マーケティング戦略無き製品 Google/MotorolaのMoto Gを見て

Google傘下のMotorolaがMoto Gという低価格のスマートフォンを発表しました。

特徴は廉価で高機能となっており、“並外れた電話を並外れた価格で”と謳っています。

新興国をメインにターゲットしているということで

今週中にブラジルと一部欧州で発売し、数週間以内に中南米、欧州諸国、カナダ、そして一部アジアに拡大する。2014年1月前半にその他のアジア諸国、米国、インド、中東に投入する。

となっています。

さて問題は、これがうまくいくかどうかです。

とりあえずブランディング、販売チャンネル、競合を見ていきましょう。

価格

価格は179 USDとなるようです。問題はこれが高いのか安いのか。

Janaという会社が行った調査によると、まぁ何とも言えない感じです。性能的にはずいぶんと落ちますが、例えばSamsungのGalaxy Yはインドでは6000ルピー、99 USDぐらいです。

ブランディング、販売チャンネル

先ほど紹介したJanaの調査結果を見ると、「既に持っている機種」 “What brand of mobile phone do you have?”で見ても、「買えたらいいな」 “If you could buy any mobile phone in the world, what phone would you buy?”のどれで見てもMotorolaは全然イケてません。

特に「既に持っている機種」での不人気ぶりを見ると、Motorolaは有効な販売網を持っていないのではないかと思われます。GoogleはMotorolaを買収した後、昨年以降Motorola社の携帯電話をインドで売るのをやめたそうです。ただし「既に持っている機種」の結果を見る限り、販売を中止した時点でも販売網はたいしたことが無かったようです。

加えてブランディングだけ考えるも、「買えたらいいな」の結果を見る限りMotorolaブランドはほとんど価値を持っていないようです。思い切ってGoogleブランドで行かないと効果が無いんじゃないかと思えます。

競合

Moto Gの特徴は、「廉価で高機能」です。しかしその高性能は何によってもたらされているのでしょうか?スペック表を見ると1) 高解像度のスクリーン (720×1280) 2) 高速CPU (1.2GHz quad core) 3) 1GB RAM 4) 大型電池 (2070mAh) などです。Galaxy Yのスペックは 1) スクリーン 240×320 2) 830MHz CPU 3) 290MB RAM 4) バッテリー 1200mAhです。したがって高性能は主にハードウェアによってもたらされているが明らかです。

スクリーンはおそらくSamsungもしくはLG製、CPUはQualcomm製、RAMはアジアのどこかから調達でしょうから、これらのコンポーネントはMotorola内製のものではありません。

こう考えると、Moto Gと同じスペックのものを例えばSamsungが作ろうと思えば、いとも簡単に作れるだろうと想像できます。それももっと安く。

Moto Gの特徴である「廉価で高機能」が持続可能な差別化ポイントとはとても思えません。Googleが赤字覚悟で値段を設定していない限り。

総合的に考えると

マーケティングで重要なのはブランド力、製品力、価格競争力、販売力(販売網の協力)、そしてプロモーション力になります。Moto Gの場合、新興国ではブランド力、販売力がありません。Samsung Galaxy Yと比較すると価格競争力もありません。巨額の広告宣伝費をかければ効果的なプロモーションは可能かもしれませんが、Googleが相当にお金を出してあげないと無理でしょう。

唯一あるのは製品力ですが、それもあくまでも同価格帯の製品との比較であって、例えばGalaxy S4などには劣ります。中途半端であるのは間違いありません。

今後の予想

GoogleのNexusシリーズはNexus 7を除けばごくわずかしか売れていません。Motorolaが大々的に発表したMoto Xも販売不振です。Google/Motorolaにはハードウェアをちゃんと売るという実績が近年は全くありません。

評論家の間では性能と価格面で高評価だったものがなぜ売れなかったか。普通に考えると販売網が全然機能しなかったのだろうと推測されます。

Moto Gでそれが変わる気配は全くありません。おそらく最初からほとんど売れないでしょう。

仮に売れ出したとしても、Samsungは簡単に対抗策を打ち出せます。同じ性能でより安価なものが作れるでしょう。あるいは販売チャンネルの強みを活かして、Motorolaを閉め出すことも可能でしょう。

それにしても「廉価で高機能」という戦略はGoogleが一貫してNexusシリーズでチャレンジし、ずっと失敗し続けている戦略です。なかなか失敗から学びません。

他の評論

このポストを作成している間に、インドの事情に詳しいNitin Puri氏がZDNetに記事を投稿していました。

以下に引用します。

Unfortunately, Google Motorola has a tough battle ahead in India, as along with the bulkier weight of the Moto G, the pricing is not as aggressive as what other leading manufacturers are currently offering in India for the low end market. For example, Samsung’s Galaxy Young, with a 3 inch screen and weighing just 3.4 ounces, sells for only US$100 on Amazon. Furthermore, Chinese handset makers such as Huawei and ZTE already sell Android devices as low as US$100 too.

