Brands that are Strong in Developing Countries

In some previous posts (1, 2 in Japanese), I argued that it is very unlikely that the low-price Moto G smartphone will succeed in developing countries, despite being priced below $200 and having relatively high specs.

My argument was based on basic marketing principles, the 4Ps of the marketing mix. In essence, successfully selling a product requires the following to be considered;

  1. Product: Does the product satisfy the demands of the customer?
  2. Price: Is the price right?
  3. Promotion: Is promotion sufficient? Are customers aware of the product?
  4. Distribution (Place): Is the product available at convenient locations?

The Moto G has the Product and Price right. Although the price is a little bit on the high end for developing countries, the high specifications should be able to offset that. The problem lies in Promotion and Distribution. My understanding was that the Motorola brand and the distribution channel was weak in developing countries due to historically having put little effort in these regions.

A recent report by Jana (“Watch out Android: Windows Phone could become the world’s 2nd most popular OS”), although focused on Windows phone, also confirms that Motorola’s brand is weak in developing countries.

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With this in mind, I continue to believe that the Moto G will struggle in developing countries.

Some analysts comment that the low price of the Moto G phone, [made possible only by Google’s willingness to forego profit in exchange for unit sales](http://online.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303497804579242511374858016), will put pressure on Samsung to lower its margins. I expect that this will not be the case, and the Moto G will be a non-issue.

Interestingly, Nokia continues to be very strong which is a good sign for Windows Phone.

Galaxy S4の標準ブラウザが1年前のChromiumをforkしているかも知れない件

先日、Galaxy S4の標準ブラウザのUser Agent Stringに“Chrome”の文字列が入っているのを知りました。

情報源はたかおファン氏のブログです。

Galaxy S4 (SC-04E)のChromeのUser Agent Stringは

Mozilla/5.0 (Linux; Android 4.2.2; SC-04E Build/JDQ39) AppleWebkit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/27.0.1453.90 Mobile Safari/537.36

そしてGalaxy S4 (SC-04E)の標準ブラウザのUser Agent Stringが

Mozilla/5.0 (Linux; Android 4.2.2; ja-jp; SC-04E Build/JDQ39) AppleWebkit/535.19 (KHTML,like Gecko) Version/1.0 Chrome/18.0.1025.308 Mobile Safari/535.19

参考にGalaxy S3 (SC-06D)の標準ブラウザのUser Agent Stringは

Mozilla 5.0 (Linux; U; Android 4.0.4; ja-jp; SC-06D Build/IMM76D) AppleWebkit/534.30 (KHTML,like Gecko) Version/4.0 Mobile Safari/534.030

さらに標準ブラウザのアドレスバーに“chrome://version/”と入力すると、Chromeに似たバージョン表皮がされるということなので、たかおファン氏はSamsungが独自にChromiumをforkしたのではないかとしています。そうなるとforkしたのはChrome 18 (2012-03-28リリース)。結構古いバージョンで、Chrome for Androidがβ版から抜ける以前のバージョンです。

ことの背景

このあたりの背景については、2013年5月にブログを書きました(英語)。それに補足する形で、背景をまとめました。

  1. “Jelly Bean” (Android 4.1)以降、GoogleはAndroidの標準ブラウザ(いわゆるAndroid stock browser)を外し、Chromeを標準ブラウザとしました。
  2. GoogleはJelly Beanのリリース以降は、Chromeを標準ブラウザとしたとされています。しかし実際にはJelly Bean搭載デバイスであっても、依然としてAndroid stock browserを標準ブラウザとしているものが大半です。Jelly BeanでもOSにはAndroid stock browserのエンジンが搭載されており、web viewを使ったときはChromeではなくAndroid stock browserのエンジンが使用されます。
  3. Android stock browserはオープンソースですが、Chromeはオープンソースではありません。ChromeはAndroid OSには含まれていませんし、Chromeをプレインストールするためには別途Googleとライセンス契約を結ぶ必要があります。Chromeのオープンソース版としてChromiumプロジェクトがあり、Chromeはこれをforkしたものです。

