Androidの次期バージョン 4.3 から示唆されること

GoogleはAndroidの開発スピードを落としていると考えられる

先日のGoogle I/Oで公開されることが期待されていたAndroid 4.3ですが、実際には公開されることがありませんでした。その代わりにGoogle Play MusicだとかGoogle Mapsの強化などについて発表されたようです。

Androidのバージョン履歴を見るとAndroid 4.2のSDK公開が2012年11月ということで、まだ半年ちょっとしか経っていないので特に間隔が空いているわけではないことがわかります。しかしAndroid 4.3はコードネームが4.2, 4.1 (2012年6月)に続いて”Jelly Bean”だと言われており、一年以上を同じコードネームで引っ張ったのはAndroidの歴史では異例と言えます。

しかもAndroid 4.3もまた”Jelly Bean”がコードネームだと言われています。そうなると”Jelly Bean”がもしかすると1年半ほど最新のAndroidであり続ける可能性があります。

継続して同じコードネームを使っていることからも想像されるとおり、Android 4.3の変更点はあまり多くないだろうと予想されています。

Andy Rubin氏の元では半年に一回は新しいコードネームのリリースがあったのに、彼がAndroidプロジェクトから外されたら開発スピードはどうも落としているように感じられます。

Androidの開発スピードを落とすのはGoogleの全体戦略である可能性

その意図はいったいなんでしょうか。少し考えてみます。

  1. Andy Rubin氏の頃のAndroidは、とにかくiPhoneに追いつくための必死の開発でした。それがJelly Beanでとりあえず追いついたとGoogleは考えたのかも知れません。もしそうならば、大幅に刷新されたiOS 7に追いつくためにも再度開発のスピードを上げていくかも知れません。
  2. Andy Rubin氏をAndroidから降ろし、代わりにSundar Pichai氏にAndroidも担当させるようにした背景にはAndroidの方向転換があるのではないかと私は以前に推測しています。その一つに「Androidが一番魅力的なOSである必要はない」が新しい方針の一つではないかと述べました。もしこれが事実ならば、Androidの開発スピードを落としたのは戦略的であり、なおかつiOS 7が登場しても開発スピードを上げない可能性があります。
  3. Android 4.3の先にあるAndroid 5.0にリソースを集中させているのかも知れません。しかしウワサを見る限りではAndroid 5.0もそれほど大きな刷新が予定されていないようです。むしろスマートフォン用のOSとしてではなく、腕時計とかそういうデバイスを狙っている可能性があります。

この中で私は2と3の可能性が高いと感じています。そして2と3が同時に起こっていると考えています。

つまりこうです。

  1. そもそもGoogleは、ウェブ検索とそれに連動している広告事業を収益の柱としていて、それ以外の事業ではインターネット利用者を増やすためのものでした。検索と広告を除いて、収益性を重視するのではなく、むしろ価格で競合を排除する戦略が一貫して取られています。
  2. その中で考えると、Android事業のそもそもの狙いはスマートフォンによるインターネットの利用を増やすことでした。そしてインターネットの中でも、Googleの広告が掲載されているウェブサイトが利用されるようにするのが狙いでした。
  3. スマートフォンによるインターネットの利用、特にGoogleのサイトの利用を拡大するのに必要なのはiPhoneに対抗することではなく、a) iPhoneユーザにGoogleのサービスを利用してもらうこと、b) iPhoneが買えない顧客セグメント向けのスマートフォンを提供すること、です。仮にAndroidがiPhoneに勝利しても、それでインターネットの利用が増えるわけではありません。
  4. Androidの目的を考えると、まだスマートフォンを買っていないユーザ、高くて買えないユーザを狙うのが正しい選択です。したがってローエンドにフォーカスするべきです。
  5. ただし大きな問題は、ローエンドのユーザはウェブ利用率が少ないことです。またコンテンツをあまり買わないということです。したがってローエンドを狙う戦略は収益力の限界があります。
  6. そうなると新しい市場を開拓して、比較的裕福な人を顧客にできるようにしないといけません。比較的裕福な人は既にインターネットにどっぷりつかっていますが、さらにどっぷりつかるようにさせたいというのがGoogleの狙いになります。だから車の中とか、腕時計とか、テレビとかをGoogleは狙います。
  7. しかしこういう新しいコンシューマ市場の開拓は簡単ではなく、特に末端顧客にお金を払ってもらうものに関してはGoogleはことごとく失敗しています(低価格で既存市場に入り込むのはそこそこ成功していますが)。

