マイクロソフト、製品比較するとお金をくれる

マイクロソフト会長のBill Gatesが2008年5月21日に、将来の検索ポータルでは単にユーザインタフェースとか結果の妥当性ではなく、製品を購入した顧客に対してはリベートを与えるだろうと話したと報じられています。

ここまでやるか??!!

いくらGoogleに圧倒的な差を付けられていようとも、いくらYahooの買収に失敗したといっても、「これはありか??」という感があります。

でも実際のものを見ると、結構いいアイデアです。Bill Gatesが単に誇大妄想をしゃべってしまっただけか?

サービスを実際に見てみると、どうもマイクロソフトが製品比較サイトの運営に乗り出したようです。広告主にとっての広告費は実質無料の(ちなみに価格.comもパソコン関係は無料)。
マイコミジャーナルには結構詳細に書かれています。

まだニュースが入ってきたばかりなので、僕自身もどう考えたらいいか頭の整理ができていません。ただ、製品比較サイトに大きく脚光を浴びせる結果になれば、バイオの買物.comとしてもとてもうれしいし、消費者一般にとっても非常にプラスになるのではないかなと思います。

コンテンツ ディレイ シンドローム (どうしてコンテンツが軽視されるのか)

ウェブプロジェクトのマネージメントをやっているPepi Ronaldsが面白いブログ記事を書いていました。

The Cure for Content-Delay Syndrome

ウェブプロジェクトを10年間マネージメントした経験から

  • 一番最後に検討されるのがコンテンツ
  • 一番最後の仕上がるのもコンテンツ
  • プロジェクトが遅れる原因はコンテンツの遅れ

と述べています。
ユーザシナリオとかサイトマップとかデザイン、データベース設計、仕様決定に何ヶ月を掛けることはあるけど、コンテンツの作成はプロジェクトでは「その他」扱いされているとしています。

解決策として編集者をウェブプロジェクトに早くから参加させるべきだとしています。

編集者が最初からいれば、文書を書き始める前から書式や文体の統一を保証できるし、他の業務に追われてしまっているプロダクトマネージャー(メーカーで製品のウリを考えたり、価格を決めたり、サポート体制を準備したりする人)が大急ぎで書いた文章も、ちゃんと仕上げてくれます。

最近流行のSEOも、ちゃんとした編集者がいれば、不自然にならない感じで適切なキーワードを配置できますので、後から高いお金を払ってコンサルタントを雇う必要がありません。

また専門的な業界の文章の場合、ゼロから文章を書ける人はその分野の専門家なので、必ずしもきれいな文章が書ける人ではありません。なおさら編集者が重要になる訳です。

さて、僕の感想です

まさにその通り!

僕が所属したメーカーでは、いずれも編集者という人はいませんでした。

そのため、文体はバラバラになるし、誤字脱字は残ってしまうし、超直訳調のわかりにくい日本語もそのままになってしまうし、完璧な間違いだってそのまま放置されてしまいことがありました。コンテンツが遅れてしまうということは特にありませんでしたが、その一方で、編集者がちゃんと見てくれれば公開できるのにという情報はありました。

別にこれは日本に限ったことではなく、特にウェブサイトに関しては本社のものも結構悲惨なことがあります。ただ、日本の場合はさらにリソースが少ないので、印刷物までもおかしくなっているという状況です。

でもそれをなんとかしようにも、文章を書くための訓練をちゃんと受けた人はいないので、全体を仕切れるだけの信頼を受けている人はいませんでした。仮にいたとしても、その人は他の業務がたくさんあるだろうから、なかなか時間がかけられない。

僕が思うには、研究用試薬機器においては、製品そのものの性能と同じぐらいに技術情報は大切です。製品は必ずしも簡単に使いこなせないので、それをしっかりサポートするための資料は不可欠です。また簡便な製品が時間節約に役立つのと同じように、いい技術資料があればそれだけで研究者は時間が節約できます。

特に日本の支社はよく考えるべきです。並行輸入業者とメーカーの支社というのはいったい何が違うのか。自分たちのサポートや技術資料が弱かったら、日本に支社がある必要はあるのか?

僕が思い描く未来では、各メーカーの日本支社は、技術資料の作成とテクニカルサポート、さらに顧客の声を吸い上げて本社に伝えることにリソースの大部分を使うべきです。技術資料がきっちり書けていて、間違いがなく、読みやすいことを保証するために、当然のこととして編集者が必要になります。

紹介したブログの内容とはちょっと違うまとめ方になりましたが、各メーカーの日本支社は、自分たちが作り出すべきコンテンツを、もっともっと大事にしなければいけないと思います。

日本のネット系バイオベンチャーのかたち

仕事柄、バイオの買物.comだけでなく、他のネット系バイオベンチャーについてちょくちょく様子を確認しています。その中で一つ気になることがあります。

それはちょうど以下のブログに書いてあることと同じです。
日本のネットベンチャーが技術革新よりも「ネット財閥」をめざす理由

このブログで書いていることを要約すると;

