Nexus 7が今までどれぐらい売れたのかを再確認する

7月24日のGoogle Press Eventで、新型のNexus 7が発表され、その中で以前のモデルがどれだけ売れたかについて紹介されていました。

それを少し検証してみようと思います。まずはGoogle Press EventでのSundar Pichaiの言葉から。

  1. Global Annual Salesで2012年において、おおよそ110 millionのTabletが売れたというデータを紹介しています。
  2. Total Android Tablet Activationsが70 Millionとなったそうです(最新データ)。グラフを読むと、2012年末時点では50 million程度のActivationがあり、2011年末時点では13 million程度のActivationがあったことになります。すなわち2012年の間に行われたActivation数は37 million程度です。Google Nexus 7は2012年の7月に発売されていて、その時点ではので25 million程度。したがってGoogle Nexus 7が発売されてから現在までのActivation数は45 million程度です。
  3. Google Nexus 7は発売以来、Androidタブレットの10%強の販売シェア。
  4. 日本でNexus 7が一番売れた時期があったことが紹介していますが、これはおそらくBCNランキングのデータで、BCNのデータはApple StoreもAmazonも大手電気店も含まないことを知っている日本人はそんなデータは信用できないことがわかっています。

GoogleはNexusの販売台数を一切公開しません。しかしNexusを製造しているAsusはTabletの販売台数を公開しています。そのデータをBenedict Evans氏が分析しています。そして得た結論は、2012年のNexus 7の販売台数は4.5mから4.6mの間で、4.8m以下としています。

同様にBenedict Evans氏はGoogleのスクリーンサイズシェアデータを分析して、Nexus 7のスクリーンサイズが全Androidの1%であることに着眼しています。そのことから[2013年の4月時点で、Nexus 7の使用台数は6.8m](http://ben-evans.com/benedictevans/2013/4/17/nexus-tablet-sales-not-many)であるとしています。

さて最初のSundar Pichai氏がNexus 7の販売台数に言及しているのは「Androidタブレットの10%強のシェア」というところです。Android Tablet全体の販売台数に関する言及は2012年7月以来の45 millionのactivationだけですので、単純に45 millionの10%を取ると2012年7月以来の販売台数は4.5 millionとなります。これはBenedict Evans氏の推測(2012年内で4.8m, 2013年4月で6.8m)を大幅に下回っています。

もしかすると「10%強のシェア」のとき、Sundar Pichai氏は「Androidタブレット」の範疇の中にAmazonのKindle Fireや中国で売られている安いTablet (Google Playに接続できない)を含めていたのかも知れません。そうしないと「10%強のシェア」というのはとても自慢できるような数字ではありません。

そこで北アメリカ限定のデータですが、Chitikaがタブレットのウェブ使用シェアのデータを公開していますので、これを確認します。ここではiPadが全体の84.3%となっていますので、仮にiPad以外のタブレットがすべてAndroidだとして15.7%がAndroidタブレット(Amazon Kindle Fireを含む)のウェブ使用シェアになります。それに対して、Google Nexusは1.2%の使用シェアですので、Google Nexus/Androidタブレット(+ Kindle Fire) = 1.2/15.7 = 7.6%となります。一方Amazonを外すと 1.2/(15.7 – 5.7) = 10.2%となります。この数字が世界の他の地域を代表することはないでしょうが、Sundar Pichai氏の言葉とぴったり合うのは興味深いです。

またIDCの推測によると、3Q12-1Q13でiPad, Amazon以外のタブレット(大部分はAndroid)は62.8 million売れたことになっています。Google Nexus 7がその10%となると6.3 millionになりますのでBenedict Evans氏の数字と合ってきます。

なおAppleは3Q12-1Q13に54 millionのiPadを売っています。Appleのデータは実際に四半期ごとに公開しているデータですので、推測する必要がありません。

まとめ

Nexus 7が2012年7月の発売以来に売れた台数はおそらく6-7millionの間と推測されますが、先日のGoogle Sundar Pichai氏が紹介したactivation数を見る限り、もっと少ない可能性もあります。

おそらくNexusシリーズの中で一番成功したのはNexus 7です。スマートフォンのGalaxy NexusもNexus 4も大して話題になりませんでした、ましてやNexus 10は…。それがこの程度というのはあんまり良い状態ではありません。

Sundar Pichai氏が「Androidタブレットの中で10%今日のシェアを獲得した」をどうして誇らしげに紹介したのか。本来なら隠したくなるような数字ではないか。そのあたりが気になります。

GoogleはやはりAndroidに注力しなくなっているかも知れない

一月弱前に、「Androidの次期バージョン 4.3 から示唆されること」という書き込みで、GoogleがAndroidの開発スピードを落としている可能性に言及しました。