そもそもAndroidの新バージョンはちょっと虚しい

もう一つ大きな戦略よりもむしろ現実を直視した事実として、Androidの新しいOSを開発するのはかなりむなしいところがあります。せっかく新しいものを作っても、利用する人の割合が少ないからです。未だにAndroid 2.3が一番利用者が多いことからもわかるように、Androidの新しいOSが出てきてもインパクトは少ないのです。

それよりはChromeアプリとかGoogle Mapsとかを改良した方がマシです。少なくともAndroid 4.0以上の人には利用してもらえます。

近未来予想

以下のシナリオを考えます。私の中ではかなり可能性の高いシナリオです。

  1. Googleはスマートフォン用のAndroidをフォーカスから外し、開発スピードを落とします。
  2. それに代わって、自動車、テレビ、腕時計、ゲーム機などでAndroidが使われるように開発のフォーカスを移します。
  3. しかしGoogle TVの大失敗、Nexus Qの大失敗、そしてスマートフォンだってほとんどサムスンの一人勝ちになってしまったことなどを踏まえ、ハードウェアメーカーは以前ほどはGoogleと積極的に組まないでしょう。
  4. 結果として初期のモデルはあまり売れず、GoogleとしてはNexus戦略で腕時計、ゲーム機に参入するでしょう。しかし自動車、テレビはGoogleが持つノウハウでは入り込めず、あまり打つ手がないでしょう。
  5. そうこうしているうちにAppleはこのどれかで成功し、新規市場を開拓します。
  6. GoogleはまたAppleが創造した市場に入り込み、低価格路線で対抗していきます。
  7. もしGoogleがスマートフォン市場のフォーカスを永く欠く状態が続けば、Firefox OSなどが入り込むスキが生まれます。もちろんローエンドで。
  8. ただしGoogleとしてはローエンドスマートフォンの市場に侵入されても、特に強力に対抗するインセンティブは必ずしもありません。収益への影響が少ないからです。

ポイントはGoogleがAndroidの開発をフォーカスから外し、新しい市場に注力していく可能性です。そして今までの実績でいうと、新しい市場の開拓には失敗し続けていることです。

iOS7デザインの評価でデザイナーが顧客から乖離している可能性について

iOS7でiOSのデザインが大幅に変更になり、多くのデザイナーから相当に批判的な意見が出ています。

例えば『iOS 7異説:「素人くさいアイコンをデザインしたのはだれ?」』という記事がZDNet Japanに掲載されるなど、デザイナーたちはかなり言いたい放題な印象です。

でも実際のユーザはiOS 7を絶賛しています。

数万人にインターネット上でアンケートを取ったところ、2対1でiOS7のアイコンに人気があったそうです。

なぜか?

もしかしたらデザイナーの考え方が、実際のユーザの心理から乖離してしまっているのか?

私のようにもともとデザインにあまり興味がなく、アップルを通して初めてデザインの重要性を感じた人間にとって、デザイナーがユーザの心理を理解できていないとしても驚きません。デザイナーの独りよがりとしか思えず、使う側としたら少しも便利じゃないものは世の中にたくさんある感覚はあります。アップルもまたデザイン優先で使い勝手が犠牲になった製品をいくつも作ってきました。

さて本当のところはどうなのか。気にしながらiOS7のトレンドを今後も見ていきたいなと思います。

技術革新がなくてもイノベーションが起こることについて

ソマリアの電子マネーの話がThe Globe and Mailのウェブサイトに紹介されていました。

“How mobile phones are making cash obsolete in Africa”

ソマリアで使われている仕組みは以下の通りです。

  1. 通信会社のTelesomに一定の金額を預けます。この金額の中から電子的な支払いが行われます。
  2. 利用者が製品を購入する際、a) 3桁の電話番号でサービスに接続、b) 4桁の暗証番号を入力、c) 店固有の番号(Zaad number)を入力、d) 支払金額を入力 という操作をします。道端の露店もZaad numberを店頭に表示しているそうです。
  3. すぐに利用者(製品を買う人)と店の人の携帯電話にテキストメッセージが送られ、支払金額が表示されます。これをもって取引終了。

