ポータルサイトについての勉強

最近いろいろなアイデアが出てきて、バイオの買物.com にいろいろな機能を付けています。例えばGoogleの検索を利用した、メーカーウェブサイト限定の検索サービス「バイオメーカー限定Google検索」とか、「バイオメーカーのニュース」、「バイオメーカーのRSS」。当初のバイオの買物.comでは、価格.comを意識した製品比較しか機能を用意していなかったので、かなりやっていることが分散してきた印象です。

ただ、裏では全部つながっていて、バイオメーカーのニュースを製品比較に反映させるために作っておいた内部ツールを単に公開しているだけなのです。そしてすべては100万以上のバイオの製品を、なんとか効率よく管理したいという思いから来ています。

ところでこのように提供しているサービスが分散してくると、「ポータルサイト」という言葉を意識します。果たしてポータルサイトとは何か、そしてどのようなポータルサイトが成功しているかを勉強しておくことが必要になってきます。

例えばIT用語辞典「e-Words」によるとポータルサイトというのは

検索エンジンやリンク集を核として、ニュースや株価などの情報提供サービス、ブラウザから利用できるWebメールサービス、電子掲示板、チャットなど、ユーザがインターネットで必要とする機能をすべて無料で提供して利用者数を増やし、広告や電子商取引仲介サービスなどで収入を得るサイトのことをいう。

ということだそうです。

Wikipediaだと

ポータルサイトは、検索エンジン、ウェブディレクトリ、ニュース、オンライン辞書、オークションなどのサービスを提供し、利用者の便宜を図っている。
ポータルサイトのビジネスモデルは、サイトの集客力を生かして広告や有料コンテンツで収入を得ることである。1996年以降のインターネットブームに乗じて、多くのポータルサイトが乱立したが、徐々に統廃合が進んでいる。

はてなダイアリーだと

主に検索エンジンやリンク集などを中心として、様々なサービスを提供することにより、利用者の増加を図っている。

面白いと思ったのは、Wikipediaでも「元々ポータルとは、港(port)から派生した言葉で、門や入口を表し、特に豪華な堂々とした門に使われた言葉である。」としていますが、上記で定義されているポータルサイトはいずれも単なる「港」の役割を超えて、独自のコンテンツの充実に非常に精力的に取り組んでいるということです。

逆に、単なる「港」では価値がなくて、それ以上の独自性がないと生き残れないという状況が垣間みられます。

それはまるで中部国際空港が他の空港との差別化を図って、「レンガ通り」や「ちょうちん横丁」、さらには展望風呂「宮の湯」などを用意してテーマパーク化しているかのようでもあります。

あぁ、ポータルも大変なんだなぁという印象です。単に港だとか玄関口とかでは駄目で、いろいろ独自の工夫を凝らさないといけないんだということを痛感します。

バイオの買物.comは確かにコンテンツを増やしましたが、単に寄せ集めでは駄目だなと。ましてや、単に他のサイトへの玄関口であっては駄目だなと。それぞれのコンテンツが単独であっても通用するレベルとなるように、それぞれを成長させなければならない。これを勉強しました。

ウェブサイトの顧客満足度を知るためのツール

ウェブサイトに来てくれたお客様が、そのウェブサイトにどれだ満足したか。
これを無料で、しかも簡単に調べるためのツールがあります。

4Q

お客様に4つの簡単に質問に答えてもらって、その結果を分析する無料のツールです。
なんだかとっても良さそう。(紹介が英語のビデオですが、割とわかりやすい英語です)

僕は早速 バイオの買物.com に導入します。

うまくいくようであれば、各バイオメーカーにもぜひ導入してもらいたいので、経緯報告はこのブログで紹介します。楽しみにしていてください。

「広告は北風、PRは太陽」NB onlineの記事

NBonlineに「広告は北風、PRは太陽」という記事がありました。

すぐにピンとくる記事ではありませんが(それとも僕の日本語力の問題かもしれませんが)、こう言いたいのだと思います;

  • 広告は物量作戦で多くの人にメッセージを伝える手法。信憑性が薄い。
  • PR (Public Relations)は消費者と関係性を作り、消費者や周囲の人が製品を中心にコミュニケーションする環境を作り出すこと。(「広報」という言葉はマスコミに情報を流すというニュアンスがありますが、それが主ではない。)

研究者の皆さんはバイオのメーカーとPR的な関係が築けていますか?
メーカーの皆さんは研究者の方とPR的な関係を築けていますか?

