RSSは便利だ:ニュースアップデートのワークフロー

僕はいまバイオの買物.comニュースセクションのアップデートワークフローを確認していますが、すごく便利です。

ワークフローはこんな感じです。

  1. 各メーカーのウェブサイトを自動的にRSSに変換するプログラムを作成。もうこれはかなり作ってあって、バイオの買物.comで一般に公開しています(RSSページ)。
  2. メーカーのウェブサイトが変更になると、僕の使っているRSSリーダー、NetNewsWireに新着メッセージありのマークがつきます。メールソフトで新着メールが来たような感じです。
  3. RSSを確認し、メーカーウェブサイトで再確認後、今度はバイオの買物.comのニュースセクションに記事を書きます。そしてアップロード。

これをやっていると、メーカー自身のRSSよりも早くRSSに記事が投稿できてしまうことが多いです。
どうもメーカーのRSSは、CMSが自動生成しているものばかりではなく、RSSのコンテンツを改めて書き直していて、少し遅れるものが多いようです。

NetNewsWire.png

別にRSSに記事が載るのに一分一秒を争うわけではないので、どうでもいいのですが、メーカーのRSSより早くバイオの買物.comのRSSが作れるのはちょっとうれしいですね。

RSS広告はどうやるべきか

RSSに広告を載せる場合、どうするのがいいか、少し調べました。
Feedburner CEOのDick CostoloとのミーティングからBusinessWeekの記事

コンテキスト連動型の広告はRSSに向かない。例えばBlackberry (世界でもっとも人気の高いスマートフォン)についてのRSSフィードに競合のスマートフォンの広告を載せてもうまくいかない。うまくいくのはそのRSSフォードの読者のデモグラフィックを狙った広告(年齢だとか年収だとか職業をターゲットした広告)。
理由を考えると、どうも検索エンジンを使ってウェブサイトを訪問する人とRSSフィードに登録する人というのは違うようだ。検索エンジンを使う人は新しいスマートフォンを買おうと思って探している可能性があるので、スマートフォンの広告に反応する。でもBlackberryのRSSフィードに登録している人は既にBlackberryを持っている訳で、もう一台Blackberryを買ってもらうための広告や競合のスマートフォンを買わせる広告はうまくいかないのだ。

ちなみにFeedburnerの広告は以下のような感じで表示されるようです。僕はでもTwitterrificの表示の形の方が好きです。

Feedburner ads.png

Twitterrificの広告は結構見ちゃう

TwitterのクライアントとしてTwitterrificを使っているのですが、無料で使っているので広告が表示されます。

この広告、効果が高いんじゃないかなと思います。僕自身はTwitterrifficの広告は結構良ているし、製品が気になります。それでいて、無料で使わせてもらっているという気持ちも強いせいか、邪魔だという感覚がありません。

Twitterific Ads.png

RSSに広告を載せる際に参考になると思います。

ページビューによるウェブサイト人気比較の問題点

ウェブサイトの人気度を測るとき、しばしばページビュー(PV)が使われます。ページビューというのは、そのページが表示された数を表しているはずなので、単純に考えると、そのウェブサイトのページがどれだけ閲覧されたかを示しているはずです。

そこでウェブサイトを運営している人たちは、「うちのウェブサイトは月に30万PVがあるほどの人気だから、広告を載せると効果的だよ!」とか言って、広告を載せてもらおうとする訳です。

しかし大きな問題点がいくつもあります。
中でも非常に大きいのはロボットだとかクローラと呼ばれているものの影響です。

ウェブサイトにアクセスしているのはユーザだけではありません。特に最近非常に多いのは、上述したロボットです。Google, YahooだけでなくBaidu, Infoseekなどなど、思いのほかに多数のロボットがウェブサイトにアクセスしています。例えば僕が運営に関わっているあるサイトで見ると、真のユーザからのアクセスによるページビューは全体の20%にも満たないものです。残りの80%はロボットです。つまり月に30万PVあるサイトであったとしても、実際には6万PVしかないのかもしれません。

