スマートフォン市場が飽和する予感

『フィーチャーフォンユーザーの約6割がスマートフォンに必要性を感じていない』という調査結果がMMD研究所から出たそうです。

  • 約8割のフィーチャーフォンユーザーがスマートフォン購入を決めていない
  • フィーチャーフォンユーザーの約6割がスマートフォンに必要性を感じていない
  • フィーチャーフォンユーザーがよく利用する機能は「通話、メール機能」、インターネット利用は約2割
  • フィーチャーフォンユーザーの半数以上が3年前以上に購入した端末を使い続けている

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この人たちに何を提供すれば良いか

ではこの人たちは何を買ってくれるのかと前向きに、建設的に考えてみます。

  1. 月額料金が低い製品。
  2. 電池が長持ちする製品。
  3. 通話ができる製品。
  4. メールが使える製品。
  5. カメラが使える製品。

もちろん現時点ではこの条件を満たすのがフィーチャーフォンしかなくて、それでフィーチャーフォンを使い続ける訳なのだが、同じ条件を満たしたスマートフォンがあれば良いのではないかということも言えるので、そのあたりを考えるべきだと思います。

月額料金

月額料金を安くするためには、本体価格を抑えることとデータ通信料を少なくすることが重要でしょう。本体価格についてはスマートフォンの方がむしろフィーチャーフォンより安い(例えばGalaxy S2が$250に対して、フィーチャーフォンは4万円)といわれていますので、問題はデータ通信料に絞れます。

この人たちが必要としているデータ通信は「メール機能」ですので、「メール以外はバックグラウンドで通信しない。それもキャリアメールだけ。」というスマートフォンを作れば良いのではないかと思います。そしてこの料金はフィーチャーフォント同じでメール件数に応じるようにすれば分かりやすいと思います。

電池

電池を長持ちさせるには、CPUの性能を落とし、画面を小さくし、バックグラウンドでの動作をやめさせればかなり持つようのになるはずです。

WiFi

メール以外のデータ通信は通常は完全にオフにして、WiFiと接続しているときだけインターネットができるようにすれば十分です。アプリのダウンロードなどのスマートフォンとしての魅力は、これだけでかなり実現できます。

最後に

上記のようなスマートフォンが必要とされているのはキャリアだってわかっているはずです。なのにどうしてこういう機種が出ないのか?

最大のネックは「メール以外はバックグラウンドで通信しない。それもキャリアメールだけ。」、こういうカスタマイズができないのか、それとも分かりにくいのか。

そのあたりが気になります。

Androidの次期バージョン 4.3 から示唆されること

GoogleはAndroidの開発スピードを落としていると考えられる

先日のGoogle I/Oで公開されることが期待されていたAndroid 4.3ですが、実際には公開されることがありませんでした。その代わりにGoogle Play MusicだとかGoogle Mapsの強化などについて発表されたようです。

Androidのバージョン履歴を見るとAndroid 4.2のSDK公開が2012年11月ということで、まだ半年ちょっとしか経っていないので特に間隔が空いているわけではないことがわかります。しかしAndroid 4.3はコードネームが4.2, 4.1 (2012年6月)に続いて”Jelly Bean”だと言われており、一年以上を同じコードネームで引っ張ったのはAndroidの歴史では異例と言えます。

しかもAndroid 4.3もまた”Jelly Bean”がコードネームだと言われています。そうなると”Jelly Bean”がもしかすると1年半ほど最新のAndroidであり続ける可能性があります。

継続して同じコードネームを使っていることからも想像されるとおり、Android 4.3の変更点はあまり多くないだろうと予想されています。

Andy Rubin氏の元では半年に一回は新しいコードネームのリリースがあったのに、彼がAndroidプロジェクトから外されたら開発スピードはどうも落としているように感じられます。