Samsungの判断の背景

SamsungがChromiumをforkしたのならば、それは完全に納得のいくことです。

  1. Samsungとしては単にChromeを搭載するのでは差別化ができません。Samsungは独自の機能をもったブラウザを作りたいと思っています。
  2. 独自のブラウザのベースとしては、a) Android stock browserベースのものを作る、b) Chromiumプロジェクトをベースに作り、c) 独自にWebKitベースのものを作る、が考えられます。Chromeはオープンソースではないので、これをベースにはできません。
  3. 2013年5月時点では、私はSamsungがc)を選択すると予想していました。なぜならTizen OS用ブラウザがHTML5テストで好成績を収めていたからです。TizenブラウザをベースにAndroidに移植するのではないかと予想していました。
  4. 結果的にはSamsungはb)を選択した模様です。

それでこれは良いことなのか困ったことなのか

Android stock browserはバグが多かったり、サポートしていないHTML5, CSS3の機能が多かったりしたので、Androidをサポートする場合にはもともとかなり神経を使いました。Androidは古いバージョンが依然として使われていることも多いので、Androidをサポートする限りは新しい機能があまり使えないと覚悟していました。使うにしても、実機で十分にテストする必要がありました。

今回のSamsung Galaxy S4の標準ブラウザはChromeに似ているとはいえ、バージョンが古いものです。これほど古いバージョンについては、web上で情報を見つけることができません(例えばCan I useにも古いChrome Androidの情報はありません)。しかもテストするには実際にGalaxy S4を使うしかなく、他のデバイスで代用することができません。

Chromeに似ているので、Android stock browserよりはバグが少なく、HTML5やCSS3の機能が使えるだろうと期待はできます。しかしテストが面倒になった分、開発者にしてみればSamsung Galaxy S4の標準ブラウザは迷惑です。

やはり開発者の立場でいえば、総合的にはマイナスと言えるでしょう。

今後

今後もAndroid stock browserの開発が進まなければ、Samsung同様にChromiumをforkするメーカーは出てくるでしょう。どのバージョンをforkするかはそれぞれバラバラになる可能性があり、いろいろなバージョンのChromiumが混在する事態になりかねません。来年ぐらいになれば、ちゃんとwebに情報があるChrome version 27ベースのforkになるので、安定してくると思います。しかし現状では実機でテストしなければわからない状態と言えます。

Chrome version 27以降をベースとしたforkが増えれば、AndroidのHTML5, CSS3は大きく改善します。AndroidのChromeがAndroid 4.0以降でインストール可能とはいえ、実際に使われているケースは圧倒的に少数派です。大部分のユーザはAndroid 4.0以降でも標準ブラウザを使っています。それがChromiumベースになるのはありがたいことです。

まとめると、今後はAndroid stock browserが使われなくなり、Androidのブラウザ フラグメンテーションがますますひどくなります。しかしChromiumの高いバージョンがベースとなっていけば、web開発者としては実用上、負担は軽減されます。

Samsung携帯によるWeb使用がiPhoneを抜いた話

Samsung携帯によるWeb使用がiPhoneを抜いたという話が話題になっています。

情報元はStatCounterが出したレポート(StatCounter Internet Wars Report)です。

Top 10 Mobile Vendors from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

ただしこれだけだとよくわからないことがあります。というのはSamsungはハイエンドからローエンドのモデルを持っていて、それに対してiPhoneはハイエンドモデルだけです。果たしてSamsungはハイエンドでiPhoneとガチンコ勝負をして好成績を収めているのか、それともiPhoneが戦っていないローエンドでユーザを増やしているのか。その区別が重要です。

これについてはStatCounterも言及していて、米国や英国などではAppleの圧倒的な優位が続いています。

Top 10 Mobile Vendors in North America from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

それならば、Samsungはいったいどの地域で伸ばしたのでしょうか?

ヨーロッパ

ヨーロッパを見るとAppleの優位は続いていますが、Samsungはシェアを拡大しています。そしてどこからシェアを奪っているかというとRIMです。RIMだけがシェアを大きく落としていることがはっきりしています。

Top 10 Mobile Vendors in Europe from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

アジア

アジアを見ると、今度はNokiaが大幅にシェアを落としていることがわかります。その分をSamsungと”unknown” (おそらく中国などのメーカー)が補っている形です。

Top 10 Mobile Vendors in Asia from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

南米

南米を見ると、アジアと同様にNokiaが大幅にシェアを落としています。その分をSamsungが取っているという形になっています。

Top 10 Mobile Vendors in South America from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