もちろんiPhoneがインドで実質0円で発売されているという点も考慮しないといけません。

タブレットとパソコンの棲み分け

近いうちにタブレットの売り上げ台数がPCを抜くという予想があり、ポストPC時代の到来も近いのではないかという憶測があります。

それに対して、先日の私の書き込みでは、タブレットとPCは棲み分けしているのではないかというデータを紹介しました。具体的にはタブレットは家庭での娯楽として使われることが多く、それに対してPCは職場で使われることが多いことを示すウェブ使用統計を紹介しました。

先日のデータは週末と平日を比べてデータですが、同様に職場にいる時間帯(昼間)と家にいる時間帯(早朝と夕方以降)を比較したデータがありましたので紹介します。

データはウェブ使用統計でChitikiaが出したものです。タブレットの使用率が高い北米のデータです。

“Hour-by-Hour Examination: Smartphone, Tablet, and Desktop Usage Rates”

タブレットの利用時間帯

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パソコンの利用時間帯

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考察

非常にはっきりしているのは、タブレットの利用が昼間に大幅に落ちることです。パソコンの場合は、昼間も利用が落ち込みません。

パソコンは職場で使われているものの、タブレットは仕事では使われていないことを如実に表しています。

このことから、少なくとも現時点のタブレットは家庭での娯楽として利用が主だというのがわかります。仕事用にタブレットを使うのはかなりの少数派です。職場でのパソコンを果たしてタブレットが代替しうるかはまだまだ未知数です。

本当にポストPC時代に突入したのかどうかはまだよくわからない

8月5日に、タブレットの出荷台数が落ち込んだという調査が発表されました。データは下記の通り(単位は100万台)。

Test

Appleが新製品をまだ発表していないという大きな理由はあるにせよ、まだまだ始まったばかりのタブレット市場でこのような販売台数減少が見られるのは驚きです。特に1Q13から2Q13にかけての落ち込みはAppleだけではなく、SamsungもAsusもそうなったというのは業界全体のトレンドを示唆しています。

まだまだポストPC時代に突入したと断じるのは時期尚早ではないか?もしかしたらタブレットはPCと入れ替わるほどには売れないのではないかと思わせます。

個人的には私はまだまだPC (というかMacBook AirとiMac)がメインの仕事道具ですし、デスクワークを中心としている人はほとんどがそうだと思います。私にとってタブレットは家に帰ってくつろいでいるときのためのデバイスです。

したがってタブレットは必需品ではなく、娯楽のデバイスです。タブレットとPCははっきりした使い分けがあります。市場の大きさを考えても、仕事のためにPCを使う市場と比べれば、娯楽のためにタブレットを使う市場はどう考えても小さそうです。

私だけでなく、多くの人がタブレットを娯楽中心で使っているというデータはStatCounterのウェブ利用統計から得られます。

Top 7 Operating Systems in the US from 28 July to 26 Aug 2013 StatCounter Global Stats

上に示しているのはPCとタブレットのウェブ利用統計です。以下のことがわかります。

  1. Windows 7, Windows XPは週末に利用が落ち込んできます。
  2. iOS (iPad)は週末に利用が増えています。
  3. Windows VistaおよびWindows 8は若干週末に利用が増えていますが、iOSほどは顕著ではありません。

週末に利用が増えるというのは家庭で娯楽に使われていることを示唆しています。

以上のように、現時点ではタブレットはPCと入れ替わるように成長しているのではなく、PCとは別の市場を形成しているように思えます。その市場は、家庭の中で娯楽としてインターネットやゲームなどを楽しむ市場だろうと思います。PCの市場の大きさははっきりわかりますが、タブレットが形成しているこの新しい市場の大きさはまだ不明です。ある程度飽和している可能性も否定できません。

iモードがiPhoneに敗北した理由は製品にこだわらなかったから

i-mode(ガラケー一般)がiPhoneとそれを真似て登場したAndroidに敗北した理由はいろいろ言われていて、どちらかというと旧態依然とした組織や業界構造、ぬるま湯体質に目が向けられています(例えば日経新聞の特集)。