じゃーどうやって、本当のユーザ数を把握するか。どの解析ツールが最も正確かという話になりますが、これがまた非常に難しい問題です。ただ傾向としてはっきりしているのは、WebalizerだとかClickTracksなどのように、サーバに蓄積されたアクセスログを解析するソフトウェアは必ず多めにページビューを報告してしまうこと。そしてGoogle Analyticsのように第三者が解析するタイプのサービスは、必ず少なめにページビューを報告してしまうことです。真の数字はどこかその間にあって、個人的にはGoogle Analyticsの方に近いのではないかと思います。

他にもこれについて書いている人がたくさんいますので、一部を例としてあげます。どっちの解析結果が正しいか、かなり意見が分かれているようですが

さて、問題は何をするべきかです。
WebalizerとGoogle Analyticsのどっちが正しいかを議論したとしても非常に技術的に話になってしまうし、それぞれの立場によって思惑があるでしょうから結論は出ません。

そこで僕の提案は、以下の通り;

  • 広告主はそれぞれの媒体を同じ土俵で比較し、媒体を選択する必要があります。そこで、無料で簡単にセットアップできるGoogle Analyticsに統一して、使用を検討している媒体にそれぞれGoogle Analyticsの解析結果を報告させるべきです。こうすれば各媒体を同じ土俵で単純比較できます。
  • 媒体側は一歩進んで、Google Analyticsの結果を報告するだけでなく、Google Analyticsへのアクセス権をクライアントに提供してあげるべきです。そうすればクライアントは報告をリアルタイムで受け取ることができるし、Google Analyticsで独自に分析を深めることもできます。そして媒体からの報告が嘘偽りのないことを確認できます。

バイオの買物.comでは近いうちに広告主の募集を始めようと思っていますが、こうやって透明性の高い形を用意することが必要だろうと思っています。

いずれにしても、広告主側が気をつけなければいけないこと

それはウェブサイトの人気度の尺度として、「うちは何十万PVですよ!」と言っている人がいても、必ずそれを疑うことです。実際には一桁違うかもしれないので。

最後にWebalizerなどのソフトとGoogle Analyticsのシステムの違いについてまとめてみました。あまり細かい話はしないで、ざっとした感じですが。

  Webalizerなど Google Analytics
インストール サーバにインストールもしくはローカルのパソコンにインストール Googleにシステムがあるので、インストールの必要なし
ウェブページの加工 加工の必要なし Googleと連絡をするためのコードを全対象ページに埋め込む必要あり。ページ数が多く、すべて静的なHTMLで書いている場合は一見面倒だが、プロが使っているようなHTMLエディターを使えば一括でコードを埋め込むことができるはず。
ページビューのカウント対象 全アクセス。ロボットも含む。 ロボットは含まない。人間がブラウザを使ってアクセスしたもののみカウント。ただし、JavaScriptをオフにしているユーザはカウントされない。
ビジターのカウント 独立IPアドレスごとに数える。したがって、企業や大学などでリモートIPを複数のパソコンで共有している場合、複数のユーザでも1人のユーザと数えられる可能性が高い。 Cookieを使ってユーザを追跡。Cookieをオンにしているユーザについては正確にビジターをカウント。Cookieをオフにしているユーザはカウント対象にならない。
PDFなどのダウンロード カウントされる。ただし、1ダウンロードにつき複数回カウントされる可能性がある(たぶんブラウザの動作による)。 カウントされない。
レポートの傾向 ページビューはロボットによって大きく水増しされる。研究者は大きな施設でリモートIPを共有しているので、ビジター数の絶対値は当てにならない。設定でロボットを排除することも可能だが、独自に設定を変更する必要があり、他の解析ツールを使った結果と比較できない。 ページビューもビジター数も少なめに出る。ただしJavaScriptやCookieを使わないと多くのバイオメーカーのウェブサイトにアクセスできないことを考えると、これらをオフにしているユーザはごく少数と予想される。したがってページビュー数もビジター数もおおむね正確な値と予想される。
加々美のお勧め 広告をどこかに載せたいと思っている広告主は、こういうツールで出力されるデータを信用するべきではない。ロボットは品物を買ってくれないので。 広告主はこっちのデータを要求していくべき。なるべくならレポートを自分で確認するためのアクセス権も要求するべき。