そして何があれば、このPR的な関係がよりうまく築けますか?

私はこのPR的な関係を作り出す場として、バイオの買物.comが何らかの役割を果たせたらと願っています。

日本のネット系バイオベンチャーのかたち

仕事柄、バイオの買物.comだけでなく、他のネット系バイオベンチャーについてちょくちょく様子を確認しています。その中で一つ気になることがあります。

それはちょうど以下のブログに書いてあることと同じです。
日本のネットベンチャーが技術革新よりも「ネット財閥」をめざす理由

このブログで書いていることを要約すると;

  • アメリカのネットベンチャーは最先端のプログラムを駆使した技術指向とビジネスを結びつけている(グーグル・アマゾン)
  • 日本のネットベンチャーは企業買収によってビジネス規模拡大を狙っている(楽天・ライブドア)

そして日本のネットベンチャーの原型はソフトバンクにあるとしています。

僕らはバイオ研究者向けサービスという一つの狭い市場(といっても研究用バイオ製品の市場はCDの売上に匹敵しますが)でやっていますが、同様の財閥にならないことを僕は期待しています。ただ見回していると、みんな結構いろいろとビジネスを拡大していますね。

いろいろなビジネスに手を広げるのも一つのやり方と言えばやり方です。でも僕の中の技術者魂は、何か一つのものにとことん深く入り込んで、不可能だったものを可能にするぐらいの技術開発をしたいと言っています。その方が価値のあることだよって。

バイオの買物.comでは、100万以上あるバイオ研究用製品(ナカライのバナー参考)の情報を管理し、目的にあったものを簡単に見つけられるようにする。このための技術開発に絞って活動をしていこうと思っています。大上段に構え過ぎかもしれませんが、ゲノム研究で言うアノテーションと同じだと自分自身は認識しています。

この巨大な複雑さに挑戦し、なおかつ最小限のリソースで実現していくこと。

これ、はっきり言って快感なんです。。。

RSSは便利だ:ニュースアップデートのワークフロー

僕はいまバイオの買物.comニュースセクションのアップデートワークフローを確認していますが、すごく便利です。

ワークフローはこんな感じです。

  1. 各メーカーのウェブサイトを自動的にRSSに変換するプログラムを作成。もうこれはかなり作ってあって、バイオの買物.comで一般に公開しています(RSSページ)。
  2. メーカーのウェブサイトが変更になると、僕の使っているRSSリーダー、NetNewsWireに新着メッセージありのマークがつきます。メールソフトで新着メールが来たような感じです。
  3. RSSを確認し、メーカーウェブサイトで再確認後、今度はバイオの買物.comのニュースセクションに記事を書きます。そしてアップロード。

これをやっていると、メーカー自身のRSSよりも早くRSSに記事が投稿できてしまうことが多いです。
どうもメーカーのRSSは、CMSが自動生成しているものばかりではなく、RSSのコンテンツを改めて書き直していて、少し遅れるものが多いようです。

NetNewsWire.png

別にRSSに記事が載るのに一分一秒を争うわけではないので、どうでもいいのですが、メーカーのRSSより早くバイオの買物.comのRSSが作れるのはちょっとうれしいですね。

ページビューによるウェブサイト人気比較の問題点

ウェブサイトの人気度を測るとき、しばしばページビュー(PV)が使われます。ページビューというのは、そのページが表示された数を表しているはずなので、単純に考えると、そのウェブサイトのページがどれだけ閲覧されたかを示しているはずです。

そこでウェブサイトを運営している人たちは、「うちのウェブサイトは月に30万PVがあるほどの人気だから、広告を載せると効果的だよ!」とか言って、広告を載せてもらおうとする訳です。