しかし私にはそれが釈然としませんでした。なぜならばこういう組織構造や業界体質は1990年代の半ば、i-modeが誕生し、そして躍進した時代と同じだからです。大成功から敗北という大きな変化を、固定された変数で説明することはできません。日本の組織構造や業界体質を理由に、ビジネスのダイナミックな変化を説明することはできないのです。

i-modeは技術的に停滞していた

私はi-mode用のウェブサイトを開発している経験から、i-modeの技術がiPhoneのみならず、AUやSoftbankの携帯と比べても抑制されていると感じていました。「抑制されている」というのは、ハードウェアやソフトウェアの進歩がi-mode規格に活かされていないという意味です。そしてこの状況は1990年代半ばのMac OSの状況、あるいは2010年頃のInternet Explorer 6の状況と良く似ていると感じていました。

この技術的な停滞こそがi-modeの敗北の原因ではないかと感じていました。

IT業界の変革は、ムーアの法則と古い製品の間の活断層で生まれる

ITの世界のダイナミズムの源泉はムーアの法則です。ICが誕生して以来、コンピュータの処理能力は毎年劇的なスピードで進歩しています。そしてその進歩に合わせてハードウェアが進化し、ソフトウェアが進化し、インターネットが進化し、サービスが進化しています。ムーアの法則があるため、ITの業界では立ち止まることが許されません。仮にビジネスの中心がサービスに傾きかけていても、あるいは独占的な立場を築き上げていても、ハードやソフトの進化を止めてしまうと、後ろから来る大きな波に埋もれてしまいます。

i-modeの場合は明らかにソフトが停滞していました。それはi-modeブラウザが一番はっきりしていました。携帯電話にフルブラウザが搭載できるぐらいにハードが進歩しても、i-modeブラウザでは相変わらずCSSやJavascript、Cookieが使えませんでした。i-modeははっきりと立ち止まっていました。

ムーアの法則により新しいことが可能になっているのに、既存の製品が停滞したままだと、そこに大きなギャップが生まれます。IT業界の変革は、その間を埋めるように、活断層で地震となるように起こります。

どうしてi-modeは進歩が停滞したのか

i-modeがどうして停滞したかを考える上で、中心的な立場にいた夏野剛氏の存在が非常に気になりました。彼がビジネススクール出身で、技術よりもビジネスに感心があること、そしてITの将来を議論するにも極めてボヤボヤしていることが気になりました。そこを手がかりに調べていったところ、夏野氏がどうしてi-modeの技術的進歩を止めたのがが簡単にわかりました。

2008年にASCIIに掲載された「夏野剛氏が退社のワケを告白」を参考に議論します。

技術軽視

その後のNTTドコモの強さは周知の通り。他社が追いつきたくても太刀打ちできない「ドコモ一人勝ち」の状態が長くつづいた。iモードが強かった秘訣は、「技術」ではなく「ビジネス」に徹底的にこだわったという点にある。

「iモードはビジネス的な見地から考えてきた。社内でも、ずっとこれは技術ではないと言い続けていた。IT革命の本質は技術のコモディティ化。技術を使うことが目標になっていては最悪。何かをするために技術を持ってくるのが本筋でしょう」

「何かをするために技術を持ってくるのが本筋でしょう」というのはもっともな意見です。Appleも技術を前面に出さず、何ができるかや使い勝手、使ったときのエモーションを大切にします。

ただしAppleの場合は、裏側では相当に技術を発達させています。「IT革命の本質は技術のコモディティ化」などとは決して考えていません。例えばiPhone用のSafariブラウザはAndroid用のどのブラウザと比べてもスピードが速く、なめらかです。GoogleはiPhoneの動きのなめらかさを真似ようと相当に努力をしていますが、未だに追いつきません。加えて様々なHTMLやCSS規格をモバイルブラウザに搭載すること(バグ無しで)に関しても、Safariは常にAndroidをリードしてきました。

「高度な技術は持っているけれども表に出さない」のがAppleで、「コモディティ化した技術を発展させなかった」のがi-modeだったのではないでしょうか。

技術を発展させなかったツケ

「MNP導入以降、何がドコモの強みなのかをはっきりしないまま、料金競争に巻き込まれている。そんなドコモを見ていると、すごく心が痛み、もっといろいろなやり方があるのになあ、という悔しさがある。最近の状況は正直辛い」と