  • アメリカのネットベンチャーは最先端のプログラムを駆使した技術指向とビジネスを結びつけている(グーグル・アマゾン)
  • 日本のネットベンチャーは企業買収によってビジネス規模拡大を狙っている(楽天・ライブドア)

そして日本のネットベンチャーの原型はソフトバンクにあるとしています。

僕らはバイオ研究者向けサービスという一つの狭い市場(といっても研究用バイオ製品の市場はCDの売上に匹敵しますが)でやっていますが、同様の財閥にならないことを僕は期待しています。ただ見回していると、みんな結構いろいろとビジネスを拡大していますね。

いろいろなビジネスに手を広げるのも一つのやり方と言えばやり方です。でも僕の中の技術者魂は、何か一つのものにとことん深く入り込んで、不可能だったものを可能にするぐらいの技術開発をしたいと言っています。その方が価値のあることだよって。

バイオの買物.comでは、100万以上あるバイオ研究用製品(ナカライのバナー参考)の情報を管理し、目的にあったものを簡単に見つけられるようにする。このための技術開発に絞って活動をしていこうと思っています。大上段に構え過ぎかもしれませんが、ゲノム研究で言うアノテーションと同じだと自分自身は認識しています。

この巨大な複雑さに挑戦し、なおかつ最小限のリソースで実現していくこと。

これ、はっきり言って快感なんです。。。

ページビューによるウェブサイト人気比較の問題点

ウェブサイトの人気度を測るとき、しばしばページビュー(PV)が使われます。ページビューというのは、そのページが表示された数を表しているはずなので、単純に考えると、そのウェブサイトのページがどれだけ閲覧されたかを示しているはずです。

そこでウェブサイトを運営している人たちは、「うちのウェブサイトは月に30万PVがあるほどの人気だから、広告を載せると効果的だよ!」とか言って、広告を載せてもらおうとする訳です。

しかし大きな問題点がいくつもあります。
中でも非常に大きいのはロボットだとかクローラと呼ばれているものの影響です。

ウェブサイトにアクセスしているのはユーザだけではありません。特に最近非常に多いのは、上述したロボットです。Google, YahooだけでなくBaidu, Infoseekなどなど、思いのほかに多数のロボットがウェブサイトにアクセスしています。例えば僕が運営に関わっているあるサイトで見ると、真のユーザからのアクセスによるページビューは全体の20%にも満たないものです。残りの80%はロボットです。つまり月に30万PVあるサイトであったとしても、実際には6万PVしかないのかもしれません。

じゃーどうやって、本当のユーザ数を把握するか。どの解析ツールが最も正確かという話になりますが、これがまた非常に難しい問題です。ただ傾向としてはっきりしているのは、WebalizerだとかClickTracksなどのように、サーバに蓄積されたアクセスログを解析するソフトウェアは必ず多めにページビューを報告してしまうこと。そしてGoogle Analyticsのように第三者が解析するタイプのサービスは、必ず少なめにページビューを報告してしまうことです。真の数字はどこかその間にあって、個人的にはGoogle Analyticsの方に近いのではないかと思います。

他にもこれについて書いている人がたくさんいますので、一部を例としてあげます。どっちの解析結果が正しいか、かなり意見が分かれているようですが

さて、問題は何をするべきかです。
WebalizerとGoogle Analyticsのどっちが正しいかを議論したとしても非常に技術的に話になってしまうし、それぞれの立場によって思惑があるでしょうから結論は出ません。

そこで僕の提案は、以下の通り;

  • 広告主はそれぞれの媒体を同じ土俵で比較し、媒体を選択する必要があります。そこで、無料で簡単にセットアップできるGoogle Analyticsに統一して、使用を検討している媒体にそれぞれGoogle Analyticsの解析結果を報告させるべきです。こうすれば各媒体を同じ土俵で単純比較できます。
  • 媒体側は一歩進んで、Google Analyticsの結果を報告するだけでなく、Google Analyticsへのアクセス権をクライアントに提供してあげるべきです。そうすればクライアントは報告をリアルタイムで受け取ることができるし、Google Analyticsで独自に分析を深めることもできます。そして媒体からの報告が嘘偽りのないことを確認できます。

