バイオの買物.comでは抗体以外の製品はどうするの?

理想の抗体検索システムを追求した新「まとめて抗体検索」サービスを始めましたので、ぜひご利用ください。

またこの記事を含め、ライフサイエンス研究用製品メーカーのウェブサイトのあるべき姿について書いた記事を特集ページにまとめました。あわせてご覧ください。

スポンサーから「バイオの買物.comでは抗体以外の製品はどうするの?」という主旨のお問い合わせをいただきましたので、回答した内容を修正してここに掲載します。バイオの買物.comの今後半年ぐらいの目標が簡単に書いてあります。

—–

ご質問の件について、お答えいたします。

まず、簡単に結論を申し上げます。
抗体以外の製品についても、バイオの買物.comに掲載する仕組みを現在作成しています。
単なる検索ではなく、各社の製品をカテゴライズしたものを準備しています。
製品の掲載そのものは無償で、御社の製品についてはすでに作業を進めています。
秋頃の公開を目指しています。

次に長くなってしまいますが、詳しい回答をいたします。

実は抗体だけでなく、なるべく多くの製品を掲載することがバイオの買物.comの当初からの目標です。いまのところ抗体検索をメインにしているのは、1)データが比較的規格化されている、2)メーカーからデータを比較的入手しやすい、3)ニーズが既に顕在化している、といった理由によります。

他の製品ではまずデータが規格化されていません。抗体であれば、抗原、交差性や宿主、標識物などのデータによって、抗体の性質を十分に説明することができます。一方でPCR酵素などはどういうデータがあれば良いかが明確でありません。カタログを見てもデータが記載されていなかったり、メーカー内でもデータがそろっていなかったりという状況です。

そこでバイオ百科さんなどは、抗体以外の製品については単純なテキスト検索だけを提供しています。しかし、研究者からすればこれだけではほとんど使い物にならないと私は考えています。研究者がすでに製品名や品番を知っていれば目的の製品を見つけることはできますが、そうでない場合はうまくいきません。

例えばMillipore社のMILLIPLEXの製品を検索する場合、BD社などの類似製品は”FACS Array”と呼ばれていますので、BD社のことしか知らない研究者は例えば”Bead Array”という検索語を使うことになると思います。またOEM元の”Luminex”で検索されてしまうと、コスモバイオ社とフナコシ社の製品しか検索されません。バイオ百科さんの仕組みですと、これではMillipore社のMILLIPLEX製品は引っかかってきません。

つまり単なる検索ですと、使ったことの無いメーカーの新しい商品を研究者に紹介するのはほとんどできないというのが私の考えです。

バイオの買物.comでは、この問題を解決するために http://www.castle104.com/categories/15 のような製品比較表を試験的に運用しています。しかし、これはデータ作成の労力が大きいので、一部の製品に限定せざるを得ませんでした。

秋から予定している新しいサービスは、 http://www.biocompare.com/ のように製品をカテゴライズしたものになります。これなら、ブランド名などに関係なく、製品の特性によって絞り込むことができますので、研究者はまだ使ったことの無いブランドを見つけることができます。ただしBioCompareのカテゴリー分けもいろいろと問題があり、決して使いやすくはありません。そこで、試験的に運用している比較表とBioCompareのカテゴリーをハイブリッドしたようなアプローチを考えています。最終的には 価格.com http://kakaku.com/pc/mac-desktop-pc/se_102/ のような形を目指しています。

なおどのメーカーの製品を掲載するかですが、これについて研究者の利便性を考え、バイオ百科さんやBioCompareさんのように「スポンサーの製品のみ掲載」というアプロートは採らない予定です。逆に価格.comのように、主要メーカーの製品は自社でデータを作成して掲載していくというアプローチを考えています。実は大手メーカー10社強の全製品のデータも取得済みで、現在カテゴリー分けを行っているところです。

カテゴリー分けした製品のページについては、「抗体検索」とは別のアプローチでスポンサーを募集しようと考えています。いまは「キャンペーン」ページと良く似たやり方を検討しているところです。

以上、長くなってしまいましたが、回答をさせていただきました。

新しいサービスが動き出したときにはまたご報告いたしますので、よろしくお願いいたします。

加々美直史

オバマ大統領の広島・長崎訪問を要請することについて

プラハの演説で「核兵器の無い世界」を現実的に可能な目標として掲げたオバマ大統領が登場しました。それを受けて非核運動が多いに盛り上がり、広島・長崎への訪問を要請しようという流れになっています。