そしてこれが戦略的に意図して行っているものと考えました。その戦略は

  1. Androidが一番魅力的なOSである必要はない
  2. Androidの役割は「まだスマートフォンを買っていないユーザ、高くて買えないユーザを狙う」こと

ただしこれを実行したとしても、Googleが期待する広告収入の増大は簡単ではないと解説しました。

今日、7月24日のGoogleのPress Eventを聞いた後に書かれ、“Understanding Google”と題されたBen Thompson氏の記事を読みました。その中で以下のように彼はこのように述べています。

  1. Google isn’t that interested in phones anymore.
  2. Google is worried about the iPad dominating tablets.
  3. Chromecast is an obvious product.

スマートフォンについては私とほとんど同じ視点です。Androidに残されているのはローエンド機への対応だけです。

タブレットについては確かにGoogleは努力を継続しています。うまくいかないからです。

そしてChromecastのような製品はGoogleが無視できない市場です。Androidスマートフォンの成長ポテンシャルは主に途上国市場ですが、そこからは大きな収益が見込めないからです。Googleは途上国だけでなく先進国でも成長したいのですが、そのためにはスマートフォン以外のデバイスもカバーしないといけません。Chromecastはそういう製品です。

こうやってGoogleのAndroid、Chromeの戦略がはっきりしてきています。Andy Rubin氏がAndroidを担当していたときは戦略の一貫性が感じられませんでしたが、Sundar Pichai氏に代わってからは一貫性があります。

Google自身はこの戦略で問題はないと思うのですが、課題はSamsung、HTC、ソニーなどでしょう。iOSがiOS 7の登場で加速しつつあるいま、GoogleなしでSamsungらはハイエンドでAppleに追いつけるのか。かなり厳しい感じです。

Samsung携帯によるWeb使用がiPhoneを抜いた話

Samsung携帯によるWeb使用がiPhoneを抜いたという話が話題になっています。

情報元はStatCounterが出したレポート(StatCounter Internet Wars Report)です。

Top 10 Mobile Vendors from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

ただしこれだけだとよくわからないことがあります。というのはSamsungはハイエンドからローエンドのモデルを持っていて、それに対してiPhoneはハイエンドモデルだけです。果たしてSamsungはハイエンドでiPhoneとガチンコ勝負をして好成績を収めているのか、それともiPhoneが戦っていないローエンドでユーザを増やしているのか。その区別が重要です。

これについてはStatCounterも言及していて、米国や英国などではAppleの圧倒的な優位が続いています。

Top 10 Mobile Vendors in North America from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

それならば、Samsungはいったいどの地域で伸ばしたのでしょうか?

ヨーロッパ

ヨーロッパを見るとAppleの優位は続いていますが、Samsungはシェアを拡大しています。そしてどこからシェアを奪っているかというとRIMです。RIMだけがシェアを大きく落としていることがはっきりしています。

Top 10 Mobile Vendors in Europe from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

アジア

アジアを見ると、今度はNokiaが大幅にシェアを落としていることがわかります。その分をSamsungと”unknown” (おそらく中国などのメーカー)が補っている形です。

Top 10 Mobile Vendors in Asia from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

南米

南米を見ると、アジアと同様にNokiaが大幅にシェアを落としています。その分をSamsungが取っているという形になっています。

Top 10 Mobile Vendors in South America from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

アフリカ

アフリカもNokiaが大幅にシェアを落とし、その分をSamsungが補っていることがわかります。

Top 10 Mobile Vendors in Africa from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

まとめ

  1. SamsungはAppleとのガチンコ対決で勝利しているのではありません。先進国市場においてはAppleの方がまだまだ強くて、Samsungは追いつけていません。
  2. SamsungはAppleがほとんどプレゼンスを持たない途上国市場で、以前までのリーダーであったNokiaやRIMからシェアを奪って成長しています。
  3. 上記から、Samsungがシェア拡大をできたのは主として途上国で売られているローエンド機の貢献度が大きく、「古いNokiaよりは良いから買った」というのが主な購買動機だろうと想像されます。

注記

StatCounterのアクセスログ解析を提供する会社で、300万以上のウェブサイトにインストールされているそうです。そのデータを元に分析をしています。データはraw dataに近いものだといわれています。カウントされるのはページビューです。