しかし大きな問題点がいくつもあります。
中でも非常に大きいのはロボットだとかクローラと呼ばれているものの影響です。

ウェブサイトにアクセスしているのはユーザだけではありません。特に最近非常に多いのは、上述したロボットです。Google, YahooだけでなくBaidu, Infoseekなどなど、思いのほかに多数のロボットがウェブサイトにアクセスしています。例えば僕が運営に関わっているあるサイトで見ると、真のユーザからのアクセスによるページビューは全体の20%にも満たないものです。残りの80%はロボットです。つまり月に30万PVあるサイトであったとしても、実際には6万PVしかないのかもしれません。

じゃーどうやって、本当のユーザ数を把握するか。どの解析ツールが最も正確かという話になりますが、これがまた非常に難しい問題です。ただ傾向としてはっきりしているのは、WebalizerだとかClickTracksなどのように、サーバに蓄積されたアクセスログを解析するソフトウェアは必ず多めにページビューを報告してしまうこと。そしてGoogle Analyticsのように第三者が解析するタイプのサービスは、必ず少なめにページビューを報告してしまうことです。真の数字はどこかその間にあって、個人的にはGoogle Analyticsの方に近いのではないかと思います。

他にもこれについて書いている人がたくさんいますので、一部を例としてあげます。どっちの解析結果が正しいか、かなり意見が分かれているようですが

さて、問題は何をするべきかです。
WebalizerとGoogle Analyticsのどっちが正しいかを議論したとしても非常に技術的に話になってしまうし、それぞれの立場によって思惑があるでしょうから結論は出ません。

そこで僕の提案は、以下の通り;

  • 広告主はそれぞれの媒体を同じ土俵で比較し、媒体を選択する必要があります。そこで、無料で簡単にセットアップできるGoogle Analyticsに統一して、使用を検討している媒体にそれぞれGoogle Analyticsの解析結果を報告させるべきです。こうすれば各媒体を同じ土俵で単純比較できます。
  • 媒体側は一歩進んで、Google Analyticsの結果を報告するだけでなく、Google Analyticsへのアクセス権をクライアントに提供してあげるべきです。そうすればクライアントは報告をリアルタイムで受け取ることができるし、Google Analyticsで独自に分析を深めることもできます。そして媒体からの報告が嘘偽りのないことを確認できます。

バイオの買物.comでは近いうちに広告主の募集を始めようと思っていますが、こうやって透明性の高い形を用意することが必要だろうと思っています。

いずれにしても、広告主側が気をつけなければいけないこと

それはウェブサイトの人気度の尺度として、「うちは何十万PVですよ!」と言っている人がいても、必ずそれを疑うことです。実際には一桁違うかもしれないので。

最後にWebalizerなどのソフトとGoogle Analyticsのシステムの違いについてまとめてみました。あまり細かい話はしないで、ざっとした感じですが。

  Webalizerなど Google Analytics
インストール サーバにインストールもしくはローカルのパソコンにインストール Googleにシステムがあるので、インストールの必要なし
ウェブページの加工 加工の必要なし Googleと連絡をするためのコードを全対象ページに埋め込む必要あり。ページ数が多く、すべて静的なHTMLで書いている場合は一見面倒だが、プロが使っているようなHTMLエディターを使えば一括でコードを埋め込むことができるはず。
ページビューのカウント対象 全アクセス。ロボットも含む。 ロボットは含まない。人間がブラウザを使ってアクセスしたもののみカウント。ただし、JavaScriptをオフにしているユーザはカウントされない。
ビジターのカウント 独立IPアドレスごとに数える。したがって、企業や大学などでリモートIPを複数のパソコンで共有している場合、複数のユーザでも1人のユーザと数えられる可能性が高い。 Cookieを使ってユーザを追跡。Cookieをオンにしているユーザについては正確にビジターをカウント。Cookieをオフにしているユーザはカウント対象にならない。
PDFなどのダウンロード カウントされる。ただし、1ダウンロードにつき複数回カウントされる可能性がある(たぶんブラウザの動作による)。 カウントされない。
レポートの傾向 ページビューはロボットによって大きく水増しされる。研究者は大きな施設でリモートIPを共有しているので、ビジター数の絶対値は当てにならない。設定でロボットを排除することも可能だが、独自に設定を変更する必要があり、他の解析ツールを使った結果と比較できない。 ページビューもビジター数も少なめに出る。ただしJavaScriptやCookieを使わないと多くのバイオメーカーのウェブサイトにアクセスできないことを考えると、これらをオフにしているユーザはごく少数と予想される。したがってページビュー数もビジター数もおおむね正確な値と予想される。
加々美のお勧め 広告をどこかに載せたいと思っている広告主は、こういうツールで出力されるデータを信用するべきではない。ロボットは品物を買ってくれないので。 広告主はこっちのデータを要求していくべき。なるべくならレポートを自分で確認するためのアクセス権も要求するべき。