ムーアの法則のため、一時は技術的に優位に立っていても、立ち止まってしまうとすぐに追いつかれます。

なおかつ夏野氏の考える「ビジネス」、つまりコンテンツやサービスを提供するプロバイダはそもそもがi-modeだけをターゲットしているのではなく、AUやSoftbankを使っているユーザもターゲットしたいと考えています。プロバイダにとってはi-modeの差別化、ドコモの強みはどうでもよく、どちらかというと他のキャリアと区別の無い状態を望んでいるのです。

料金競争に巻き込まれたのはごく当たり前のことです。

もしi-modeがフルブラウザ志向であったならば

以降は私の推測になります。

夏野氏の方針によってi-modeの技術発展は停滞しました。しかし日本のモバイルインターネットの事実上の標準はi-modeでした。その標準が停滞したのです。

仮にSoftbankやAUが自身のブラウザに新しい機能をつけても、i-modeにその機能が無ければコンテンツプロバイダは活用しません。i-modeユーザが一番多いからです。

もし夏野氏がビジネス志向ではなく、Appleのような技術志向であったならば、i-modeをより発展させ、フルブラウザとして発展させたでしょう。CHTMLに留めることなく、パソコンと同じようなHTML, CSSが使えるように技術開発に努めたでしょう。フルブラウザは2004年に既に日本でも登場していましたし、それより以前から海外では使われ始めていましたので、i-modeがフルブラウザ化していくことは技術的には十分に可能でした。

もしi-modeのフルブラウザかを阻害している要因があったとするならば、それは夏野氏の言う「ビジネス」(つまりコンテンツやサービス)でした。

i-modeがフルブラウザ志向であったならば、ガラケーの進化の道は大きく変わったはずです。

フルブラウザはCPUパワーを消費しますし、大きな画面でこと使い勝手が良くなります。必然的に現在のスマートフォンのようなデザインを必要とします。そして矢印キーによるナビゲーションでは限界があるので、タッチも採用したことでしょう。

思い返してみると、初代のiPhoneをSteve Jobs氏が発表したとき、彼はiPhoneを“An iPod, a Phone, and an Internet Communicator”と紹介しました。iPhoneの開発目標は第一に“Internet Communicator”だったのです(当初はサードパーティアプリ開発は準備されていなかったので)。

もしi-modeがフルブラウザ志向であり、それにとことんこだわっていたならば、かなりiPhoneに近いものができたはずです。

最後に

IT業界で技術にこだわらないと敗北します。ビジネスに過度に傾き、技術革新を怠ると、ムーアの法則が定期的に生み出す大きな変化の波にのまれます。

i-modeの敗北はおそらくはこれだけで説明できます。開発当初こそは技術的に優位に立っていましたが、しばらくしたらAUやSoftbankに真似られます。そして最後には徹底した製品志向のApple iPhoneの波にのまれます。

それだけです。

i-modeがiPhoneに化ける可能性はありました。しかしそれを阻害したのは他でもなく、夏野氏自身のビジネス志向だったのではないでしょうか。

私はそう思います。

ツートップ戦略の評価

ドコモが5月以来の「ツートップ」戦略を継承し、3機種を重点販売する「スリートップ」を行うことがロイターより報じられました(「ドコモの冬商戦、ソニー・シャープ・富士通を重点販売へ=関係筋」)。

ドコモの「ツートップ」戦略というのは、長年のパートナーであった国産メーカーを半ば切り捨ててまで敢行したものでしたので、新しい「スリートップ」の議論をする前に、ツートップの評価をするべきだろうと思います。

それで私の知る限り、最も終始するべき指標はMNPの出入りのデータではないかと思いますので、それを簡単に紹介します。

2013年6月までのデータですがHighChartsFreQuentブログにMNPの推移がまとめられています。

3社比較 MNP 携帯電話番号持ち運び 制度利用数の推移をグラフ化

その後の7月のMNPのデータは、au: +70,100, Softbank: +40,600, DoCoMo: -112,400 となっています。したがって少なくとも7月時点までは明確な改善は確認できません。