アフリカ

アフリカもNokiaが大幅にシェアを落とし、その分をSamsungが補っていることがわかります。

Top 10 Mobile Vendors in Africa from June 2012 to June 2013 StatCounter Global Stats

まとめ

  1. SamsungはAppleとのガチンコ対決で勝利しているのではありません。先進国市場においてはAppleの方がまだまだ強くて、Samsungは追いつけていません。
  2. SamsungはAppleがほとんどプレゼンスを持たない途上国市場で、以前までのリーダーであったNokiaやRIMからシェアを奪って成長しています。
  3. 上記から、Samsungがシェア拡大をできたのは主として途上国で売られているローエンド機の貢献度が大きく、「古いNokiaよりは良いから買った」というのが主な購買動機だろうと想像されます。

注記

StatCounterのアクセスログ解析を提供する会社で、300万以上のウェブサイトにインストールされているそうです。そのデータを元に分析をしています。データはraw dataに近いものだといわれています。カウントされるのはページビューです。

同じようなサイトとしてNetMarketShareがあります。こっちも同じようなデータで分析を行っています。StatCounterとの大きな違いは a) ビジター数をカウントしていること、b) 国ごとに重み付けをしているということです。国ごとの重み付けの必要性は、NetMarketShareのデータ点が世界に均等に散らばっているわけではないことに由来します。例えばイギリスのウェブサイトからのデータが多ければ、当然イギリス人からのアクセスが多くなります。そのバイアスを無くそうとしています。

もう一つ大きな違いは、NetMarketShareが公開しているデータでは”Mobile”はタブレットとスマートフォンの和です。それに対してStatCounterはタブレットは”Desktop”に数えています。

どっちが正確な数字かは一言では言えませんが、結果はかなり違います。今回のStatCounterのデータに対応するNetMarketShareのデータが無いため、StatCounterのデータの信憑性については不明です。

安価を売りにしたAndroidタブレットは年末商戦にだけ強い:その2(2013年5月の米国タブレット使用統計)

[4月の書き込み](https://naofumi.castle104.com/?p=2089)で、Chitikaのデータを使って年末商戦でシェアを伸ばしたAndroidタブレットが、徐々に使われなくなっていることを紹介しました。

そのとき、以下のように考察しました。

> iPadは顧客満足度が高いため、口コミなどでどんどん使用する人が増えます。それに対して今回のデータを見る限り、Androidタブレットではこの自己増殖的なサイクルが回っていないようです。年末商戦など、強いプッシュがあるときだけ売れているようです。特にSamsung製品だけが好調なことから見られるように、強いマーケティングやセールスインセンティブがによるプッシュが無いと、Androidタブレットは売れなさそうです。

昨日[Chitikaの5月のデータ](http://chitika.com/insights/2013/may-tablet-update)が出てきて、同じ傾向が続いていることが示されています。

1. クリスマス商戦でAndroidのWebアクセスシェアが上昇し、iPadのが下がりました。
2. 2013年に入ってからはiPadがじりじりWebアクセスシェアを伸ばしAmazon Kindle FireとGoogle Nexusは落としています。
3. Samsung Galaxy Tabは2013年に入ってからも徐々にWebアクセスシェアを伸ばしています。

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Samsungが偽りのレビューをWebに書くように学生を動員していた件

HTCの製品を批判するように、Samsungが学生アルバイトを動員していたという報道がBBCにありました。

台湾の公正取引委員会が調査に乗り出していて、Samsungはこの件を既に認めています。

Samsungを非難することは簡単です。しかし事実はそんなに単純ではないでしょう。おそらくは氷山の一角です。

そこでこの件からいろいろと類推してみようと思います。もちろん当たっていないこともあるでしょうが、背景の理解の助けになると思います。

Samsungという会社が問題を起こしたことの重み

Android陣営の中で、唯一まともに利益をたたき出しているのがSamsungです。他の会社は利益が出ない上、販売数も伸び悩んだり、逆に落ち込んだりしています。

当然ながら、どうしてSamsungだけが一人勝ちできるのだろうかという疑問がありました。いろいろな原因が考えられます。例えばHorace Dediu氏は販売チャンネル、広告宣伝とプロモーション、そして製造能力を挙げています。