同じようなサイトとしてNetMarketShareがあります。こっちも同じようなデータで分析を行っています。StatCounterとの大きな違いは a) ビジター数をカウントしていること、b) 国ごとに重み付けをしているということです。国ごとの重み付けの必要性は、NetMarketShareのデータ点が世界に均等に散らばっているわけではないことに由来します。例えばイギリスのウェブサイトからのデータが多ければ、当然イギリス人からのアクセスが多くなります。そのバイアスを無くそうとしています。

もう一つ大きな違いは、NetMarketShareが公開しているデータでは”Mobile”はタブレットとスマートフォンの和です。それに対してStatCounterはタブレットは”Desktop”に数えています。

どっちが正確な数字かは一言では言えませんが、結果はかなり違います。今回のStatCounterのデータに対応するNetMarketShareのデータが無いため、StatCounterのデータの信憑性については不明です。

スマートフォン市場が飽和するとどうなるか

昨日、「スマートフォン市場が飽和する予感」という書き込みをしました。

MMD研究所から出た調査結果で『フィーチャーフォンユーザーの63.0%がスマートフォンに必要性を感じていない』となっていたためです。

なお2013年5月時点のフィーチャーフォンユーザは56.7%と推定されています。したがって単純に63.0% x 56.7% = 35.7%と計算すると、携帯電話ユーザの35.7%がスマートフォンの必要性を感じていないということになります。

そうなると 100% – 35.7% = 64.3%ですので、70%あたりでスマートフォンユーザ比率が頭打ちになることが予想されます。

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もちろん単純にそうはならない理由はいくらでもあります。

  1. そもそもフィーチャーフォンが売られなくなる可能性。
  2. スマートフォンの電池の持ちが良くなり、障害とならなくなる可能性。
  3. データ通信をあまり使わない人のための、安いデータプランが登場してくる可能性。

ここでは最終的にスマートフォン比率がどうなるかの議論ではなく、市場が飽和していくことでどのような変化が起こるのか、マーケットシェアがどのように変化していくのかを考えてみたいと思います。

コモディティー化するか

市場が飽和するときに起こる変化として、よく言われるのがコモディティー化です。そしてこれが最終的に価格競争につながっていくという考えがあります。したがって市場が飽和していくと、安い方の製品が売れるようになるというものです。

しかし私が感じるのは、コモディティー化というのは市場の成熟度によって起こるものではなく、早期から既に起こっているということです。

例えば激しい価格競争に見舞われた液晶テレビについては、当初から各社間の差別化は少なく、どこのものを買っても差はありませんでした。これは市場の飽和度によって増減したのではなく、早期からそうでした。

加えて液晶パネルの製造は巨額の設備投資が必要で、一端工場を作ってしまうとなかなか生産量を減らすことができないため、決死の思いで販売数を伸ばそうとするという性質もあります。

一方で一眼レフカメラの世界は市場が飽和していっても、なかなか価格競争に見舞われません。オートフォーカスの時代も、デジタル一眼の時代でも、技術の発展により一定の低価格化は起こりますが、これは製造原価に見合ったものであり、赤字を垂れ流す状態にはなりません。

市場が飽和しても激しい価格競争に陥らない理由は、各社間の差別化がはっきりしていて、どこのものを買っても良いという状態になっていないからです。

例えばパーソナルコンピュータの世界では、1990年代前半まではNECが大きな差別化ができており、海外の安いパーソナルコンピュータが入ってきても日本市場では成功できませんでした。差別化というのは日本語処理能力の高さでした。日本のNEC以外のメーカーも、大きなシェアを取ることができませんでした。

状況が変わったのはDOS/VやWindowsなどの登場で、ハードウェアとソフトウェアの進歩により、海外の安いパーソナルコンピュータでも十分に日本語が扱えるようになりました。そうなるとNECの差別化ポイントは消え失せてしまい、一気に価格競争の波にのまれてしまいました。

こう考えるとスマートフォン市場が飽和したからといってすぐにコモディティー化が起こり、すぐに価格競争が起こるということはありません。あくまでも差別化の有無が重要です。

スマートフォンの場合、Android陣営ではGalaxyが大きな差別化を実現できており(Androidというどこでも使えるOSを使っているにもかかわらず)、またAppleのiOSは完全に独立した世界を気づき上げ、大きな差別化を実現しています。

その一方で、キャリアが製品価格を大きく補填して販売しているため、製品そのものの価格戦略が不可能になっています。

したがって現在のスマートフォンの市場は価格競争を仕掛けることが困難か不可能に近い状態です。

Late Majorityの消費性向

市場が飽和してくると購買者層が変化していきます。Early AdopterやEarly MajorityからLate Majority、Laggardsへのシフトです。飽和が見えてきた現時点ではLate Majorityの消費性向が重要になります。