Androidの開発スピードを落とすのはGoogleの全体戦略である可能性

その意図はいったいなんでしょうか。少し考えてみます。

  1. Andy Rubin氏の頃のAndroidは、とにかくiPhoneに追いつくための必死の開発でした。それがJelly Beanでとりあえず追いついたとGoogleは考えたのかも知れません。もしそうならば、大幅に刷新されたiOS 7に追いつくためにも再度開発のスピードを上げていくかも知れません。
  2. Andy Rubin氏をAndroidから降ろし、代わりにSundar Pichai氏にAndroidも担当させるようにした背景にはAndroidの方向転換があるのではないかと私は以前に推測しています。その一つに「Androidが一番魅力的なOSである必要はない」が新しい方針の一つではないかと述べました。もしこれが事実ならば、Androidの開発スピードを落としたのは戦略的であり、なおかつiOS 7が登場しても開発スピードを上げない可能性があります。
  3. Android 4.3の先にあるAndroid 5.0にリソースを集中させているのかも知れません。しかしウワサを見る限りではAndroid 5.0もそれほど大きな刷新が予定されていないようです。むしろスマートフォン用のOSとしてではなく、腕時計とかそういうデバイスを狙っている可能性があります。

この中で私は2と3の可能性が高いと感じています。そして2と3が同時に起こっていると考えています。

つまりこうです。

  1. そもそもGoogleは、ウェブ検索とそれに連動している広告事業を収益の柱としていて、それ以外の事業ではインターネット利用者を増やすためのものでした。検索と広告を除いて、収益性を重視するのではなく、むしろ価格で競合を排除する戦略が一貫して取られています。
  2. その中で考えると、Android事業のそもそもの狙いはスマートフォンによるインターネットの利用を増やすことでした。そしてインターネットの中でも、Googleの広告が掲載されているウェブサイトが利用されるようにするのが狙いでした。
  3. スマートフォンによるインターネットの利用、特にGoogleのサイトの利用を拡大するのに必要なのはiPhoneに対抗することではなく、a) iPhoneユーザにGoogleのサービスを利用してもらうこと、b) iPhoneが買えない顧客セグメント向けのスマートフォンを提供すること、です。仮にAndroidがiPhoneに勝利しても、それでインターネットの利用が増えるわけではありません。
  4. Androidの目的を考えると、まだスマートフォンを買っていないユーザ、高くて買えないユーザを狙うのが正しい選択です。したがってローエンドにフォーカスするべきです。
  5. ただし大きな問題は、ローエンドのユーザはウェブ利用率が少ないことです。またコンテンツをあまり買わないということです。したがってローエンドを狙う戦略は収益力の限界があります。
  6. そうなると新しい市場を開拓して、比較的裕福な人を顧客にできるようにしないといけません。比較的裕福な人は既にインターネットにどっぷりつかっていますが、さらにどっぷりつかるようにさせたいというのがGoogleの狙いになります。だから車の中とか、腕時計とか、テレビとかをGoogleは狙います。
  7. しかしこういう新しいコンシューマ市場の開拓は簡単ではなく、特に末端顧客にお金を払ってもらうものに関してはGoogleはことごとく失敗しています(低価格で既存市場に入り込むのはそこそこ成功していますが)。

そもそもAndroidの新バージョンはちょっと虚しい

もう一つ大きな戦略よりもむしろ現実を直視した事実として、Androidの新しいOSを開発するのはかなりむなしいところがあります。せっかく新しいものを作っても、利用する人の割合が少ないからです。未だにAndroid 2.3が一番利用者が多いことからもわかるように、Androidの新しいOSが出てきてもインパクトは少ないのです。