パレートの法則 拡大解釈する人が多すぎる

パレートの法則というものがあります。80:20の法則とも呼ばれます。もともとはイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(Vilfredo Federico Damaso Pareto)が発見したもので、所得分布を解析したものです。国や時代の制度と無関係に、社会全体の所得の多くは一部の高額所得者が占めていると主張したものです。

現象としてはまさにその通りのことが多く、上にリンクした記事では、自然現象、品質管理、在庫管理、売上管理、マーケティングにも当てはまると記しています。品質管理であれば、品質問題の優先順位を理解し、どれから解決すればいいかの指標に使われます。在庫管理であれば、在庫するべき製品と、在庫しないで取り寄せにするべき製品の区別に使用します。マーケティングであれば、ターゲットするべき顧客と、悪く言えば無視するべき顧客の区別に使用します。

しかし、パレートの法則を安易に解釈してビジネスに応用してしまうと、非常におかしなことになってしまいます。以下は実際に僕が職場で見たり聞いたりした例です。

  • 20%の施設で売上の80%を稼いでいる。だから営業資源をその20%の施設に集中しよう。
  • 20%の製品で売上の80%を稼いでいる。だから残りの80%の製品は在庫せずに、海外からの取り寄せにしよう。

さて、このようなことをやると何が起こるかをちょっと考えてみます。

売上の80%を稼いでいるという20%の少数の施設というのは、だいたいどの会社でも大のお得意さんです。どこの会社もそこで売上を稼いでいるので、営業資源をたくさん投入しています。そのため過当競争になっています。したがってよほどの投資をしない限り、顧客側から見たときの営業の存在は、その他大勢になってしまいます。つまりせっかく多くの営業投資をしていても、顧客から見れば無視しても良い存在になってしまいます。

見方を変えるとわかりやすいと思います。メーカーにとってみれば、その施設は売上の80%を稼ぎだす重要施設です。でも顧客にとってみれば、そのメーカーというのは「その他大勢」にあたります。顧客にとっての20%の価値しかない、80%のメーカーの一部にすぎないのです。

それに対して、売上の20%しか稼いでいない「その他大勢」の顧客に対して営業資源を投入したとします。そうするとその顧客から見たとき、あなたの会社は80%の価値を生む、上位20%のメーカーの一つになるのです。

在庫についても同じです。よく売れる製品というのはだいたいどのメーカーも同じです。ですからよく売れる20%の製品だけ在庫して、のこり80%の製品を在庫しなければ、結局は顧客の心の中で「その他大勢」に分類されてしまいます。

このようにパレートの法則は「効率化」を生む部分と「その他大勢化」を生む部分があるので、非常に気をつけてビジネスに当てはめなければいけません。

効果が非常にはっきりわかる指標があり、役者が少ないときは、パレートの法則的な考え方は非常に有効です。例えばコンピュータソフトウェアでもパレートの法則が成り立ちます。開発中のソフトウェアについて、いったいどの処理が遅くなっているかを細かく分析するツールも精力的に開発されていて、非常に局所的にスピードアップしている手法が採られています。逆に、十分な分析なしに闇雲に効率化することは、ソフトウェア開発では強く戒められています。

パレートの法則は、闇雲に使うと会社をめちゃめちゃにしてしまいます。でもうまく使うと大きな効果を生みます。残念ながら世の中には中途半端にしか勉強していない人が多いので、間違った使われ方をしている場合が多いのではないでしょうか。

パレートの法則を使ってつもりが、逆に使われてしまった。無駄な80%のユーザを切り捨てたつもりが、逆に自社がユーザから無駄な80%と烙印を押されてしまった。そんなことにならないように、数歩先を読んでから使いましょう。

チラシと郵便物によるマーケティング(時代遅れ?)