問題は差別化がはっきりしているスマートフォン市場において、Late Majorityがどのような動きをするかです。特に価格競争が起きていない状況です。

顧客満足度が高く、使いやすいと定評のある製品にLate Majorityが流れるのは必然ではないでしょうか。Early Majorityなら冒険心のある顧客が多かったと思いますが、Late Majorityではそういう人はもういません。

スマートフォン市場が飽和する予感

『フィーチャーフォンユーザーの約6割がスマートフォンに必要性を感じていない』という調査結果がMMD研究所から出たそうです。

  • 約8割のフィーチャーフォンユーザーがスマートフォン購入を決めていない
  • フィーチャーフォンユーザーの約6割がスマートフォンに必要性を感じていない
  • フィーチャーフォンユーザーがよく利用する機能は「通話、メール機能」、インターネット利用は約2割
  • フィーチャーフォンユーザーの半数以上が3年前以上に購入した端末を使い続けている

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この人たちに何を提供すれば良いか

ではこの人たちは何を買ってくれるのかと前向きに、建設的に考えてみます。

  1. 月額料金が低い製品。
  2. 電池が長持ちする製品。
  3. 通話ができる製品。
  4. メールが使える製品。
  5. カメラが使える製品。

もちろん現時点ではこの条件を満たすのがフィーチャーフォンしかなくて、それでフィーチャーフォンを使い続ける訳なのだが、同じ条件を満たしたスマートフォンがあれば良いのではないかということも言えるので、そのあたりを考えるべきだと思います。

月額料金

月額料金を安くするためには、本体価格を抑えることとデータ通信料を少なくすることが重要でしょう。本体価格についてはスマートフォンの方がむしろフィーチャーフォンより安い(例えばGalaxy S2が$250に対して、フィーチャーフォンは4万円)といわれていますので、問題はデータ通信料に絞れます。

この人たちが必要としているデータ通信は「メール機能」ですので、「メール以外はバックグラウンドで通信しない。それもキャリアメールだけ。」というスマートフォンを作れば良いのではないかと思います。そしてこの料金はフィーチャーフォント同じでメール件数に応じるようにすれば分かりやすいと思います。

電池

電池を長持ちさせるには、CPUの性能を落とし、画面を小さくし、バックグラウンドでの動作をやめさせればかなり持つようのになるはずです。

WiFi

メール以外のデータ通信は通常は完全にオフにして、WiFiと接続しているときだけインターネットができるようにすれば十分です。アプリのダウンロードなどのスマートフォンとしての魅力は、これだけでかなり実現できます。

最後に

上記のようなスマートフォンが必要とされているのはキャリアだってわかっているはずです。なのにどうしてこういう機種が出ないのか?

最大のネックは「メール以外はバックグラウンドで通信しない。それもキャリアメールだけ。」、こういうカスタマイズができないのか、それとも分かりにくいのか。

そのあたりが気になります。

Androidの次期バージョン 4.3 から示唆されること

GoogleはAndroidの開発スピードを落としていると考えられる

先日のGoogle I/Oで公開されることが期待されていたAndroid 4.3ですが、実際には公開されることがありませんでした。その代わりにGoogle Play MusicだとかGoogle Mapsの強化などについて発表されたようです。

Androidのバージョン履歴を見るとAndroid 4.2のSDK公開が2012年11月ということで、まだ半年ちょっとしか経っていないので特に間隔が空いているわけではないことがわかります。しかしAndroid 4.3はコードネームが4.2, 4.1 (2012年6月)に続いて”Jelly Bean”だと言われており、一年以上を同じコードネームで引っ張ったのはAndroidの歴史では異例と言えます。

しかもAndroid 4.3もまた”Jelly Bean”がコードネームだと言われています。そうなると”Jelly Bean”がもしかすると1年半ほど最新のAndroidであり続ける可能性があります。

継続して同じコードネームを使っていることからも想像されるとおり、Android 4.3の変更点はあまり多くないだろうと予想されています。

Andy Rubin氏の元では半年に一回は新しいコードネームのリリースがあったのに、彼がAndroidプロジェクトから外されたら開発スピードはどうも落としているように感じられます。