今回の事件からわかることは、手段を選ばない、仁義なきマーケティング戦略もSamsungの成功の理由の一つだということです。

HTCに対してやるんだから当然Appleにもやっているはず

SamsungがHTCだけを非難していたはずがありません。当然ながら他のライバルに対しても同様なことはやっているはずです。Appleはその一つですし、普通に考えればAppleに対してこそ一番強力なネガティブキャンペーンを張っていたはずです。

Androidはこれぐらいやらないと売れないのか

Samsungだけが一人勝ちできた理由は一つだけではなく、仁義なきマーケティング戦略がどれだけ効果があったのかは不明です。しかし可能性としては否定できません。

仁義なきマーケティングでもやらない限りAndroidは売れないのかもしれません。

しっぺ返し

ウソに固められたマーケティングというのは、顧客にウソをつくことです。実際に製品を手に取れば、あるいは友人の製品と比較すれば、顧客はウソに気づきます。

スマートフォンはまだ売れ始めて年月が浅く、Androidについて言えばまだ90%の顧客は一度も買い換えをしていないと推測されています。つまりウソに気づいた顧客も、ほとんどはまだ新しい製品に買い換えていません。

今はしっぺ返しがまだ来ない時期です。

しっぺ返しが最初に来る(来た?)のは例えば米国市場

しっぺ返しは最初に観測されるのは、スマートフォンが早い時期から売れていた市場です。例えば米国の市場。その点で言えばちょっと不安な材料があります。

Benedict Evans氏はAT&TとVerizonのデータを元に、Androidの売り上げの伸びがほとんど止まったという分析をしています。一方でiPhoneの売り上げは順調に増加しています。

もしかしてしっぺ返しは始まったのかも知れません。

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なおいろいろな調査会社がスマートフォンの売り上げ推計を出していますが、AT&TやVerizonのデータはそれぞれのキャリアが報告した実際の数です。Apple以外は売り上げデータを公開していませんので、推計値はかなり憶測が入っています。それに対してBenedict Evans氏が使用したのはもっとも確実なデータです。

日本では

日本では信頼性の高い推計値がありませんので、statCounterのデータを紹介します。これも正確なデータではなく、またWeb閲覧数を見たものですが、時系列で多数のデータ点が公開されているのでトレンドを見るのに役立ちます。

これを見る限り、日本でもAndroidの使用率が落ち始めています。携帯の買い換えサイクルは24ヶ月ですので、タイミングを考えるとAndroidの初期ユーザの買い換えの頃から落ち始めているようです。

StatCounter mobile os JP quarterly 200804 201302

安価を売りにしたAndroidタブレットは年末商戦にだけ強い(2013年3月の米国タブレット使用統計)

Chitikaより2013年3月の米国タブレット使用統計が公開されました。

Chitikaが2013年2月に統計を公開したときにも言及しましたが、予想通りGoogle NexusやAmazon Kindle Fireの使用が落ちています。唯一堅調なのはSamsungのGalaxy Tabletシリーズです。

2月のデータの時に紹介した私の仮説を支持するデータです。

iPadは顧客満足度が高いため、口コミなどでどんどん使用する人が増えます。それに対して今回のデータを見る限り、Androidタブレットではこの自己増殖的なサイクルが回っていないようです。年末商戦など、強いプッシュがあるときだけ売れているようです。特にSamsung製品だけが好調なことから見られるように、強いマーケティングやセールスインセンティブがによるプッシュが無いと、Androidタブレットは売れなさそうです。

現時点ではまだタブレットを初めて買う顧客が多いのですが、数年後にはリピート顧客、買い換え顧客が増えます。現状が続く限り、その時のAndroidタブレットの市場は真っ暗になります。

March_Tablet_Update_Graph

27種類のスクリーンサイズを提供するSamsung、4種類を提供するApple

NewImageSamsungが提供するAndroidデバイスは実に27種類のスクリーンサイズをカバーしています。これを紹介したDerek Kessler氏のTweetがTwitterで盛んにRTされました。

これに対してAppleのiOSは3.5, 4, 7.9, 9.7インチの4つのスクリーンサイズしかありません。

どっちの戦略が正しいのか、様々な議論があると思います。しかし忘れてはならないのは、Appleも昔は目もくらむほどの多数ので製品を販売していたことです。

Everymac.comには過去に販売されたMacの情報がすべてアーカイブされています。Steve Jobs氏が復帰する前の1996-7年頃には、デスクトップだけでも以下の製品ラインがありました。

