RSSの著作権について

Images先日バイオの買物.comのサービスに関連して、メーカーのオンラインカタログの著作権とバイオの買物.comでその情報を使用することについて書きました(「カタログの著作権について」)。

今回はバイオの買物.comのニュースセミナーキャンペーンのサービスの著作権について、私の考えを紹介します。特にRSSを使用して収集している情報について議論します。

はじめに

まずはっきりしておかなければならないことは、現在の著作権法は日本においても、また米国などの海外においてもインターネット時代に追いついていないということです。時代に追いつけず、グレイエリアがたくさん残っています。

そのためコンテンツの著作権を保有している側が訴訟を起こす場合、紙媒体に適用されていたのと同様の著作権を主張する可能性が高いということです。「情報がインターネットに公開されていたのだから、複製されるのは前もってわかっていたはずだ」とか「再利用がしやすいRSSに載せたのだから、事実上の著作権放棄になる」などの理由で著作物を複製して使用することは、将来においては可能かもしれませんが、現時点では著作権侵害と判断される危険性が高いと言えます。

日本ではインターネットの情報を活用したビジネスを実現するためにインターネット情報検索サービスにおける複製などを可能にする法改正が行われましたが、これはRSSフィードの単純な収集と表示をカバーしていると考えるのは、ちょっと無理があるでしょう。

本題に入る前にわかってもらいたいのは、インターネットに公開されているかどうか、あるいは紙媒体でしか提供されていないかどうかは現時点ではあまり意味を持たないということです。加えて日本では著作物を創作した時点で著作権が発生しますので、コピーライトマークなどの表示はなくても関係がありません。したがってインターネットに公開されているどんな情報であっても、明確に著作権が放棄されている場合を除き、著作権には十分に注意する必要があります。

情報アグリゲーションをする際の注意事項

著作権のことを考慮した場合、インターネット上の様々な情報を集積するポータル的なウェブサイト(バイオの買物.comを含む)は何に注意すれば良いか。米国のものですが、よい記事が見つかりましたので紹介します。

この記事ではHarvard大学のNieman Journalism Labに投稿されたKimberly Isabellの記事What’s the law around aggregating news online? A Harvard Law report on the risks and the best practicesを紹介し、解説しています。

紹介されているベストプラクティスは

  1. Reproduce only those portions of the headline or article that are necessary to make your point or to identify the story.
  2. Do not reproduce the story in its entirety.
  3. Try not to use all, or even the majority, of articles available from a single source. Limit yourself to those articles that are directly relevant to your audience.
  4. Prominently identify the source of the article.
  5. Whenever possible, link to the original source of the article.
  6. When possible, provide context or commentary for the material you use.

1.については、著作物に該当しない範囲あるいは引用と認められる範囲に限定しなさいということです。新聞記事などの見出しが著作物にあたらないという日本の判決もありますし、また無断引用(部分的な短い断片の利用など)は法的に認められた権利です。

2.は1に関連します。創作性が認められ、著作権の保護の対象となる文章であれば、例えば全文ではなくても引用の範囲を超える可能性は高く、著作権を侵害する可能性が高くなります。全文を複製するのはもっと危険だということです。

3.については、集積した情報に対してどれぐらい付加価値をつけたかの議論だと思います。集めた情報をそのまま掲載するというのは付加価値をつけたことにならず、単なるコピーとなります。しかし新しい価値を提供するためにその著作物を引用したというのであれば、新しい付加価値をつけたことが認められ、使用が認められることがあります(日本でも米国でも)。

4, 5については、著作権保有者が損害を被ったという主張をなるべく避けるための措置だと思われます。米国では損害が無ければフェアユースの範囲とされます。日本にはフェアユースの概念はありませんが、著作権保有者が損害を被らないのであれば当然訴訟を起こされる確率が減りますので、注意するべき点です。なお新聞記事をアグリゲーションすれば新聞社のウェブサイトにトラフィックを誘導でき、新聞社に取ってはプラスなはずだという議論がありますが、Google Newsの訪問者の44%はクリックスルーをしないという調査もあり、本当に新聞社のウェブサイトにトラフィックを誘導できるかどうかは議論の余地があります。

