タブレット市場の成長は?新型Nexus 7, Kindle Fire HDXが売れていないという話

情報筋としてはずいぶん怪しいのですが、新型Nexus 7とKindle Fire HDXの売り上げがどうやら前モデルよりも落ち込みそうだという話が出てきています。

情報元はDigitimesとアナリストのMing-Chi Kuoです。

普段であればこのような情報筋の話は議論しないのですが、a) トレンドとして納得ができること b) 世間では余り話題になっていない ので、今回は取り上げたいと思います。

まず噂の内容を要約すると;

  1. 月間出荷台数が前モデルよりも落ち込んでいる。
  2. Nexus 7は2012年には最大で月間100万台弱を出荷した。2012年には500万台を出荷した模様。
  3. 2013年は350-400万台にとどまる可能性がある。

またトレンドとしてはBenedict Evans氏がまとめたグラフがあります。季節性は考慮しないといけませんが、Nexus 7の売り上げに成長の気配は見られません。

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考察はいろいろ可能なので、現時点ではどうしてこうなったかを断言することはできません。しかし悪い兆候がいろいろあったのも事実です。

  1. 初代Nexus 7は時間が経つにつれ性能の劣化が著しかったそうです。そうなると初代Nexus 7購入者は新型を買おうとは思わないでしょう。
  2. 初代Nexus 7の訴求点は高性能で安価なタブレットでした。安価すぎて、Googleが赤字で売っていると言われたほどでした。しかし競合の登場により、もはやNexus 7は特に安価と言えなくなりました。
  3. 初代モデルの品質問題でブランドを傷つけ、かつ安価ではなくなってしまうと、売れる理由がなくなります。
  4. タブレット市場そのものの成長が鈍化している可能性があります。
  5. Googleは他にもNexusをいろいろ出していますが、どれもさほど売れていません。Googleの販売力の弱さが露呈しています。

一方でiPad Airが非常によく売れているという話があり、iPadと中堅Androidタブレットの差が大きく開く可能性も考えられます。

さて、どうなるでしょうか。

iTunes Storeの国際展開の強さ

AppleのFY13 2Qのカンファレンスコールを聞いて、一番興味深かったのはiTunes Store (App Storeも含む)の強さでした。

iTunes StoreについてはAsymcoのHorace Dediu氏が深く分析していて、成長のスピードおよび規模の大きさで非常に注目に値するとしています。誕生した当初は”break-even”で運営しているとしていたiTunes Storeですが、その後大きく成長しています。カンファレンスコールでは売り上げが2Qだけで4.1 billion USD(おおよそ4千億円)になったと紹介していました。売り上げの仕組みが違うので単純な比較はできませんが、楽天の2012年12月期の年間売り上げが単体で1,637億円ですので、iTunes Storeがどれだけ大きいかがわかります。

Horace Dediu氏はiTunes StoreとAmazonの比較もしています。ただしアマゾンは全体の売り上げは公開するものの、デジタル配信の売り上げは公開していませんので、単純比較はできません。

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なおGoogle Playはデータが全く公開されていませんので、情報がありません。

AppleのカンファレンスコールではiTunes Storeが多数の国で展開していることも紹介されました。音楽:119国、映画:109国、書籍:155国、アプリ:155国。このあたりはWikipediaに既に詳細に記載されていました。うち、有料の音楽が購入できるのは60強の国です。アプリは190の国で購入できます。Google Playもまた多数の国(134)で展開していますが、アプリしか買えない国がほとんどで、その他のデジタルコンテンツが買える国は極めて少数(14国)です。

Amazonについては詳しく調べていないので断言できませんが、Wikipediaを見る限り、Amazonのウェブサイトがある国がそもそも10程度しか無いようです。デジタルコンテンツの配信もこれらの国に限られているのだろうと私は想像しています。

なお比較のためにPlayStation Storeも確認しましたが、おおよそ50の国で展開しているようです。

デジタルコンテンツ配信におけるAppleのイノベーション

これだけAppleが強い背景には地道な努力がもちろん大きいのでしょうが、Appleがかなりイノベーションをしてきたことも忘れてはいけません。

違法音楽ダウンロードに各レーベルが戦々恐々としている時代に、世界でいち早く有料の音楽配信サービスを展開したのがiTunesです。アプリを配信するApp Storeのコンセプトを大きく成長させて、メインストリームにしたのもAppleです。

