Samsungが偽りのレビューをWebに書くように学生を動員していた件

HTCの製品を批判するように、Samsungが学生アルバイトを動員していたという報道がBBCにありました。

台湾の公正取引委員会が調査に乗り出していて、Samsungはこの件を既に認めています。

Samsungを非難することは簡単です。しかし事実はそんなに単純ではないでしょう。おそらくは氷山の一角です。

そこでこの件からいろいろと類推してみようと思います。もちろん当たっていないこともあるでしょうが、背景の理解の助けになると思います。

Samsungという会社が問題を起こしたことの重み

Android陣営の中で、唯一まともに利益をたたき出しているのがSamsungです。他の会社は利益が出ない上、販売数も伸び悩んだり、逆に落ち込んだりしています。

当然ながら、どうしてSamsungだけが一人勝ちできるのだろうかという疑問がありました。いろいろな原因が考えられます。例えばHorace Dediu氏は販売チャンネル、広告宣伝とプロモーション、そして製造能力を挙げています。

今回の事件からわかることは、手段を選ばない、仁義なきマーケティング戦略もSamsungの成功の理由の一つだということです。

HTCに対してやるんだから当然Appleにもやっているはず

SamsungがHTCだけを非難していたはずがありません。当然ながら他のライバルに対しても同様なことはやっているはずです。Appleはその一つですし、普通に考えればAppleに対してこそ一番強力なネガティブキャンペーンを張っていたはずです。

Androidはこれぐらいやらないと売れないのか

Samsungだけが一人勝ちできた理由は一つだけではなく、仁義なきマーケティング戦略がどれだけ効果があったのかは不明です。しかし可能性としては否定できません。

仁義なきマーケティングでもやらない限りAndroidは売れないのかもしれません。

しっぺ返し

ウソに固められたマーケティングというのは、顧客にウソをつくことです。実際に製品を手に取れば、あるいは友人の製品と比較すれば、顧客はウソに気づきます。

スマートフォンはまだ売れ始めて年月が浅く、Androidについて言えばまだ90%の顧客は一度も買い換えをしていないと推測されています。つまりウソに気づいた顧客も、ほとんどはまだ新しい製品に買い換えていません。

今はしっぺ返しがまだ来ない時期です。

しっぺ返しが最初に来る(来た?)のは例えば米国市場

しっぺ返しは最初に観測されるのは、スマートフォンが早い時期から売れていた市場です。例えば米国の市場。その点で言えばちょっと不安な材料があります。

Benedict Evans氏はAT&TとVerizonのデータを元に、Androidの売り上げの伸びがほとんど止まったという分析をしています。一方でiPhoneの売り上げは順調に増加しています。

もしかしてしっぺ返しは始まったのかも知れません。

NewImage

なおいろいろな調査会社がスマートフォンの売り上げ推計を出していますが、AT&TやVerizonのデータはそれぞれのキャリアが報告した実際の数です。Apple以外は売り上げデータを公開していませんので、推計値はかなり憶測が入っています。それに対してBenedict Evans氏が使用したのはもっとも確実なデータです。

日本では

日本では信頼性の高い推計値がありませんので、statCounterのデータを紹介します。これも正確なデータではなく、またWeb閲覧数を見たものですが、時系列で多数のデータ点が公開されているのでトレンドを見るのに役立ちます。

これを見る限り、日本でもAndroidの使用率が落ち始めています。携帯の買い換えサイクルは24ヶ月ですので、タイミングを考えるとAndroidの初期ユーザの買い換えの頃から落ち始めているようです。

StatCounter mobile os JP quarterly 200804 201302

GoogleのNexusが売れていない

GoogleのNexus 7を中心に、GoogleのNexus戦略はあまりうまくいっていなさそうだという話をこのブログで何回かしています。要するに話題性とは裏腹に、Nexus 7はあまり売れていなさそう(使われていなさそう)なのです。

  1. 北米における2013年2月のタブレットの使用統計
  2. タブレットにおけるAndroidの追い詰められた現状

さらにそれを裏付けるデータが、Googleが公開しているデータの分析から明らかになりました。

Nexus tablet sales: not many

もうかなり間違いないです。Nexusはあまり売れていません。

27種類のスクリーンサイズを提供するSamsung、4種類を提供するApple

NewImageSamsungが提供するAndroidデバイスは実に27種類のスクリーンサイズをカバーしています。これを紹介したDerek Kessler氏のTweetがTwitterで盛んにRTされました。