バイオの買物.comでは近いうちに広告主の募集を始めようと思っていますが、こうやって透明性の高い形を用意することが必要だろうと思っています。

いずれにしても、広告主側が気をつけなければいけないこと

それはウェブサイトの人気度の尺度として、「うちは何十万PVですよ!」と言っている人がいても、必ずそれを疑うことです。実際には一桁違うかもしれないので。

最後にWebalizerなどのソフトとGoogle Analyticsのシステムの違いについてまとめてみました。あまり細かい話はしないで、ざっとした感じですが。

  Webalizerなど Google Analytics
インストール サーバにインストールもしくはローカルのパソコンにインストール Googleにシステムがあるので、インストールの必要なし
ウェブページの加工 加工の必要なし Googleと連絡をするためのコードを全対象ページに埋め込む必要あり。ページ数が多く、すべて静的なHTMLで書いている場合は一見面倒だが、プロが使っているようなHTMLエディターを使えば一括でコードを埋め込むことができるはず。
ページビューのカウント対象 全アクセス。ロボットも含む。 ロボットは含まない。人間がブラウザを使ってアクセスしたもののみカウント。ただし、JavaScriptをオフにしているユーザはカウントされない。
ビジターのカウント 独立IPアドレスごとに数える。したがって、企業や大学などでリモートIPを複数のパソコンで共有している場合、複数のユーザでも1人のユーザと数えられる可能性が高い。 Cookieを使ってユーザを追跡。Cookieをオンにしているユーザについては正確にビジターをカウント。Cookieをオフにしているユーザはカウント対象にならない。
PDFなどのダウンロード カウントされる。ただし、1ダウンロードにつき複数回カウントされる可能性がある(たぶんブラウザの動作による)。 カウントされない。
レポートの傾向 ページビューはロボットによって大きく水増しされる。研究者は大きな施設でリモートIPを共有しているので、ビジター数の絶対値は当てにならない。設定でロボットを排除することも可能だが、独自に設定を変更する必要があり、他の解析ツールを使った結果と比較できない。 ページビューもビジター数も少なめに出る。ただしJavaScriptやCookieを使わないと多くのバイオメーカーのウェブサイトにアクセスできないことを考えると、これらをオフにしているユーザはごく少数と予想される。したがってページビュー数もビジター数もおおむね正確な値と予想される。
加々美のお勧め 広告をどこかに載せたいと思っている広告主は、こういうツールで出力されるデータを信用するべきではない。ロボットは品物を買ってくれないので。 広告主はこっちのデータを要求していくべき。なるべくならレポートを自分で確認するためのアクセス権も要求するべき。

何ができるかではなく、何をやりたいかを突き詰める

僕は何ができるかという議論の仕方が嫌いです。

そうではなく、何がやりたいか、何をやるべきかに遡って考えることが好きです。

何をやりたいかを突き詰めて、成功している例を挙げます

山中教授のiPS細胞

再生医療の究極的な研究です。この成果を受けて、クローン羊・ドリーの生みの親のイギリスのイアン・ウィルムット博士(Ian Wilmut)が「自分の研究の方向を断念した」とまで言ったと報道されています。
ES細胞の倫理的な問題をどうやってクレアするか、骨髄幹細胞をどうやって増殖させるかといった、解決策が一見近そうな問題に取り組むのではなく、もっとも究極的なものは何かを突き詰めて行った研究だと僕は解釈しています。この技術を持ってすれば、倫理的な問題、ドナーの問題はすべて一気に吹き飛んでしまいます。

iPhone

まだ日本では発売されていないので製品そのものはよく知りませんが、iPhoneおよびiPhone用のソフトを作るデベロッパーキットは、共に「何ができるか」を超えて「何をやりたいか」をとことん突き詰めた結果でしょう。だって、MacOS XがiPhoneに載っているんですよ!しかもLeopardが!それは滑らかな3Dアニメーションがユーザインタフェースのあちらこちらに使われているのを見れば納得です。そしてユーザインタフェースはマルチタッチ。そしてSafariというフルブラウザが大部分使える。

既存の携帯電話やスマートフォンを見て、「これに何を追加できるか」という発想をしたのではなく、「ポケットに携帯するデバイスは何ができると面白いか」のイメージを膨らまして、そしてかなりの技術的困難を乗り越えて実現してしまったものだと思います。

蛋白質のフォールディング

蛋白質がフォールディングするというのは、確率論的にいうとすごくむちゃくちゃなことなんですよね。蛋白質がとりうる立体構造の膨大さを考えると、うまくフォールディングするというのは神業に近いんです。

しかも蛋白質がフォールディングするときは本来の構造とは大きく異なる局所的な低エネルギー状態にはまることがあって、抜け出せなくなるんです。つまり、連続的にだんだんフォールディングしているだけでは、すぐにどこかにはまって、うまく行かなくなってしまう。

そこで活躍するのがシャペロン蛋白質たちなんですけど、フォールディングできずに苦労している蛋白質があきらめてしまわないように、一旦フォールディングを戻して、構造を緩めてあげて、全く新しい構造にチャレンジできるようにしてあげるんですよね。シャペロン蛋白質たちは、決してフォールディングを誘導しているのではありません。そうではなくて、正しい立体構造をあきらめかけている蛋白質たちに勇気を与えて、気持ちを楽にさせてあげて、展望を広げてあげて、そして再チャレンジさせてあげているんです。

人間も同じように、「この先何ができるか」を考えすぎると、本来の姿と異なる局所的な低エネルギー状態にはまってしまいます。

ときどきねじを緩めて、リラックスして、山の向こうにある究極の姿を求めて再出発するのが大切なのです。

パレートの法則 拡大解釈する人が多すぎる

パレートの法則というものがあります。80:20の法則とも呼ばれます。もともとはイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(Vilfredo Federico Damaso Pareto)が発見したもので、所得分布を解析したものです。国や時代の制度と無関係に、社会全体の所得の多くは一部の高額所得者が占めていると主張したものです。