それはそれで大変結構なことなんですが、オバマ大統領の苦労ももう少し日本はわかってあげないといけないと思います。広島・長崎への原爆投下のおかげで戦争を早く終わらせることができ、無駄な戦死者を出さずに済んだとアメリカ人は思っています。また広島・長崎訪問が「謝罪」のように受け止められてしまうことには、当然抵抗があります。米国の実業率が10%に迫る勢いで、なおかつオバマ大統領が大目標に掲げていた医療保険改革もなかなか進まず、対イラン政策も進まず、支持率だって若干下がってしまっているオバマ大統領が、ここで原爆投下を「謝罪」したと米国民に受け止められてしまったら大きな痛手です。「核兵器の無い世界」の最大の理解者が、身動きが取れなくなってしまうかも知れないのです。

オバマ大統領に広島・長崎訪問を強く要請するばかりではなく、大切なのはそのオバマ大統領をどうやって支援するかだと思います。例えば米国の大統領でも、オバマ大統領だけでは何もできないのです。そういう意味で、NHKなどに報道されているような、漫画家たちが自分たちの戦争体験を語り始めている動きこそが大切です。いままであえて語ることが少なかった多くの被爆者たちが、オバマ大統領の演説に勇気づけられて、自分たちの体験を語り始めていることこそが大切です。例えばデザイナーの三宅一生さんやプロ野球選手の張本勲さんなどです。広島の原爆体験を元に制作された「はだしのゲン」の英語訳などもそうです。

繰り返しますが、日本がやらなければならないのはオバマ大統領にプレッシャーをかけることではありません。オバマ大統領の「核兵器の無い世界」という考え方が、米国で受け入れられるように地味な努力を重ねることが大切です。

あくまでも Yes I Canではなく、Yes We Canなのです。

ビジネスプランって必要?

昨日テレビ(どの局か忘れました)で室町時代式のウェディングを提供するビジネスを始めている女性が紹介されていました。室町時代のウェディングを提供するビジネスプランは、とあるコンテストでも優勝したのですが、実際にふたを開けてみると年間に6件程度ということでなかなかうまく行かないようでした。

そのテレビはすぐに切ってしまったのでその結末はわからなかったのですが、そういえば他にもビジネスプランコンテストで入賞したにもかかわらず、なかなかビジネスがうまくいかない人の話は聞くなぁと思って、ちょっと調べることにしました。

ビジネスプランのコンテストは日本に限らず、欧米でもかなり盛んなようです。ただし少なくとも米国ではMBAなどのコースの中で行われている雰囲気で、日本のように誰でも参加自由ではないことがあるみたいです。よく調べていないので、間違っているかもしれませんが。

一方でビジネスプランコンテストの入賞者が実際にどれぐらいの確率でビジネスを成功させたかという情報はあまり見ませんでした。どちらかというと、ビジネスがうまく立ち上がるか上がらないかに関わらず、「いい勉強になる」「いい人脈に出会える」という評価が多いように感じました。でも「いい勉強になる」「いい人脈に出会える」といったコメントって、失敗のときに誰もが弁解代わりに言い古されているものなので、僕はネガティブに受け止めました。

その中で一つ、多少なりとも学術的に調査されたような文献が見つかりましたので紹介します。

Pre-Startup Formal Business Plans and Post-Startup Performance: A Study of 116 New Ventures(事業開始前の公式ビジネスプランと事業成績の相関関係:116の新規ベンチャーの調査から)

結論

The analysis revealed that there was no difference between the performance of new businesses launched with or without written business plans. The findings suggest that unless a would-be entrepreneur needs to raise substantial startup capital from institutional investors or business angels, there is no compelling reason to write a detailed business plan before opening a new business.

分析の結果、文書化されたビジネスプランの有り無しと新しいビジネスの成績には相関が見られませんでした。したがって投資家やエンジェルから相当額の資本金を集めなければならない場合を除き、事業開始前に詳細なビジネスプランを書く必要は特に無いと示唆されます。

他文献の紹介の中から

only a minority of entrepreneurs, including even MBAs from a preeminent business school, started
their ventures with a formal written business plan.