メルマガはタイトルが重要

新しい情報を顧客に伝えるためにメールマガジンを利用しているメーカーが多いと思いです。

でもメールマガジンにはいくつか欠点があります;

  • いろいろなメーカーに登録していると、しょっちゅうメールが送られてきて、だんだんとうっとうしくなります。
  • メールの受信箱というのは重要なメールが入ってくるところでもあります。ごちゃごちゃと余計なメールが混ざり込ると、重要なメールを見落としそうで心配になります。
  • メールマガジンに登録する際に個人情報の提供を要求されること多くあり、ついつい登録を避けてしまいます。

実際にメールマガジンを購読している人も、興味なさそうなものは読まずに即座に削除する人も多いのではないでしょうか?あるいは読まずにずっと受信箱に置いておいて、画面の端から次第に消えていくのを待っているのではないでしょうか?

インターネットコムとgooリサーチが行った「メールマガジンに関する調査」があります。それによると、メールマガジンを読んでいると答えているユーザは多いものの、「気になったタイトルのものだけ読んでいる」と答えているユーザが77%を占めていました。

メールマガジンにとって、タイトルが如何に大事かということです。

そこで一歩下がって考えたいと思います。

「メールマガジンってタイトルを強く主張するのに適した媒体なのだろうか?」
タイトルを強く主張するのが大切なら、メールマガジンで配信するのがベストだろうか?

僕は「違う」と思います。

メーカーが主張したいことがだいたい毎月10件あったとして、すべてをしっかりとPRしたいと思ったら、それぞれタイトルが異なるメールマガジンを10回配信しないといけません。そんなにたくさんメールが来たら、ユーザとしては相当にうっとうしいはずです。そうなると、10件あったものをうんと減らして、だいたい週に1回となるように4件に絞るしかないのです。残りの6件は優先順位を下げて、タイトルには表示しないけど、おまけとしてメールにつける感じになります。

これではメールマガジンは目的とした役割を果たせません。インターネットでの情報配信の利点はコストの低さなのに、結局週に1件しか配信できないというボトルネックがあることになります。

僕はこの問題の解消をRSSに期待しています。RSSの詳しい解説はここではしませんが、この技術は大量のタイトルを取り扱うのにうってつけです。しかもメールの受信箱を汚さないし、個人情報も必要ありません。僕はいまRSSリーダーのNetNewsWireを使って、100以上のRSSフィードに登録しています。送られてくるタイトルも毎日100近くになります。でもRSSだとタイトルをさっと眺めることがすごく簡単で、効率がいいのです。

まだまだRSSフィードをしっかり提供しているバイオのウェブサイトは少ないので、その点を改善しないといけませんが、間違いなくメールマガジンの代わりにRSSフィードが使われるようになると確信しています。そして、皆さんがもっともっと便利にインターネットを使えるようになることを。

ちなみに完全に脱線ですが、僕は会社で管理職をやっていたとき、多いときで100以上のメールが飛んできていました。普通でも30-40通は来ていて、しかもその多くは読む必要のないメール(僕がアリバイメールと呼んでいるCc:メール)。普段はなんとか処理できますが、数日間出張すると半日はつぶれます。こういうのは思い切ってRSS化してしまえば、受信トレイがオーバーフローを起こすこともないし、社員全体のストレスレベルが下がると思うのですが。