こういうイノベーションを先駆けたおかげでこれだけデジタルコンテンツ配信に強いのでしょう。

北米における2013年2月のタブレットの使用統計

Chitikaより北米における2月のタブレットの使用統計が発表されました。

Chitika February 2013

特に今回は2012年12月、2013年1月のデータを並べて、ここ3ヶ月の傾向を見ています。

Chitika 2013 trends february

私が思うところでは、ポイントは以下の通り;

  1. Kindle Fire, Samsung Galaxy, Google NexusおよびBarnes & NobleのNookはいずれも年末商戦で大きく使用率が向上しました。しかし、どれをとっても2月には微増または微減となっています。Androidのタブレットはなぜ年末商戦でしか売れないのか?が気になります。
  2. Google NexusはKindle Fire, Samsung Galaxyから遠く離されたままで、その差を埋める様子は特にありません。評論家からあれだけ絶賛され、Googleが赤字で売っているとも言われている機種が、どうして販売が伸びないのかが不思議です。

仮説としては以下のことが考えられます;

  1. Androidのタブレットは贈呈用には人気ではあるが、自分のために買う人はあまりいない可能性。
  2. 何かを買うとき、通常は「必要かどうか」を考えて買います。しかしクリスマス商戦というのは、「必要かどうか」または「欲しい」ではなく、「何かをプレゼントしなければならない」という状況下における購買活動です。「必要かどうか」という基準ではAndroidは弱い可能性があります。
  3. Google Nexusのブランドは評論家に絶賛されることが多く、これはNexus 7のみならず、Nexus 4についても言えます。しかし実際の購買になると、Kindle FireやGalaxy Tabに負けています。Kindle Fireはamazon.comのトップページにずっと表示されていますし、すべてのページの右上にKindle Fireの広告があります。逆に言うと、それぐらいのことをやらないとAndroidタブレットは売れないとも言えます。
    Amazon top bar 2
  4. Samsung Galaxy Tabの強みはおそらくはマーケティングとチャンネル管理の強力さだと思われます。

長期的視点では以下のことが気になります;

  1. プレゼントとして買われたものが、どれぐらいの顧客満足度を維持できるのか?
  2. 顧客満足度が高ければ、自分用に買う人が増え、年間を通して売れるようになるはずです。果たしてそうなるのか?

Samsung Apps StoreとGoogleばなれ

Androidのバリューチェーンの中でSamsungがどんどんと力を付け、Googleよりも力を付けつつある点について何回かブログをしました (1, 2)。またAndroidで儲かっているのはSamsung1社という状態になっているため、他のメーカーもGoogleに頼らない、Androidに頼らないマーケティング戦略を打ち出さざるを得ない状況も生まれています(3)。

Samsung Appsのキャンペーン

どうやらこの動きは加速しているようです。

Samsungはモバイル用ゲームを作っているElectronic ArtsのChillingo部と提携し、“100% Indie”というキャンペーンを開始するそうです。

以下抜粋

“100% Indie” allows developers to tap into the phenomenal growth that Samsung is experiencing. – See more at: http://news.ea.com/press-release/mobile-and-social/chillingo-and-samsungs-100-indie-developer-program-offers-best-reven#sthash.S9vu3ir6.dpuf

Developers will receive 100% revenue from March 4, 2013 – September 3, 2013, 90% revenue share from September 4, 2013 – March 3, 2014, 80% revenue share from March 4, 2014 – March 3, 2015, and after March 4, 2015 on Samsung Apps, developers will receive 70% revenue share.

Kevin Tofel氏が解説していますが、Google PlayやAmazonのAppstoreでは開発者は売り上げの70%を手にします。しかし100% Indieのキャンペーンでは、まず最初の6ヶ月間は売り上げの100%が開発者に行きます。そして6ヶ月ごとにこの比率は10%ずつ下がり、2015年の3月からはGoogleやAmazonと同様の売り上げの70%になります。ゲームに限定されているようですが、新しいゲームに限定されているという記載はなく、既にGoogle Playなどで販売されているゲームでも大丈夫そうです。

目的は明白で、Samsung Appsの開発者向けプロモーションです。つまりGoogle PlayやAmazonのAppstoreでソフトを販売するよりも、Samsung Appsで売った方が儲かりますよと開発者に持ちかけ、開発者がSamsung Appsでの販売を選択するようにさせたいのです。

Kevin Tofel氏が指摘するように、Gartner Researchの調査結果によるとAndroidスマートフォンの実に42.5%がSamsung製です。Androidタブレットの世界でも、45%がSamsung製だとするデータもあります。つまりSamsung Appsの潜在的なリーチはGoogle Playには及ばないものの、脅威を与えるのに十分です。