有名ビジネススクールMBAであっても、公式なビジネスプランを持ってベンチャーを起こした起業家はごく少数派(10-30%)に過ぎない。

調査の方法

1985 – 2003年の間にBabson大学を卒業した学部生とMBAを調査。起業家個人の情報、ビジネス内容、ビジネスプラン、ビジネスモデル、ビジネスモデルの変更内容、初期の資本、事業成績などをアンケートで調査し、330の回答を得た。

会社の収入、利益、従業員数を目的変数(成功の目安)とした。

また説明変数としては教育、業界経験、企業経験、創業者数、性別、創業年数、投資を受け入れた年(バブルの影響排除のため)、創業12ヶ月未満での投資受入額、内部・外部資本の割合としています。

これを元に回帰分析を行っています。

説明変数を個別に見たときの相関(単変量解析)

事業開始前のビジネスプラン

事業開始前にビジネスプランを用意している会社の方が収入、利益、従業員、資金受け入れ、創業年数とも多かったものの、ビジネスプランを持たなかったところとの差はわずかでした。統計的な有意があったのは従業員数だけで、それも0.1だけでした(つまりこの差は単なる偶然の可能性も高い)。

性別

収入、利益、従業員とも、男性起業家の方が女性起業家よりも多くなっていました。統計的な有意性は0.01。

教育

学部卒業起業家は収入、利益、従業員数のいずれの指標で見ても、MBA卒起業家をしのいでいました。統計的有意性は0.05。

創業者数

創業者数は収入、利益、従業員数のいずれとも強く相関し、有意性は0.001。

外部からの資金調達

外部肩調達した資金の割合は収入、利益、従業員数のいずれとも強く相関し、有意性は0.05。

重回帰分析

それぞれ収入、利益、従業員数を説明する3つのモデルを作った場合、そのいずれにおいてもビジネスプランによる効果は見られませんでした。

これらのモデルでは創業年数の説明変数が収入、利益、従業員数共に有意性0.01で寄与。その他の寄与はあまりなし。

考察の抜粋

It seems to us that university business plan competitions are being overdone. If we must have new venture competitions, the emphasis should be on business implementation. After all, do university athletics departments run play-book competitions? No, of course not. They reward the actual winners of the contest on the field of play. Entrepreneurship, just like football, is a contact sport not a classroom intellectual exercise.

どうやら大学のビジネスプランコンテストは行われすぎているようです。ベンチャーコンテストをやるとしても、ビジネスの実施に重きを置くべきです。大学の体育会では作戦ノートに基づいた競技会をやりますか?もちろんそんなことはやりません。グラウンドでの勝者が表彰されるのです。起業はアメリカンフットボールと同じです。お互いにぶつかり合うコンタクトスポーツです。教室でやる知的鍛錬ではないのです

これなら納得。僕もそう思います。

ラーメン代分の儲け

伝説的起業家でベンチャーキャピタリストのPaul Graham (Wikipedia)が”Ramen Profitable“というエッセイを書いていました(和訳)。

「バイオの買物.com」のビジネスをやる上で僕が気をつけていること、僕がどうして資金調達などをしないのかなどが良く説明されています。

バイオでインターネットを使ってビジネスをやろうという会社はいくつかあります。いずれもまだ本格的に立ち上がっていませんが、資金調達に奔走したり、もしくはウェブサイト開発外注などを主な収入源としているところも中にはあります。そういうところはこのエッセイを見て、ちょっと考えを巡らしてみることをお勧めします。このエッセイが必ずしも正しいとは言いませんが。

“Ramen Profitable”というのは、創業間もないベンチャー企業が、創業者の生活費をギリギリまかなうだけの収入を得ている状態を意味する言葉で、アメリカでは徐々に普及してきているようです。ちなみに”Ramen”はインスタントラーメンを指し、めちゃくちゃ食費が安いという状態を指しています。

“Ramen Profitable”になれば、1)すぐにお金が必要ではないので投資家から有利な条件が引き出せる、2)投資家にとっても会社が魅力的になる、3)士気が高まる、4)資金調達のことを考えなくてすむようになるということで、とっても重要だとPaulは述べています。

この中でも特に 
 4)資金調達のことを考えなくてすむようになる ー> 製品のことに集中できる 
が重要だと紹介しています。

The fourth advantage of ramen profitability is the least obvious but may be the most important. If you don’t need to raise money, you don’t have to interrupt working on the company to do it.

4番目に紹介する”Ramen Profitability”の利点は、最もわかりにくいのですが、一番重要かも知れません。どういうことかと言いますと、資金を調達する必要があると、会社の仕事を中断してまでもこれを実施しないといけません。必要がなければ会社の仕事は中断しなくていいのです。

Raising money is terribly distracting. You’re lucky if your productivity is a third of what it was before. And it can last for months.