DoCoMoは業績発表でも、「ツートップ」戦略はMNP流出の改善につながっていないとDoCoMo自身が述べています。

かなり過激な戦略だった「ツートップ」でも明確な改善が見られませんし、「スリートップ」が「ツートップ」より効力がある根拠もありません。

国内メーカーにしてみれば、「スリートップ」戦略と、DoCoMoがiPhoneを導入するのと、どっちが痛いのか気になります。

Android Google Playの収益の危険な地域性(その3)

Android用のアプリを配布・販売しているGoogle Playの地域性が日本と韓国に極端に偏っており、相当に異常だと以前にもこのブログで紹介しています()。そのときに使用したのはAppAnnieのデータでしたが、先日Distimoからも同様のデータが出てきたので紹介します。

地域性のグラフは以下のものです。データは2013年7月のものです。

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このグラフからわかることは以下の通りです;

  1. 以前のブログにも紹介したとおり、App Storeの収益性は各国の人口や経済力(GDP)を考えれば納得できます。細かい順位は別として、米国が1位で、日本が2位、そして日本の半分以下で英国、オーストラリア、ドイツなどが続くのは納得がいきます。
  2. それに対してGoogle Playの収益性は日本と韓国に極端に偏っています。
  3. 日本は先進国の中でiPadの利用率がかなり低い。

以上を踏まえた上で今後のGoogle Playの収益性について考えてみます。

  1. Google Playの収益が最近6ヶ月で67%と増加したからと言って、この成長が持続する根拠はかなり薄弱です。もしGoogle Playの成長がまんべんなく起こっていて、各国でまだ伸びしろがあるのならば、成長が持続する可能性はあります。また経済成長が著しい途上国で起こっているのであれば、それもまた持続する可能性があります。しかし現実には、既に先進国の仲間入りをしている日本と韓国で、両市場をほぼ飽和するような勢いで成長したのです。日韓は急速に飽和に達する可能性が高く、増加が持続するためには日韓と同じようなことが徐々に他の先進国にも波及していく必要があります。しかしその傾向は特に見られません。
  2. 日本はドコモがiPhoneを販売していないのにもかかわらず、iPhoneのシェアが高くなっています。したがってドコモが仮にiPhoneを販売し始めれば、日本のiPhoneのシェアが激増し、Androidのシェアが激減する可能性があります。これは日本内でのGoogle Playの収益が激減することを意味します。日本の寄与が大きいだけに、日本一国での収益減少により、Google Playの全世界での収益性が減少に転じる可能性があります。
  3. Androidのシェアが高いのは、GDPが中位ぐらいの途上国です。これらの国では有料アプリは余り売れていません。Androidのシェアが高いからいずれGoogle Playのコンテンツが売れると考えるのは大きな誤りです。

ブラウザの使用シェア統計はどれが正確か?

このブログではブラウザの使用統計を頻繁に使って議論をしています。特にStatCounterをよく使います。しかしその統計は信用できるものでしょうか?

答えからいうと、そのままでは信用できません。

もう一つよく使われているブラウザ使用統計はNetMarketShareがありますが、どちらかというとこちらの方が信頼性が高いと考えられることが多いです。ただNetMarketsShareの場合は細かいデータは有料になってしまいます。StatCounterは地域ごとの細かいデータまで無償で公開されています。

このあたりの細かい議論は、Roger Capriotti氏が書き下ろしています

StatCounterはChromeの使用シェアが高く出ているのに対して、NetMarketShareはInternet Explorerの使用シェアが高く出ています。したがってGoogle派か、Microsoft派によってもどっちを信用するかは変わってくるようです。

ただウェブログ解析をしている人の考え方に近いのはNetMarketShareの方です。NetMarketShareは訪問者数を分析しているのに対して、StatCounterはページビューを分析しています。いまどきページビューを使ってウェブサイトのログ解析をする人はいません。

また私自身、仕事の関係上一日中ウェブを使っていますが、そうなると「普通」の人よりも100倍ぐらいページビューを出していることだってあります。そのままカウントされたデータは意味が無いと自分自身が思います。

またNetMarketShareは地域ごとのサンプル数のバイアスを考慮していますが、StatCounterはそれをしていません。地域ごとのサンプルバイアスというのは、例えばStatCounterの場合は日本人によるページビューが少ないのに対して、トルコ人によるページビューが非常に多いです。NetMarketShareであればインターネット人口を元に補正をかけますが、StatCounterはそのままにしています。したがってトルコ人のネット使用傾向が最終データに強く表れます。