Samsungが仕掛けられる展開

Samsungの戦略はわかりませんが、Androidの世界での圧倒的なシェアを活かせばいろいろなことができます。

  1. Google Playよりも安い値段でアプリを販売。これはAmazonと同じ戦略ですが、Amazonはタブレットしか販売していないので、マーケットがまだ小さいです。同じことをSamsungスマートフォンでやればGoogle Playばなれは加速します。
  2. 開発者の優遇。Google Playは売値の70%を開発者に還元しています。Samsung Appsは100% Indieキャンペーンでは期間限定で還元率を高くしていますが、同じような戦略を拡大することができます。

Samsungはスマートフォンで莫大な利益を得ており、Samsungのモバイル事業だけでもGoogleの全事業より儲かっています。またSamsungの携帯電話の売り上げはAmazon全体の売り上げをしのいでいます(Amazonは超薄利多売のため、ほとんど利益がありません)。Samsung Appsで仮に赤字になったとしても、その分スマートフォンが売れるのであれば、赤字分は容易に回収できます。

もしSamsungがSamsung Appsを積極的に展開し、開発者優遇策を通して独占的なタイトルを集め、かつ売値をGoogle Playよりも低くすれば、Google PlayもAmazon Appstoreも窮地に立たされます。GoogleもAmazonも自らのマージンを減らすことで対抗しようとするでしょうが、Samsungのような強力な赤字回収メカニズムがないので、まともに戦えません。

Googleが怖がっているのはもっともなことです。

戦略的な話をすると

より高いレベルの戦略論で言えば、

  1. GoogleもAmazonもハードおよびOSに対する戦略は同じです。つまりハードウェアおよびOSをコモディティー化し、誰でも入手できるようにします。そしてネット広告もしくはネットでのコンテンツ販売で儲けるという戦略です。
  2. しかしGoogleやAmazonの戦略とは裏腹に、ハードウェア、OS、販売チャンネル、マーケティングの力がバリューチェーンで最大の位置を占める展開となり、それに強いAppleとSamsungだけが勝っています。
  3. 一方でコンテンツ販売に関しては、AmazonにしてもGoogleにしても優位性が出せていません。物流が重要な世界と異なり、デジタルコンテンツの販売ではAmazonですら優位性がなく、参入障壁が低くなっています。むしろハードで勝っているところがデジタルコンテンツ販売でも勝つという展開になる可能性があります。
  4. なぜそうなるかというと、スマートフォンもタブレットもまだ”Good Enough”に達していないからです。Appleが新製品のiPhoneを出したり、Samsungが新しいGalaxyを出せば飛ぶように売れます。まだまだ顧客は新しくて高機能なハードを求めているのです。これが逆に「もう古いやつでいいや」となればハードがコモディティー化していきます。
  5. ハードやOSでの差別化がバリューチェーンで大きな位置を占める限り、GoogleやAmazonが優位に立つのは難しくなります。

GoogleもAmazonも戦術レベルではなく、戦略のレベルで苦戦しており、なかなか出口が見えません。大きな転換がない限り、Apple, Samsungの優位は続くと予想され、かりにHTCが復活しても2強が3強になるだけで、Googleにとってはますます頭痛の種が増えるでしょう。

タブレットにおけるAndroidの追い詰められた現状

iPadが圧倒的に強いタブレット市場において、それでも徐々にAndroid陣営は勢力を伸ばしつつあります。とはいえ、状況はGoogleにとってかなりまずいように思えます。なぜならAndroidを前面に出して売れている気配が全くありません。

iOS vs. Android

という構図ではなく、

Apple vs. Amazon

もしくは

Apple vs. Samsung

という状況になっています。テクノロジーブロガーはGoogleに注目しています。しかし実際の販売状況および利用状況を見る限り、Googleは「蚊帳の外」感すら漂っています。

以下データを見ていきます。

Millennial Mediaというモバイルの広告事業を展開している会社が発表したデータをまず紹介します(Apple Insider経由)。ここで見ている数字は広告がどれぐらい多く閲覧されたかを示すもので、広告はアプリなどに埋め込まれて表示されます。

まずはスマートフォンを含むデータ。Appleが2012年にシェアを25.36%から31.20%に伸ばしている結果となっています。Samsungも同様に16.80%から22.32%に伸ばしています。