資金調達というのはもの、本業にとってはすごく邪魔です。生産性が1/3程度まで減少する程度であればましな方です。しかもこの状態は何ヶ月も続きます。

I didn’t understand (or rather, remember) precisely why raising money was so distracting till earlier this year. I’d noticed that startups we funded would usually grind to a halt when they switched to raising money, but I didn’t remember exactly why till YC raised money itself. We had a comparatively easy time of it; the first people I asked said yes; but it took months to work out the details, and during that time I got hardly any real work done. Why? Because I thought about it all the time.

私自身も今年になって初めて、資金調達がどうしてこんなに邪魔かを理解しました(というか忘れていました)。私たちが投資したベンチャー企業は、資金調達を始めたとたんに本業が止まってしまうのは今までも見てきていましたが、YCombinator(Paul Grahamのベンチャーキャピタル会社)自身が資金調達をするまでその原因が思い出せませんでした。そんなに難しい方ではありませんでした。最初に訪ねた人たちは賛同してくれましたが、細かい部分を詰めるのに何ヶ月もかかってしまいました。その間は本業はほとんど進みませんでした。なぜかというと、ずっと資金調達のことを考えていたからです。

At any given time there tends to be one problem that’s the most urgent for a startup. This is what you think about as you fall asleep at night and when you take a shower in the morning. And when you start raising money, that becomes the problem you think about. You only take one shower in the morning, and if you’re thinking about investors during it, then you’re not thinking about the product.

ベンチャー企業にとって、一時に集中できる重要課題は一つだけです。寝る前に考え、朝シャワーを浴びるときにも考えている課題です。資金調達を始めると、資金調達がこの重要課題になってしまいます。朝に一回しかシャワーは浴びないわけですから、このときに投資家のことを考えているということは、製品について考える時間がなくなっているということです。

一方で、”Ramen Profitable”に執着するあまり、コンサルタント会社(アメリカでは外注も「コンサルタント」と呼びます)になってしまってはもはやベンチャー企業ではありませんよと警告しています。

Is there a downside to ramen profitability? Probably the biggest danger is that it might turn you into a consulting firm. Startups have to be product companies, in the sense of making a single thing that everyone uses. The defining quality of startups is that they grow fast, and consulting just can’t scale the way a product can. [3] But it’s pretty easy to make $3000 a month consulting; in fact, that would be a low rate for contract programming. So there could be a temptation to slide into consulting, and telling yourselves you’re a ramen profitable startup, when in fact you’re not a startup at all.

Ramen Profitabilityの欠点はあるでしょうか。最大の落とし穴はコンサルタント会社になってしまうことでしょう。ベンチャー企業は製品を中心とした会社でなければなりません。すべての人が使う一つのものを作るという意味で。ベンチャー企業の最大の特徴は急速に成長することですが、コンサルティング会社は製品中心の会社のように規模拡大はできません。その一方でコンサルティング(2人ぐらいで)で$3000を稼ぐのは簡単です。むしろプログラミング外注としては安い方です。ですからコンサルティングをやろうという誘惑は強いものですし、それでRamen Profitabilityを達成した気になることは多々あります。しかし、そうなったらもはやベンチャー企業ではないのです。

生物とオブジェクト指向プログラミング: 細胞とグローバル変数

細胞はグローバル変数問題で悩んでいた

オブジェクト指向プログラミングと生物の共通性については別に書いていますが(ブログ内検索)、最近、生物は一つの細胞内ではグローバル変数を使いまくっていることに気づきました。

プログラミングでは何かと悪者にされることが多いグローバル変数ですが、単細胞生物は基本的に1つの容器の中で様々な化学反応を起こしているので、信号伝達に関係する分子もあっちこっちに分散してしまいます。その意味で、その分子の濃度などは細胞の中でグローバル変数になってしまいます。グローバル変数になるしか無いのです。

その上、使用できるグローバル変数の名前は限られています。なぜならば、生物における変数というのは化学物質の濃度に相当するわけですが、化学物質のバラエティーはどうしても限られてしまいます。単に文字列を並べればいいというものではないので、いろいろな化学物質を作るのも大変ですし、それ以上に数多くの化学物質を特異的に識別することは大変です。