  • Macintosh Performa 5260, 5270, 5280, 5400, 5410, 5420, 5430, 5440, 6410, 6400, 6420
  • Power Macintosh 4400, 5260, 5400, 5500, 6300, 6400, 6500, 7200, 7220, 7300, 7600, 8500, 8600, 9500, 9600

それをバサッと整理して、有名な4製品グリッドに絞ったのです。

近年のマーケティング戦略に関する本を読むと、顧客の趣向が多様化し、多品種少量製品が重要になってきているという主張が多いのではないかと思います。1990年代のApple社は、当時の競合他社と同じようにこの戦略を採っていました。Samsungの現在の戦略もこれを継承しているように思います。

NewImageSteve Jobs氏の戦略はこの真逆でした。思いっきり製品を絞り込んで、少数の製品にフォーカスしました。しかも興味深いことに、一般的なマーケティングでは真っ先に登場する「予算」という切り口は使わず、プロフェッショナルとして使用するのか、およびノート型かデスクトップ型かの2つの切り口しか使いませんでした。

Appleが成功し続けるためにはより大きな画面をもったiPhoneが必要だとか、低価格のiPhoneを作らないと新興国市場で勝てないという外野の意見はますます大きくなっています。しかしAppleの幹部の多くはSteve Jobs氏が4製品グリッドを導入した時期も経験しています。製品が多すぎてフォーカスを失い、死にかけたApple、そして製品ラインを4つに絞り込んで復活を遂げたAppleを知っています。

Appleは別に宗教のように少数の製品にフォーカスをしているのではありません。それほど遠くない昔には多品種少量生産をし、そして臨死体験をしたのです。Appleは実体験に基づいて、少量多品種の危険性を知っています。そう、たぶんSamsung自身よりも。

Samsungの強みと技術評論家の弱み

AsymcoのHorace Dediu氏が一端アップして、その後取り下げたブログポストにSamsungの強みについて書いてありましたので取り上げます(Horace Dediu氏もTwitterでGoogle Cacheにリンクしていましたので、別に見せたくないわけではなさそうです)。

インタビュー形式(聞き手はRafael Barbosa Barifouse氏)です。太字は私が付けています。

Rafael Barbosa Barifouse氏

Does it make sense to create a new mobile OS when it has had so much success with Android?

Horace Dediu氏

Samsung would argue that the success it’s had is not due to Android but to its products. Arguably they are right because if Android were the valuable component in a phone then buyers would buy the absolute cheapest device that runs Android regardless of brand. That is not the case. People still seek out a particular brand of phone because of the promise it offers. Consumers have been buying more Galaxies than no-name Android phones.

Rafael Barbosa Barifouse氏

Why is Samsung the most successful company between the Android devices makers?

Horace Dediu氏

In my opinion it’s due to three reasons:

  1. Distribution. Success in the phone business depends in having a relationship with a large number of operators. Samsung had these relationships prior to becoming a smartphone vendor [because it sold all other kinds of phones]. Few alternative Android vendors have the level of distribution Samsung has. For comparison Apple has less than half the distribution level of Samsung and most other vendors have less than Apple.
  2. Marketing and promotion. Samsung Electronics spent nearly $12 billion in 2012 on marketing expenses of which $4 billion (est.) was on advertising. Few Android vendors (or any other company) has the resources to match this level of marketing. For comparison, Apple’s 2012 advertising spending was one quarter of Samsung’s.
  3. Supply chain. Samsung can supply the market in large quantities. This is partly due to having their own semiconductor production facilities. Those facilities were in a large part built using Apple contract revenues over the years they supplied iPhone, iPad and iPod components. No Android competitors (except for LG perhaps) had either the capacity to produce components or the signal well in advance to enter the market in volume as Samsung did by being an iPhone supplier.