それよりはChromeアプリとかGoogle Mapsとかを改良した方がマシです。少なくともAndroid 4.0以上の人には利用してもらえます。

近未来予想

以下のシナリオを考えます。私の中ではかなり可能性の高いシナリオです。

  1. Googleはスマートフォン用のAndroidをフォーカスから外し、開発スピードを落とします。
  2. それに代わって、自動車、テレビ、腕時計、ゲーム機などでAndroidが使われるように開発のフォーカスを移します。
  3. しかしGoogle TVの大失敗、Nexus Qの大失敗、そしてスマートフォンだってほとんどサムスンの一人勝ちになってしまったことなどを踏まえ、ハードウェアメーカーは以前ほどはGoogleと積極的に組まないでしょう。
  4. 結果として初期のモデルはあまり売れず、GoogleとしてはNexus戦略で腕時計、ゲーム機に参入するでしょう。しかし自動車、テレビはGoogleが持つノウハウでは入り込めず、あまり打つ手がないでしょう。
  5. そうこうしているうちにAppleはこのどれかで成功し、新規市場を開拓します。
  6. GoogleはまたAppleが創造した市場に入り込み、低価格路線で対抗していきます。
  7. もしGoogleがスマートフォン市場のフォーカスを永く欠く状態が続けば、Firefox OSなどが入り込むスキが生まれます。もちろんローエンドで。
  8. ただしGoogleとしてはローエンドスマートフォンの市場に侵入されても、特に強力に対抗するインセンティブは必ずしもありません。収益への影響が少ないからです。

ポイントはGoogleがAndroidの開発をフォーカスから外し、新しい市場に注力していく可能性です。そして今までの実績でいうと、新しい市場の開拓には失敗し続けていることです。

安価を売りにしたAndroidタブレットは年末商戦にだけ強い:その2(2013年5月の米国タブレット使用統計)

[4月の書き込み](https://naofumi.castle104.com/?p=2089)で、Chitikaのデータを使って年末商戦でシェアを伸ばしたAndroidタブレットが、徐々に使われなくなっていることを紹介しました。

そのとき、以下のように考察しました。

> iPadは顧客満足度が高いため、口コミなどでどんどん使用する人が増えます。それに対して今回のデータを見る限り、Androidタブレットではこの自己増殖的なサイクルが回っていないようです。年末商戦など、強いプッシュがあるときだけ売れているようです。特にSamsung製品だけが好調なことから見られるように、強いマーケティングやセールスインセンティブがによるプッシュが無いと、Androidタブレットは売れなさそうです。

昨日[Chitikaの5月のデータ](http://chitika.com/insights/2013/may-tablet-update)が出てきて、同じ傾向が続いていることが示されています。

1. クリスマス商戦でAndroidのWebアクセスシェアが上昇し、iPadのが下がりました。
2. 2013年に入ってからはiPadがじりじりWebアクセスシェアを伸ばしAmazon Kindle FireとGoogle Nexusは落としています。
3. Samsung Galaxy Tabは2013年に入ってからも徐々にWebアクセスシェアを伸ばしています。

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次のAndroid Key Lime Pieがローエンドをターゲットするかもしれない話

4月3日の「Androidの方向転換予想:Andy Rubin氏の降格を受けて」と題したブログで、私はAndroidの今後の方向性が以下のポイントに集約されるだろうと予想しました。

  1. ネイティブアプリからHTML5にシフト
  2. Apple特許の利用を減らす
  3. ローエンドマシンでも動作するようにする

そしてこれはAndy Rubin氏の目指していたAndroid戦略(「Androidを最高のOSにする」)からの方向転換であり、「Googleの利用を可能な限り広める」というGoogle本来の戦略からの当然の帰結だとしました。

特に3については、Firefox OSをはじめとした各種の新しいOSに対抗するための予防的な意味があると述べました。

そして3番目の点について、まだまだ噂の段階ですが、ちょっと話が出てきたので紹介します。

VR-ZoneのPreetam Nath氏は以下のようにレポートしてます。

  1. Android 5.0 Key Lime Pieは10月に公開予定。
  2. Key Lime Pieは512MBのRAMでも動作する。Android 4.0以降は1G RAMを必要としていましたので、Key Lime PieはAndroid 2.3しか動作させることができなかったローエンドのデバイスでも動作することになります。(ちなみにiOSもMicrosoft Windows Phoneも512MB RAMで十分に動作します。

Androidの収益性の危険な地域性(その2)

先日のブログでAndroidのアプリの売り上げが日本と韓国に極端に偏っていて、特に日本のスマートフォン市場の動向次第でアプリの売り上げに大きな問題が生じる可能性があることを紹介しました。具体的にはDoCoMoがiPhoneを販売するようなことになれば、日本でのAndroidアプリの売り上げが大きく減速することは避けられず、それが世界全体のAndroidアプリの売り上げに大きな影響を与えると述べました。そしてそうなると、Androidというプラットフォームそのものの収益性が大きな影を落とすことになります。