これに対してAppleのiOSは3.5, 4, 7.9, 9.7インチの4つのスクリーンサイズしかありません。

どっちの戦略が正しいのか、様々な議論があると思います。しかし忘れてはならないのは、Appleも昔は目もくらむほどの多数ので製品を販売していたことです。

Everymac.comには過去に販売されたMacの情報がすべてアーカイブされています。Steve Jobs氏が復帰する前の1996-7年頃には、デスクトップだけでも以下の製品ラインがありました。

  • Macintosh Performa 5260, 5270, 5280, 5400, 5410, 5420, 5430, 5440, 6410, 6400, 6420
  • Power Macintosh 4400, 5260, 5400, 5500, 6300, 6400, 6500, 7200, 7220, 7300, 7600, 8500, 8600, 9500, 9600

それをバサッと整理して、有名な4製品グリッドに絞ったのです。

近年のマーケティング戦略に関する本を読むと、顧客の趣向が多様化し、多品種少量製品が重要になってきているという主張が多いのではないかと思います。1990年代のApple社は、当時の競合他社と同じようにこの戦略を採っていました。Samsungの現在の戦略もこれを継承しているように思います。

NewImageSteve Jobs氏の戦略はこの真逆でした。思いっきり製品を絞り込んで、少数の製品にフォーカスしました。しかも興味深いことに、一般的なマーケティングでは真っ先に登場する「予算」という切り口は使わず、プロフェッショナルとして使用するのか、およびノート型かデスクトップ型かの2つの切り口しか使いませんでした。

Appleが成功し続けるためにはより大きな画面をもったiPhoneが必要だとか、低価格のiPhoneを作らないと新興国市場で勝てないという外野の意見はますます大きくなっています。しかしAppleの幹部の多くはSteve Jobs氏が4製品グリッドを導入した時期も経験しています。製品が多すぎてフォーカスを失い、死にかけたApple、そして製品ラインを4つに絞り込んで復活を遂げたAppleを知っています。

Appleは別に宗教のように少数の製品にフォーカスをしているのではありません。それほど遠くない昔には多品種少量生産をし、そして臨死体験をしたのです。Appleは実体験に基づいて、少量多品種の危険性を知っています。そう、たぶんSamsung自身よりも。

Facebook Homeが流行るかどうかを考えてみる

Facebook Homeが発表されました。

見た感じ、特にデザイン的な完成度が非常に高そうで、興味をそそられます。

ただしネットを見ていると大部分の技術評論家たちは懐疑的な意見を述べていて、その主たる根拠は「俺の生活はFacebookだけじゃない」のようです。まぁ技術評論家の生活スタイルおよびFacebookの使い方は一般人とは全然違いますので、彼らの意見が正しいと考える理由はこれっぽっちも無いとも言えます。

このような製品が成功するかどうかを予想する上で大切なのは、マーケティングの4Pで言うところのProduct(製品)ではなく、おそらくPlace(流通)とかPromotion(プロモーション)だろうと思います。なぜかというとFacebookは非常にユーザ数が多いので、流通やプロモーションの切り札がたくさんあるからです。

例えばこの記事にも書いてあるとおり、FacebookやFacebook Messengerがインストールされていれば、Homeの通知がきます。ほとんど製品アップデートのような感じで通知が来ますので、大部分のユーザがアップデートと誤解してインストールするのではないかと私は予想しています。

非常に普及が早いアップデートの例

アップデート通知の威力、浸透力の強さはiOSで証明されています。例えばiOS 6.1の浸透度を調べたChitikaの調査によれば、iOS6.1は公開からわずか2週間で50%のデバイスにインストールされました。アップデートの通知が目立つように表示され、そこから数タップでアップデートが完了してしまうという手軽さは非常に効果的で、Place(流通)やPromotion(プロモーション)としては驚異的な威力を発揮することがわかります。

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製品の評判が良くても普及しない製品の例

それに比べて、製品がどれだけ技術評論家の間で評判が良くても、プロモーションの仕組みがしっかりしていなければ全くダメな例もあります。その好例がAndroid用のChromeブラウザです。

同じChitikaのデータで、Androidユーザの間でのChromeの普及率が著しく低いことを示しているデータがあります。

2012年9月のデータによると、Android OSユーザのわずか2.34%だけがChromeブラウザを使用していました。デフォルトのAndroidブラウザが91.26%でしたので、Androidブラウザ使用者の1/38しかChromeブラウザに切り替えていない計算になります。

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StatCounterのデータを使ってUSの直近2週間を調べても、Chromeブラウザの使用率はAndroidブラウザの使用率の1/13です(全モバイルブラウザのうち、Androidブラウザが36.78%、Chromeブラウザが2.93%)。またグラフは示しませんが、StatCounterで全世界のデータを取っても、やはりChromeブラウザの使用率はAndroidブラウザの1/14しかありません。