Androidの開発スピードを落とすのはGoogleの全体戦略である可能性

その意図はいったいなんでしょうか。少し考えてみます。

  1. Andy Rubin氏の頃のAndroidは、とにかくiPhoneに追いつくための必死の開発でした。それがJelly Beanでとりあえず追いついたとGoogleは考えたのかも知れません。もしそうならば、大幅に刷新されたiOS 7に追いつくためにも再度開発のスピードを上げていくかも知れません。
  2. Andy Rubin氏をAndroidから降ろし、代わりにSundar Pichai氏にAndroidも担当させるようにした背景にはAndroidの方向転換があるのではないかと私は以前に推測しています。その一つに「Androidが一番魅力的なOSである必要はない」が新しい方針の一つではないかと述べました。もしこれが事実ならば、Androidの開発スピードを落としたのは戦略的であり、なおかつiOS 7が登場しても開発スピードを上げない可能性があります。
  3. Android 4.3の先にあるAndroid 5.0にリソースを集中させているのかも知れません。しかしウワサを見る限りではAndroid 5.0もそれほど大きな刷新が予定されていないようです。むしろスマートフォン用のOSとしてではなく、腕時計とかそういうデバイスを狙っている可能性があります。

この中で私は2と3の可能性が高いと感じています。そして2と3が同時に起こっていると考えています。

つまりこうです。

  1. そもそもGoogleは、ウェブ検索とそれに連動している広告事業を収益の柱としていて、それ以外の事業ではインターネット利用者を増やすためのものでした。検索と広告を除いて、収益性を重視するのではなく、むしろ価格で競合を排除する戦略が一貫して取られています。
  2. その中で考えると、Android事業のそもそもの狙いはスマートフォンによるインターネットの利用を増やすことでした。そしてインターネットの中でも、Googleの広告が掲載されているウェブサイトが利用されるようにするのが狙いでした。
  3. スマートフォンによるインターネットの利用、特にGoogleのサイトの利用を拡大するのに必要なのはiPhoneに対抗することではなく、a) iPhoneユーザにGoogleのサービスを利用してもらうこと、b) iPhoneが買えない顧客セグメント向けのスマートフォンを提供すること、です。仮にAndroidがiPhoneに勝利しても、それでインターネットの利用が増えるわけではありません。
  4. Androidの目的を考えると、まだスマートフォンを買っていないユーザ、高くて買えないユーザを狙うのが正しい選択です。したがってローエンドにフォーカスするべきです。
  5. ただし大きな問題は、ローエンドのユーザはウェブ利用率が少ないことです。またコンテンツをあまり買わないということです。したがってローエンドを狙う戦略は収益力の限界があります。
  6. そうなると新しい市場を開拓して、比較的裕福な人を顧客にできるようにしないといけません。比較的裕福な人は既にインターネットにどっぷりつかっていますが、さらにどっぷりつかるようにさせたいというのがGoogleの狙いになります。だから車の中とか、腕時計とか、テレビとかをGoogleは狙います。
  7. しかしこういう新しいコンシューマ市場の開拓は簡単ではなく、特に末端顧客にお金を払ってもらうものに関してはGoogleはことごとく失敗しています(低価格で既存市場に入り込むのはそこそこ成功していますが)。

そもそもAndroidの新バージョンはちょっと虚しい

もう一つ大きな戦略よりもむしろ現実を直視した事実として、Androidの新しいOSを開発するのはかなりむなしいところがあります。せっかく新しいものを作っても、利用する人の割合が少ないからです。未だにAndroid 2.3が一番利用者が多いことからもわかるように、Androidの新しいOSが出てきてもインパクトは少ないのです。

それよりはChromeアプリとかGoogle Mapsとかを改良した方がマシです。少なくともAndroid 4.0以上の人には利用してもらえます。

近未来予想

以下のシナリオを考えます。私の中ではかなり可能性の高いシナリオです。

  1. Googleはスマートフォン用のAndroidをフォーカスから外し、開発スピードを落とします。
  2. それに代わって、自動車、テレビ、腕時計、ゲーム機などでAndroidが使われるように開発のフォーカスを移します。
  3. しかしGoogle TVの大失敗、Nexus Qの大失敗、そしてスマートフォンだってほとんどサムスンの一人勝ちになってしまったことなどを踏まえ、ハードウェアメーカーは以前ほどはGoogleと積極的に組まないでしょう。
  4. 結果として初期のモデルはあまり売れず、GoogleとしてはNexus戦略で腕時計、ゲーム機に参入するでしょう。しかし自動車、テレビはGoogleが持つノウハウでは入り込めず、あまり打つ手がないでしょう。
  5. そうこうしているうちにAppleはこのどれかで成功し、新規市場を開拓します。
  6. GoogleはまたAppleが創造した市場に入り込み、低価格路線で対抗していきます。
  7. もしGoogleがスマートフォン市場のフォーカスを永く欠く状態が続けば、Firefox OSなどが入り込むスキが生まれます。もちろんローエンドで。
  8. ただしGoogleとしてはローエンドスマートフォンの市場に侵入されても、特に強力に対抗するインセンティブは必ずしもありません。収益への影響が少ないからです。