ですから、細胞はグローバル変数を使わざるをえない上に、使用できるグローバル変数の数が厳しく制限されています。グローバル変数が非常にぶつかってしまいやすい状況にあるわけです。プログラミングでは御法度となっているグローバル変数の乱用を、細胞はやるしかありません。しかもソフトウェア開発以上に、グローバル変数がぶつかるという問題にぶつかりやすいのです。

生物はこの問題を解決するために、部分的にローカル変数を作ってみたり、あるいは名前空間みたいなことをやってみたりしています。

例えば信号伝達分子を膜局在にしているのは、ローカル変数的なアプローチの一つです。そして特に細菌に多いと言われている巨大な融合タンパク質は、名前空間的なアプローチと言えると思います。しかし細胞内局在によるローカル変数のアプローチは、細胞内オルガネラの数だけしかできないという制限があります。それでも細胞骨格とシグナリング分子の相互作用などもだんだんと解明されています。またイメージング技術の発達により、今まで考えられていた以上に細胞内局在が重要だという知見が得られてきています。制限はあるものの非常によく使われている、有効な方法です。

融合タンパク質による名前空間の創出については、タンパク質が巨大化してしまい、本来の機能が犠牲になってしまいますので、広く使うことができないアプローチです。

上記のアプローチは単細胞の場合のものです。多細胞生物化すると、今度はオブジェクト指向プログラミング的なアプローチが可能になり、グローバル変数の問題が一気に解決されます。オブジェクト指向プログラミングでは各オブジェクト内部の変数は隠蔽されますので、オブジェクト間で変数名がぶつかる心配はありません。細胞も同様に、細胞Aと細胞Bのグローバル変数は全く別ですので、ぶつかることはありません。

多細胞生物は様々に分化した細胞の集団です。ですから同じ名前のグローバル変数であっても、細胞ごとに全く別の機能を持たせることができます。こうやって生物は、限定された数のグローバル変数しか持たなくても、多様な機能を持つようになったのです。

ちなみにプログラミングをやっていて、変数名がやたら増え始めたり、変数名がどんどん長くなってしまう時があります。また関数呼び出しの際に、複雑なパラメータを渡さなければいけなくなってしまうこともあります。こういう症状は、グローバル変数そのものではないにしても、何か変数の問題にぶつかっていることの証拠です。このようなときは、単細胞から多細胞に進化し、クラスをいくつか作ってみるのがベストです。

バイオの買物.com@統合データベースシンポジウム 090612

2009年6月12日に開催されました文科省統合データベースプロジェクト「データベースが拓くこれからのライフサイエンス」のシンポジウムに参加し、ポスター発表をしてきました。シンポジウムのウェブサイト

とりあえずそのときのポスターをここに貼っておきます。
バイオの買物.com@統合データベースシンポ[PDF 4.4M]

簡単な感想

データベースを作成する側のバイオインフォマティックス関係者が多く参加することを予想していましたが、実際にはツールを利用するバイオロジストが多く参加しているように感じました。開催者は、予想を超える340名が参加されたと発表していました。これはこのようなユーザ側の人が多く参加してくれたからかもしれません。そうだとすればとても喜ばしいことだと思いました。

僕自身のポスター発表でも、やはりユーザの人が多く足を止めてくれました。どちらかというとテクノロジーのことを話す準備をしていましたので少し戸惑いましたが、ユーザが関心を持ってくれたこともまた喜ばしいことです。

あとは、このポスターに書いてあるようなものを完成させるべく、日々がんばっていきたいと思います。

Using Hex coded characters inside Ruby regex character classes

I ran into a (bug? | annoyance) in Ruby 1.8.6 on MacOS X.

Run all following code with

$KCODE = 'u'

Working with the hex coded em-dash character.

puts "xE2x80x94"
output: 

I can successfully use the hex coding to generate a simple regular expression.

puts "—" =~ /xE2x80x94/
output: 0

However, this doesn’t work if I put the hex coded character inside a character class.

puts "—" =~ /[xE2x80x94]/
output: nil

I can work around this by evaluating the hex coded character and generating a UTF-8 character, before putting into the character class brackets.

puts "—" =~ /[#{"xE2x80x94"}]/
output: 0

To see what’s happening, I inspected the regex objects.

/[xE2x80x94]/.inspect
output: "/[xE2x80x94]/"
/#{"xE2x80x94"}/.inspect
output: "/—/"

It looks like if I want to reliably use unicode within Ruby regular expressions, using the hex code inside of the regex is a bad idea. I should evaluate the hex code and generate a unicode character before sticking it into the regex.