私は絶対値はNetMarketShareの方を信頼しています(ということは、まだまだInternet Explorerがダントツで一番使用されているブラウザだと考えています)。しかし細かいデータが公開されていませんので、「傾向」で十分に議論ができるような場合はStatCounterを使っています。

Chromeがどうしてパソコンで人気があって、Androidでは人気が無いのか

パソコン用Chromeは20%弱 – 45%の使用率

パソコンではChromeの人気はかなり高いです。

Chromeブラウザの人気はウェブ使用率の統計で見ます。ブラウザ毎のウェブ使用率を発表しているところは主に2つあって(NetMarketShareStatCounter)、それぞれ結果が大きく異なるのですが、いずれにしてもパソコン用Chromeのウェブ使用率はそこそこあります。NetMarketShareは20%弱だとしていて、StatCounterは45%程度だとしています。

Android用Chromeは14%弱の使用率

これがAndroid用Chromeになると話が違います。NetMarketShareを見ると、Androidユーザの3.75%/(3.75% + 20.58%) = 15.4%がChromeを使っていると推測できます(ただしiOS Chromeユーザを無視した場合。iOS Chromeユーザを含めた場合は、より少ない割合になります)。ただしより細かく見ていくと、Chromeユーザとなっている利用者のうち、実はGalaxy 4Sなどの標準ブラウザーユーザも含まれていますので、実際には (3.75% – 1.70%)/(3.75% + 20.58%) = 8.4%がGoogle Playからダウンロードした純正のChromeを使っていることになります。

なおChrome for AndroidはAndroid 4.0以上でしか使用できませんが、AndroidのDeveloper Dashboardを見る限り、現時点でのAndroid 4.0以上のシェアは (23.3% + 32.3% + 5.6%) = 61.2% となっています。つまりChrome for Androidが使用できる環境にあるAndroidユーザに限定すると、Chromeの使用率は 8.4% / 61.2 % = 13.7% になります。

StatCounterの場合はGalaxy 4Sなどの標準ブラウザーを切り分けるためのデータが公開されていないため、Google Play純正Chromeの使用割合が計算できません。しかし合わせたChromeの使用利はNetMarketShareと似ているので(3.75%)、同じような結果になっているのではないかと想像できます。

いったんまとめると、パソコン用Chromeのブラウザ使用率は20%弱 – 45%ですが、それに対してAndroid用Chromeのブラウザ使用率は13.7%にとどまっています。

ちょっと古いデータですが、Androidからのアクセスの91%は標準ブラウザからだったという報告もあります。

いずれにしても圧倒的に標準ブラウザの人気が高く、パソコンのようにChromeもしくはFirefoxの人気が高いという現象は起きていないようです。

なぜパソコン用Chromeの使用率は高いのか

上記の結果は二つの見方ができます。つまりパソコン用Chromeの使用率が高いという見方、それとAndroid用Chromeの使用率が低いという見方です。

私は今回、前者のパソコン用Chromeの使用率が高いという立場をとります。つまり、本来ならば標準ブラウザの使用率が圧倒的に高いのが当たり前なのに、パソコン用ブラウザの世界では特殊事情によりChromeやFirefoxの使用率が高くなっているという立場です。

そしてその特殊要因というのはWindows XPであり、Windows XPで稼働する一番新しいInternet Explorer 8がかなりボロいブラウザであることが原因で、FirefoxやChromeに入り込むスキが生まれたとする考えです。

実際にデータを見ていきます。

国ごとのWindows XP使用率とChrome/Firefox使用率、IE使用率の関係

私の仮説はこうです。

  1. 多くの国(特に比較的貧しい国)では未だに古いパソコンが使われており、その上でWindows XPをOSとして使用しています。
  2. Windows XPではInternet Explorer 8までしか動きませんが、IE 8は動作が遅く、バグも多いため、ブラウザとしては劣悪です。
  3. それに対して最新のFirefoxやChromeはWindows XPでも動作します。そこでWindows XPを使っているユーザの多くはInternet Explorerを捨て、FirefoxやChromeに移ったと考えられます。
  4. 逆にWindows 7を使っているユーザはIE 9もしくはIE 10が使用できます。IE9, IE10はそれより前のバージョンより大幅に改善されていて、特にIE10はChrome以上に高速なところがあります。したがってWindows 7ユーザは標準のInternet ExplorerからFirefoxやChromeに移るインセンティブが少なく、Internet Explorerを使い続けていると考えられます。