ポイントはGoogleがAndroidの開発をフォーカスから外し、新しい市場に注力していく可能性です。そして今までの実績でいうと、新しい市場の開拓には失敗し続けていることです。

安価を売りにしたAndroidタブレットは年末商戦にだけ強い:その2(2013年5月の米国タブレット使用統計)

[4月の書き込み](https://naofumi.castle104.com/?p=2089)で、Chitikaのデータを使って年末商戦でシェアを伸ばしたAndroidタブレットが、徐々に使われなくなっていることを紹介しました。

そのとき、以下のように考察しました。

> iPadは顧客満足度が高いため、口コミなどでどんどん使用する人が増えます。それに対して今回のデータを見る限り、Androidタブレットではこの自己増殖的なサイクルが回っていないようです。年末商戦など、強いプッシュがあるときだけ売れているようです。特にSamsung製品だけが好調なことから見られるように、強いマーケティングやセールスインセンティブがによるプッシュが無いと、Androidタブレットは売れなさそうです。

昨日[Chitikaの5月のデータ](http://chitika.com/insights/2013/may-tablet-update)が出てきて、同じ傾向が続いていることが示されています。

1. クリスマス商戦でAndroidのWebアクセスシェアが上昇し、iPadのが下がりました。
2. 2013年に入ってからはiPadがじりじりWebアクセスシェアを伸ばしAmazon Kindle FireとGoogle Nexusは落としています。
3. Samsung Galaxy Tabは2013年に入ってからも徐々にWebアクセスシェアを伸ばしています。

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Androidの収益性の危険な地域性(その2)

先日のブログでAndroidのアプリの売り上げが日本と韓国に極端に偏っていて、特に日本のスマートフォン市場の動向次第でアプリの売り上げに大きな問題が生じる可能性があることを紹介しました。具体的にはDoCoMoがiPhoneを販売するようなことになれば、日本でのAndroidアプリの売り上げが大きく減速することは避けられず、それが世界全体のAndroidアプリの売り上げに大きな影響を与えると述べました。そしてそうなると、Androidというプラットフォームそのものの収益性が大きな影を落とすことになります。

今回はApp Annieのブログ 12を見ながら、もう少しデータを拾いたいと思います。

収益から見たゲーム開発会社の順位

iOSの場合は以下の通り、ヨーロッパ、北米、日本のいろいろなメーカーが含まれていて、バランスがとれています。

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それに対してAndroid (Google Play)の場合は、日本と韓国のメーカー会社が圧倒しています。

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収益から見たゲームの順位

iOSの場合はやはりバランスがとれています。

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そしてAndroidの場合は日本と韓国に極端に偏っているばかりでは無く、韓国限定のハングルのタイトルが登場します。

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国ごとのランキング

iOSの場合はアプリのダウンロード数およびアプリによる収益はともに各国のGDPを反映するものになっています。つまり先進国レベルの裕福な人間がどれだけいるかによってダウンロード数も収益も順位が決まっています。

AppannieiOS

それに対してAndroid (Google Play)の場合、ダウンロード数ではインドやロシアなど、経済発展が著しい発展途上国が登場しています。そして韓国が米国に次いで2位に付けています。

収益についてはがらりと変わり、日本が1位、韓国が2位となっています。発展途上国は上位5国からはずれます。

AppAnnieGP

考察

前回のブログではAndroid (Google Play)の収益性が地域的に大きく偏っていて、それが危険であると述べました。ここではなぜそうなっているかを考察してみたいと思います。

以下の理由があると私は考えています。

  1. iOSはiPhoneの端末価格が高価なため、世界的に見たら裕福な人が買います。そのため各国のGDPに応じてiPhoneが売れ、アプリがダウンロードされ、そしてアプリが購入されています。
  2. Androidの場合は安価な端末も売られているため、BRICSなどのように経済成長著しい発展途上国で売れています。そしてアプリがダウンロードされています。しかし、地域ごとに価格戦略もマーケティング戦略も調整が可能な端末販売と異なり、アプリの価格は世界的に統一されています。したがってこのような国では端末は安価に購入できても、アプリは割高になります。そのためアプリはあまり購入されていません。
  3. 韓国がAndroidに大きく偏っているのはSamsungやLGなどのメーカーの影響です。驚くべきことは人口が米国の1/6程度しか無いのに、アプリの購入が米国をしのいでいることです。日本もまた人口は米国の1/3程度ですし、若年層についてはもっと開きがありますので、やはり日本についてもこれだけアプリが購入されているのは驚きです。これには何らかの共通の特殊要因が存在する可能性があります。