StatCounter mobile browser US weekly 201312 201313 bar

ChromeブラウザはAndroid 4.0以上じゃないとインストールできないというハンディがありますが、GoogleによるとAndroid 4.0以上の普及率は54.3%ということですので、上述の数字と合わせると、Android 4.0以上に限定してもChromeブラウザの普及率はAndroidブラウザのたった1/7という結果になります。

スクリーンショット 2013 04 06 22 52 12

どう見てもChromeブラウザの普及率は悲惨な状態です。

アップデートと新製品の違い

iOSのアップデートとChromeブラウザの普及率がこれほど開いた理由は製品の善し悪しではありません。少なくとも技術評論家の間の評判でいえば、Chromeブラウザは絶賛され、一方iOSのわずか0.1のバージョンアップは大して話題になりませんでした。

違いはアップデート、つまり「通知」が送られてくるものであるか、あるいは別の製品であるかにあります。

iOSの場合はアップデートです。インストールの精神的ハードルが低く、「通知」が来てからわずか数クリックでインストールが完了します。

それに対してChromeブラウザは別製品です。インストールの精神的ハードルはかなり高く(技術評論家にとってはインストールの敷居は低いのですが、一般人にとっては意外と高いものです)、手間もかかります。

アップデートか新製品かということで、雲泥の差があります。

Facebook Homeは新製品だけど、アップデートと同じプロモーションの仕方をしている

さてFacebook Homeに戻ると、これは明らかにアップデートのプロモーションスタイルです。もちろん大がかりな広告やプロモーションはするのでしょうが、一番威力を発揮するのは「通知」です。ほとんどの人はFacebook Homeを単なる製品アップデートだと思ってしまうでしょう。ですからあっという間にものすごい普及率になりそうです(ただインストール可能なスマートフォンの機種を絞っていますので、それは考慮しないといけません)。

Facebook Homeのできが良いか悪いかは、一端インストール後にどれだけのユーザがFacebook Homeを外すかに影響しますが、最初のインストール数にはあまり関係がないはずです。つまり技術評論家の意見は普及率とは無関係です。

Facebook Homeの破壊力

Facebook HomeはAndroidの乗っ取りです。Facebook HomeをインストールしてもGoogleのアプリは使えます。しかし主従関係は逆転します。Facebookが主でGoogleが従になります。

Facebook Homeのコンセプトは他社でも真似ができます。Twitterでも同じことができますし、Amazonだって似たことができるはずです。Android上の単なる1アプリとしての存在では無く、また1ウィジェットとしてでは無く、ランチャーを乗っ取ることができます。

Facebook Homeの破壊力は、他社でも簡単に真似られることです。Androidはウィジェットという仕組みを提供していますが、それでは不十分だというところは今後Facebook Homeのようなランチャーを出してくるでしょう。ランチャーの奪い合いというすさまじい戦いがAndroid上で繰り広げられる日が近いかも知れません。

まとめ

Facebook Homeが普及するかどうかはその製品コンセプトの善し悪し、あるいは技術的なできの善し悪しとはほとんど関係がありません。むしろ「アップデート」を装うというプロモーション戦略の方が圧倒的な影響力があり、Facebookアプリのインストール率が極めて高いことを考えると、Facebook Homeがかなり普及すると予想できます。

またランチャーを乗っ取るという戦略はFacebook以外の他社も真似られる戦略です。これに対してGoogleが何らかの制限をかけて、防御に回る可能性があります。そうしないとAndroidランチャーの陣取り合戦が始まるかも知れません。

最後に、Facebook Homeは「Googleばなれ」のトレンドを加速させます。いままではSamsungやHTCに代表される携帯メーカーの「Googleばなれ」が見られましたが、サービスプロバイダー側の「Googleばなれ」は新しいトレンドとなる可能性があります。2013年は「Googleばなれ」が顕著になるというのが私の予想ではありますが、想定以上の早さでこれが進んでいるという印象を強く受けます。

Samsungの強みと技術評論家の弱み

AsymcoのHorace Dediu氏が一端アップして、その後取り下げたブログポストにSamsungの強みについて書いてありましたので取り上げます(Horace Dediu氏もTwitterでGoogle Cacheにリンクしていましたので、別に見せたくないわけではなさそうです)。

インタビュー形式(聞き手はRafael Barbosa Barifouse氏)です。太字は私が付けています。

Rafael Barbosa Barifouse氏

Does it make sense to create a new mobile OS when it has had so much success with Android?