現象としてはまさにその通りのことが多く、上にリンクした記事では、自然現象、品質管理、在庫管理、売上管理、マーケティングにも当てはまると記しています。品質管理であれば、品質問題の優先順位を理解し、どれから解決すればいいかの指標に使われます。在庫管理であれば、在庫するべき製品と、在庫しないで取り寄せにするべき製品の区別に使用します。マーケティングであれば、ターゲットするべき顧客と、悪く言えば無視するべき顧客の区別に使用します。

しかし、パレートの法則を安易に解釈してビジネスに応用してしまうと、非常におかしなことになってしまいます。以下は実際に僕が職場で見たり聞いたりした例です。

  • 20%の施設で売上の80%を稼いでいる。だから営業資源をその20%の施設に集中しよう。
  • 20%の製品で売上の80%を稼いでいる。だから残りの80%の製品は在庫せずに、海外からの取り寄せにしよう。

さて、このようなことをやると何が起こるかをちょっと考えてみます。

売上の80%を稼いでいるという20%の少数の施設というのは、だいたいどの会社でも大のお得意さんです。どこの会社もそこで売上を稼いでいるので、営業資源をたくさん投入しています。そのため過当競争になっています。したがってよほどの投資をしない限り、顧客側から見たときの営業の存在は、その他大勢になってしまいます。つまりせっかく多くの営業投資をしていても、顧客から見れば無視しても良い存在になってしまいます。

見方を変えるとわかりやすいと思います。メーカーにとってみれば、その施設は売上の80%を稼ぎだす重要施設です。でも顧客にとってみれば、そのメーカーというのは「その他大勢」にあたります。顧客にとっての20%の価値しかない、80%のメーカーの一部にすぎないのです。

それに対して、売上の20%しか稼いでいない「その他大勢」の顧客に対して営業資源を投入したとします。そうするとその顧客から見たとき、あなたの会社は80%の価値を生む、上位20%のメーカーの一つになるのです。

在庫についても同じです。よく売れる製品というのはだいたいどのメーカーも同じです。ですからよく売れる20%の製品だけ在庫して、のこり80%の製品を在庫しなければ、結局は顧客の心の中で「その他大勢」に分類されてしまいます。

このようにパレートの法則は「効率化」を生む部分と「その他大勢化」を生む部分があるので、非常に気をつけてビジネスに当てはめなければいけません。

効果が非常にはっきりわかる指標があり、役者が少ないときは、パレートの法則的な考え方は非常に有効です。例えばコンピュータソフトウェアでもパレートの法則が成り立ちます。開発中のソフトウェアについて、いったいどの処理が遅くなっているかを細かく分析するツールも精力的に開発されていて、非常に局所的にスピードアップしている手法が採られています。逆に、十分な分析なしに闇雲に効率化することは、ソフトウェア開発では強く戒められています。

パレートの法則は、闇雲に使うと会社をめちゃめちゃにしてしまいます。でもうまく使うと大きな効果を生みます。残念ながら世の中には中途半端にしか勉強していない人が多いので、間違った使われ方をしている場合が多いのではないでしょうか。

パレートの法則を使ってつもりが、逆に使われてしまった。無駄な80%のユーザを切り捨てたつもりが、逆に自社がユーザから無駄な80%と烙印を押されてしまった。そんなことにならないように、数歩先を読んでから使いましょう。

Innovator’s Dilemmaとバイオの製品

Charlie Woodのブログに、iPhoneがなぜ ‘The Innovator’s Dilemma’に陥らないかを分析しています。

‘The Innovator’s Dilemma’(イノベーションのジレンマ-技術革新が巨大企業を滅ぼすとき)というのはClayton Christensenが著した本で、イノベーションを続ける優良企業が、それにも関わらずどうして新興企業に市場を乗っ取られ、しまいには独占されるかを分析しています。僕もこの著者の本を2冊ほど読んでいますが、非常に論理的な議論をしつつ、直感とは全く異なる結論を証明していっているところに感動しました。またこの本は単なる分析に終わらず、将来を予測するためのフレームワークも提供しているところも特徴です。

簡単にChristensenの数冊の本の主張を紹介しますと

  • イノベーションを繰り返していくと、’Good Enough’(十分な性能)に到達します。’Good Enough’に到達すると、それ以上いくら性能を上げても、顧客にとっては役に立たなくなってきます。これがコモディティーとよく言われる状態です。
  • ‘Good Enough’の状態に達すると、安値販売で勢力を伸ばそうとする企業が参入してきます。
  • 安値販売する企業が参入しても、優良企業は安売り合戦には参加しないことがあります。そうではなくてイノベーションを繰り返し、よりハイエンドの顧客をターゲットに絞って製品開発を進めていきます。安売り市場は捨てて、ハイエンドに向かっていきます。
  • ただし優良企業が安売り合戦への参入を見送るかはケースバイケースで、その産業構造に依存します。安売り合戦をすれば既存の企業は必ず収益を悪化させますので、なるべくならハイエンドに逃れます。ただ産業構造的に直接対決が避けられない場合は全面対決をし、収益は悪化させますが最終的に生き残ることが出来ます。
  • 安値販売する企業は次第に力をつけて、次第にハイエンド製品を製造する能力を身につけます。そうすると既存の優良企業はさらにイノベーションをエスカレートさせ、ますますハイエンドに絞り込んでいきます。でもこれは必ず限界があるので、最後には安値販売する企業に市場を乗っ取られてしまいます。この安値販売する企業の参入を可能にするイノベーション、これをChristensenは’Distruptive Innovation’(破壊的イノベーション)と呼んでいます。
  • ハイエンドに逃れるのでもなく、そして安売り競争に入るのでもなく、高収益を持続させていく方法はあります。それは’non-consumer’(いままで対象にならなかった顧客)を顧客にするようなイノベーションをすることです。