何か新しい情報を顧客に伝えたいとき、バイオ研究用製品のマーケティングでは、未だにチラシと郵便物が主流です。

雑誌広告やインターネット広告というやり方もありますし、例えばNatureのメールアドレスなどを利用した電子メールによる告知というやり方も行われていますが、主流という訳ではありません。これらはどちらかというと時と場合によって使われるもので、主流は未だにチラシと郵送物です。

メーカーとして体感する効果が違うのです。チラシとか郵便物の場合は、それを見たと言ってくれる顧客からの問い合わせが入ってきます。今まで認知度が低い製品であれば、売り上げも確実に伸びます。それに対して、雑誌広告を見たという顧客が問い合わせてきた記憶というのはほとんどありません。インターネット広告に至っては皆無です。ですからチラシと郵送物を使うのです。

チラシを配布するときのコストというのは、単独でそれだけを配布するのであれば40-50万円あたりでしょうか。だいたい2万部から3万部を刷りますが、カラーで印刷であれば30万円程度、そして郵送代も馬鹿にならないのでだいたい上述の金額になります。印刷物の場合は印刷会社と校正を重ねないといけないので、だいたい1月のリードタイムが必要になります。結構馬鹿にならない金額ですが、雑誌広告も1月で掲載料が20-30万円とられます。効果を考えるとチラシの方がずいぶんとよく見えます。

ただチラシを誰が配布するかという問題があります。ある程度確立したメーカーであれば、代理店との付き合いがある程度固まっているので、代理店にチラシを配ればだいたい配ってくれます(とメーカーは信じています)。代理店は日本中の研究室に網を張っているので、だいたいの研究者にチラシが配られてくれているかなとメーカーは期待しています。現実はもう少しややこしくて、代理店だって特定のメーカーに肩を入れることがありますので、場合によっては自分が作ったチラシは積極的に配ってくれないかもしれません。

郵便物はダイレクトに顧客に届きます。大きいメーカーはだいたい季刊誌というのがあって、これは代理店から配布するかダイレクトに郵送します。この季刊誌は通常フルカラーで、やはり2万から3万部を刷ります。印刷のお金とこれを郵送するお金をあわせると、一回つくって配布するのに200万円から300万円はかかっていると思います。でも結構学術的なことも書いてあって、顧客が喜ぶ内容なので、メーカー側は効果は大きいと信じています。ブランドイメージの維持にも重要と位置づけられています。ちなみに製品カタログもだいたい3万部を用意していることが多いと思いますが、フルカラーの会社が多いこと、さらに週百ページになることがあるので、これは1回出すのに2000-3000万円かかっています。

もう一つ参考として、分子生物学会などのランチョンセミナー。あれは会場のむちゃくちゃ高い弁当を買わされるということもあって、全体で200万円弱になると思います。自分で会場を借りてセミナーをするとずいぶんとこれよりは安くなります。最近はやってくれるメーカーが少なくなってきているようで、学会企画側が苦労しているとか。

さて本題に戻ります。

チラシと季刊誌にかなり多くのお金が使われていることを紹介しました。でも、そんなにお金をかけた時代遅れのことをしないと顧客である研究者に情報が伝わらないのでしょうか。しかも先ほどもお話ししたように、チラシというのだ代理店経由での配布であり、代理店の思惑が入ってしまいます。もっとストレートなやり方は無いのでしょうか。

