています。

そう考えると、何かバイオの世界に活発なコミュニティーを築くことができないか、それができれば日本の研究は大いに進むのではないかと考えてしまいます。そのために、ひとまず、mixiが多くの会員を獲得して大きなコミュニティーとして育った背景を調べたいと思います。

以下、今日ネットで調査をした結果です。

  • 最初の頃は社員と社員の知り合いを中心にネットワークを築いていった。
  • その他、公募で人を集めた。ただし、ある程度面接を行い、厳選した。以上はHatenaより
  • 運用開始のプレスリリースCNET
  • 1年で30万人突破CNET
  • 17ヶ月で200万人突破RBBNAVi。こっちには時系列での会員数の増加データもある。

特に最後のユーザ数の時系列的推移が興味深いです。
mixi会員数推移
mixi会員数推移(対数目盛り)
グラフを対数目盛りで見て非常に良くわかるのは、会員10,000人までがおそらく積極的なmixi発の口コミ活動が必要だった時期(言ってみれば臨界値)、それ以降は会員同士の口コミで広がっていったと想像されます。

バイオの世界であれば、規模はうんと小さいので、最大限に拡大しても2-3万人が天井だと予想されます。ですから、10,000人が臨界値のmixiと比べて、おそらくそれよりうんと少ない1,000人ぐらいが臨界値ではないでしょうか。特に根拠はないけど。人の知り合いの知り合いは知り合いという感じで広がっていった場合、どれぐらいのステップでカバーできるかを論じているものとして、六次の隔たりというのがありますが、多少は参考になります。これをmixiで検証しているのがmixi Engineers’ Blogにあります。

さて、本題のバイオのコミュニティーをしっかり作っていく話に戻ります。
数学的なことはよくわからないので、テキトウに数字を出していきます。一般的に六次の隔たりが成立するとして、バイオの業界に限れば人数が少ないこと、さらにより密接につながっていることを考えると3-4次の隔たりがいいところではないでしょうか。ちなみにmixiの分析では、知り合いの知り合いで1300人、知り合いの知り合いの知り合いで既に7万人を突破しています。ということは、魅力的で有用なコミュニティーを築くことができれば、知り合いの知り合いぐらいでもうカバーできてしまう。

良いコミュニティーサイトをしっかり作って、高い評価を受けることができればたちまち情報を広げることができる。例えばNatureのメーリングリストを使ったりして繰り返し広告を出す必要は無く、もっと限定したやり方でも十分によいコミュニティーを作ることができそうです。

その一方で悪い評判が立ってしまったら、たちまちすべてを失うという怖さもありますが。

コカ・コーラの広告効果実験

NikkeiBPに日本コカ・コーラ社が行った広告効果の実験についての紹介記事がありました。
インターネット広告だけでなく、いろいろな広告の組み合わせが重要とする結果に対して、記者の中野目純一氏はこれが意外だと紹介していますが、顧客のモードを考えると特に以外とも言えないと思います。ただ、いずれにしても非常に面白いので、以下に抜粋します。

「週1回以上は飲むようになった」人に対して最大のきっかけとなった広告媒体がどれだったかを聞いたところ、交通機関での広告を挙げた人が20万人近くに達した。その一方で、ほかの媒体は愛飲者を生み出すきっかけにはほとんどなっていなかった。….
つまり、愛飲者を生み出す最強の広告媒体はテレビでもインターネットや携帯電話でもなく、実は駅構内の壁に張られたポスターといった交通機関における広告だったのである。

これが結論で、記者の中野目純一氏が意外と評した点です。確かにこれだけはっきりしたデータが出てくることはあまりありません。そしてインターネット広告の躍進ばかりが話題を集めている状況では、通常の記者にとっては非常に意外にうつるかもしれません。この記事では残念ながらインターネット広告の効果が見られなかった理由については言及していませんし、交通広告が有効だった原因についても議論していません。でもその理由はかなりはっきりしてます。