私はAsymcoを注意深く読んでいますので、その影響もあってか以前よりSamsungの強みについて同様に考えていました。

つまり、Samsungがスマートフォンで成功しているのはGoogleのAndroidのおかげではなく、Samsung自身の力によるものです。そしてSamsung自身の力というのは、単なる技術的優位性ではなく、以前からのキャリアとの関係、強力なマーケティングとプロモーション、そしてサプライチェーンの強さです。

技術評論家のほとんどは製品しか見ません。製品が技術的に優れているか、使いやすいか、デザインに優れているかだけを見ます。しかし製品が実際によく売れるかどうか、ヒットするかどうかを判断する上では、このような評論家の見方は極めて二次的です。ものが売れるかどうかの主因とはなりません。

理由は簡単です。大部分の消費者は製品そのものよりも、広告や小売店の営業担当の言葉、あるいは友人の言葉、そしてブランドを頼りに購入判断をするからです。

市場勢力の急激な変化は、末端の小売りの影響力が強いサイン

Neil Hughes氏はスマートフォン市場のシェア推移を見ています(Market shares collapse with ‘brutal speed’ in cyclical smartphone industry)。

その中でNeedham & CompanyのアナリストCharlie Wolf氏の言葉を出しています。

The most important reason for these changes, Wolf believes, is the fact that carriers have “exceptional influence” on the phones customers buy. He said this strategy has worked particularly well for Android, because Google offers carriers and their retail staff incentives to push the brand.

このような急激な変化が起こるのは、携帯電話の市場ではキャリアの影響力が極めて強いためだというのです。私もチャンネル営業を担当したことがありますので、同感です。

ブランド力は急には変わりません。また極めてインパクトのある広告で無い限り、マーケティングメッセージは通常は緩やかに浸透します。一方、市場勢力を急激に変えるポテンシャルを持つのは末端の小売りです。小売りは営業インセンティブの与え方次第で一気にひっくり返ってくれます。

ただし営業インセンティブをしっかり与えられるためには、末端の小売りとの既存のパートナーシップが不可欠です。急に登場して、大きなインセンティブを与えても小売りは動きません。ですからWolf氏のコメントは一つだけ間違っています。キャリアや小売りスタッフにインセンティブを与えたのはGoogleではありません。Googleにはインセンティブを与える力はないからです。代わりにインセンティブを強力に与えたのはSamsungなのです。

こういう営業の仕組みを全く理解できていないのが技術評論家の最大の弱みで有り、だからしばしば市場を読み間違えるのです。

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Samsung Galaxy S4のローンチでもAndroidのことがほとんど触れられなかったことのまずさ

Samsung Galaxy S4のローンチイベントがあまりにも退屈だったので私はちゃんと見ませんでしたが、どうやらAndroidやGoogleのことについてはほとんど触れられなかったようです。

Android携帯メーカーのGoogleばなれについてはここ数ヵ月間でかなり顕著になっていますが、私が予想していたよりも速いペースで進んでいるのが驚きです。

AndroidのリーダーだったAndy Rubin氏が降ろされましたが、Googleはこの状況にかなり危機感を抱いている可能性があります。今年の前半に具体的な策がGoogleから発表されるかも知れません。例えばスマートフォン用のChrome OSの発表などが考えられます。Samsungしか利さないAndroidの開発終了も現実的なオプションとして検討されていることでしょう。

Samsung Apps StoreとGoogleばなれ

Androidのバリューチェーンの中でSamsungがどんどんと力を付け、Googleよりも力を付けつつある点について何回かブログをしました (1, 2)。またAndroidで儲かっているのはSamsung1社という状態になっているため、他のメーカーもGoogleに頼らない、Androidに頼らないマーケティング戦略を打ち出さざるを得ない状況も生まれています(3)。

Samsung Appsのキャンペーン

どうやらこの動きは加速しているようです。

Samsungはモバイル用ゲームを作っているElectronic ArtsのChillingo部と提携し、“100% Indie”というキャンペーンを開始するそうです。

以下抜粋

“100% Indie” allows developers to tap into the phenomenal growth that Samsung is experiencing. – See more at: http://news.ea.com/press-release/mobile-and-social/chillingo-and-samsungs-100-indie-developer-program-offers-best-reven#sthash.S9vu3ir6.dpuf

Developers will receive 100% revenue from March 4, 2013 – September 3, 2013, 90% revenue share from September 4, 2013 – March 3, 2014, 80% revenue share from March 4, 2014 – March 3, 2015, and after March 4, 2015 on Samsung Apps, developers will receive 70% revenue share.