音声通話(番号入力はトーン入力と思われる)とSMSなどのテキストメッセージサービスさえあればできる仕組みです。SMSなどのテキストメッセージは日本だとDoCoMoのショートメール(1997年)以来利用可能ですので、ソマリアの仕組みを実施するための技術基盤は10年以上前から整備されていたと言えます。

これを見て痛感させられるのは、NFCのような新しい技術がなくても電子マネーは十分に実現可能で、むしろローテクから入った方が素早く、末端まで普及する可能性が高いということです。

実はインターネットが普及し始めたころもやはり最初は普通の電話回線でした。1990年代後半のインターネットというのは、ADSLとか光ファイバーではなく、音声の電話線を使ってやるものでした。1998年に発売された初代のiMacを見ても電話回線用のモデムが標準装備(33.6 kbits/s)でしたし、iMacのコマーシャルで使われていたのはそのモデムでした。インターネットが特に米国で各家庭に普及するようになったのは、電話回線を通してでした(アメリカは近距離電話なら固定料金だった)。

そう考えると、新しいサービスを提供するのに新しいインフラに依存するよりも、既存のサービスで何とか動くようにするのが正しいのではないかと感じます。Suica、パスネットのようにサービスがある程度集中管理できるときはそうではなくても、各家庭、各店舗までインフラが必要になる場合は絶対にそうです。

NFCに依存した日本の電子マネーシステムでは各店舗がNFC読み取り機器を用意する必要があります。大きな店舗やフランチャイズでは電子マネーの導入は進んでいますが、そこから先はなかなか進みません。ですからNFCのようなものじゃなくて、もっとシンプルなものが必要なのだろうと思います。そうすればもっと普及するのに、もったいないなぁと思います。

次のAndroid Key Lime Pieがローエンドをターゲットするかもしれない話

4月3日の「Androidの方向転換予想:Andy Rubin氏の降格を受けて」と題したブログで、私はAndroidの今後の方向性が以下のポイントに集約されるだろうと予想しました。

  1. ネイティブアプリからHTML5にシフト
  2. Apple特許の利用を減らす
  3. ローエンドマシンでも動作するようにする

そしてこれはAndy Rubin氏の目指していたAndroid戦略(「Androidを最高のOSにする」)からの方向転換であり、「Googleの利用を可能な限り広める」というGoogle本来の戦略からの当然の帰結だとしました。

特に3については、Firefox OSをはじめとした各種の新しいOSに対抗するための予防的な意味があると述べました。

そして3番目の点について、まだまだ噂の段階ですが、ちょっと話が出てきたので紹介します。

VR-ZoneのPreetam Nath氏は以下のようにレポートしてます。

  1. Android 5.0 Key Lime Pieは10月に公開予定。
  2. Key Lime Pieは512MBのRAMでも動作する。Android 4.0以降は1G RAMを必要としていましたので、Key Lime PieはAndroid 2.3しか動作させることができなかったローエンドのデバイスでも動作することになります。(ちなみにiOSもMicrosoft Windows Phoneも512MB RAMで十分に動作します。

安価を売りにしたAndroidタブレットは年末商戦にだけ強い(2013年3月の米国タブレット使用統計)

Chitikaより2013年3月の米国タブレット使用統計が公開されました。

Chitikaが2013年2月に統計を公開したときにも言及しましたが、予想通りGoogle NexusやAmazon Kindle Fireの使用が落ちています。唯一堅調なのはSamsungのGalaxy Tabletシリーズです。

2月のデータの時に紹介した私の仮説を支持するデータです。

iPadは顧客満足度が高いため、口コミなどでどんどん使用する人が増えます。それに対して今回のデータを見る限り、Androidタブレットではこの自己増殖的なサイクルが回っていないようです。年末商戦など、強いプッシュがあるときだけ売れているようです。特にSamsung製品だけが好調なことから見られるように、強いマーケティングやセールスインセンティブがによるプッシュが無いと、Androidタブレットは売れなさそうです。

現時点ではまだタブレットを初めて買う顧客が多いのですが、数年後にはリピート顧客、買い換え顧客が増えます。現状が続く限り、その時のAndroidタブレットの市場は真っ暗になります。

March_Tablet_Update_Graph

Google Glassの用途って、イヤホンで十分?