広告を見ている潜在顧客のシチュエーション、そのときの気持ちのモードを考えれば決して意外ではないと私は考えます。

まずはインターネットについて考えます。前に私が書いたインターネットは本当に広告メディアなのか?でも話していますが、インターネットでは顧客は、情報を得るという明確な目的を持ってネットを見ている訳で、インプレッションを目的としたバナー広告などは邪魔でしかありません。コカ・コーラはイメージで売る製品ですので、インターネットで情報を探して飲むようなものではありません。したがってインターネット広告に向かない製品であるのはかなり明白と思われます。

オンラインの対極にあるのが交通広告と言えます。顧客が交通広告を見るシチュエーションというのは、要するに暇なのです。そして多くの場合、一人ではなく、友人と話したりしています。ですから大して役に立たない情報であっても、顧客はじっくりと見てくれます。また友人との会話のネタにもなります。何よりも、交通広告を見るシチュエーションというのは外に出歩いている訳ですからノドも乾いているでしょうし、近くのキオスクやコンビニ、自動販売機に行けばすぐにコーラが飲めます。それも友人と一緒であれば、その場で品評会でもやればいい訳です。つまり広告を見た後、すぐ後にコーラを買うというアクションがとれますし、友人と品評会でもすれば、コーラの印象が強く残るので、次回もまた購入してくれる可能性が高い訳です。

このように顧客のシチュエーション、モードを意識すれば、今回のコカ・コーラの結果というのは当たり前のように思えます。それじゃー、ここで余広告が無いという結果になったインターネット広告ですが、どのような製品をどのようにプロモーションした場合にインターネット広告は有効なのでしょうか?
残念ながらコカ・コーラ社の調査のように、効果をしっかり測定したデータを私は知りませんので、ここでは上記の議論の延長としてのみ説明します。

おそらくインターネット広告が有効なのは以下のようなケース。

  1. 情報をしっかり調べてから購入することが多い製品。広告主が自社ウェブサイトで情報をしっかり用意していれば、バナーなどから自社ウェブサイトに誘導されたユーザは実際の購入に至るケースが多くなるだろう。
  2. 友人の意見を聞くのではなく、自分の判断で購入することが多い製品。例えば結婚相談、就職斡旋、消費者金融など、どちらかというと友人には敢えて相談したくないような商品の場合、インターネットという、他人に知られることの無い個人空間は非常に都合が良い。

バイオの業界は1.のようなケースが多いはずです。ですから、本来はインターネット広告に非常に向いているはずです。
残念ながらバイオの業界でインターネット広告がまだ十分に利用されていない背景には、おそらくウェブに掲載されている情報の不足があると思われます。学術的な情報はウェブにたくさんありますが、いざ試薬や機器を購入しようとしたときのウェブ上の情報が不足しているのです。結果として、多くの顧客はウェブから得られる情報ではなくて、昔ながらの口コミ情報などに頼って製品を購入してしまっていると思われます。

私がやろうとしているのは、製品の購入に関するウェブサイトとして「バイオの買物.com」を作り、研究者がより多くの情報をウェブから得られる仕組みを作り出すことです。製品の購入に必要な情報を研究者がウェブからすぐに入手できるようになれば、身近な人からの口コミに頼るだけでなく、より幅広い情報の中から、自分にとって最適の製品を選べるようになると期待しています。そうやって、製品を購入するときにウェブを真剣に利用する研究者が増えれば、自ずとバイオの業界でもインターネット広告の有効性が認識され、利用が増えるだろうと考えています。

インターネットは本当に広告メディアなのか?