Horace Dediu氏

Samsung would argue that the success it’s had is not due to Android but to its products. Arguably they are right because if Android were the valuable component in a phone then buyers would buy the absolute cheapest device that runs Android regardless of brand. That is not the case. People still seek out a particular brand of phone because of the promise it offers. Consumers have been buying more Galaxies than no-name Android phones.

Rafael Barbosa Barifouse氏

Why is Samsung the most successful company between the Android devices makers?

Horace Dediu氏

In my opinion it’s due to three reasons:

  1. Distribution. Success in the phone business depends in having a relationship with a large number of operators. Samsung had these relationships prior to becoming a smartphone vendor [because it sold all other kinds of phones]. Few alternative Android vendors have the level of distribution Samsung has. For comparison Apple has less than half the distribution level of Samsung and most other vendors have less than Apple.
  2. Marketing and promotion. Samsung Electronics spent nearly $12 billion in 2012 on marketing expenses of which $4 billion (est.) was on advertising. Few Android vendors (or any other company) has the resources to match this level of marketing. For comparison, Apple’s 2012 advertising spending was one quarter of Samsung’s.
  3. Supply chain. Samsung can supply the market in large quantities. This is partly due to having their own semiconductor production facilities. Those facilities were in a large part built using Apple contract revenues over the years they supplied iPhone, iPad and iPod components. No Android competitors (except for LG perhaps) had either the capacity to produce components or the signal well in advance to enter the market in volume as Samsung did by being an iPhone supplier.

私はAsymcoを注意深く読んでいますので、その影響もあってか以前よりSamsungの強みについて同様に考えていました。

つまり、Samsungがスマートフォンで成功しているのはGoogleのAndroidのおかげではなく、Samsung自身の力によるものです。そしてSamsung自身の力というのは、単なる技術的優位性ではなく、以前からのキャリアとの関係、強力なマーケティングとプロモーション、そしてサプライチェーンの強さです。

技術評論家のほとんどは製品しか見ません。製品が技術的に優れているか、使いやすいか、デザインに優れているかだけを見ます。しかし製品が実際によく売れるかどうか、ヒットするかどうかを判断する上では、このような評論家の見方は極めて二次的です。ものが売れるかどうかの主因とはなりません。

理由は簡単です。大部分の消費者は製品そのものよりも、広告や小売店の営業担当の言葉、あるいは友人の言葉、そしてブランドを頼りに購入判断をするからです。

市場勢力の急激な変化は、末端の小売りの影響力が強いサイン

Neil Hughes氏はスマートフォン市場のシェア推移を見ています(Market shares collapse with ‘brutal speed’ in cyclical smartphone industry)。

その中でNeedham & CompanyのアナリストCharlie Wolf氏の言葉を出しています。

The most important reason for these changes, Wolf believes, is the fact that carriers have “exceptional influence” on the phones customers buy. He said this strategy has worked particularly well for Android, because Google offers carriers and their retail staff incentives to push the brand.

このような急激な変化が起こるのは、携帯電話の市場ではキャリアの影響力が極めて強いためだというのです。私もチャンネル営業を担当したことがありますので、同感です。

ブランド力は急には変わりません。また極めてインパクトのある広告で無い限り、マーケティングメッセージは通常は緩やかに浸透します。一方、市場勢力を急激に変えるポテンシャルを持つのは末端の小売りです。小売りは営業インセンティブの与え方次第で一気にひっくり返ってくれます。

ただし営業インセンティブをしっかり与えられるためには、末端の小売りとの既存のパートナーシップが不可欠です。急に登場して、大きなインセンティブを与えても小売りは動きません。ですからWolf氏のコメントは一つだけ間違っています。キャリアや小売りスタッフにインセンティブを与えたのはGoogleではありません。Googleにはインセンティブを与える力はないからです。代わりにインセンティブを強力に与えたのはSamsungなのです。

こういう営業の仕組みを全く理解できていないのが技術評論家の最大の弱みで有り、だからしばしば市場を読み間違えるのです。

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USの携帯電話顧客満足度調査の結果

J.D. Powerの”2013 U.S. Wireless Smartphone Satisfaction Study”が公開されて、簡単な総括がウェブで公開されました。