今回はApp Annieのブログ 12を見ながら、もう少しデータを拾いたいと思います。

収益から見たゲーム開発会社の順位

iOSの場合は以下の通り、ヨーロッパ、北米、日本のいろいろなメーカーが含まれていて、バランスがとれています。

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それに対してAndroid (Google Play)の場合は、日本と韓国のメーカー会社が圧倒しています。

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収益から見たゲームの順位

iOSの場合はやはりバランスがとれています。

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そしてAndroidの場合は日本と韓国に極端に偏っているばかりでは無く、韓国限定のハングルのタイトルが登場します。

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国ごとのランキング

iOSの場合はアプリのダウンロード数およびアプリによる収益はともに各国のGDPを反映するものになっています。つまり先進国レベルの裕福な人間がどれだけいるかによってダウンロード数も収益も順位が決まっています。

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それに対してAndroid (Google Play)の場合、ダウンロード数ではインドやロシアなど、経済発展が著しい発展途上国が登場しています。そして韓国が米国に次いで2位に付けています。

収益についてはがらりと変わり、日本が1位、韓国が2位となっています。発展途上国は上位5国からはずれます。

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考察

前回のブログではAndroid (Google Play)の収益性が地域的に大きく偏っていて、それが危険であると述べました。ここではなぜそうなっているかを考察してみたいと思います。

以下の理由があると私は考えています。

  1. iOSはiPhoneの端末価格が高価なため、世界的に見たら裕福な人が買います。そのため各国のGDPに応じてiPhoneが売れ、アプリがダウンロードされ、そしてアプリが購入されています。
  2. Androidの場合は安価な端末も売られているため、BRICSなどのように経済成長著しい発展途上国で売れています。そしてアプリがダウンロードされています。しかし、地域ごとに価格戦略もマーケティング戦略も調整が可能な端末販売と異なり、アプリの価格は世界的に統一されています。したがってこのような国では端末は安価に購入できても、アプリは割高になります。そのためアプリはあまり購入されていません。
  3. 韓国がAndroidに大きく偏っているのはSamsungやLGなどのメーカーの影響です。驚くべきことは人口が米国の1/6程度しか無いのに、アプリの購入が米国をしのいでいることです。日本もまた人口は米国の1/3程度ですし、若年層についてはもっと開きがありますので、やはり日本についてもこれだけアプリが購入されているのは驚きです。これには何らかの共通の特殊要因が存在する可能性があります。

こうなると、日韓に共通する特殊要因が何だろうと気になります。おそらくはネットワークゲームやソーシャルゲームの影響があると思いますが、米国にも同様のゲームがあるはずですので、これだけでは説明が付きません。私にはまだよくわかりません。

この特殊要因が今後、世界的にも広がっていき、米国や西ヨーロッパでも日韓と同じようなことが起こる可能性があります。しかしもうそうならなければ、Google Playは米国や西ヨーロッパで成長できなくなってしまいます。

以上、アプリの収益性を比較しながら強く思ったのは、グローバル展開について言えば、携帯端末の市場とアプリの市場は全く別物であるという点です。

1. 携帯端末は各地域のローカルの事業者が販売します。様々な工夫をして、各地域の所得水準に合致した端末を探し出してきて販売します。またメーカーは地域ごとに価格を変えることができますので、所得水準の低い地域には低価格商品を用意できます。そのため、携帯端末は所得水準の低い地域でも普及していきます。
2. それに対してアプリは世界で同一料金で販売されています。スマートフォンアプリの単価は一般に高くはないのですが、それでも所得水準が低い地域だと割高感が高くなります。アプリの低価格仕様というものはあまり作られませんし、地域ごとに限定して販売することもできません。アプリが世界同一料金になるのには理由があります。しかしこの結果、Android用であったとしても、所得水準の低い地域ではアプリはなかなか売れません。