Kevin Tofel氏が解説していますが、Google PlayやAmazonのAppstoreでは開発者は売り上げの70%を手にします。しかし100% Indieのキャンペーンでは、まず最初の6ヶ月間は売り上げの100%が開発者に行きます。そして6ヶ月ごとにこの比率は10%ずつ下がり、2015年の3月からはGoogleやAmazonと同様の売り上げの70%になります。ゲームに限定されているようですが、新しいゲームに限定されているという記載はなく、既にGoogle Playなどで販売されているゲームでも大丈夫そうです。

目的は明白で、Samsung Appsの開発者向けプロモーションです。つまりGoogle PlayやAmazonのAppstoreでソフトを販売するよりも、Samsung Appsで売った方が儲かりますよと開発者に持ちかけ、開発者がSamsung Appsでの販売を選択するようにさせたいのです。

Kevin Tofel氏が指摘するように、Gartner Researchの調査結果によるとAndroidスマートフォンの実に42.5%がSamsung製です。Androidタブレットの世界でも、45%がSamsung製だとするデータもあります。つまりSamsung Appsの潜在的なリーチはGoogle Playには及ばないものの、脅威を与えるのに十分です。

Samsungが仕掛けられる展開

Samsungの戦略はわかりませんが、Androidの世界での圧倒的なシェアを活かせばいろいろなことができます。

  1. Google Playよりも安い値段でアプリを販売。これはAmazonと同じ戦略ですが、Amazonはタブレットしか販売していないので、マーケットがまだ小さいです。同じことをSamsungスマートフォンでやればGoogle Playばなれは加速します。
  2. 開発者の優遇。Google Playは売値の70%を開発者に還元しています。Samsung Appsは100% Indieキャンペーンでは期間限定で還元率を高くしていますが、同じような戦略を拡大することができます。

Samsungはスマートフォンで莫大な利益を得ており、Samsungのモバイル事業だけでもGoogleの全事業より儲かっています。またSamsungの携帯電話の売り上げはAmazon全体の売り上げをしのいでいます(Amazonは超薄利多売のため、ほとんど利益がありません)。Samsung Appsで仮に赤字になったとしても、その分スマートフォンが売れるのであれば、赤字分は容易に回収できます。

もしSamsungがSamsung Appsを積極的に展開し、開発者優遇策を通して独占的なタイトルを集め、かつ売値をGoogle Playよりも低くすれば、Google PlayもAmazon Appstoreも窮地に立たされます。GoogleもAmazonも自らのマージンを減らすことで対抗しようとするでしょうが、Samsungのような強力な赤字回収メカニズムがないので、まともに戦えません。

Googleが怖がっているのはもっともなことです。

戦略的な話をすると

より高いレベルの戦略論で言えば、

  1. GoogleもAmazonもハードおよびOSに対する戦略は同じです。つまりハードウェアおよびOSをコモディティー化し、誰でも入手できるようにします。そしてネット広告もしくはネットでのコンテンツ販売で儲けるという戦略です。
  2. しかしGoogleやAmazonの戦略とは裏腹に、ハードウェア、OS、販売チャンネル、マーケティングの力がバリューチェーンで最大の位置を占める展開となり、それに強いAppleとSamsungだけが勝っています。
  3. 一方でコンテンツ販売に関しては、AmazonにしてもGoogleにしても優位性が出せていません。物流が重要な世界と異なり、デジタルコンテンツの販売ではAmazonですら優位性がなく、参入障壁が低くなっています。むしろハードで勝っているところがデジタルコンテンツ販売でも勝つという展開になる可能性があります。
  4. なぜそうなるかというと、スマートフォンもタブレットもまだ”Good Enough”に達していないからです。Appleが新製品のiPhoneを出したり、Samsungが新しいGalaxyを出せば飛ぶように売れます。まだまだ顧客は新しくて高機能なハードを求めているのです。これが逆に「もう古いやつでいいや」となればハードがコモディティー化していきます。
  5. ハードやOSでの差別化がバリューチェーンで大きな位置を占める限り、GoogleやAmazonが優位に立つのは難しくなります。

GoogleもAmazonも戦術レベルではなく、戦略のレベルで苦戦しており、なかなか出口が見えません。大きな転換がない限り、Apple, Samsungの優位は続くと予想され、かりにHTCが復活しても2強が3強になるだけで、Googleにとってはますます頭痛の種が増えるでしょう。