6.については3の付加価値をつけることに関連すると思います。

バイオの買物.comの場合はどうか

ニュース・セミナー・キャンペーン

バイオの買物.comのニュースセミナーキャンペーンサービスでは各メーカーのトップページなどから最新情報を集め、セミナーやキャンペーンについては開催日ごとに整理をし、掲載しています。情報源は100以上あります。

まず当然のことではありますが、各ヘッドラインまたは記事から情報源のウェブサイトへのリンクは用意しています。バイオの買物.comは研究者とメーカーをつなげることを基本理念としていますので、如何に多くの訪問者をメーカーサイトに誘導するかは大きな課題と考えています。加えて新聞記事を集積して掲載する場合と異なり、これらのサービスがメーカーに損害を与えることは無いだろうと考えています。

またコンテンツについて言えば、大部分のものは表題のみもしくはごく短い解説文を掲載しているだけです。これらについては著作権保護の対象にならないだろうと考えています。

なおメーカーが提供しているRSSフィードに多量の情報が含まれているケースがあります。この場合は著作権保護の対象となるものが、バイオの買物.comに掲載されてしまう可能性があります。

まとめてカタログ

バイオの買物.comのまとめてカタログまとめて抗体検索については先の記事「カタログの著作権について」でほぼ解説しています。

結論

結論として、ニュース・セミナー・キャンペーンにしてもまとめてカタログなどにしても、概ね著作権保護の対象とならないと我々は考えています。

ただし前の記事でも書きましたが、バイオの買物.comが目指すのは、研究者とメーカーの双方に取ってメリットのある仕組みです。もし我々の活動が研究者もしくはメーカーの利益を損ねているのであれば、その活動を続ける意味はありません。

もしも我々の活動が研究者もしくはメーカーの利益を損ねているのであれば、著作権法に関わらずご連絡ください。協議の上、適切な対処方法を考えたいと思っています。

最後に

RSSの登場でインターネットの情報の再利用が簡単になったため、RSSになっているものはどこで利用してもいいのではないかという空気すらあるのがインターネットの現状ではないかと思います。しかし上記で議論しましたようにインターネットは依然として古い著作権法が適応されますので、RSSであろうが何であろうが、再利用の際は著作権法を意識する必要があります。

「クリックスルーがあるから、複製されるとかえって良いよ」という良く聞く議論はまずフェアユースが無い日本では法的に意味を持ちませんし、米国でも特にニュースサイト関連では主張が通らない可能性があります。

バイオの買物.comでは上述のベストプラクティスを意識しつつ、また著作権法と関連の裁判・判例の行方に注目しつつ、引き続きメーカーと研究者の双方に取って結うようなサービスを提供していきたいと考えています。

カタログの著作権について

Copyrightバイオの買物.comではメーカーのウェブサイトから情報を収集し、それを集約した上でカテゴリー分けなどを独自に行い、バイオの買物.comのウェブサイトに掲載しています。

このとき、当然気になるのは著作権の扱いです。

このブログでは、我々が著作権の問題をどのように考えているかを紹介したいと思います。

直リンクの問題

社団法人 著作権情報センターのウェブサイトの中にずばり回答があります。

結論を先にいえば、リンクを張ることは、単に別のホームページに行けること、そしてそのホームページの中にある情報にたどり着けることを指示するに止まり、その情報をみずから複製したり送信したりするわけではないので、著作権侵害とはならないというべきでしょう。

「リンクを張る際には当方に申し出てください」とか、「リンクを張るには当方の許諾が必要です」などの文言が付されている場合がありますが、このような文言は道義的にはともかく、法律的には意味のないものと考えて差し支えありません。ホームページに情報を載せるということは、その情報がネットワークによって世界中に伝達されることを意味しており、そのことはホームページの作成者自身覚悟しているとみるべきだからです。リンクを張られて困るような情報ははじめからホームページには載せるべきではなく、また載せる場合であっても、ある特定の人に対してのみ知らせようと考えているときは、ロック装置を施してパスワードを入力しなければ見られないようにしておけばよいだけのことではないでしょうか。