Appleが圧倒的な顧客満足度を獲得

結果を見ると、Appleがその他のメーカーを完全に圧倒しています。他のメーカーがすべて790点前後なのに、Appleだけが855点と、完全に孤高の存在。

スマートフォンはまだ市場が若く、買い換え需要よりもフィーチャーフォンからの乗り換え需要の方がまだ多い段階です。顧客満足度というのは当然ながら買い換えの時に効いてきますので、この圧倒的な顧客満足度が売り上げに反映されるのはこれからです。これだけの大差があるとどうなるのか、かなり気がかりです。

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Samsung Galaxy S4のローンチでもAndroidのことがほとんど触れられなかったことのまずさ

Samsung Galaxy S4のローンチイベントがあまりにも退屈だったので私はちゃんと見ませんでしたが、どうやらAndroidやGoogleのことについてはほとんど触れられなかったようです。

Android携帯メーカーのGoogleばなれについてはここ数ヵ月間でかなり顕著になっていますが、私が予想していたよりも速いペースで進んでいるのが驚きです。

AndroidのリーダーだったAndy Rubin氏が降ろされましたが、Googleはこの状況にかなり危機感を抱いている可能性があります。今年の前半に具体的な策がGoogleから発表されるかも知れません。例えばスマートフォン用のChrome OSの発表などが考えられます。Samsungしか利さないAndroidの開発終了も現実的なオプションとして検討されていることでしょう。

北米における2013年2月のタブレットの使用統計

Chitikaより北米における2月のタブレットの使用統計が発表されました。

Chitika February 2013

特に今回は2012年12月、2013年1月のデータを並べて、ここ3ヶ月の傾向を見ています。

Chitika 2013 trends february

私が思うところでは、ポイントは以下の通り;

  1. Kindle Fire, Samsung Galaxy, Google NexusおよびBarnes & NobleのNookはいずれも年末商戦で大きく使用率が向上しました。しかし、どれをとっても2月には微増または微減となっています。Androidのタブレットはなぜ年末商戦でしか売れないのか?が気になります。
  2. Google NexusはKindle Fire, Samsung Galaxyから遠く離されたままで、その差を埋める様子は特にありません。評論家からあれだけ絶賛され、Googleが赤字で売っているとも言われている機種が、どうして販売が伸びないのかが不思議です。

仮説としては以下のことが考えられます;

  1. Androidのタブレットは贈呈用には人気ではあるが、自分のために買う人はあまりいない可能性。
  2. 何かを買うとき、通常は「必要かどうか」を考えて買います。しかしクリスマス商戦というのは、「必要かどうか」または「欲しい」ではなく、「何かをプレゼントしなければならない」という状況下における購買活動です。「必要かどうか」という基準ではAndroidは弱い可能性があります。
  3. Google Nexusのブランドは評論家に絶賛されることが多く、これはNexus 7のみならず、Nexus 4についても言えます。しかし実際の購買になると、Kindle FireやGalaxy Tabに負けています。Kindle Fireはamazon.comのトップページにずっと表示されていますし、すべてのページの右上にKindle Fireの広告があります。逆に言うと、それぐらいのことをやらないとAndroidタブレットは売れないとも言えます。
    Amazon top bar 2
  4. Samsung Galaxy Tabの強みはおそらくはマーケティングとチャンネル管理の強力さだと思われます。

長期的視点では以下のことが気になります;

  1. プレゼントとして買われたものが、どれぐらいの顧客満足度を維持できるのか?
  2. 顧客満足度が高ければ、自分用に買う人が増え、年間を通して売れるようになるはずです。果たしてそうなるのか?

スマートフォンの売り上げ:いろいろな数字

スマートフォンって非常に成長が著しい市場で規模も大きいので、調査会社がいろいろな分析をしています。でもそれはかなり怪しいよという話をいくつかここにまとめます。

アメリカの携帯キャリアが報告している数字

以下はアメリカの携帯電話ネットワークキャリア(AT&T, Verizon, Sprint, T-Mobile)が報告している数字です(Benedict Evans氏のブログから引用)。Apple以外のスマートフォン製造会社はどれも売り上げ台数を報告しないので、調査会社が推測した数字じゃなくて、実際に販売している会社が報告している確固たる数字はこれぐらいしかありません。

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ポイントは

  1. 2012年Q3でiPhoneが9.3 million、その他のスマートフォンが8.7 million販売されました。
  2. スマートフォンは携帯電話全体の販売台数の80%。

調査会社などの調べでは世界全体の市場ではAndroidは75%としていて、この数字自体がかなり推測を含んでいますが、USに限って言えばiPhoneがスマートフォン市場の50%以上を握っています。

Benedict Evans氏のブログによると、Comscoreなどの調査会社の調べではiPhoneの利用者はスマートフォン全体の30%しかないという調査結果があり、それも怪しいねという話です。