経済危機と生物学の間

分子生物学の実験でPCRや細胞培養をやっていると、たった一つの指標で成果を選別することの危うさが身に染みます。

例えばPCRであれば、増幅しにくいあるいは量が少ない遺伝子をたった一つのプライマーセットで増幅しようとすると、非常に高い確率で目的以外の遺伝子がとれてしまいます。したがって、プライマーセットというたった一つの指標ではなく、シークエンス解析などをして上で、目的の遺伝子が増幅されたと最終的に確認しないといけません。

細胞培養であれば、遺伝子を導入して安定形質転換細胞を作り上げるときは、まずはハイグロマイシンなどの薬剤で選択を行います。しかし遺伝子が細胞増殖に悪影響がある場合は、ハイグロマイシン耐性細胞の多くは目的の遺伝子を発現していません。予想のつかない現象で薬剤耐性を獲得した、目的と全く異なる細胞がかなり多く生き残るのです。ここでもやはり薬剤耐性というたった一つの指標ではなく、ELISAなどの全く別の指標で最終確認を行う必要があります。

分子生物学ではこのようなことを踏まえて、たった一つの指標による判断が強く戒められています。学術論文にてある結論を導こうとするとき、その結論を裏付ける独立の実験を最低2つ、通常は3つぐらい行う必要があります。例えばある遺伝子の量的変化を証明したい場合は、DNAアレイ、リアルタイムPCR、ウェスタンブロットなどをやらないといけません。

一方でアメリカの金融業界の破綻の原因は、ルールを極力無くした上での利益追求と言われています。金融業界をコントロールするような規制を敷くのではなく、自由に利益の最大化を追求させれば、自ずと良質の企業が生き残るという、レーガン・サッチャー以来の考え方です。

同様に、ここ数年間は株主至上主義が日本の経済界に吹き荒れています。堀えもんやスチールパートナーズなど、株価や株主が非常にクローズアップされ、企業としての本当の社会貢献よりも、利益、株価、そして時価総額の方がクローズアップされました。

証券会社に長く勤めていた私の父は「それでも最終的には株式は企業の価値を正しく反映する」と信じて疑わないのですが、PCRや細胞培養の実験でさんざん苦しめられてきた私としては、とてもそうは思えません。

企業の価値を少数の数字的な指標で判断することはできないだろう。数字的なものよりも、もうちょっと感覚的な何かで裏付けられなければ、全く誤った判断をしてしまうということを、私の分子生物学の実験経験は訴えます。

そもそも生物学実験において、数字的に出てきたデータほど怪しいものはありません。例えばウェスタンブロットのバンドの濃さを数字化してデータを見せられても、実際のウェスタンブロットの画像を見ない限り、まともな研究者は全く信用してくれません。同じように企業活動を売上げだとか利益、そして株価という数字で抽象化した姿は、全くの虚像である可能性が高いと思います。

現在の経済危機の中、レーガン・サッチャー以来の自由主義が見直され、金融をより強く規制する流れになっています。また雇用が不安定化する中、企業の社会責任も強く言われ、利益追求よりも安定して雇用を守ることが要求されています。そして成果主義の見直しもあちらこちらで議論になっています。

今朝の朝日新聞には『「ノルマなし」が営業力に』という記事があり、ネッツトヨタ南国(高知市)で営業ノルマがなくなったことが紹介されています。その代わりに50項目からなる営業マンの売り方の「質」を評価する独自のシステムが構築されているようです。まさに、数値化しやすい「ノルマ」で評価するのではなく、数値化しにくい多数の視点で評価するやり方です。

僕はもう分子生物学の研究から離れて久しいのですが、その中から得たものの考え方に世の中の流れが向かっている気がしてなりません。

一方で、竹中平蔵元経済財政政策担当大臣などが「実験」をたくさんやっていれば、新自由主義グローバリズムの考え方がもう少し成熟したものになっていたのではないか、セーフティーネットはもっと早め早めに構築されていたのではないかと考えてしまいます。

やっぱり、必要なのは「実験」でしょう。
(ちなみに汚いシークエンスデータと格闘するバイオインフォマティシャンも、立派に手をドロドロにしているという意味では、実験科学者だと思います)

朝日新聞「英語で授業 できるの?」

2月1日の朝日新聞の9面に「英語で授業 できるの?」という特集がありました。13年度の新入生から段階的に実施される予定の高校英語の学習指導要領の改訂を受けて、3人の指揮者からの意見を集めた特集でした。