他の業界であれば、新聞の折り込み広告、リクルートのようなところが作っている雑誌、価格.com。。。

正直、メーカーでマーケティングを担当していたものとして言えば、いい媒体が無いんですよね。誰か作ってほしいーーー、って思って、いま、自分でそういうのを作ろうとしています。

オンライン広告が好調

Google, YahooそしてMicrosoftのオンライン広告収入が好調で、アメリカの景気が悪いにも関わらず30%程度の成長を見せていることについて、Adage.comに記事が掲載されていました。詳しいことはこの記事に譲るとして、いくつか気になったポイントを紹介したいと思います。

英国のオンライン広告の好調ぶりを以前にもこのブログに紹介していますが、今回のAdage.comの記事は、アメリカにおいても同様にオンライン広告が好調であることを紹介しています。その理由について、1) インターネット広告の方が一般に安いこと、2) インターネット広告の方がターゲットされていること、3) インターネット広告の方がよりトラッキングしやすいことを挙げており、これも以前取り上げた記事と同じです。38%のマーケターはオンライン広告への投資を増やし、一方で36%のマーケターは伝統的なメディアの広告を減らす予定であることが今回の記事で紹介されています。

景気が悪くなっている結果、マーケターは無駄を省き、既に購入を検討している顧客(in-market customers)に重点を移していることも紹介されています。このことはセールスファネルの一番下に位置する顧客層に体する広告の機会を提供する、市場を狭くターゲットしたバーティカルなサイトに有利だとしています。Vanity Fairなどのニュースサイトよりも、例えば新車・中古車の価格比較サイトであるedmonds.comに広告を掲載する方が、既に購入を検討しているin-market顧客を捉えやすいと解説しています。

その一方でバーティカルなサイトであっても、例えば医学情報サイトのWebMDの広告収入の40%は医学と直接関係のない業界からの広告なので、この40%の分の広告収入は2008年には減少していくことが予想されるとも紹介しています。

さて、バイオの業界ではどうでしょうか。

少なくとも日本のバイオの業界が不況と呼べる状態にあることは間違いないと思います。したがって同じようにインターネット広告に力点が置かれていく土壌はあります。しかし以前にも話していますが、バイオ業界では製品情報のインターネットサイトが十分ではなく、広告を掲載するべきサイトがほとんどないという状態です。したがって、本来ならばインターネット広告に収入が偏っていくべきなのに、古いメディアに相変わらず広告費が使われています。またより短期的な効果を得るために、そもそも広告にお金を使うのではなく、営業にお金を使っていく方向に偏っていってしまっています。

これは別に日本だけでなく、アメリカでも同じだと思います。製品比較サイトが実質Biocompare.comだけになってしまっているのは、1.5兆円強の市場規模を考えれば寂しい限りです。

バイオの買物.comに書き込まれたポストに対する回答

先日、以下の内容のポストをバイオの買物.comのフォーラムに書き込まれました。

2ch経由で入ってきたユーザで、主に「ニュース」を見てからコメントしたようです。言葉の調子が非常に強く、冷静な議論を難しくしてしまう危惧がありましたので、ポイントだけ抜粋させていただきました。また、もとのポストは削除させてもらいました。

ただしおっしゃっている内容は本質的なものなので、こちらのブログの方で取り上げました。

メーカーサイトのリンクばっかりで気持ち、どこで調べたかわからない実勢とは異なった価格とか載ってる。どうでもよい試薬の。….
具体的な現場の話でもあれば少しはましになるかもしれないと思います。…..
製品の比較も、一番マーケットシェアをとってるものに対して、2番手、3番手を取り上げるくらいに絞らないと。

まず、最初に僕のスタンスを明確にしたいと思います。

  1. おっしゃっていることは基本的にはよくわかります。
  2. それに対する解決策を提供するのが「バイオの買物.com」の使命と位置づけており、少しずつではあるけれどもその解決した姿に近づければと思っています。

以下、説明していきます。

どこで調べたかわからない実勢とは異なった価格 について

価格はすべて各社のウェブサイトから取り出しています。古い情報になってしまわないように、2週間に1回程度の頻度で更新を行っています。
ただし、この価格が実勢と異なる価格であることは事実です。そしてまさにここが問題になる訳です。