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タブレットに限ったのが以下のデータです。Androidがシェアの41%を握るまでに成長しているものの、その原動力は圧倒的にSamsungによるものであり、次いでAmazonとなっています。GoogleがブランディングしているNexus 7はAsusのシェアに含まれていますが、Androidのうちのわずか5%です。

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AmazonのKindle Fireは、OSとしてはGoogleのAndroidを使っていますが、激しくカスタマイズされていてAndroidの存在感を消しています。それどころか、メーカー保証を損なうような改造を行わない限りGoogle PlayストアなどのGoogleのサービスを利用することができなくなっています。

SamsungはAndroidをそこまで改造しておらず、普通のGoogle Playを使うことができます。しかしスマートフォンでもタブレットでも圧倒的に強いSamsungはAndroidを脅かす動きが顕著に出てきています。独自のモバイル用OS Tizenを2013年中に発表予定していることもそうですが、スタイラスによるペン入力やマルチウィンドウの独自ソフトを組み込んで、Samsungだけの機能を強化しようとしている点も見逃せません。

Nexus 7はアメリカでの発売が7月で販売期間が短いという問題がありますが、機能の割には圧倒的に安い価格で提供していて、なおかつ評論家の間では非常に好評だったにもかかわらず、Samsungの遙か後方に位置しています。販売チャンネルをしっかり管理しているSamsung、独自の強力な販売チャンネルを持っているAmazonとの差がくっきり出ているように感じます。

なお同じような結果は同業者のChitikaからも発表されています。Chitikaのデータの違いは2ヶ月ごとに更新されている点で、そのため年末商戦に強いAmazonのシェアが高くなっています。

Chitika January Tablet Graphs 1 2

推察

GoogleはAndroid OS自身からは利益を取らず、Android OSを使っている利用者からの広告収入やオンラインストアで利益を得ようとしています。そのためにはAndroidがどう使われているかをある程度コントロールする必要があります。

しかしAmazonのKindle FireユーザはAmazonのオンラインストアに囲い込まれているため、Googleのストアが入り込むことができません。Kindle FireのブラウザもAmazon製ですので、Googleがコントロールできません。

SamsungはGoogleを排除していません。しかしGoogleのタブレット戦略はNexus 7後もほぼSamsung1社に依存しています。力関係は圧倒的にSamsungに傾いています。特筆するべきは、ちゃんと粗利を稼げるAndroidタブレットはSamsungしか作れていない点です。

Androidはタブレットのシェアを伸ばしました。しかしその犠牲として、Googleは市場をコントロールする力を失いました。価格崩壊も起きていて、混沌としています。2013年がどうなるか、予測不能です。

GoogleやAmazonが採用しているビジネスモデルの問題点

AmazonのKindle Fire、そしてGoogleのNexus 7およびNexus 4はハードウェアを赤字覚悟の値段で売って、そしてコンテンツもしくは広告で利益を確保するという戦略です。これは古くからあるビジネスモデルであり、たまには成功例があるものの、うまくいかないことも多く、またイノベーションを阻害する可能性があることをこのブログでも以前から解説しています。

ハードウェアを赤字で売って、コンテンツで儲けようというやり方はゲーム機の世界で盛んに行われています。そのゲーム機の新製品サイクルは7年のようです。

ソニーがPS4を年末に投入すると発表されました。前のPS3が2006年11月に発売されたものですので、ちょうど7年前になります。2006年と言えば、AppleがPowerPCプラットフォームを離れ、Intelに移行開始した年。この頃に発売されたマシンは当然ながら最新OSのMountain Lionが動きません。大不評だったWindows Vistaがリリースされたのもこの頃です。またiPhoneはまだ初代ですら発売されておらず、日本はまだまだガラケー全盛時代です。GoogleはまだBlackberryタイプの携帯電話を開発していました。

7年というのはITの世界では記憶がかすむほどの大昔です。でもゲーム機の世界ではPS3のライバルのXbox 360が2005年の発売、任天堂のWiiも初代WiiからWii Uまで6年間空きました。

AmazonとGoogleが採っているビジネスモデルというのはそういうものです。ただしビジネスモデルが異なるAppleが業界を牽引しているため、イノベーションを緩めることができないのです。もしもAppleが何らかの理由でイノベーションを緩めてしまったら、AmazonもGoogleも緩めるでしょう。そうしないとコストの回収ができません。

コンテンツの消費をビジネスにするAmazon、コンテンツ制作をビジネスにするApple

Amazonの新しいKindle Fire HDの発表を見て、AppleとAmazonが今後覇権を争うようなことを言っている評論家がインターネット上にたくさんいましたが、僕はあまりそう思いませんでした。