この学習指導要領の改訂の中に「従業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とする」が明記されているそうです。これを受けて、「英語で授業 できるの?」というのが本特集の題名になっているようです。

僕自身は小学校の間にイギリスに住んでいて、長く現地校にいました。英語しかしゃべれなかった時期もあり、日本語は小学校の頃に外国語として勉強し直しています。そういう理由で外国語の学習には非常に興味を持っていますが、僕の観点から、この記事の中で面白かった文をいくつか取り上げたいと思います。

立教大学教授 松本茂さん

私は中央教育審議会の外国語専門部会委員として改訂に向けた検討をしてきたが、主眼は「英語で授業」ではない。

これまでの授業は、先生が説明し、生徒は聞いているだけ。あるいは、生徒に和訳させ、先生が直す。…. 生徒は試験に備えて和訳を覚える。これでは進学しても社会に出ても、使い物にならない。

野球部の部員が、イチローのビデオを見て監督の解説を聞くだけで、打撃練習や紅白試合をしないのと同じだ。

今の授業では、覚えたつもりにさせているだけで、活用力どころか知識にすらなっていない。

こう述べた上で、松本さんは以下の授業形態を推奨しています。

生徒が大量の英文を読んだ上で、英語でプレゼンテーションする。生徒の間で役割を決め、英語でインタビューし、英文を書く。書いた英文を互いに英語で批評し合って書き直す。

そして、日本語の英語教育の問題としてしばしば取り上げられる「文法重視」「英会話」について、考え方そのものを痛烈に批判しています。

いまだに「文法中心か、コミュニケーション重視か」という対立軸をあげる人がいる。もうやめにしませんか。どちらも大事だし、相互に関連したものなのだから。

高校におけるコミュニケーション重視の英語授業とは、英会話の授業ではない。日本語を介さずに大量の英文を読むのが基本となる。中学・高校の英語教科書は薄すぎる。

僕は松本さんの意見に全面的に賛成です。

「文法中心か、コミュニケーション重視か」という対立軸について言えば、残念ながら英語を勉強した日本人は、実は文法もちゃんと理解できていません。残念ながらどっちもできていないのです。ですから二者択一している場合ではありません。

また英語教育をする目的は、海外旅行で英会話ができることが目的ではありません。世界の情報の圧倒的多数は英語で発信されますが、これを吸収し、また自分から発信できる人材を育てることが目的だとぼくは考えます。そのために必要なのは「英会話」の授業ではなく、長文読解、作文、そしてプレゼンテーション力なのです。

外資系の企業で感じることですが、「会話」だけなら TOIEC 500点台でなんとかなります。英語で伝わらない部分は、外向的な性格だとか純粋な人の良さでカバーできます。ただ、これは見下されてもいい「かわいい日本人」の立場であるか、自らに圧倒的な技術力があるかの限定付きです。これでいいのなら、この程度の英語力でも外資系で勤まります。しかし、外資系の企業で先頭に立って活動するためには、大量の英文の資料を読み書きし、経営陣の前で説明できなければいけません。

学校の授業で「会話」を重視し、読み書きを軽視するなんてばかばかしいということです。

国立音大准教授 中西千春さん

高校の英語学習は、単に英語で会話することだけが目標ではない。英語で読み書きをする、議論をする、推論するといった「認知学習言語能力」を育成しなくてはならない。議論や推論などは高校生にとって日本語での訓練も十分であないのだから、日本語を活用したほうが効果的だ。

むしろ、日常会話能力を含めたコミュニケーション力を育成するうえで問題なのは、高校で学ぶ時間と単語数が絶対的に不足していることだ。日本人が英語コミュニケーション力をつけるには約3千時間の学習が必要とされるが、中高での英語学習は総計で約800時間にすぎない。

中西さんも、「英会話」ではなく、より総合的なコミュニケーション力を学ばなければならないとしています。そして日本の英語の学習時間が圧倒的に少ないことを指摘しています。

ただ中西さんは、圧倒的に時間が足りない状況を受けて、日本語をうまく活用した授業で効率化を図るべきだとしています。

僕の感想

僕は松本さんや中西さんの意見には全面的に賛成で、これがうまく実施できれば間違いなく良い方向に進むと思います。大学入試側も入学試験の工夫をして、より長文読解重視、より作文重視をしてくれることを望みます。