そういえば前の会社でイントラネットがある程度出来上がって、人事部が人事発表をイントラに出すようになると、よくこんな感じのメールが飛んできました。

*6月の人事異動*
人事異動を人事のイントラに掲載しましたので、ご覧ください。
(リンク)

メールのタイトルをクリックしてイントラのページに移動するのなら、こんなメール開けないんですけどね。でもメールという仕組み上、タイトルはリンクにならないのです。RSSならなります。

新聞広告ってどうなっているの

新聞というのは収入のかなりの部分が広告です。慶応大学の講義スライドによると、収入の実に34.5%が広告費です。その広告がどのようになっているのかを見てみると、インターネット広告の参考になるのではないかと思います。

広告の位置

全面広告を除くと、ほとんどの広告は一番下に位置しています。広告は完全に「従」の位置に置かれ、あくまでも新聞記事が「主」です。例外は1面と裏面に数カ所置かれている小さな広告だけです。

広告の内容

全面広告を除くとほぼテキスト広告と言っていいものです。文字の大きさなどの工夫はありますが、絵柄で目立たせるということはありません。

広告主

全面広告を除くと、単行本、雑誌が多いです。なお、朝日新聞の会社案内に広告主をまとめたグラフがあります。

全面広告は派手

全面広告はとにかく派手です。スペースもふんだんにあり、大部分はカラーです。

インターネット広告への示唆

インターネット広告では一般的なバナーの効果が薄いこと、それに対してテキスト広告の効果が高いことが言われています。新聞でテキスト広告が多いことと似ているような気がします。

雑誌の広告で目立つのは、目次そのものを載せているものです。非常に字数が多くなっています。また書籍の広告でもかなりの文章が書き込まれています。完全に読ませる広告です。特に雑誌の広告は、読む方も結構楽しみにしてしまいます。その雑誌は買わないとしても、最近のゴシップを知るために習慣として読んでいる人も多いのではないでしょうか。

変な話だけど、週刊誌の新聞広告にこそ、インターネット広告の未来が隠されているような気がします。

誰も見ていないインターネット広告

先日、叔父とバイオの買物.comの話をしていたら、いつものあれが飛び出しました。

「ネット広告は全然見ないよね!」と、とても純粋な声で言われてしまいました。

実際、ネット広告はよく見ているという人に僕はおおよそ会ったことがありません。妻に聞いてもそうですし、僕自身もネット広告をクリックした記憶は数えるほどしかありません。GoogleのAdwordsなら割とクリックしますが。

でも僕はインターネットでウェブサイトを立ち上げ、広告収入で食べていこうとしているわけです。ですから、この問題に正面からあたらなければなりません。

みんながネット広告と言うときには、ほとんど間違いなくバナー広告のことを指しています。そこで参考になるのは視線追跡調査の記事です。
バナーは目に入らないのか?
ビデオクリップ(僕のマックでは見られませんでしたが)もあるので、参考にするといいと思います。何をやっているかというと、ユーザにウェブサイトを見てもらいながら、その視線の動きを追跡して分析しています。そこからわかることは;

  • ネット広告部分に視線がいくことはゼロに近かった。ユーザがざっと拾い読みをする場合でも、また全文にしっかりと目を通す場合でも。
  • 検索結果が表示されるページに掲載されるテキスト広告、つまりGoogleのAdwordsのような広告は、そこそこユーザの目に入っている。(参考

MarketingSherpaのレポートでは;

  • スクロールしなくても良い位置にある広告であっても、見るのは60%のユーザのみ。
  • スクロールしなければならない位置の場合は、見るのは25%のみ。

Nielsenの調査では;

  • インターネット広告は新聞やテレビ、雑誌と比べると、顧客からの信頼が薄い。
  • 信頼度の低さはかなり深刻で、調査した媒体のうち、携帯電話へのメールに次いで下から2番目に信頼が薄かった。