Androidが世界的にシェアを拡大できた最大の理由は低価格戦略です。このおかげで、iPhoneを買えない低所得地域でAndroidは勢力を拡大し、Nokiaを駆逐しました。しかし、この低価格戦略はアプリでは使えません。Androidがアプリ等の収益性でもiPhoneに並ぼうとするのなら、何か新しいことをしないといけません。

Androidの収益源の危険な地域性

IDCとApp Annieからモバイルゲームに関する調査報告が発表され、iOSとAndroidを合わせた収益が、モバイルゲーム機(NintendoやSonyなど)の収益の3倍であったことが報告されています。もちろん他の統計でも報告されているようにiOSの方がAndroidよりもずいぶんと収益が多く、iOSはAndroidの倍以上があります。

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iOSやAndroidなどのスマートフォンがいずれモバイルゲーム機を追い抜くのはかなり前から予想できたことであり、必然だったと言えます。特に驚くべきことではありません。

しかしこの報告の中には、これ以外に驚くべき内容も含まれています。

Androidの地域性が異常

Androidが世界的に非常に多く売れていることは繰り返し報告されていますが、具体的にどの国で使われているかというデータはあまり出てきません。しばしば指摘されるのはiPhoneは先進国の中でも裕福な国で多く使われていて、それに対してAndroidはより裕福でない国で使われている点です(例えばこれ)。

下のグラフを見るとiOSとAndroidのゲーム売り上げに大きな地域性のズレがあることがわかります。iOSの売り上げは北米とアジア・パシフィックがほぼ同等で、西ヨーロッパがそれに続きます。それに対してAndroid (Google Play)では北米と西ヨーロッパが非常に少なく、アジア・パシフィックが圧倒しています。2013年1Qでは、Androidのゲーム売り上げのうち、実に70%がアジア・パシフィックから来ています。

さらにGaming-Optimized Handhelds、つまりNintendoやSonyなどの製品の地域性を見ると、アジアが若干多いものの、これはiOSのものと似ています。

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アジアの中でもどこで売れているのか

今回のレポートではより細かい地域性のグラフは示されていませんが、以下のように記載されています。

Consumer spending on games strengthened in Asia-Pacific on Google Play and on gaming-optimized handhelds, with Japan & South Korea leading the way on Google Play

アジア・パシフィックでビジネスが非常に好調な場合、例えば成長性や人口の多さで魅力的な中国市場を連想することが多いのですが、Androidがアジア・パシフィックで売れているのはこれが原因ではないようです。そうではなくて、日本と韓国で爆発的に売れていることが原因です。

売り上げトップランキングを見るとそのことがはっきりします。

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iOSの場合は日本のパズドラの他、フィンランドや英国、米国のゲームがランキングしています。それに対してGoogle Playの場合は韓国のゲームがトップ5のうち3タイトルも占めています。しかもこれらのゲームはGoogle Playで見る限り英語の説明文すら無く、すべてハングルで書かれています。つまり韓国限定のローカルものです。

この地域性は何を意味しているのか

Google Playにとってこの地域性は危険です。特に日本での売上比率が大きいというのは大きな不安定要素をはらんでいます。なぜならば日本でAndroidが売れているのはDoCoMoがiPhoneを売らないことによる影響が非常に多いからです。

韓国でAndroidが強いのはSamsungやLGの影響です。SamsungがTizenなどの別OSに切り替える可能性はありますが、ハードルは高く、しばらくは韓国のAndroid比率は高いまま推移すると予想できます。

しかし日本の事情は違います。日本ではトップキャリアのDoCoMoがiPhoneを売っていないため、市場の需要よりもiPhoneのマーケットシェアは低く抑えられ、Androidのシェアが大きくなっています。キャリアの問題が無ければ、iPhoneの潜在的マーケットシェアは現在よりもプラス20%近くあるでしょう。もしDoCoMoがiPhoneを売るようになれば、数年のうちに日本のAndroidのマーケットシェアは激減します。これは予想するまでも無く、明白です。