実勢価格は通常、研究室もしくは施設ごと、そしてメーカーごと取引代理店ごとに設定されています。仕組みとしては、メーカーは代理店に対して決まった卸価格で製品を卸します。この価格(仕切り価格)は通常定価の何%というように決まっていて、メーカーごとに異なります。同じメーカーであれば、ほとんどの製品は一律の%になります。またこの仕切り価格は、同じメーカーでも代理店ごとに異なります。最後に代理店が末端顧客(研究者)に製品を販売するとき、メーカーからの仕切り価格に代理店取り分のマージンをのせた価格で販売します。

言葉だけで説明するとわかりにくいのですが、要するにメーカーが代理店に製品を卸す時点で既に卸価格は一つではないですし、その後も代理店は顧客個別に値引きをする訳です。ですから実勢価格とメーカーが設定した希望小売価格は大きく異なってきますし、高い値段で買わされる顧客と安い値段で買えてしまう顧客も出てきます。

このように実勢価格とメーカーの希望小売価格が異なることは別に珍しいことではなく、むしろ当たり前のことです。家電や食品など、大部分の業界で一般的です。逆に実勢価格がどこでも希望校入り価格であれば独占禁止法違反の疑いが出てしまいます。

ただし、バイオ業界では、メーカー希望小売価格から実勢価格を概算するのはそれほど難しくない側面もあります。なぜなら通常は代理店ごとに各メーカーの割引率が一定に設定されているからです。例えば代理店AからメーカーGの製品を購入するときの割引率はほぼ一律15%引き、代理店AからメーカーHの製品を購入するときは一律10%引き、そして同じメーカーGでも、代理店Bから買えば割引率が17%になる、という感じかと思います。ですから、この情報を研究室ごとに整理すれば、メーカーの希望小売価格から実勢価格を計算することはだいたいですができるはずです。何しろ製品数が多いので、代理店が個別の小売価格を設定することはまずやらないからです。

ただし僕が問題と感じるのは、小売価格の不透明性です。代理店は小売価格をオープンにする訳ではなく、すべて各研究室ごとの個別対応です。家電業界の小売りであればインターネット上に価格を載せたりしますが、バイオの業界ではそんなこともありません。すべて個別に、研究室ごとに代理店が値段を変えているのです。実勢価格と異なる希望小売価格であっても、それを見やすい形で整理していくことによって、実勢価格までも少しずつ透明になっていくことを期待しています。そうすれば値引き交渉がうまい研究室でも下手な研究室でも、そして大きい研究室でも小さい研究室でも、それなりに安い価格で製品が購入できるようになると思います。要するに家電業界で起こっているようなことがバイオの業界でも起こるようになればと思っている訳です。

製品の比較も、一番マーケットシェアをとってるものに対して、2番手、3番手を取り上げるくらいに絞らないと について

これについては、僕の意見は逆です。簡便性を重視するのであれば、マーケットシェアが高いものだけを取り上げることは良いかもしれません。でもそればかりだと、結局市場は硬直化してしまいます。

今年もそうですけれども、多くのメーカーはまたもや4月から値段を上げてきました。日本の研究者は予算の減少に悩んでいるのに、試薬の値段が上がってしまいます。メーカーの論理(そしてこれは外資系の論理ですが)からすれば、どうせ研究者はいろいろ調べないだろうから、値上げしても買ってくれるだろうというわけです。言い方は悪いですが、日本の研究者は外資系メーカーからその程度に思われてしまっています。

それを回避するためには、研究者は他社の製品との比較検討を行い、そして性能が変わらないと思われるものに関しては、値段が安い方を買うようにしないといけません。そしてその比較検討の手伝いをするためのウェブサイトがあった方がよいだろうというのが「バイオの買物.com」の考えです。

トップ3社に絞ったときと同じような簡便性でありながら、10社ぐらいを同時に比較できてしまう。そんなサイトになれればと思っています。これは難しい課題ですが、乗り越えるだけの価値はあると思っています。