iPhoneに関してのCharlie Woodの分析では、Appleがデザインを重視していているために、Innovator’s Dilemmaが当てはまらないとしています。つまり、’Good Enough’なデザインというものは無いとしています。

それに対して数多くのコメントが寄せられています。例えば、単純に今のデザインの水準が’Good Enough’とはほど遠いのではないかというもの。つまり今までの製品のデザインは、特に使いやすさという意味ではひどかったと。ただ、消費者はそれにまだ気づいていなかったという論点です。

また別のコメントの中で、AppleがDisruptive Innovationを仕掛けていると論じているものもあります。

iPhoneについてはCharlie Woodのブログに任せるとして、僕はバイオの話をします。

バイオで’Good Enough’状態に達している研究用製品

山ほどあります。

制限酵素、PCR酵素、バッファー、フェノールなどん単純試薬、チューブ、プレート、培養フラスコなんていうのはわりと当たり前に思いつきます。

その他、安売り競争が起きてしまっているものも’Good Enough’なコモディティーになっていると考えていいでしょう。リアルタイムPCRの試薬と機器、受託合成DNA、DNAシークエンス。siRNAなんかもこれに近くなっているように思います。

面白いことにその技術が新しいかどうか、あるいはその技術が革新的だったかは全く関係ありません。’Good Enough’なものが、他社でもどれだけ簡単に作れるかがコモディティーになるかならないかを決定しています。

バイオの業界で面白いのは、安売り企業が参入してきても、既存企業が割と応戦していることだと思います。ハイエンドに逃れようというメーカーはほとんどないと思います。例えばリアルタイムPCRでは、ABIはちゃんとローエンド機器を売り出しました。PCR酵素に関して言えば、Invitrogenも特許に引っかからない激安Taqを発売しています。そしてほとんどのメーカーはがんばって割引をしてくれますし、安売りキャンペーンを盛んにやってくれます。

唯一ハイエンドに逃れる気配を見せるのは、バイオをサイドビジネス的に考えてしまっている複合的な巨大企業ではないでしょうか。ちなみにこのような会社の社内事情は、重力が反対向きに働くような異次元空間に入ったかのようで、本当に面白いです。

‘Non-consumer’にアプローチしてDilemmaを逃れる方法

パソコンやスマートフォンを必要としていなかった、もしくは使いたかったけどハードルを感じていた人に対して、それを使わせてしまうだけのデザイン性と使いやすさのある製品を提供する。これが一貫したAppleのやり方のように思います。これは初代のMacに始まり、iPhone, iMac, iTunes, iPod, iPhoto, iMovieなどにも引き継がれている考え方です。

バイオの世界でよく似た例がABIのStepOneだと思います。

  • オールインワン:パソコンをつなげなくてよい。LCDタッチスクリーンとUSBドライブでセットアップと解析が行える。
  • 専用ホームページとソフトウェアでセットアップをサポート。試薬の注文も可能(アメリカ)
  • 初心者が使うことを想定したシステム

このコンセプトはすごくいいと思います。他社が安売りしても、このような使いやすさで’non-consumer’を相手に出来るのであれば、心配することは無いように思います。

自分が研究しているときは、新しい機械の操作方法を覚えるのがおっくうでした。ほとんどの機械は操作がわかりにくいし、壊してしまったらまずいと思って心配だし。サンプルも無駄になっちゃうし。だから、結局は新しい機械を使わずに、今までの方法ですませてしまったりするんですよね。面倒な方法でも。

Appleと同じだことだと思います。機械とソフトウェアの使いやすく、ウェブサイトが充実、カスタマーサポートによる対応も迅速で適切というメーカーがあれば、今までそういう実験を避けていた顧客も使ってくれるようになるはずです。

それが出来ないメーカーはInnovator’s Dilemmaにはまって、安売り競争と開発競争に深く深く沈んでいくだけでしょう。

Henry Mintzbergのウェブサイト

リーダーについてのブログ記事Henry Mintzbergを取り上げたので、Googleを使ってもう少し調べてみました。僕がMintzbergと出会ったのは29歳ぐらいのときで、会社に入ってしばらくして、あれれと感じていた頃でした。“Mintzberg on Management”という本でしたが、会社に対する幻想をまだ持っていた僕は目から鱗が落ちる思いでこの本を読んだ記憶があります。

いずれにしても、Henry Mintzberg自身のウェブサイトが見つかって、この中に面白い論文がいくつかあったので、とりあえず簡単に紹介しておきます。また機会があったら、より深く論じてみたいと思っています。