確かにAppleとAmazonはかぶるところが多いのですが、両者のイノベーションの方向が根本的に違うのです。

AppleはIT技術を通して、コンテンツを制作するツールをプロ及び大衆に提供する会社です。これは昔ではDTP、そして最近ではiLife, iBooks Authorなどで見ることができます。iPod発売前にiTuneが出た当初も宣伝コピーは”Rip, Mix, Burn”であり、単に音楽をPCで消費するのではなく、Mixという創作活動に大きなウェイトが置かれていました。

AmazonはタブレットPCをコンテンツ配信・閲覧ツールとして位置づけていて、その意味においては確かにコンテンツを握っていることが市場で非常に大きな力になります。

AppleはiPadをコンテンツ配信・閲覧ツールとして位置ていません。近い将来にはPCに代わるデバイスとして位置づけています。iPhotoやiMovieで音楽やビデオを編集することができますし、Garage Bandで音楽を作ることができます。スケッチをしたりするためのアプリケーションもサードパーティーからたくさん提供されていますし、Pagesをはじめとして文章を書くためのアプリも充実しています。

Amazonは世の中の見る価値のあるコンテンツは市場で発売されているものであり、それはAmazonを通して買ってもらいたいと思っています。

対してAppleは、創造力は誰にでもあり、誰でも高品質なコンテンツが作れるようにすることを一貫して会社の使命と考えています。

Appleもコンテンツを消費するためのツールはあり、そこはAmazonとかぶります。iTunes, iPodとApple TVです。iPadは違います。

個人的にはAppleのようにメディアの可能性をとことん追求して、新しいチャレンジをどんどんしてくれる会社がうれしいです。メディアの可能性はたくさん残っています。Amazonにように既存コンテンツの消費方法だけに注力するのは、世の中全体としては実にもったいない話です。

AppleとGoogle, Amazonのイノベーションのおさらい

「iBooks Authorは電子書籍ではなくブックアプリを作るソフト。だからePub3じゃない。」というエントリの補足の意味で、AppleのイノベーションDNAの特殊性について簡単にメモをします。

Googleのイノベーション

インターネットの検索を劇的に改良したというのがGoogleの最初のイノベーションでした。その後、インターネット広告を使いやすくし、無料で情報を公開していても収入が入る仕組みを作りました。

今まで全く不十分だったネット検索の完成度を高め、インターネットの使い勝手をよくし、無料コンテンツが増える仕組みを作ったのがGoogleです。

ただその後に出してきているGMail, Google Apps, Androidなどを見ると、Googleのイノベーションの形は変化しています。

すでに十分な性能を持っていた他社の製品をまねて、無料で公開し、そして広告で収入を得ていくモデルです。GMailは、それまでは有料でメールアカウントを購入していたのを無料にしたものです(もちろんいろいろと使い勝手はいいのですが、GMailの最大の売りは無料で容量が大きいことです)。Google Appsはマイクロソフト・オフィスを無料にしたものです。そしてAndroidはiPhoneのOSを無料にしたものです。

初期のGoogleは「不十分」なものを改良していくイノベーションをしていました。

現在のGoogleは「十分」なものを無償化するというイノベーションをしています。

Amazonのイノベーション

Amazonのイノベーションは、店舗をインターネットに持っていったことです。インターネットに持って行くことによって、エンドユーザに与えたベネフィットは、家に居ながらにして本が買えるという利便性だとか、在庫している本の種類が多いことだとかだったと思います。あと物流のスケールメリットを活かして、価格を安く抑えたりできているのだと思います。

あとKindleでは、紙媒体の本を電子端末で閲覧できるようにしています。これもイノベーションです。

Amazonのイノベーションの特徴は、物理的な店舗あるいは物理的な書物を電子化しているということです。

Appleのイノベーション

Appleのイノベーションの特徴は、それまで一般消費者が全く見たこともない技術を、わかりやすいパッケージで一般の人向けに販売していくことです。

カラーパソコンの走りだったApple IIに始まり、Macintosh、iPod、iPhone、iPadのいずれをとっても、一般人が想像もしていなかったものを、いきなりわかりやすいパッケージで出したというのがAppleです(「一般人」を強調しているのは、Appleがその技術を発明しているとは限らないからです)。

今のGoogleそしてAmazonは、すでにあるものをほぼそのままにインターネットに持って行ったり、価格を下げたり(無料にしたり)しています。それが可能なだけのビジネスモデルを裏で持っているからそれができるのです。