この仮説を検証するために、以下のデータを集めました。

  1. 様々な国のWindows XP使用率及び各ブラウザの使用率のデータをとりました。データはStatCounterからとりました。国はCIAが公開している各国のインターネットユーザ数のデータから上位の30国を選択しました。
  2. Windows XP使用率と各ブラウザの使用率の相関関係を確認しました。

そのデータは以下の通りです。

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Windows XP vs. Chrome + Firefox

横軸が各国のWindows XP使用率、縦軸がChromeとFirefoxの使用率の合算です。このグラフから明らかなように、Windows XP使用率とChrome、Firefox使用率には明確な正の相関があります。Windows XPのユーザは、IE以外のブラウザ(ChromeもしくはFirefox)を選択する傾向が強いようです。

なお緑の×で表したのは左が韓国、右が中国です。これらは外れ値として扱いました。韓国は国家政策の結果、Active Xの使用が半ば義務づけられ、異常にInternet Explorerの使用率が高いために除外しています。また中国はいろいろややこしいことがあり、StatCounter統計の信用度が低いと考えられます。実際に中国でのChromeのバージョンごとの使用率を見ると、古いバージョンが多く、新しいバージョンの使用率が少ない結果になっています。しかしChromeは自動アップデートがあるため、他の国ではほぼ例外なく最新ブラウザの使用率が圧倒的です。したがって中国のChrome使用率のデータはかなり怪しいです。

Windows XP vs. Chrome

先ほどのデータをChrome + Firefoxではなく、Chrome単独で見たときの結果です。相関がずいぶんと悪くなっています。これは国ごとにChromeに人気があるか、Firefoxに人気があるかがバラバラだということを表しています。

Windows XP vs. IE

これはWindows XPの使用率とIEの使用率の相関を見ています。Windows XPの使用率が高い国ではIEの使用率が下がっていることがわかります。Windows XPのユーザは、IE以外のブラウザを選択する傾向が強いようです。

考察

以上のように、Windows XPの使用率が高い国ではIEの使用率が下がり、ChromeやFirefoxの使用率が上がっています。これは上記の仮説を裏付けるものです。

もし私の仮説が正しいのならば、以下のことが言えそうです。

  1. Windows XPの使用率が高い国は、古いパソコンを使い続ける発展途上国である傾向があります。それに対してWindows 7やWindows 8の使用率が高い国は、裕福な先進国である傾向があります。したがってどのブラウザが広告媒体としての価値が高いか、あるいは電子商取引で多額のお金が使われているかという視点に立つと、IEが有利でChromeやFirefoxは不利でしょう。
  2. パソコンの買い換えによりXPの使用率が下がっていくにしたがって、ChromeやFirefoxの使用率が減少していくでしょう。
  3. MicrosoftはXPのサポート終了を宣言していますので可能性は極めて低いのですが、もしMicrosoftがWindows XP用のIE10もしくはIE11を開発すれば、ChromeやFirefoxの使用率はがくっと減るでしょう。

最後に

先日のGoogleのPress Eventでも、Googleの幹部はChromeが世界で一番多く使われているブラウザであることを誇っていました。

しかしこれはMicrosoftのWindowsおよびInternet Explorer戦略の失敗に起因するものです。MicrosoftはIE10からは高性能なブラウザを開発するようになっているので、失敗から十分に学んでいるようです。そこでここ数年先、Windows XPの使用者が減るのにしたがってChromeやFirefoxの使用率が下がっていく可能性が高いと言えます。

もちろんGoogleはAndroid用Chromeを提供していて、パソコン用のChromeはこれとタブがシンクロしたりするなど相乗効果があります。しかしAndroid用Chromeの人気自体が余り高くないため、相乗効果はまだ限定的です。

こう考えると、Chromeの人気も数年先まで保証されたものではないと言えます。GoogleはChromeを主要なプラットフォームと位置づけていますが、私はこの基盤は相当に弱いと考えています。

Googleのスマートフォンの次に来る狙い

Daniel Eran Dilger氏が“Google appears ready to ditch Android over its intellectual property issues”と題された記事で、GoogleがAndroidを放棄する可能性について議論しています。そして様々な状況証拠を並べ、特に新しいものとしてGoogleの新しいChromecastデバイスが、Androidからいろいろな機能をそぎ落としたものになっていることを挙げています。

私は似たような意見を持っていますが、Androidをすぐに放棄するよりは、まずはAndroidをローエンド機用に最適化し、Apple iPhoneとの競合を避けていくのではないかと考えています。