AdvertisingAgeに”Think Different: Maybe the Web’s Not a Place to Stick Your Ads”という記事がありました。インターネットの広告収入は目覚まして伸びていて、既にラジオや雑誌の広告収入を抜いていますが、その一方でバナー広告などに有効性が無いという調査結果も発表されているようです。またインターネットではメーカー自身が自社ウェブサイトを通して顧客と直接インタラクションできますので、中間のコンテンツ業者に広告を載せる必要がないのではないかという議論です。

その中から、僕が注目した部分の抜粋です。

  • Schematic社のCEO, Trevor Kaufmanのコメント。「広告で重要なことは、もはや顧客にメッセージを伝えることではなく、顧客に価値を提供することに変わってきています。いままで、広告に機能性は求められていませんでした。」
  • The Art Bin社のウェブデザイナー、Jakob Nielsenのコメント。「ウェブで基本的に重要なのは、ウェブは広告媒体ではないということです。ウェブはものを売る媒体ではありません。ものを買う媒体なのです。ウェブはユーザによってコントロールされています。ユーザが自らのエクスペリアンスをコントロールできるのです。」
  • 同じくJakob Nielsenのコメント。「ほとんどの人は、人間が物事と関わるときのモードスイッチを理解していません。私がウェブを使うときは、何かをしたくてウェブを使っているのであって、邪魔されたくないのです。テレビの場合は、もっとリラックスした楽しい時間を過ごしたいと考えています。」「サーチエンジン広告や求人広告が有効なのは、それを見ている人はもともと何かを購入しようと思って見ているからです。バナーのようなディスプレー主体の広告ではこれは違います。バナーは古いメディアの考え方をインターネットに移しただけのものです。」

ニーズを持っている人に、その人の判断を手助けする情報を提供してあげること。それがインターネット時代のマーケティング、そしてセールスになるということ。

各メーカーはこのことに気づきさえすれば、いまのセールス主体モードから、簡単に情報提供モードに切り替えるだけのリソースを持っています。その動きを加速するようなことを僕は少しずつやっていきたいと思っています。

「バイオの買物.com」β版公開

バイオの買物.comのβ版をいよいよ公開しました。ぜひご覧ください。

バイオの「価格.com」を目指して、ユーザの書き込み機能、絞り込み検索機能などかなり充実させたつもりです。またコンテンツに関しては、単にメーカーのウェブサイトにある内容をそのまま掲載するのではなく、ウェブサイトをじっくり読んで、要点をきっちり理解した上で一覧表にまとめています。各メーカーのウェブサイトはコンテンツが結構バラバラになっているので、これはかなり大変な作業でした。

その努力の結果、バイオの研究者が時間を節約できれば本望です。

コンテンツも裏で動いているプログラムも、またグラフィカルデザインも全部社内(と言っても従業員は1人ですが)でやっているので、その利点を生かして今後もスピーディーに内容を充実させていく予定です。

乞うご期待。

ユーザが決定権を持つコンピューティング

Accentureのレポートそのものはウェブで見つからないのですが、
‘User-Determined Computing’ Redefines Information Technology Priorities, Accenture Survey Finds

大部分の企業が短期の利益追求のためIT予算を抑制する一方で、社外の顧客および社員は、現在のITに対する不満がますます増大しているとしている。

  1. 世界中のFortune 1000のうち300の会社に対して調査をしたところ、ITチームは時間の40%を既存システムの保守管理に費やしている。
  2. 顧客接点のうち、わずか22%だけがオンラインで取り交わされている
  3. ITシステムのわずか11%だけが、顧客にフォーカスしたものである

そして、業績の良い企業に限って調べると

  1. ITシステムの25%を顧客フォーカスの活動に投入している。これは平均の11%を大きく上回る
  2. 既存システムを大幅に整理することにより、システムの保守にかける労力を19%減らすことができている
  3. 業績の良い企業は、既存システムに代わる新しいシステムを常に探していて、特にSaaSに興味を示している

バイオの世界で私は2つの会社に所属しましたが、大きい会社の方が非常に多くのITリソースを持っていました。でも顧客向けのITに関して言えば、1/10のサイズの小さな会社の方がよっぽど良いサービスを提供していました。そして大きい会社のITリソースは何に費やされていたかというと、まさにAccentureの調査の通り、ほとんどが社内向けの古いアプリケーションの保守と管理。

なんでそうなっていたのかを自分なりに考えると、営業が強すぎたのだと思います。営業というのは自分の目の前にいる顧客ばかり見るので、訪問できていない顧客のことがよくわからないのです。だから営業が強すぎる会社は、目の前にいる顧客のためのサービスばかりに注力して、ITを介してより多くの顧客にアピールすることを忘れていまいがちのように思います。