Androidはアジア・パシフィックでしか伸びていない

レポートの中のデータを加工して、地域ごとの売り上げを下図にまとめてみました。ここからわかることは、Androidの北米および西ヨーロッパでの伸びが非常に少ないということです。アジア・パシフィックでの伸びで補っていますが、Androidは世界の他の地域ではゲーム売り上げがあまり伸びていません。iOSに大きく離されている状況ですが、その差は埋まるどころか広がっています。

以上を合わせて考えると、日本のDoCoMoがiPhoneを売り出すだけでAndroidのゲーム売り上げの伸びは大きく落ち込み、成長率でiOSに引き離されてしまいます。デベロッパーを引き留めたいAndroid陣営としてはかなりまずい状態です。

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なお、以上のデータは広告収入を差し引いたものです。ただしゲーム業界にて広告収入に依存したビジネスモデルというのは非常に難しくなっているのは周知の通りです。

ゲームの意味合い

iOSにしてもAndroidにしても、ゲームは大きな収益源です。iOSではApp Storeの収益の70%がゲームから来ています。Androidはもっと極端で、Google Playの収益の80%がゲームです。それぞれのプラットフォームが収益面から開発者にとって魅力的かどうかは、かなりの部分ゲームにかかっていることがわかります。だからこそ今回のIDCとApp Annieのデータは重要であり、大きなゆがみがあるAndroidは危険な状態にあると言えます。

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Chromeが思ったほど速くないという話

ブラウザで一番高速なのはChromeじゃないかという前提でいろいろな議論がされている気がしたので、試しにベンチマークを取りました。

少なくとも私が書いているJavascriptにおいては、ChromeだろうがSafariだろうがFirefoxだろうが十分な性能が出ていますので、Android中心に話します。

下図がGalaxy SII WiMax (ISW11SC, Exynos 4210 Dual-core 1.4GHz), Android 4.0.4上でJavascriptベンチマークであるSunspider 1.0のベンチマークを実行したときの結果です。

以下のことがわかります。

  1. Chromeが一番高速とは言えない。
  2. Firefoxは独自のJavascriptエンジンを使っていますが、ChromeのV8と同等の結果が出ている。
  3. DolphinがどのようなJavascriptエンジンを使っているかははっきりわかりませんが、V8だろうとは想像しています。いずれにしてもChromeと同等の性能が出ています。

つまり、少なくともAndroid上ではChromeのJavascriptが特別に速いという感じはありません。

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ベンチマークの結果には反映されませんが、少なくとも私が書いているWebサイトを表示させる限り、AndroidのChromeはかなり遅いです。最新バージョンでも遅いです。これについては別の機会に示したいと思います。

いずれにしてもChromeのJavascriptは特別に速いとは限らないようです。Javascriptをたくさん使ってウェブサイトを書いている身としては、ちょっと残念な感じです。

Samsungが偽りのレビューをWebに書くように学生を動員していた件

HTCの製品を批判するように、Samsungが学生アルバイトを動員していたという報道がBBCにありました。

台湾の公正取引委員会が調査に乗り出していて、Samsungはこの件を既に認めています。

Samsungを非難することは簡単です。しかし事実はそんなに単純ではないでしょう。おそらくは氷山の一角です。

そこでこの件からいろいろと類推してみようと思います。もちろん当たっていないこともあるでしょうが、背景の理解の助けになると思います。

Samsungという会社が問題を起こしたことの重み

Android陣営の中で、唯一まともに利益をたたき出しているのがSamsungです。他の会社は利益が出ない上、販売数も伸び悩んだり、逆に落ち込んだりしています。

当然ながら、どうしてSamsungだけが一人勝ちできるのだろうかという疑問がありました。いろいろな原因が考えられます。例えばHorace Dediu氏は販売チャンネル、広告宣伝とプロモーション、そして製造能力を挙げています。

今回の事件からわかることは、手段を選ばない、仁義なきマーケティング戦略もSamsungの成功の理由の一つだということです。

HTCに対してやるんだから当然Appleにもやっているはず

SamsungがHTCだけを非難していたはずがありません。当然ながら他のライバルに対しても同様なことはやっているはずです。Appleはその一つですし、普通に考えればAppleに対してこそ一番強力なネガティブキャンペーンを張っていたはずです。