  • Leadership Beyond the Bush MBA: まず、僕も始めて知ったことなんですが、あのブッシュが実はMBAを持った始めてのアメリカ大統領だということが紹介されています。しかも権威あるHarvard Business Schoolの。これは初めて知りました。Harvardは恥ずかしくて隠していたのでしょうか?この論文ではBush政権の行動パターンのいくつかが、Harvard Business Schoolでの教育にルーツをたどることが出来るとしています。a) 状況がわからなくても素早い決断をすること、b) 実践能力は軽視されていること、c) ビジネスの基本をいくつか学ぶだけで、全般的なマネージメントまでわかってしまった気になること(ビジネス的ダウンサイジングをイラク戦争に適応したことなど) などが紹介されています。
  • How Productivity Killed American Enterprise: アメリカの企業が株主を優先して短期的利益を追求した結果、製品とサービスおよび顧客を犠牲にしたしまったことを論じています。具体的に何が行われ、何が犠牲になってしまったかを論じています。面白い論点がいくつもあります。a) 短期的な利益を最大化するには、すべての人をクビにして、在庫にあるものだけ売れば良い。極端に聞こえるけど、実際にはこれに近いことが行われた。b) 「株主利益」を最大化するために、アナリストを騙すような活動をすることが重要。例えばアナリスト用プレゼンへの注力、ブランドの統廃合、顧客から最大限の利益を吸取ること、それと合併を繰り返すこと。そしてa)に非常に近いのですが、ダウンサイジングをすること。

最もリーダーになってはならない人がリーダーになってしまう仕組み

僕らは人生の中で、どのようなリーダーを見て育っているのでしょうか。

小学生や中学生のときにリーダーはスポーツが得意な人が多く、球技大会でクラスのチームをまとめるのもこのような人たちです。学級委員長も、勉強な得意な人よりはスポーツが得意な人がやることが多いと思います。子供の頃からリーダーシップを学ぶのはこの人たちです。僕なんかはスポーツもそれほど得意ではなく小学校の頃は勉強もできなかったので、リーダーになることは夢のまた夢だったのですが、それでもこういうリーダーに憧れ、いつかは自分もそうなってやろうと思っていました。

中学校と高校の頃は、プロ野球を良く見ました。埼玉県に接している東京都練馬区に中学校があり、当時は西武ライオンズの黄金時代だったので、西武が巨人などセ・リーグの人気球団を次から次へと粉砕していくのが痛快でした。プロ野球を見ていると、実に多くのリーダーの姿を知ることができます。管理野球を徹底した西武ライオンズの広岡監督とそれを引き継いだ森監督。全然うまくいかなかった巨人監督時代の王監督。野茂とイチローを初め、数多くの大リーガーを輩出した近鉄とオリックスに在籍した仰木監督。ID野球で弱小ヤクルトを日本一に導き、さらに楽天イーグルズでそれを今にも再現しようとしている野村監督。徹底的に選手とファンを誉めて持ち上げて、弱小でしかも人気のなかったチームを、全く正反対の強力で人気のあるチームにしたロッテマリーンズのバレンタイン監督と日本ハムファイターズのヒルマン監督。

このように、僕らは子供や学生時代に、スポーツをやることやスポーツを見ることを通してリーダーシップを学んでいるのです。でも面白いことに、社会人になると今度は勉強が出来るか出来ないかでリーダーが決まっていくことが多くなります。

もちろんすべてではないのですが、勉強ができて、いい大学に入ったり、あるいはMBAをとったりする人というのは、どちらかというと小学校や中学校時代に球技大会でクラスをまとめていたような人ではありません。どちらかというとスポーツはそこそこにして、勉強を中心にやっていた人たちです。そしてプロ野球のテレビ放送を熱心に見ていたり、授業中に日本シリーズ中継をラジオで聞いていたというよりは、その間に問題集を解いていたりした人たちです。

別に何がいいとか何が悪いというつもりは無いのですが、子供時代に多くのリーダー経験を持ったり、あるいは多くのリーダーを観察したりした人というのは、大人になって仕事でリーダーとなる人と逆になっていませんか?リーダーとしてのトレーニングを若いうちに受けた人ではなく、全くトレーニングされていない人が優先的にリーダーになってしまっていませんか?

それが僕が感じている疑問です。

その傾向が最も顕著に現れるのはMBAにおいてです。MBAというのは、場合によっては勉強しただけで人に「リーダー資格」を与えてしまう結果になります。若い頃に全くリーダーについて学ばず、自分の狭い世界に閉じこもって勉強ばかりしていたような人であっても、一生懸命勉強すればMBA資格は取れてしまいます。MBAというのは、リーダーとしての能力が全くない人間であっても、急に上級管理職にしてしまうことがある、極めて危ない学位ではないでしょうか?