アップル vs. サムスンの法廷資料で出てきた数字

調査委会社のIDCなどは2012年のQ2にサムスンが50.2 millionのスマートフォンを出荷したとしています。しかしこれもかなり推測を含む数字です。サムスンはスマートフォンの出荷台数を近年報告していません。

しかしアップル vs. サムスンの裁判の中で、適切な損害賠償の額を算出するためにアップルもサムスンも実際の販売台数を報告する義務が発生しました。USでの販売台数しか出てきませんでしたが、メーカー自身が報告した正確な数字としては貴重なものです。以下、Horace Dediu氏がまとめたものを紹介します。

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以上のグラフはサムスンが世界全体で出荷したと推測されるスマートフォン台数全体(IDC調べ)と法廷で損害賠償の対象となっているサムスン製スマートフォンの実際の販売台数を比べたものです。ただしサムスンの実際の販売台数はUSのみです。また2012年の4月に販売開始されたGalaxy Nexus, 2012年7月に販売開始されたGalaxy SIII, 2012年2月に販売開始されたGalaxy Noteは含みません。

IDCの調査結果がUSでの販売傾向を全く反映していないことは一目瞭然です。

ウェブブラウジングの使用率を見た数字

Statcounterがウェブを閲覧したユーザのデータを公開しているので、ここから分析することもできます。まずはUSのデータ。

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USのデータを見るとUSのキャリアが報告している販売台数と良く似た数字になっています。iPhoneの方がAndroidよりも上で、iPhoneの方が不くるから販売されていることを加味すれば、実際の販売シェアよりもウェブアクセスのシェアでiPhoneが上に来るのは納得できます。

Statcounterを世界全体で見ると以下のようになります。

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Androidの方がiPhoneよりも多くなっています。またAndroidが強いのは一人あたりGDPがあまり多くない国が多く、ネットワーク環境が整備されておらず、ネットアクセスが不自由である国が多いと考えられますので、Androidからのウェブアクセス以上にAndroid端末は世界で売れていると考えることができます。世界全体でAndroidが75%の販売シェアを持っていることは、この数字を見る限り十分可能だと考えられます。

ちなみにStatCounterの数字を日本で見ると、iPhoneとAndroidが拮抗しています。iPhoneの方が強いUSとは違います。これはDoCoMoがiPhoneを売っていないのが最大の理由でしょう。

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Androidが強い国って何処だろう

StatCounterの国別の数字を、各国の一人あたりGDPでプロットしました(まだすべての国をプロットしていませんが主要な国は含んでいます)。

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なおSymbianもSeries 40もNokiaのOSです。

はっきりわかるのは

  1. 一人あたりGDPが高い、裕福な国ではiOS (iPhone)が強く好まれている。しかし一人あたりGDPが50位以下の国では弱い。
  2. Androidは裕福な国ではそこそこ使われているが、iOSとの決定的な違いはGDPが40位以下の国で強いこと。GDPが40位以下の国というのは、ロシアやアルゼンチン、マレーシア、メキシコ、ブラジル、タイ、中国などを含みます。
  3. NokiaのOSは一人あたりGDPが低い、貧しい国でよく使われている。

アップルがTVを売るとしたらどんなものか & 今のテレビ産業のまずさ

昨日、両親のテレビを選ぶために5年ぶりに家電量販店のテレビ売り場を見に行きました。

がっかりしました。価格競争の末路とはこうなるのかと。

もちろんアジアの新興国が液晶テレビに参入し、技術も成熟すれば液晶パネルの価格が下落し、液晶テレビの価格が下がるのはわかっています。グローバルな価格競争に巻き込まれ、安い製品しか売れなくなるという理論は少なくとも半分はその通りなのです。

しかしパソコンの世界ではAppleのMacがここ数年間か絶好調で、他のメーカーがほとんど$1,000以下の製品が売れ筋であるのに対して、Macだけは$1,000以上の製品が主力で売れています。

そこでAppleだったらどんなテレビをデザインするかなとちょっと考えてみました。

製品群を絞る

NewImageSteve Jobs氏がAppleに復帰して、すぐに行ったのは製品の絞り込みです。Performa6260, 5200, 5300とかPower Macintosh9600, 8600とかのような意味不明の製品型番を廃止し、一般消費者向けのiMacとiBookそしてプロフェッショナル向けのPower MacとPower Bookに製品に絞り込みました。そして各製品カテゴリーには”Good”, “Better”, “Best”という数種類のコンフィギュレーションを用意するものの、これらの違いはほぼCPUのスピードやRAM容量の大小に限定しました。数多くの製品を、たった4つに絞ったのです。