Androidはこれぐらいやらないと売れないのか

Samsungだけが一人勝ちできた理由は一つだけではなく、仁義なきマーケティング戦略がどれだけ効果があったのかは不明です。しかし可能性としては否定できません。

仁義なきマーケティングでもやらない限りAndroidは売れないのかもしれません。

しっぺ返し

ウソに固められたマーケティングというのは、顧客にウソをつくことです。実際に製品を手に取れば、あるいは友人の製品と比較すれば、顧客はウソに気づきます。

スマートフォンはまだ売れ始めて年月が浅く、Androidについて言えばまだ90%の顧客は一度も買い換えをしていないと推測されています。つまりウソに気づいた顧客も、ほとんどはまだ新しい製品に買い換えていません。

今はしっぺ返しがまだ来ない時期です。

しっぺ返しが最初に来る(来た?)のは例えば米国市場

しっぺ返しは最初に観測されるのは、スマートフォンが早い時期から売れていた市場です。例えば米国の市場。その点で言えばちょっと不安な材料があります。

Benedict Evans氏はAT&TとVerizonのデータを元に、Androidの売り上げの伸びがほとんど止まったという分析をしています。一方でiPhoneの売り上げは順調に増加しています。

もしかしてしっぺ返しは始まったのかも知れません。

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なおいろいろな調査会社がスマートフォンの売り上げ推計を出していますが、AT&TやVerizonのデータはそれぞれのキャリアが報告した実際の数です。Apple以外は売り上げデータを公開していませんので、推計値はかなり憶測が入っています。それに対してBenedict Evans氏が使用したのはもっとも確実なデータです。

日本では

日本では信頼性の高い推計値がありませんので、statCounterのデータを紹介します。これも正確なデータではなく、またWeb閲覧数を見たものですが、時系列で多数のデータ点が公開されているのでトレンドを見るのに役立ちます。

これを見る限り、日本でもAndroidの使用率が落ち始めています。携帯の買い換えサイクルは24ヶ月ですので、タイミングを考えるとAndroidの初期ユーザの買い換えの頃から落ち始めているようです。

StatCounter mobile os JP quarterly 200804 201302

安価を売りにしたAndroidタブレットは年末商戦にだけ強い(2013年3月の米国タブレット使用統計)

Chitikaより2013年3月の米国タブレット使用統計が公開されました。

Chitikaが2013年2月に統計を公開したときにも言及しましたが、予想通りGoogle NexusやAmazon Kindle Fireの使用が落ちています。唯一堅調なのはSamsungのGalaxy Tabletシリーズです。

2月のデータの時に紹介した私の仮説を支持するデータです。

iPadは顧客満足度が高いため、口コミなどでどんどん使用する人が増えます。それに対して今回のデータを見る限り、Androidタブレットではこの自己増殖的なサイクルが回っていないようです。年末商戦など、強いプッシュがあるときだけ売れているようです。特にSamsung製品だけが好調なことから見られるように、強いマーケティングやセールスインセンティブがによるプッシュが無いと、Androidタブレットは売れなさそうです。

現時点ではまだタブレットを初めて買う顧客が多いのですが、数年後にはリピート顧客、買い換え顧客が増えます。現状が続く限り、その時のAndroidタブレットの市場は真っ暗になります。

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GoogleのNexusが売れていない

GoogleのNexus 7を中心に、GoogleのNexus戦略はあまりうまくいっていなさそうだという話をこのブログで何回かしています。要するに話題性とは裏腹に、Nexus 7はあまり売れていなさそう(使われていなさそう)なのです。

  1. 北米における2013年2月のタブレットの使用統計
  2. タブレットにおけるAndroidの追い詰められた現状

さらにそれを裏付けるデータが、Googleが公開しているデータの分析から明らかになりました。

Nexus tablet sales: not many

もうかなり間違いないです。Nexusはあまり売れていません。