また、Starcom, ComscoreとTacodaがスポンサーした調査によると;

  • 広告をよくクリックするユーザは全ユーザの6%であるが、総クリック数の50%を占めている。
  • 広告をよくクリックするユーザは25-44歳、$40,000ドル以下の収入の人が多い。
  • 広告をよくクリックするユーザはその他のユーザに比べて4倍もの時間をインターネットに費やすものの、ネットでの購入金額はこれと対応しない。またオークション、ギャンブル、就職斡旋サイトを好んで訪問する。

バナー広告に効果があるのかないのか。
僕は叔父と意見が同じです。バナー広告は見ませんし、僕らが対象としている顧客もまたバナー広告は見ないと思います。無理に見せようと思えば、何が起こるかというとバイオの買物.comの利用者が離れていくだけでしょう。

でも、メーカーは良い広告媒体が欲しくてたまりません。ブランド力はなくても優れている製品を、広く告知したいとみんな思っています。使い道に困っている広告宣伝費というのはかなりの金額存在しているのです。

ネット広告が思いの他に効果が上がらないという事実を直視して、新しい形態を真剣に模索しないといけません。もちろんアイデアはありませすが。

何ができるかではなく、何をやりたいかを突き詰める

僕は何ができるかという議論の仕方が嫌いです。

そうではなく、何がやりたいか、何をやるべきかに遡って考えることが好きです。

何をやりたいかを突き詰めて、成功している例を挙げます

山中教授のiPS細胞

再生医療の究極的な研究です。この成果を受けて、クローン羊・ドリーの生みの親のイギリスのイアン・ウィルムット博士(Ian Wilmut)が「自分の研究の方向を断念した」とまで言ったと報道されています。
ES細胞の倫理的な問題をどうやってクレアするか、骨髄幹細胞をどうやって増殖させるかといった、解決策が一見近そうな問題に取り組むのではなく、もっとも究極的なものは何かを突き詰めて行った研究だと僕は解釈しています。この技術を持ってすれば、倫理的な問題、ドナーの問題はすべて一気に吹き飛んでしまいます。

iPhone

まだ日本では発売されていないので製品そのものはよく知りませんが、iPhoneおよびiPhone用のソフトを作るデベロッパーキットは、共に「何ができるか」を超えて「何をやりたいか」をとことん突き詰めた結果でしょう。だって、MacOS XがiPhoneに載っているんですよ!しかもLeopardが!それは滑らかな3Dアニメーションがユーザインタフェースのあちらこちらに使われているのを見れば納得です。そしてユーザインタフェースはマルチタッチ。そしてSafariというフルブラウザが大部分使える。

既存の携帯電話やスマートフォンを見て、「これに何を追加できるか」という発想をしたのではなく、「ポケットに携帯するデバイスは何ができると面白いか」のイメージを膨らまして、そしてかなりの技術的困難を乗り越えて実現してしまったものだと思います。

蛋白質のフォールディング

蛋白質がフォールディングするというのは、確率論的にいうとすごくむちゃくちゃなことなんですよね。蛋白質がとりうる立体構造の膨大さを考えると、うまくフォールディングするというのは神業に近いんです。

しかも蛋白質がフォールディングするときは本来の構造とは大きく異なる局所的な低エネルギー状態にはまることがあって、抜け出せなくなるんです。つまり、連続的にだんだんフォールディングしているだけでは、すぐにどこかにはまって、うまく行かなくなってしまう。

そこで活躍するのがシャペロン蛋白質たちなんですけど、フォールディングできずに苦労している蛋白質があきらめてしまわないように、一旦フォールディングを戻して、構造を緩めてあげて、全く新しい構造にチャレンジできるようにしてあげるんですよね。シャペロン蛋白質たちは、決してフォールディングを誘導しているのではありません。そうではなくて、正しい立体構造をあきらめかけている蛋白質たちに勇気を与えて、気持ちを楽にさせてあげて、展望を広げてあげて、そして再チャレンジさせてあげているんです。