このコンセプトを発表したときにSteve Jobsが語っていたのは、「こんなに製品が多いと、社長の自分だってどれを買って良いかわからない」ということ。つまり何を買えば良いかを分かりやすくするための絞り込みだったのです。もちろん会社の限られた資源を少数の製品に投入できるメリットもあります。

さてテレビの状況を見てみましょう。昨日見たのはシャープのAQUOSでしたので、それで紹介します。下記は今日時点のシャープのウェブサイトからとりました。

製品カテゴリーは大きく分けて「クアトロン」「フリースタイル」「LEDバックライト」。どのキーワードもなじみが無いものばかりで、何の意味だかわかりません。そして各カテゴリーを合わせて実に19の製品があります。各製品紹介の一文には「スタイリッシュ」「スマート」「プレミアム」「スリム」「スタンダード」「オールインワン」「ベーシック」「カンタン」とかいろいろ書いてありますが、何を言いたいのかよくわかりません。

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例えばAppleの場合、

  1. すべての製品が「スタイリッシュ」で「スマート」で「プレミアム」で「スリム」で「カンタン」で「シンプル」です。”Mac”というブランドはこれらの言葉をすべて内包しています。Appleの場合、各製品の違いを紹介するのに使う言葉ではありません。Appleと競合他社の違いを説明するのに使う言葉です。
  2. Appleは製品カテゴリーを分ける基準として可搬性(ラップトップ、デスクトップ)、そして必要なパワー(一般消費者、プロフェッショナル)だけを選択しました。それに対してシャープは使用している技術(クアトロン、LEDバックライト)でカテゴリーを分けました。シャープの選択には非常に大きな問題があります。テクノロジー分野は技術がすぐに変わってしまうので、技術ごとにカテゴリーを分けるとすぐに陳腐化してしまいます。あるときは「LEDバックライト」はハイスペック製品を指していたかも知れませんが、数年後にはロースペック製品を指すことになります。例えば今年いっぱい「クアトロン」の良さを紹介するために広告宣伝費を何億と使っても、数年後にはそれはすべて無駄になってしまいます。それに対してAppleの場合は”MacBook”とか”iPad”という製品ブランドをプロモーションの中心に持って行き、そのブランドを顧客に覚えてもらうようにしているので、何年経っても投入した広告費は生き続けます。
  3. Macintoshに限定すれば、2012年時点 Macbook Air, Macbook Pro, Mac mini, iMac, Mac Proの5製品しかありません。シャープのテレビラインアップの1/4です。ポストPCデバイスのiPadおよびiPad miniは同じ製品の別サイズとみても良いので、iPadを入れても6製品しかないと言えます。

さてAppleがテレビを売るとしたら、どんな製品ラインアップを用意するでしょうか?

私の予想はこうです。

  1. 製品はたったの1種類。
  2. その製品は「スタイリッシュ」で「スマート」で「プレミアム」で「スリム」で「カンタン」で「シンプル」な製品。さらにシャープが持っている一番高い技術である「クアトロン」はもちろん搭載しています。
  3. 画面サイズは52 or 55, 40, 32インチの常識的なサイズのみ。アメリカでも60インチ以上のものが特に売れているわけではなさそうなので、60インチオーバーはラインアップに加えないだろうと思います。
  4. もちろん「オールインワン」。つまり録画機能(HDを含めて)はテレビに組み込み済み。ただしBluRayは衰退していく技術だとAppleは判断していますので、BluRayは入らないでしょう。

デザインを良くする

例えば「スタイリッシュ」と書かれているシャープのXL9シリーズを見ると、PRポイントは「画面の大きさと映像が映える、アルミフレームデザインを採用」です。でもこれってパッとしないですよね。確かに他のテレビはプラスチックの安っぽいフレームを採用しているので、それと比べればましではありますが、ぐっとくるような魅力はありません。

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これに対して今のApple iMacのデザインのポイントを見てみましょう。

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iMacの場合はそもそもフレームを無くして、端から端までガラスを張っています。iMacは2006年までのプラスチックを使った筐体から2007年にアルミに切り替え、その時からフレームをほとんど目立たせないデザインを採用しています。2009年からはこれを進化させ、フレームのないデザインを採用しています。

実際に店舗に行くとわかりますし、Amazonのウェブサイトでもある程度わかりますが、今売られている液晶テレビは安いものから高いものまで、ほとんどすべてが同じような光沢のある黒い枠がついています。内部でどんなに高度が技術が使われていようとも、あるいは3Dに対応していようとも、それがデザインからではわからなくなっています。