理由はChrome, Android戦略ともに足腰が弱いためです。

Chromeブラウザはパソコンでは高いシェアを獲得しています(どれぐらい高いのかはかなり議論が分かれていますが)。しかしChromeが浸透しているのはここだけです。Android上のChromeは非常に浸透率が悪く、今後大きく改善する状況にはありません。またChromebookはウェブ使用率などの統計で全く登場しないレベルであり、メジャープレイヤーになる兆しはありません。

Chromeがパソコンで高いシェアを獲得している点についても、これは主にWindows XPで動くInternet ExplorerはIE8までだというのが大きな要因だろうと私は考えています。Windows XPの使用が減ればWindows上のデフォルトブラウザはIE 10, IE 11など非常に評判の良いブラウザになってきますので、Chromeのパソコン上の浸透率に陰りが出る可能性は大いにあります。

このようにChromeブラウザ戦略の見通しは必ずしも明るくありません。

一方Android戦略についても、タブレットでiPadに大きく後れをとり、どの統計を見ても使用率で大きく劣っています(販売台数ではiPadで競っているという統計はありますが、使用率では5倍以上の差がついているレポートばかりが出てきます)。Googleは広告で収益を得ている会社ですので、使われないタブレットが市場にあふれても良いことがありません。Google Nexus 7でタブレット戦略に力を入れていますが、初代のNexus 7の販売台数は目立ったものではなく、新型を出したところでどこまで改善するかは未知数です。

この状況でGoogleが自社の戦略を優先して、AndroidからChromeへの移行を積極的に進めることはないと思います。むしろスマートフォン上のAndroidはSamsungやHTCに任せて、タブレット上のAndroidに注力するでしょう。ただタブレット戦略もやり尽くした感があり、Googleにこれ以上何ができるかはっきりしません。

それとAppleが自動車に興味を持っていることが極めてはっきりしてきたので、Google Glassへのフォーカスを切り替えて、Androidを自動車用に作り替えることに必死になるでしょう。またまたAppleの真似です。

そう。これからのGoogleの注力は自動車です(Samsungも)。なぜかってAppleがそうするから。

Android標準ブラウザがChromium Forkであるデバイスのシェア

先日、Samsung Galaxy S4の標準ブラウザが1年前のChromium 18.0のフォークである可能性が高いことを紹介しました。

そういうのが実際にどれぐらい多いのかを調べてみました。NetMarketShareのデータを使いました。

この時点での最新のChrome for Androidはversion 27.0で1.54%のシェアがあることがわかります。Chromeは自動的にアップデートするのですが、このデータにはまだ25.0、26.0のものもあり、それぞれ0.29%、0.19%となっています。合計して、2.0%のユーザが新しいChrome for Androidを使っていることがわかります。

注目するのはChrome for Android 18.0が1.70%もあることです。Chromeの自動アップデート機能のため、Google PlayからダウンロードしたChrome for Androidがバージョン18.0でとどまっている可能性は低いと考えられます。そうなるとこの1.70%というのは、Samsung Galaxy S4と同じように標準ブラウザがChromium 18.0ベースのものから来ていると推測できます。

憶測になりますが、近いうちにChromium 18.0からフォークされたバージョンがGoogle PlayのChrome for Androidを近いうちに抜かしてしまいそうな気がしています。というのもAndroidユーザの91%が標準ブラウザを使用しているというChitikaのデータがあるからです。

Windowsプラットフォームでは高いシェアを誇るChromeですが、スマートフォンではなかなかそうは行かないようです。

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なお、どうしてAndorid上でChromeの使用率が上がらないのかを考えてみると、次のことが言えると思います。

  1. Windows上の標準ブラウザの性能が劣悪でした(Internet Explorer 7, 8, 9などのことを指します)。
  2. まだまだ使用されているWindows XPでは、Internet Explorer 8までしか動かず、これもかなり性能が劣悪です。

つまり標準ブラウザであるInternet Explorerを使い続けるのがかなりつらかったから、FirefoxやChromeに乗り換える人が多かったと言えます。これはFirefoxやChromeの功績というよりも、Internet Explorerの失策と言えます。

Android上ではそこまでの失策がなかったため、Chromeが普及できなかったのです。今後もSamsungらは自分たちの力で標準ブラウザに力を入れていくようですので、Chrome for Androidが普及するスキは出てこないと言えます。