例えば”MBA リーダー”でグーグル検索をすると、MBAホルダーであるだけでビジネスリーダーの仲間入りだと言わんばかりのヒットが大部分です。でも繰り返しますが、MBAホルダーというのはどちらかというと学生時代にリーダーの訓練をしてこなかった人たちが多いのではないでしょうか?僕はここに大きな矛盾を感じます。

MBAの問題点を記した著名な経営学者、Henry Mintzbergの書物「MBAが会社を滅ぼす」というのがあります。Nikkei BPに紹介記事がありますし、英文ですけど、Amazonではしっかりしたレビューがあります。僕はこの本をちゃんと読んでいませんが、こんなところがポイントのようです;

  • Conventional MBA programs train the wrong people in the wrong ways with the wrong consequences: 一般的なMBAプログラムは、間違った人に間違った方法でものを教え、間違った結果を導いています Amazon
  • According to Mintzberg, management education is really business education, offering specialized training in the functions of business rather than general education in the practice of managing: Mintzbergによると、マネージメント教育として行っているものは本当はビジネス教育でしかない。マネージメントを実践するための全般的な教育ではなく、ビジネスの個別の機能のための専門的なトレーニングを提供しているにすぎない。Business Book Review
  • Whatever you do, don’t confuse an MBA with a license to manage. どんなことがあっても、MBAを持っているということと、マネージャーとしての資格があるということを混同してはならない。MIT World

僕自身は協和発酵工業で働いている30歳ちょっとすぎのときに、非常に良いリーダー教育を受けたと思っています。その教育とは、仕事とは全く関係のないレクリエーション行事の幹事をやらされたことです。30歳は会社ではまだひよこに近い訳ですから、仕事の上ではマネージャー的なことはなかなかやらしてもらえません。かといってレクリエーション行事は遊びかというとそういう訳ではなく、200人の社員をエンターテインする責任がある訳ですから、考えようによっては仕事なんかよりもよほどプレッシャーは強いです。そのプレッシャーの中で10数人をまとめて、一つの行事を成功させるというのは非常に良い経験でした。

僕自身はその中で、ビジョンを明確に伝えることの大切さと、その明確のビジョンの上に各人が自発的にそれを膨らましていくように促すことの大切さ、そして緩い管理の中で知らず知らずにそれが自分の思っているよりも数倍のものに仕上がっていくプロセスを知ることが出来ました。

最近の日本企業では、このようなレクリエーション行事を減らしていく方向にあると聞いています。協和発酵ではまた、労働組合役員を若い人に経験させて、やはり若いうちにリーダーを経験させる仕組みもありましたが、労働組合もやはり最近の日本企業では重視されなくなってきています。その一方で高齢少子化の影響で、部下のある管理職になるのはかなり歳になってからになってしまっています。つまり、リーダー教育を受ける機会が日本社会でますます減ってしまっているように思います。

その一方で日本人の間のMBA信奉は相変わらず強い訳ですから、日本はますますこの「最もリーダーになってはならない人がリーダーになってしまう仕組み」が強化されていくのではと心配になってしまう訳です。

ちなみに、僕がこの考えを強く持つようになったのは、一応MBAは持っていたものの、それ以外の人間的資質においては全くリーダーに不向きだったという人を上司に持った経験からです。小学生の間にリーダーになれなかったどころの騒ぎではなく、嫌みなやつということで、きっとぼこぼこにされていたのではないかという人でした。でもMBAだから、上級管理職になってしまっていたんですよね。まさにMintzbergの本の題名「MBAが会社を滅ぼす」のような人でした。

イノベーションを育む方法:PixarのBrad Birdとのインタビュー

PixarのBrad Birdがイノベーションを育む方法について、McKinseyの報告をまとめた記事がありましたので紹介します。

まず、Brad BirdがPixarに入社した経緯について;

Pixarが3回の成功(Toy Story, A Bug’s Life, Toy Story 2)を収めたために、かえってイノベーションが困難になってしまうことをSteve Jobsは心配していました。Steve JobsがBrad Birdを採用したのはそれが理由でした。JobsがBrad Birdに言ったのは「僕らが心配しているのは自己満足による安心感だ。すべてのやり方はもうわかったと思ってしまうこと。君にはPixarをかき回してほしいのだ。」

そしてMcKinseyの報告に書かれた10個のキーポイント

その1:厄介者を探せ

Brad Bird : 僕は言ったんだ。「厄介者を探しだせ。僕はイライラしたアーティストが欲しいんだ。他の人とは違いやり方をしていて、全体から相手にされていない人だ。会社を辞めようと思っているやつだ」。会社に不満を持っている多くの人は、いままでと違うやり方を知っていたけど、それを試す機会がないからイライラしていたんだ。試す機会がなかったのはそれまでの方法が非常にうまくいっていたからなんだけど。そこで厄介者が自説の正しさを証明する機会を与え、その結果、数多くのもののやり方を変えたんだ。

その2:完璧はイノベーションの敵だ

Brad Bird:彼らの中の完璧主義を払拭しなければならなかった。画面上に何かを表現するためには、安っぽくて汚いやり方だってやりかねないことを僕はやりかねないと知らしめて、彼らを脅したんだ。例えば「水をコンピュータシミュレーションしなくたっていいんだ。プールの水しぶきをフィルムに収めて、その中に水を合成するだけでいいんだ」って言ってね。実際にはプールの水しぶきを撮影はしなかってけど、このような考え方を浸透させて、すべての面から完璧な方法をやらなくてもいいんだということを理解させた。すべての場面は同じじゃないんだ。いくつかの場面は完璧でなければならない。かなり完成度の高い場面も必要だ。でも、全体の雰囲気を壊さなければOKという場面もあるんだ。