大切なのは、実際に社会で英語を使う日本人が、どのように英語を使っているかを踏まえた上で議論することです。

外資系だけでなく、日本企業や官公庁でも、英語の長文をしょっちゅう読まなければならない部署は多くあります。またこれらの部署では、自ら英語の文章やプレゼンテーションで情報を発信しなければいけません。外国の大学に留学するにも同じです。

大学入試を含めて英語を学習させるすべての機関が、最後にあるべき姿をしっかり意識して、その上で英語教育を改善してもらいたいと思います。

ミクシィのケータイへのシフトを読み解く

ミクシィに限らず、日本のインターネットビジネスの中でケータイの重要性が大きく増しています。(例えば 1, 2

実際に利用する人の利便性という意味ではパソコンを使ったインターネットの重要性はますます高まっているようにも思います。しかしいざ収益という点においては、パソコンは横ばい、それに対してケータイが成長しているという話が各社から聞かれます。

その中の一つ、ミクシィのケータイへのシフトについて述べている記事がありましたので、それを見ながら僕なりの考察を加えたいと思います。

ページビュー数ではすでに「パソコン1」対「ケータイ2」に

登録会員数の内訳は公開されていないので詳細は不明だが、パソコン・携帯電話それぞれのページビュー数では2007年8月に初めて携帯電話経由の値がパソコン経由のを上回り、以降ずっと「携帯電話経由のページビュー数が全体に占める割合を増やしつつある」傾向が見られる。

ちなみに2008年9月時点の数字はパソコン経由のページビューが49.9億なのに対し、携帯電話経由は97.8億。すでにパソコン対携帯電話の比率が1対2に迫っている。この比率がさらに携帯電話寄りになることは容易に想像がつく。

読み解くという意味では、ケータイからのページビュー数を過大評価しないように気をつけるべきだと思います。というのは、ケータイの方が画面が小さく、一度に多くの情報を載せられないため、ページビューが多くなる傾向にあるからです。ページビューというのはウェブサイトのナビゲーション構造に大きく影響されますので、異なるウェブサイト間でページビューを比較するのは、あまり意味が無いのです。

ただ広告を掲載する上では、このページビューは大きな意味を持ちます。ケータイ利用者が多くなるということは、訪問者あたりのページビューが増えることになりますので、広告収入を高める効果は非常に高いでしょう。

携帯電話の方が広告単価がパソコンより高い

携帯電話の方が(アクセス者のリアクションが良いことなどを理由に)広告単価がパソコンより高い

以前のブログ記事「高校生の携帯電話の使い方」で、携帯電話サイトの広告の方がウザイ上、間違えてクリックしやすいということを紹介しました。広告にとってはこのことが大きなプラスなのです。

つまり携帯電話の方がアクセス者のリアクションが良く、それだけ広告単価は高くなるのは事実ですが、それは利用者にとってポジティブなものではないということです。

SafariやFirefox、そしてInternet Explorerなどのブラウザでは、あまりにもウザイ広告は表示しない機能があります(ポップアップを表示しない)。いまのところケータイにサードパーティーのブラウザをインストールすることは一般的ではありませんが、それが可能になれば、ケータイのウザイ広告を表示しない機能が普及するかもしれません。

そういう意味で、「携帯電話の方がアクセス者のリアクションが良い」ことにあまり頼らないことが重要だと思います。

個人的な気持ち

個人的には日本のインターネット産業が携帯電話にシフトしていくことに危機感を感じています。理由は以下のものです。

  1. 日本だけの閉じた産業・技術で終わってしまい、日本のインターネット産業の国際競争力育成につながらない
  2. iPhoneなどに見られるように、携帯電話の進歩は凄まじく、パソコンと同様のことができるようになる日は近い。パソコンでのビジネスモデルから携帯電話のビジネスモデルにシフトしてお金を儲けようとしても、携帯電話そのものがパソコン化してしまうだろう

日本のインターネット産業には、安易に携帯電話にシフトするのではなく、パソコンでのビジネスモデルをどのように発展させていくかということをもっと真剣にやってもらいたいと思っています。確かに今は携帯電話ビジネスの方が儲かるかもしれません。でも、技術革新のスピードを考えると、携帯電話が独自のビジネス空間を形成していられるのはせいぜい5年だと思います。iPhoneや携帯性に優れたNetbookにより、携帯電話独自のビジネスはあっという間に浸食されてしまうのは間違いのないことでしょう。