こうなると、日韓に共通する特殊要因が何だろうと気になります。おそらくはネットワークゲームやソーシャルゲームの影響があると思いますが、米国にも同様のゲームがあるはずですので、これだけでは説明が付きません。私にはまだよくわかりません。

この特殊要因が今後、世界的にも広がっていき、米国や西ヨーロッパでも日韓と同じようなことが起こる可能性があります。しかしもうそうならなければ、Google Playは米国や西ヨーロッパで成長できなくなってしまいます。

以上、アプリの収益性を比較しながら強く思ったのは、グローバル展開について言えば、携帯端末の市場とアプリの市場は全く別物であるという点です。

1. 携帯端末は各地域のローカルの事業者が販売します。様々な工夫をして、各地域の所得水準に合致した端末を探し出してきて販売します。またメーカーは地域ごとに価格を変えることができますので、所得水準の低い地域には低価格商品を用意できます。そのため、携帯端末は所得水準の低い地域でも普及していきます。
2. それに対してアプリは世界で同一料金で販売されています。スマートフォンアプリの単価は一般に高くはないのですが、それでも所得水準が低い地域だと割高感が高くなります。アプリの低価格仕様というものはあまり作られませんし、地域ごとに限定して販売することもできません。アプリが世界同一料金になるのには理由があります。しかしこの結果、Android用であったとしても、所得水準の低い地域ではアプリはなかなか売れません。

Androidが世界的にシェアを拡大できた最大の理由は低価格戦略です。このおかげで、iPhoneを買えない低所得地域でAndroidは勢力を拡大し、Nokiaを駆逐しました。しかし、この低価格戦略はアプリでは使えません。Androidがアプリ等の収益性でもiPhoneに並ぼうとするのなら、何か新しいことをしないといけません。

Androidの収益源の危険な地域性

IDCとApp Annieからモバイルゲームに関する調査報告が発表され、iOSとAndroidを合わせた収益が、モバイルゲーム機(NintendoやSonyなど)の収益の3倍であったことが報告されています。もちろん他の統計でも報告されているようにiOSの方がAndroidよりもずいぶんと収益が多く、iOSはAndroidの倍以上があります。

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iOSやAndroidなどのスマートフォンがいずれモバイルゲーム機を追い抜くのはかなり前から予想できたことであり、必然だったと言えます。特に驚くべきことではありません。

しかしこの報告の中には、これ以外に驚くべき内容も含まれています。

Androidの地域性が異常

Androidが世界的に非常に多く売れていることは繰り返し報告されていますが、具体的にどの国で使われているかというデータはあまり出てきません。しばしば指摘されるのはiPhoneは先進国の中でも裕福な国で多く使われていて、それに対してAndroidはより裕福でない国で使われている点です(例えばこれ)。

下のグラフを見るとiOSとAndroidのゲーム売り上げに大きな地域性のズレがあることがわかります。iOSの売り上げは北米とアジア・パシフィックがほぼ同等で、西ヨーロッパがそれに続きます。それに対してAndroid (Google Play)では北米と西ヨーロッパが非常に少なく、アジア・パシフィックが圧倒しています。2013年1Qでは、Androidのゲーム売り上げのうち、実に70%がアジア・パシフィックから来ています。

さらにGaming-Optimized Handhelds、つまりNintendoやSonyなどの製品の地域性を見ると、アジアが若干多いものの、これはiOSのものと似ています。

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アジアの中でもどこで売れているのか

今回のレポートではより細かい地域性のグラフは示されていませんが、以下のように記載されています。

Consumer spending on games strengthened in Asia-Pacific on Google Play and on gaming-optimized handhelds, with Japan & South Korea leading the way on Google Play

アジア・パシフィックでビジネスが非常に好調な場合、例えば成長性や人口の多さで魅力的な中国市場を連想することが多いのですが、Androidがアジア・パシフィックで売れているのはこれが原因ではないようです。そうではなくて、日本と韓国で爆発的に売れていることが原因です。

売り上げトップランキングを見るとそのことがはっきりします。

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iOSの場合は日本のパズドラの他、フィンランドや英国、米国のゲームがランキングしています。それに対してGoogle Playの場合は韓国のゲームがトップ5のうち3タイトルも占めています。しかもこれらのゲームはGoogle Playで見る限り英語の説明文すら無く、すべてハングルで書かれています。つまり韓国限定のローカルものです。

この地域性は何を意味しているのか

Google Playにとってこの地域性は危険です。特に日本での売上比率が大きいというのは大きな不安定要素をはらんでいます。なぜならば日本でAndroidが売れているのはDoCoMoがiPhoneを売らないことによる影響が非常に多いからです。