Clayton Christensen氏は”Jobs to be done”の視点でイノベーションを考えることを近年力説しています。

Steve Jobsは、新しいカテゴリーを作るためには、いくつかの重要な用途で既存製品よりも優れている必要があると語っています。

Google Glassが成功するか否かを判断する上でもこの視点が重要でしょう。つまり利用者はGoogle Glassによっていったい何が便利になるのか、利用者は何のためにGoogle Glassをかけるのかという視点が大切です。

Drew Olanoff氏はTechCrunchの記事の中でこの点に触れています。

Glass isn’t a replacement for your cell phone, since you have to pair the device with the one you have for cellular or Wi-Fi coverage. It’s not a device for watching movies or YouTube videos and it’s not going to replace your computer. You won’t be able to read full search results on the tiny screen, but you’ll be able to get to really relevant information quickly.

For example, how many times a day do you pick up your phone to check the time or to see if you have any missed calls or text messages? I couldn’t count the times that I’ve wasted that arm motion. Furthermore, every single time you take your phone out, you’re telling the people that are around you that you have no interest in interacting with them for at least 30 seconds while you dive into your phone. Now, am I saying that having a screen above your eye is any less socially awkward? No. But it lets you access the same information quicker without having to stop what you’re doing.

It all goes back to the developers, though. They have the minds to push Glass forward as not just a geeky novelty, but as a platform to enhance our lives. I’m not going to sugarcoat it — this product has a lot of bumpy roads ahead of it. We have to assume that there are developers who can come up with big ideas, that consumers are ready for it and whether it can be at a price point that middle-America can afford.

Olanoff氏が言うには、たいしたアプリが無い現時点では、スマートフォンをいちいち取り出すよりはGoogle Glassを覗く方が楽で、逆にこれぐらいしか用途がないそうです。つまり「通知」の役割です。もちろんいろいろなデベロッパーが革新的なアプリを開発してくれればそれは変わるでしょうと。

これといった新しい用途が見つからず、依然として「通知」しか用途が無ければ、何もGoogle Glassである必要はありません。Bluetoothのイヤホンとスマートフォンの「通知」を連携させる仕組みが必要なだけです。

果たしてGoogle GlassのKiller Appは現れるのか?昔のApple IIにとってのVisiCalc、MacintoshにとってのDTPのようなものは出てくるのか?

VisicalcがApple IIで成功したのは、廉価なフロッピードライブがあったのはApple IIだけだったからです。DTPがMacintoshで誕生したのは、完全なビットマップディスプレイがあり、フォントが自由に使えたりしたのがMacintoshだけだったからです。すばらしいアイデアを持った優秀なソフトウェアデザイナーはいつの時代もいますので、Killer Appが誕生するためには、そのデバイスが何か革新的な何かを持っていなければなりません。

Google Glassだからこそできる何かとは何か。イヤホン以上のことをやるのであれば、当然それはディスプレイに関係しなければなりません。しかし今の世の中はディスプレイでありふれています。Killer Appの余地はかなり狭いように感じます。

Chromebook的戦略がうまくいく条件を考える

Chrome OS, Chromebook, Firefox OSはいずれもブラウザを中心としたOSで、アプリは原則としてブラウザの中で動きます。

今のところChrome OS戦略は全然うまく行ってなさそうですが(1, 2)、どうすればうまくいきそうかを少し考えます。

いくつかの重要な用途で、既存の製品の上を行かなければならない

「新しいカテゴリーの製品が成功するためには、いくつかの重要な用途で既存の製品に勝る必要があります。」これはスティーブ・ジョブズ氏がiPadの発表のキーノートで語った言葉です。

Chrome OSのようにブラウザを中心に据えたOSならば、まずは当然ウェブブラウズが既存の製品よりも優れていないと話になりません。

でもそのような話はあまり聞きません。

既存製品ではカバーされていないローエンドを狙う

「既存の製品の上を行かなければならない」というのは、既存製品を既に持っている顧客に売り込むのに必要な戦略です。もう一つのやり方は、既存製品をまだ所有していない潜在顧客を狙うやり方です。この場合はローエンドを狙うことになります。

ローエンドの狙い方は2つあります。なぜならば、既存製品を所有していない理由が2つあるからです。

1つは価格が高すぎるから所有していないケース。もう1つは使いこなせないから所有していないケースです。

したがってローエンドを狙うには以下の方法があります。

  1. 明確に安い価格を設定する。
  2. 徹底的に使いやすくする。

ブラウザを使ったUIは残念ながら使いやすくなることがほとんどありません。ブラウザの中で動かすというのはUI的には大きな制約になります。ほぼ必ず、UIはネイティブアプリに劣ります。したがって2番目の「徹底的に使いやすくする」というのはうまくできません。