その3:熱い人を捜せ

Brad Bird: 物事に深く関わろうとする人がよりイノベーションを起こす。物事に深く関わる人は物静かであったり、うるさかったり、あるいはその中間だったりするけど、でもみんなが共通して持っているのは、飽くなき探究心だ。「問題の核心を知りたい。僕には何かやれることがある」。赤外線カメラで温度を視覚化できたら、彼らの頭のてっぺんから熱が上がっているのが見えるよ。

その4:イノベーションは真空状態では起きない

Brad Bird: 僕はすべての人を一つの部屋に集めたんだ。前任者とはこれが大きく違った。彼は仕事内容を自室でレビューし、メモを書いて、担当者に送っていた。僕は言ったんだ。「ほら、このチームはみんな若い。個々のアニメーターとしてはそれぞれ異なる強みと弱みを持っている。でも強みをお互いにつなげることができれば、全体として世界最強のアニメーターになれる。だからみんなには発言をして、考えていることを全部言ってほしいんだ。あなたの描いているシーンを全員で見るんだ。みんながお互いに恥をさらし合い、そして勇気づけられるようにするんだ。」

その5:士気が高ければ創造性は安く手に入る

Brad Bird: 僕の経験上、映画の制作費に最も影響を与えつつ、帳簿上全く現れないものが士気なんだ。士気が低ければ、経費$1に対して、$0.25程度の価値しか得られない。でも士気が高ければ、$1に対して$3の価値が得られる。会社は士気にもっともっと気を使わなければならない。

その6:成功を保証してはならない

Brad Bird: 不可能を達成するための最初のステップは、不可能だと思っていたことが本当は実現可能であると信じ込むことだ。

安全策をとっては駄目なんだ。自分でも怖いこと、自分の能力の限界のこと、失敗するかもしれないことをやらないといけないんだ。

その7:Steve Jobsが言うには「相互交流 = イノベーション」

Brad Bird: Pixarのビルのアニメーション階に行くと、ドアヒンジが無いんだ。自分たちのオフィスのエントランスはどのように飾ってもいいんだ。ウェスタン映画のようなエントランスにしてもいいし、ハワイのようなものにしてもいい。John Lasseter は、自由な雰囲気があれば創造性が高められると考えているんだ。

ビル全体もそうだ。ビルはSteve Jobsが事実上デザインした。真ん中に大きなアトリウムを作って、一見するとこれは場所の無駄のように見える。それでJobsがどうしてこれを作ったかなんだけど、みんな個別のとこで仕事をするよね。ソフトウェアを開発している人はある場所。アニメーターは別のところ。そしてデザインをしている人はまた別のところ。そこでJobsはメールボックス、会議室、カフェテリア、そして狡猾にもトイレまでもすべて真ん中に置いたんだ。そうすると、自然といろいろな人に会ってしまう。Jobsの考えでは、人が人とすれ違いアイコンタクトをするとき、何かが起こる。だから会社の全員と必ずすれ違う仕組みにしたんだ。

その8:異なる分野の学習の奨励

Brad Bird: PixarにはPixar University (PU)がある。証明の仕事をしているけれどもアニメーションの作り方を勉強したいのなら、アニメーションのクラスがある。ストーリーの構成、Photoshopの使い方などはもちろん、イスラエルの格闘技 Krav Magaのクラスもある。Pixarでは自分の専門分野以外の学習を奨励していて、社員がより’完全’でもより創造的になるようにしているんだ。

その9:創造性を阻害する要因を排除しろ

Brad Bird: イノベーションを邪魔するのは、受け身でありながら攻撃的な人。グループになると自分の意見を言わないけど、裏で問題点を突っついて邪魔をする人。こういう人は毒みたいなものだ。このような人は割と簡単に見分けられるので、すぐに除いていく。

その10:お金儲けにフォーカスしてはいけない

Brad Bird: 僕がDisneyに入社したとき、まるで雨ざらしにされたキャデラックのよだった。Disneyの思考プロセスは「こんなにすごい機械があるんだ。すばらしいものを作るのに使えないか?この宇宙船があれば火星にだっていけるぞ。」というのではなく、「僕らにはWalt Disneyのことは理解できない。彼が何をやったかは理解できない。だから今あるものを壊さないようにしよう。この宇宙船をとにかく維持しよう。何か新しいことをすると、傷つけてしまうかもしれないから」になってしまっていた。

Walt Disneyが繰り返し言っていたのは「僕はお金を作るために映画を作っているのではない。映画を作るためにお金を作っているのだ」。Disneyの絶頂期とDisneyが駄目になっていたときの違いは、この言葉に凝縮されている。これはPixarにも当てはまるし、多くの他の会社にも当てはまる。直感とは違うかもしれないが、想像性がベースの会社が長い目で成功していくためには、お金儲けにフォーカスしてはいけないんだ。