これってすごくまずいです。ベンツとカローラのデザインが同じという状態です。

高級品を買う人ってすべてが技術が好きだというわけではなく、虚栄心で高級品を買っていることが良くあります。ベンツなどはその典型です。であればその虚栄心を満足するべく、一見して高級品だとわかるようにデザインを工夫しなければなりません。低価格品とは明確に区別されるような、高級ブランドのメッセージが伝わらなければなりません。ベンツの場合はそれはエンブレムでしょうし、BMWであればそれはフロントグリルになります。Appleであれば、細部までデザインにこだわっていること自身がブランドメッセージです。

もしアルミフレームというものが「高級感」を連想させるデザインになるのであればシャープのやり方でも良いのですが、かなり弱いと感じます。これだけでは誰も驚かないし、センスも感じませんし、シャープの技術力の高さやイノベーションを感じません。

Appleがテレビをデザインすれば、それは間違いなくiMacのデザインを踏襲するでしょう。iMacを薄くするために培った技術力を活かして極限までにテレビを薄くし、そしてそれが際立つようにフレームのないデザインを採用するでしょう。こうすれば誰が見ても「あっ、あのテレビは何かが違うぞ!」となるし、家にお客を招いた場合は必ず「このテレビ、すごい!」という話題になります。

最後に

Appleはパーソナルコンピュータを売っている会社だから、Appleがテレビを作るのであればインターネットに接続したりiPhoneと連動したりとか、そういうことを考える人はたくさんいます。しかし実際の量販店のテレビ売り場に行くと、それ以前の問題がたくさんあることに気づきます。

良い製品をそこそこの値段で売るための条件が整っていないのです。あの状況なら価格競争は必然的に起こるという状況しかないのです。

Steve JobsがAppleに戻った頃、Appleは勝ち目のない価格競争の巻き込まれていました。初代iMacは技術的にはたいしたものはありませんでしたが、価格競争から抜け出すための大きな手がかりとなりました。DELLなどによる熾烈な価格競争の中、マスコミに敗北者の烙印を押されたブランドであっても、いろいろ工夫すれば差別化路線がとれるし、ちゃんとした利益を確保できることをiMacは教えてくれました。

今テレビ業界に必要なのは技術的なことじゃなくて、何かこういうものだろうと思います。

追記

大事なことを忘れました。Appleだったら3Dテレビは出さないだろうなと思います。人気が出ない3D技術は思い切って早々と捨てるでしょう。理由はいろいろありますが、まず量販店の3Dテレビ置き場におかれてしまうのはかえって不利ではないかと思いました。それぐらいに3Dテレビの関心が低い可能性が十分にあります。むしろ普通のテレビのところに配置してもらって、普通の40インチを買おうかなと思っていた顧客を引きつけた方が良い気がしました。

Appleはハイスペック製品を買う人を追いかけることはあまりしません。あくまでも普通の顧客を中心に置きます。Appleは、普通の顧客とバーゲンハンターは違うと考えています。普通の顧客にマッチした最高の製品をつくれば、リーズナブルな価格で買ってくれるだろうと考えています。ですから3Dのようなギミック的なものは追求せず、普通の顧客に高い付加価値を提供する道を選ぶはずです。

それとソニーが「モノリシックデザイン」のテレビを出していて、デザイン的にかなり魅力的です。意識して実物を見ませんでしたので、どれだけ差別化につながるデザインかはわかりませんが、良い方向だという印象を受けます。しかし大きな問題があります。ソニーにはダメな製品が多すぎるのです。

ナイキの社長にSteve Jobsがアドバイスしたとき、「ナイキは世界で最高の製品をいくつも作っている。しかしクソみたいなものもたくさんある。クソみたいな製品を捨てて、良い製品に集中しろ」と語ったことは有名です。

もしソニーにアドバイスするとしたらSteve Jobsはきっと同じことを言ったでしょう。「モノリシックデザイン」はとても魅力的でよく売れているようです。しかしソニーはクソみたいな安い製品もたくさん売っています。Appleであれば「モノリシックデザイン」のような優れた製品を1つだけ売り、高級志向のユーザに対しても普通のユーザに対しても同じデザインの製品を提供するでしょう。

優れたデザインの製品を売っている会社ならApple以外にもたくさんあります。しかし優れたデザインの製品だけを売り、なおかつそれで普通のユーザまでカバーしている会社としてはAppleはかなりユニークです。そういうことに挑戦する会社がテレビ業界にも出てくれば、価格競争から抜け出す突破口が見えてくると思います。