したがって残るやり方は1番目の「明確に安い価格を設定する」です。

「明確に安い価格を設定する」にはどうするか

既存製品よりも明確に安い値段を設定するためには、機能を省くしかありません。機能を省きつつ、顧客が大切だと感じるものは残すことが必要です。しかも単純に引き算するというのであれば、既存の製品のラインアップの中で行われているはずです。したがって何か革新的なぐらいの機能の省き方が必要です。

Chrome OS的なブラウザ中心のアプローチがこのような革新的な機能省略を可能にしてくれるかどうかがポイントです。

Chromebookの場合、このような省略の試みは特に見られません。ブラウザ中心ならハードディスクがいらないのではないかと想像できますが、ChromebookはすべてハードディスクやSSDを搭載しています。Chromebookが何か大きな機能省略、コスト省略を可能にしない限り、勝ち目がありません。

Firefox OSは、ブラウザ中心にOSの階層構造を考え直すことによって、より低スペックのデバイスでも十分な性能が出るとしています。これが実現すれば、明確に安い価格設定が可能になるかも知れません。ただし現状では実現可能性が未知数です。

まとめ

ブラウザ中心にすることで、何が省略可能になるか。どのような革新的なコスト削減が可能になるか。

これがはっきりしていればブラウザ中心のOSの勝ち目があり、これが曖昧なら絶対に勝てない。そんな状況だろうと思います。

日立のV字回復に見る、アジア新興工業国に負けない日本の製造業の姿

2009年に国内の製造業で過去最大の赤字を計上した日立がV字回復しています。

ポイントはいろいろありますが、私が注目しているのは以下の点です。

  1. 社会インフラ関連に近いグループ会社は本体に近づけ、そうでない会社は遠ざける
  2. 携帯電話、液晶、ハードディスク、テレビ事業などを売却あるいはそこから撤退
  3. 「米GE、独シーメンスと互角に戦えるインフラ企業になる」

なぜそこに注目するか。簡単に紹介します(いつかもっと詳しく書きたいと思っていますが)。

  1. 日本の電機メーカーが苦しんでいるのは、アジア新興国が十分な品質の安い製品を製造できるようになったため。
  2. 日本のメーカーが得意なのは「過剰品質」とも言われるほどの高い技術力。ただしそれを必要としないぐらいに電子技術が発達した。
  3. メーカーが一番の強みとする技術は、その会社が成長した頃に使われていた技術。日本の電気メーカーはアナログ的なもの。今のアジア新興メーカーはデジタルなもの。したがって日本の電機メーカーは総じてアナログ的なものに強みがある。
  4. 一般消費者は「過剰品質」の使い道がない。しかしB to Bの場合、非常に品質の高い設備を用意することによって、具体的な競争力であるとか収益を上げていくことができる。「過剰品質」は消費者向けには無用だが、ビジネスやインフラ向けには価値がある。

私は日本の既存の電機メーカーがデジタルで新興アジアメーカーと戦うのは基本的に負け戦になると考えています。特に消費者向け製品では価格競争に巻き込まれるだけです。

日本の古い電機メーカーがやらなければならないのは、「過剰品質」が重視されるビジネス・医療・インフラなどの市場で、アナログ的な電子技術が依然とした活躍している分野の製品を提供し、そこにフォーカスすることです。

これが私の考えです。

こう考えると、家電のエコポイントというのは全くばかげた政策で、日本の電機メーカーに誤った経営判断をさせる政策に思えます。大切なことは、日本の古い家電メーカーにデジタル家電をあきらめさせることです。

Gmailの9年を振り返って、Google型のイノベーションの特徴を考える

Gmail Infographic GMailが9周年を迎えたということで、その軌跡を振り返ったポストがありました。

Gmail: 9 years and counting

以前に私はこのブログで「AppleとGoogle, Amazonのイノベーションのおさらい」と題した記事を書きました。その中で最初のGoogle検索を除けば、以後のGoogleのイノベーションは『「十分」なものを無償化するというイノベーション』ばかりであると述べています。