韓国でAndroidが強いのはSamsungやLGの影響です。SamsungがTizenなどの別OSに切り替える可能性はありますが、ハードルは高く、しばらくは韓国のAndroid比率は高いまま推移すると予想できます。

しかし日本の事情は違います。日本ではトップキャリアのDoCoMoがiPhoneを売っていないため、市場の需要よりもiPhoneのマーケットシェアは低く抑えられ、Androidのシェアが大きくなっています。キャリアの問題が無ければ、iPhoneの潜在的マーケットシェアは現在よりもプラス20%近くあるでしょう。もしDoCoMoがiPhoneを売るようになれば、数年のうちに日本のAndroidのマーケットシェアは激減します。これは予想するまでも無く、明白です。

Androidはアジア・パシフィックでしか伸びていない

レポートの中のデータを加工して、地域ごとの売り上げを下図にまとめてみました。ここからわかることは、Androidの北米および西ヨーロッパでの伸びが非常に少ないということです。アジア・パシフィックでの伸びで補っていますが、Androidは世界の他の地域ではゲーム売り上げがあまり伸びていません。iOSに大きく離されている状況ですが、その差は埋まるどころか広がっています。

以上を合わせて考えると、日本のDoCoMoがiPhoneを売り出すだけでAndroidのゲーム売り上げの伸びは大きく落ち込み、成長率でiOSに引き離されてしまいます。デベロッパーを引き留めたいAndroid陣営としてはかなりまずい状態です。

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なお、以上のデータは広告収入を差し引いたものです。ただしゲーム業界にて広告収入に依存したビジネスモデルというのは非常に難しくなっているのは周知の通りです。

ゲームの意味合い

iOSにしてもAndroidにしても、ゲームは大きな収益源です。iOSではApp Storeの収益の70%がゲームから来ています。Androidはもっと極端で、Google Playの収益の80%がゲームです。それぞれのプラットフォームが収益面から開発者にとって魅力的かどうかは、かなりの部分ゲームにかかっていることがわかります。だからこそ今回のIDCとApp Annieのデータは重要であり、大きなゆがみがあるAndroidは危険な状態にあると言えます。

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iTunes Storeの国際展開の強さ

AppleのFY13 2Qのカンファレンスコールを聞いて、一番興味深かったのはiTunes Store (App Storeも含む)の強さでした。

iTunes StoreについてはAsymcoのHorace Dediu氏が深く分析していて、成長のスピードおよび規模の大きさで非常に注目に値するとしています。誕生した当初は”break-even”で運営しているとしていたiTunes Storeですが、その後大きく成長しています。カンファレンスコールでは売り上げが2Qだけで4.1 billion USD(おおよそ4千億円)になったと紹介していました。売り上げの仕組みが違うので単純な比較はできませんが、楽天の2012年12月期の年間売り上げが単体で1,637億円ですので、iTunes Storeがどれだけ大きいかがわかります。

Horace Dediu氏はiTunes StoreとAmazonの比較もしています。ただしアマゾンは全体の売り上げは公開するものの、デジタル配信の売り上げは公開していませんので、単純比較はできません。

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なおGoogle Playはデータが全く公開されていませんので、情報がありません。

AppleのカンファレンスコールではiTunes Storeが多数の国で展開していることも紹介されました。音楽:119国、映画:109国、書籍:155国、アプリ:155国。このあたりはWikipediaに既に詳細に記載されていました。うち、有料の音楽が購入できるのは60強の国です。アプリは190の国で購入できます。Google Playもまた多数の国(134)で展開していますが、アプリしか買えない国がほとんどで、その他のデジタルコンテンツが買える国は極めて少数(14国)です。

Amazonについては詳しく調べていないので断言できませんが、Wikipediaを見る限り、Amazonのウェブサイトがある国がそもそも10程度しか無いようです。デジタルコンテンツの配信もこれらの国に限られているのだろうと私は想像しています。

なお比較のためにPlayStation Storeも確認しましたが、おおよそ50の国で展開しているようです。

デジタルコンテンツ配信におけるAppleのイノベーション

これだけAppleが強い背景には地道な努力がもちろん大きいのでしょうが、Appleがかなりイノベーションをしてきたことも忘れてはいけません。

違法音楽ダウンロードに各レーベルが戦々恐々としている時代に、世界でいち早く有料の音楽配信サービスを展開したのがiTunesです。アプリを配信するApp Storeのコンセプトを大きく成長させて、メインストリームにしたのもAppleです。

こういうイノベーションを先駆けたおかげでこれだけデジタルコンテンツ配信に強いのでしょう。