人間も同じように、「この先何ができるか」を考えすぎると、本来の姿と異なる局所的な低エネルギー状態にはまってしまいます。

ときどきねじを緩めて、リラックスして、山の向こうにある究極の姿を求めて再出発するのが大切なのです。

パレートの法則 拡大解釈する人が多すぎる

パレートの法則というものがあります。80:20の法則とも呼ばれます。もともとはイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(Vilfredo Federico Damaso Pareto)が発見したもので、所得分布を解析したものです。国や時代の制度と無関係に、社会全体の所得の多くは一部の高額所得者が占めていると主張したものです。

現象としてはまさにその通りのことが多く、上にリンクした記事では、自然現象、品質管理、在庫管理、売上管理、マーケティングにも当てはまると記しています。品質管理であれば、品質問題の優先順位を理解し、どれから解決すればいいかの指標に使われます。在庫管理であれば、在庫するべき製品と、在庫しないで取り寄せにするべき製品の区別に使用します。マーケティングであれば、ターゲットするべき顧客と、悪く言えば無視するべき顧客の区別に使用します。

しかし、パレートの法則を安易に解釈してビジネスに応用してしまうと、非常におかしなことになってしまいます。以下は実際に僕が職場で見たり聞いたりした例です。

  • 20%の施設で売上の80%を稼いでいる。だから営業資源をその20%の施設に集中しよう。
  • 20%の製品で売上の80%を稼いでいる。だから残りの80%の製品は在庫せずに、海外からの取り寄せにしよう。

さて、このようなことをやると何が起こるかをちょっと考えてみます。

売上の80%を稼いでいるという20%の少数の施設というのは、だいたいどの会社でも大のお得意さんです。どこの会社もそこで売上を稼いでいるので、営業資源をたくさん投入しています。そのため過当競争になっています。したがってよほどの投資をしない限り、顧客側から見たときの営業の存在は、その他大勢になってしまいます。つまりせっかく多くの営業投資をしていても、顧客から見れば無視しても良い存在になってしまいます。

見方を変えるとわかりやすいと思います。メーカーにとってみれば、その施設は売上の80%を稼ぎだす重要施設です。でも顧客にとってみれば、そのメーカーというのは「その他大勢」にあたります。顧客にとっての20%の価値しかない、80%のメーカーの一部にすぎないのです。

それに対して、売上の20%しか稼いでいない「その他大勢」の顧客に対して営業資源を投入したとします。そうするとその顧客から見たとき、あなたの会社は80%の価値を生む、上位20%のメーカーの一つになるのです。

在庫についても同じです。よく売れる製品というのはだいたいどのメーカーも同じです。ですからよく売れる20%の製品だけ在庫して、のこり80%の製品を在庫しなければ、結局は顧客の心の中で「その他大勢」に分類されてしまいます。

このようにパレートの法則は「効率化」を生む部分と「その他大勢化」を生む部分があるので、非常に気をつけてビジネスに当てはめなければいけません。

効果が非常にはっきりわかる指標があり、役者が少ないときは、パレートの法則的な考え方は非常に有効です。例えばコンピュータソフトウェアでもパレートの法則が成り立ちます。開発中のソフトウェアについて、いったいどの処理が遅くなっているかを細かく分析するツールも精力的に開発されていて、非常に局所的にスピードアップしている手法が採られています。逆に、十分な分析なしに闇雲に効率化することは、ソフトウェア開発では強く戒められています。

パレートの法則は、闇雲に使うと会社をめちゃめちゃにしてしまいます。でもうまく使うと大きな効果を生みます。残念ながら世の中には中途半端にしか勉強していない人が多いので、間違った使われ方をしている場合が多いのではないでしょうか。

パレートの法則を使ってつもりが、逆に使われてしまった。無駄な80%のユーザを切り捨てたつもりが、逆に自社がユーザから無駄な80%と烙印を押されてしまった。そんなことにならないように、数歩先を読んでから使いましょう。

チラシと郵便物によるマーケティング(時代遅れ?)