つまりアイデアは古いものを使い、新しさは無料だということ。ほとんどそれだけ。

ここでは本当にそうなのかどうかをInfographicを眺めて検証します。ざっと見たところ、GMailの進化は以下のポイントに要約されます;

  1. 「無料のものとしては…」という改善。
  2. カレンダー、チャット、ビデオチャットなど、他のサービスのバンドリング。
  3. 「Webベースとしては…」という改善。デスクトップアプリケーションでは当たり前の機能をWebで実現する改善です。

技術的には難しいものはもちろんありますし、ビジネスモデル的には新しい面があります。しかしアイデア的にはこれといったものがありません。

「有償なもの」「他の既存のサービス」「デスクトップアプリで実現されている機能」との単純な比較からインスピレーションが得られるものばかりです。

以前におさらいしたとおり、GMailもまた『「十分」なものを無償化するというイノベーション』でした。こういうイノベーションは世の中にとってはあまりありがたくないんですよね。Clayton Christensen氏の言葉で言うと、これらは効率化イノベーション (Efficiency innovations)。経済を縮小させるイノベーションです。

iPadに関する自分の予想を振り返る

iPad生誕3周年ということで、3年前に自分がどのような予想を立てたかを振り返ってみようと思います。

そもそもこのブログは自分の考え方がどれだけ確かなのか、自分はどれだけ世の中の流れを正確につかめているかをはっきりさせるために書き始めています。もし自分が世の中を正確に把握できているのであれば、それなりに高い確率で予言が的中するはずです。逆に予言が的中しないということは、世の中を理解できていないということです。そういう意味でもiPadの発売当初に自分が立てた予想を見返すのは重要です。

私が書いたのは以下のポストです;

  1. iPadを見て思った、垂直統合によるイノベーションのすごさとアップルの宿命
  2. iPadのこわさは、他のどの会社も真似できないものを作ったこと

その中で以下のような予想をしています。

普通に考えたら、iPadと対等な製品を開発するのに5年はかかるのではないでしょうか。そのときはもちろんiPadも進化しているはずです。

iPadのすごいのは、アイデアがすごいのではなく、アップル社以外に作れないのがすごいのです。

iPadがどれだけ売れるかはまだ分かりません。でもかなり売れる可能性もあります。売れるとしたら、その市場セグメントはしばらくアップルが何年間も独占します。iPhoneがスマートフォンを席巻しているよりもさらに激しく、そのセグメントを独占してしまうでしょう。そういう大きな構造変化を起こしてしまう危険性を、iPadは持っていると思います。

そしてその根拠としてアップル社の垂直統合のすごさをあげています。

アップル社の垂直統合というのは、CPUからハードの組み立てからOSからアプリケーションソフトからオンラインショップまでのすべてをアップル社が持っているということです。そしてiPadにおいてはこのすべてのアップル社製になっています。アプリケーションソフトは確かに3rdパーティーが作ったものが非常に多いのですが、その流通チャンネルをアップル社が完全に握っているという意味ではやはり垂直統合モデルの一部と考えても良いと思います。

3年前の言葉ですが、2013年の今の状況を正確に予測できたことがわかります。特に「iPadと対等な製品」というのを「iPadと同等の人気がある製品」と定義すれば、3年たった今も対等な製品は全く現れていないと言えます。

また多少なりともiPadの人気に食い込んでいるのがAmazon Kindle Fireですが、これが成功しているのはハードウェアとコンテンツ販売を統合しているからであって、これもまた垂直統合の一つです。つまり水平分業しているところはどこもiPad人気に食い込めず、唯一垂直統合を試みたところが一つ成功しているだけです。垂直統合に着眼したことの正しさの裏付けにも思えます。

それならこの先はどうなると予想されるのか

とりあえず3年前の予想が今のところ当たっていそうなので、私の着眼点が正しかった可能性が高いと言えます。ならば同じ着眼点でさらに先を予想してみることができます。

私は3年前に述べたことをもう少し引用します。

特に問題なのはワードプロセサーと表計算ソフト、プレゼンテーションソフトのいわゆるオフィス系ソフトです。いまのところWindowsの世界で使われているオフィス系ソフトはほとんどマイクロソフトオフィスだけです。Google Appsという選択肢はありますが、まだまだ一般化している状態ではありません。そしてフリーのOpen Officeなどもありますが、無料だという以外には魅力のない製品です。ですからiPadに十分に対抗できるような製品(iWorkが使えるという意味で)を作るには、やはりマイクロソフトオフィスを載せることが、少なくともここ数年のスパンで見たときには必要になります。