ただしリンクを張ってたのウェブページに移動するのと、iFrameタグなどを使ってたウェブページの情報が自分のホームページのフレームに取り込まれるのは別の話のようです。

したがってバイオの買物.comでは、利用者の利便性を考慮して可能な限り直リンクを使用しています。

メーカーの製品情報は著作物にあたるか

著作権法10条2項は「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第1号に掲げる著作物に該当しない」と規定しています。

また社団法人 著作権情報センターのウェブサイトでは「標語、キャッチフレーズのようなものが著作物として保護されるかどうかは、一概にいえませんが、通常は保護されないと考えられます。」(標語、キャッチフレーズ、題名などは著作物になりますか?)や「異論もあるでしょうが、一般には見出し自体は著作物に該当しないと考えられるケースが多いのではないでしょうか。」(新聞記事の見出しの著作権)の記載があります。

このことを根拠に、製品名、容量、価格、保存方法など、製品の基本的な属性を紹介した文章については著作権は無いとバイオの買物.comでは考えています。また製品を紹介した文章は場合によっては著作物になる可能性があると考えていますが、この場合は連絡をいただければ製品紹介の記述をバイオの買物.comに掲載しないようにいたします。

キャンペーン、セミナー、その他のニュースについても同様に考えています。

検索を目的とした情報収集や著作物の複製は著作権の侵害にあたるか

社団法人 著作権情報センターのウェブサイトのQ&Aの中に「このことが将来におけるインターネット情報社会の萎縮要因にもなりかねないとの懸念から、平成21年の法改正により、当該サービスを提供する目的のために必要と認められる限度において、権利者の許諾を得ることなく自由にできるようになりました。」とあります。法改正は著作権法第47条の6を指します。

(送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等)
第四十七条の六 公衆からの求めに応じ、送信可能化された情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。以下この条において同じ。)を検索し、及びその結果を提供することを業として行う者(当該事業の一部を行う者を含み、送信可能化された情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、当該検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、送信可能化された著作物(当該著作物に係る自動公衆送信について受信者を識別するための情報の入力を求めることその他の受信を制限するための手段が講じられている場合にあつては、当該自動公衆送信の受信について当該手段を講じた者の承諾を得たものに限る。)について、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行い、及び公衆からの求めに応じ、当該求めに関する送信可能化された情報に係る送信元識別符号の提供と併せて、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物(当該著作物に係る当該二次的著作物の複製物を含む。以下この条において「検索結果提供用記録」という。)のうち当該送信元識別符号に係るものを用いて自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該検索結果提供用記録に係る著作物に係る送信可能化が著作権を侵害するものであること(国外で行われた送信可能化にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知つたときは、その後は、当該検索結果提供用記録を用いた自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行つてはならない。

この法改正により、メーカーの製品情報のうちで著作物に相当する部分についても、ある程度はバイオの買物.comで承諾無く使用可能だと判断しています。

ただしメーカーの製品情報の内容の詳細さはメーカーごとに大きく異なり、「当該サービスを提供する目的のために必要と認められる限度」をどう判断するかは難しいと考えています。したがって連絡をいただければ、著作権に関わる記述をバイオの買物.comに掲載しないようにする形で対応します。

情報収集そのものは著作権の侵害にあたるか

平成21年の法改正で以下のように記されています。

第四十七条の七

著作物は、電子計算機による情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう。以下この条において同じ。)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行うことができる。ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない。

つまり情報収集や解析・加工し、製品をカテゴリー分類するなどの目的に使用することは問題無いとされています。

まとめ

上記の著作権に関する考察から、バイオの買物.comで行っている活動、つまりメーカーなどのウェブサイトから情報を収集・集約して整理する活動は、著作権法による制限を概ね受けないと考えています。

ただしバイオの買物.comが目指すのは、研究者とメーカーの双方に取ってメリットのある仕組みです。もし我々の活動が研究者もしくはメーカーの利益を損ねているのであれば、その活動を続ける意味はありません。

もしも我々の活動が研究者もしくはメーカーの利益を損ねているのであれば、著作権法に関わらずご連絡ください。協議の上、適切な対処方法を考えたいと思っています。