何か新しい情報を顧客に伝えたいとき、バイオ研究用製品のマーケティングでは、未だにチラシと郵便物が主流です。

雑誌広告やインターネット広告というやり方もありますし、例えばNatureのメールアドレスなどを利用した電子メールによる告知というやり方も行われていますが、主流という訳ではありません。これらはどちらかというと時と場合によって使われるもので、主流は未だにチラシと郵送物です。

メーカーとして体感する効果が違うのです。チラシとか郵便物の場合は、それを見たと言ってくれる顧客からの問い合わせが入ってきます。今まで認知度が低い製品であれば、売り上げも確実に伸びます。それに対して、雑誌広告を見たという顧客が問い合わせてきた記憶というのはほとんどありません。インターネット広告に至っては皆無です。ですからチラシと郵送物を使うのです。

チラシを配布するときのコストというのは、単独でそれだけを配布するのであれば40-50万円あたりでしょうか。だいたい2万部から3万部を刷りますが、カラーで印刷であれば30万円程度、そして郵送代も馬鹿にならないのでだいたい上述の金額になります。印刷物の場合は印刷会社と校正を重ねないといけないので、だいたい1月のリードタイムが必要になります。結構馬鹿にならない金額ですが、雑誌広告も1月で掲載料が20-30万円とられます。効果を考えるとチラシの方がずいぶんとよく見えます。

ただチラシを誰が配布するかという問題があります。ある程度確立したメーカーであれば、代理店との付き合いがある程度固まっているので、代理店にチラシを配ればだいたい配ってくれます(とメーカーは信じています)。代理店は日本中の研究室に網を張っているので、だいたいの研究者にチラシが配られてくれているかなとメーカーは期待しています。現実はもう少しややこしくて、代理店だって特定のメーカーに肩を入れることがありますので、場合によっては自分が作ったチラシは積極的に配ってくれないかもしれません。

郵便物はダイレクトに顧客に届きます。大きいメーカーはだいたい季刊誌というのがあって、これは代理店から配布するかダイレクトに郵送します。この季刊誌は通常フルカラーで、やはり2万から3万部を刷ります。印刷のお金とこれを郵送するお金をあわせると、一回つくって配布するのに200万円から300万円はかかっていると思います。でも結構学術的なことも書いてあって、顧客が喜ぶ内容なので、メーカー側は効果は大きいと信じています。ブランドイメージの維持にも重要と位置づけられています。ちなみに製品カタログもだいたい3万部を用意していることが多いと思いますが、フルカラーの会社が多いこと、さらに週百ページになることがあるので、これは1回出すのに2000-3000万円かかっています。

もう一つ参考として、分子生物学会などのランチョンセミナー。あれは会場のむちゃくちゃ高い弁当を買わされるということもあって、全体で200万円弱になると思います。自分で会場を借りてセミナーをするとずいぶんとこれよりは安くなります。最近はやってくれるメーカーが少なくなってきているようで、学会企画側が苦労しているとか。

さて本題に戻ります。

チラシと季刊誌にかなり多くのお金が使われていることを紹介しました。でも、そんなにお金をかけた時代遅れのことをしないと顧客である研究者に情報が伝わらないのでしょうか。しかも先ほどもお話ししたように、チラシというのだ代理店経由での配布であり、代理店の思惑が入ってしまいます。もっとストレートなやり方は無いのでしょうか。

他の業界であれば、新聞の折り込み広告、リクルートのようなところが作っている雑誌、価格.com。。。

正直、メーカーでマーケティングを担当していたものとして言えば、いい媒体が無いんですよね。誰か作ってほしいーーー、って思って、いま、自分でそういうのを作ろうとしています。