いずれにしても、その大きい方の会社は、ITに関しては非常に大変な思いをさせられた会社でした。小さい会社の方もITは良くはなかったのですが、小さいからこっちの言いなりに丸め込めたのが良かったですね。

お金というのは最も役に立たないスコアカード

The Canadian Pressの記事に、GiveMeaning.comを立ち上げた20代後半の社会起業家、Tom Williamsの話が紹介されていました。

記事によると、GiveMeaning.comは小さな草の根的なチャリティーと、お金を小額ずつ出す個人の間を取り持って、寄付したお金が具体的に何に使われたかという透明性を大切にしたサイトだということです。

Tom Williamsはアップルでの高収入な仕事をやめて、GiveMeaning.comを立ち上げています。
“It used to be all about the money, but you know what I found out is money is the most useless scorecard because there’s always a guy who has way more money, who is far less intelligent, who is far less moral or ethical, and yet he has more money. It was frustrating, I was pulling my hair out. Now, I can say my measurement of my success is around how much meaning I’ve made. If somebody is making more meaning than me, all can say is, ‘Man, I admire you.’ As opposed to ‘I envy you.’ ”
「前はすべてがお金でした。でもその中でわかったのが、お金というのは最も役に立たないスコアカードだということでした。なぜかっていうと、どこにいても、自分よりも頭が悪く、倫理的に劣るけれでも、それでも自分よりもお金がある人は常にいるからです。この頃はすごく不満がたまりました。でもいまの自分にとっては、成功の尺度は自分がどれだけ意味のあることを成し遂げたかです。自分よりも意味のあることをしている人がいたとしても、”お前のことがうらやましいよ”ではなく、”お前のことは尊敬するよ”って言えるから。」

バイオの業界の収入というのは、大部分が国民の税金です。ですからバイオの業界で働く人間は、常に福祉の心を持つべきだと僕は思っています。少なくとも、自分の仕事がどれだけの収入になるかだけではなく、どれだけ世のため人のためになったか。より短期で考えれば、自分たちの仕事の結果、どれだけ研究者を手伝うことができたかを意識しなければいけないと思っています。それこそがバイオ企業の存在意義だと思います。

僕の夢は、Castle104がバイオの研究者から、”お前らのことは尊敬するよ”っていってもらえる会社になること。

マーケットシェア追求の過ち

ペンシルベニア大学のWharton校のJ.Scott Armstrong先生の研究で、マーケットシェアに固執することが利益の低下を招くことが導かれているそうです。The ‘Myth of Market Share’: Can Focusing Too Much on the Competition Harm Profitability?

競争に勝つことではなく、利益を最大化することが大切だということ。そして競争に勝ってマーケットシェアの最大化につとめるあまり、多くの経営者は利益を喪失していると説いています。

トヨタ自動車、キャノン、任天堂などを、マーケットシェアではなく利益の最大化に勤めている企業の例に出し、一方でPS3やXboxのソニーやマイクロソフトをマーケットシェアに固執するメーカーの例に挙げています。

バイオの業界では競争が激化し、値下げが恒常的に行われています。売上を最大化しようというあまり、営業の増強にばかりリソースを割き、テクニカルサポートやフィールドサポートの人員は減らされています。付加価値を最大化し、利益を最大化するのではなく、「売り込む」ことに力が注がれています。いまは利益がなくても、このようにしていったんマーケットシェアをとれば、将来利益が得られるという幻想を追いかけているのです(どこかのPS3のように)。でも結果として、研究者にとってもっとも価値を提供してくれるテクニカルサポートとフィールドサポートの人員が削減されているのです。とても悲しいことです。

ちなみにABC World News Webcastを昨日見ていたら、老人ホームでWiiが盗まれて悲しんでいるおじいさんおばあさんが紹介されていました。このような人にも喜んでもらえる商品こそがすばらしいと思う今日この頃です。