Appleはビジネスモデル云々ではありません。価格云々でもありません。少なくとも一般人から見ると、どこからともなく画期的な製品が沸いてくるというのがAppleのイノベーションです。

AppleのイノベーションDNAからすると、ePub3のスペックに則って、紙媒体の書籍を電子化するだけというのは許されません。そういうのはAmazon流のイノベーションです。AppleのイノベーションDNAはiBooks Authorを作るDNAなのです。

Amazon Kindle FireがAndroidのイノベーションを阻害する理由

昨日、「AmazonのAndroidタブレット Kindle のビジネスモデルは甘いんじゃない?」という題で、「ハードで赤字を出してソフトで儲ける」という戦略はKindle Fireには適応できないという議論をしました。したがって短期的にKindle Fireの売り上げは伸び、いったんは成功したように見えたとして、長期的には成功しないと判断しました。

昨日、AsymcoのHorace Dediu氏がブログを更新し、別の角度からKindleがタブレット市場に破壊的イノベーションをもたらさない理由を紹介しました(“The case against the Kindle as a low end tablet disruption“)。要点は以下の通りです。

  1. 破壊的イノベーションが起こるためには製品が継続的に改良されていく必要があります。しかしKindle Fireは赤字で販売され、ソフトの利益でそれを埋め合わせています。したがってKindle Fireの改良に投資するインセンティブは低く、継続的な改良は望めません。
  2. Kindle Fireを赤字で売る戦略が成功する要件は、タブレット市場が成熟し、”good enough”の状態になっていることです。タブレット市場が製品ライフサイクルの後期にいることです。しかし少なくともAppleはその正反対に捉えていて、タブレットのイノベーションは始まったばかりだとしています。Appleがイノベーションを続けることができれば、Kindle Fireが破壊的イノベーションを起こすことはありません。

Horace Dediu氏の分析はClayton Christensen氏のイノベーション論に基づいていますが、非常に的確であると思います。Kindle Fireが破壊的イノベーションとしてiPadの脅威になるとは思えません。

僕はさらに一歩踏み込んで、Kindle FireがAndroidのイノベーションを大きく阻害する危険性が高いことを以下に論じます。その一方でAppleはiPadのイノベーションを阻害することは考えにくいので、iOSとAndroidの差がますます広がるだろうと考えています。 Continue reading “Amazon Kindle FireがAndroidのイノベーションを阻害する理由”

AmazonのAndroidタブレット Kindle のビジネスモデルは甘いんじゃない?

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アップデート
関連する新しい記事「Amazon Kindle FireがAndroidのイノベーションを阻害する理由」もご覧ください。

Amazon CEO Jeff Bezos 氏は、Android ベースのタブレット「Kindle」を驚異的な低価格で発売すると発表したそうです。

最も安い読書専用の端末の価格はわずか79ドル。その他のモデルも思い切った低価格に設定されている。Kindle Touch は99ドル、Kindle Touch 3G が149ドル。最上位モデルのKindle Fire でさえたったの199ドルだ。これは、Apple iPad 2 の最も安いモデルより、さらに290ドル安い。

しかしAmazonの狙いはハードを赤字で売ってソフト(電子書籍や映画などAmazon.com サイトからダウンロードするコンテンツ)で儲けることだという指摘があります。

古典的な手法です。

有名なのは安全剃刀(ホルダーを安く売って、替え刃で儲ける)、コピー機(コピー機を安く売って、トナーで儲ける)、プリンタ(プリンタを安く売って、インクで儲ける)、プレステ(ハードを安く売って、ソフトで儲ける)などです。

でもうまく行くとは限りません。残念ながらマーケティングの本で紹介されるのは成功例ばかりで失敗例が少なく、あまり有名な失敗例はありません。

でも例えばリアルタイムPCR装置等はその例と言えるでしょう。価格競争が激しい為に価格はどんどん下がって、ハード単体では利益がほとんどでないところまで値段が下がってきています。そこを試薬の利益でカバーしようとしましたが、賢い顧客はABIやロシュの試薬を買わずにキアゲンやタカラバイオの安くて高品質な試薬にどんどん切り替えました。

以下では、成功例と失敗例を分けるのは何か、この仕組みが成功するための条件は何かを考えます。そしてAmazon Kindle Fireが成功するかどうかを予想してみようと思います。 Continue reading “AmazonのAndroidタブレット Kindle のビジネスモデルは甘いんじゃない?”