アップル社の垂直統合の中でも特に真似るのが難しいのは、OSとアプリケーションソフトの両方を作るノウハウだと述べました。3年前のブログではアプリケーションソフトとしてオフィスソフトウェアのことだけを述べましたが、これはiPhotoやiMovieなどのマルチメディア系のソフトについても当てはまります。

私の3年前の予想では、アプリケーションソフトを含めた垂直統合ができない限り、iPadに対抗できる製品は作れないとしています。そしてこれを実現できる可能性がある会社はMicrosoft社とGoogle社であるとしました。そこでMicrosoftとGoogleの現状を見てみます。

GoogleはAndroid OSをかなり改善してきました。もちろんiOSという明確なターゲットがあって、基本的にはそれを真似れば良いし、それを法律ギリギリのところでやってきましたので改善は難しいことではありませんでした。その一方でアプリケーションソフト、つまりAndroid用のGoogle Docs(Google Drive)というのはあまりパッとしません。未だにプレゼンテーションソフトが無いなど、今時のオフィス業務をカバーできる状況ではありません。

MicrosoftはWindows 8の販売が不調と報じられ、また新タブレットのSurfaceもあまり売れないと言われているなど、まだ戦う体勢が整っていません。Androidと異なり、Microsoftは単にiOSを真似るのではなく、新しいアプローチを試みました。そのためにタブレット用の新OSの開発だけで時間がかかり、ようやくスタートラインにたった状況です。

このように3年たった今でも、GoogleおよびMicrosoftは未だにアプリ−ケーションソフトを含めた垂直統合でiPadに対抗できる状況にありません。したがって3年前の予想の通り、まだまだiPadの独占は続くでしょう。

予想とずれた点

私は当初はiWorksなどのオフィスアプリケーションを中心に考えていましたが、実際のiPadの使用状況を考えるとその視点は狭かったようです。iPadで実際によく使われているのはオフィスアプリケーションばかりではアンク、むしろブラウザやメール、写真、Facebook、Twitterなどです。それでも結果として予想が当たったのはなぜでしょうか。

考えてみれば当たり前ですが、スマートフォンやタブレット、そしてPCを使っているとき、私たちが実際に接するのはOSそのものではなくアプリです。アプリの善し悪しがそのデバイスのエクスペリエンスの善し悪しを決めます。オフィスアプリケーションだけでなく、すべてのアプリがそうです。

OSの主な役割は、アプリ開発の土台を提供することです。MacWrite, MacPaint以来、25年間のアプリ開発の経験を持つアップルはその土台がどうあるべきかをよく知っています。自らがOSの開発と、その上で動作するアプリの開発の両方を行っているので、アプリ開発の優れた土台が作れます。そしてサードパーティーのアプリ開発を的確に支援できます。

新しいモバイルOSはいくつも誕生しています。PalmのWebOS、FirefoxのFirefox OS、SamsungらのTizen OSなどがそうです。しかしOSの役割を考えれば考えるほど、優れたOSが作るためには豊かなアプリ開発経験が不可欠に思えます。新しいOSを作っているところが一番欠けているのは、このアプリ開発経験かも知れません。

予想の修正

2010年時点で、私は「iPadと対等な製品を開発するのに5年はかかるのではないでしょうか」と述べました。これを修正します。2013年の現時点からさらに5年かかりそうだというのが新しい予想です。本当はもっともっと時間がかかりそうな気がしていますが、ITの世界で5年以上先を予想するのはさすがに難しいので、5年に留めます。

修正の理由は以下の通り;

  1. タブレット市場はアプリの優劣が重要。その点、GoogleもMicrosoftもまだまだ戦える状況にありません。
  2. 「メディアを消費するためのタブレット」という誤った方向にシフトしつつあるAndroidが、生産性アプリなどに再び目を向けるには時間がかかります。
  3. Androidのフラグメンテーション問題は複雑なアプリの開発に相当マイナスに働きそうです。
  4. Androidタブレットの価格破壊はイノベーションを阻害します。
  5. iPadの真の対抗馬はAndroidではなくWindows 8だと私は思っていますが、出足が思った以上に遅いです。
  6. Androidそのものの方向性が変化し、「iPadと対等な製品」の開発を支援できなくなるかも知れません。