不況でベンチャーキャピタルが犠牲になるか?

プログラマー、ベンチャー投資家として有名なPaul Grahamブログ記事

今まではベンチャー企業の成功にはベンチャーキャピタルが必要でしたが、今回の不況でこの依存関係が解消されるかもしれないという話です。そして景気が回復しても、この関係は復活せず、ベンチャーキャピタルそのものが不必要になるかも知れないという結論です。

以下ポイントの翻訳です。

VC funding will probably dry up somewhat during the present recession, like it usually does in bad times. But this time the result may be different. This time the number of new startups may not decrease. And that could be dangerous for VCs.

今回の不況で、ベンチャーキャピタルによる投資はある程度枯渇するでしょう。不況のときにこうなるのは普通です。しかし今回は結果がいつもと異なるかもしれません。今回は新規ベンチャー企業の数は減らないかもしれません。そしてこれはベンチャーキャピタルにとっては危惧されることです。

When VC funding dried up after the Internet Bubble, startups dried up too. There were not a lot of new startups being founded in 2003. But startups aren’t tied to VC the way they were 10 years ago. It’s now possible for VCs and startups to diverge. And if they do, they may not reconverge once the economy gets better.

インターネットバブル後にベンチャーキャピタルによる投資が枯渇したときは、ベンチャー企業の数も減りました。2003年に設立されたベンチャー企業は多くありませんでした。しかしベンチャー企業とベンチャーキャピタルは、もはや10年前のときのような依存関係にありません。今ではベンチャー企業とベンチャーキャピタルの関係が解消される可能性があります。そしてもし解消されれば、景気が回復しても関係が復活しないかもしれません。

The reason startups no longer depend so much on VCs is one that everyone in the startup business knows by now: it has gotten much cheaper to start a startup. There are four main reasons: Moore’s law has made hardware cheap; open source has made software free; the web has made marketing and distribution free; and more powerful programming languages mean development teams can be smaller. These changes have pushed the cost of starting a startup down into the noise. In a lot of startups—probaby most startups funded by Y Combinator—the biggest expense is simply the founders’ living expenses. We’ve had startups that were profitable on revenues of $3000 a month.

ベンチャー企業がベンチャーキャピタルに依存しなくなった理由は、ベンチャー業界にいる人であれば既に知っています。つまり、ベンチャー企業を設立するのが非常に安くなったのです。これには4つの大きな理由があります。ムーアの法則によりハードウェアが安くなりました。オープンソースソフトによって、ソフトウェアが無料になりました。ウェブによってマーケティングおよび流通が無料になりました。より強力なプログラミング言語の登場で、プログラム開発チームのサイズが小さくてもよくなりました。これらの変化により、ベンチャー企業の設立に必要な資金はほとんど無視できるレベルになりました。多くのベンチャー企業(Y Combinator (Paul Grahamのベンチャー投資会社)によって設立された企業のほとんど)において、一番大きな出費は単に創設者の生活費です。毎月$3,000 (30万円)の売り上げで利益が出たベンチャー企業もあります。

I’ve detected this “investors aren’t worth the trouble” vibe from several YC founders I’ve talked to recently. At least one startup from the most recent (summer) cycle may not even raise angel money, let alone VC.
….
If founders decide VCs aren’t worth the trouble, that could be bad for VCs. When the economy bounces back in a few years and they’re ready to write checks again, they may find that founders have moved on.

Y Combinatorが関わり、最近話をする機会があった創業者の中にも、この「投資家と関わるのは面倒な割には利益がない」という空気を感じています。最近の投資サイクル(夏)のベンチャー企業の一つは、ベンチャーキャピタルどころかエンジェル投資も必要としないかもしれません。
….
ベンチャー企業の創業者がベンチャーキャピタルの関わるのが面倒だと感じるようになれば、ベンチャーキャピタルにとっては問題です。景気が数年後に回復して、ベンチャーキャピタルが再び投資できる環境になっても、創業者はもう彼らを必要としてないかもしれません。

Castle104合同会社の場合

バイオの買物.comを運営しているCastle104合同会社でも同じように考えています。非常に少ない資金で会社を運営しながら、様々なビジネスモデルをじっくりと試して、短期の収益を追求するよりも真に顧客が必要とするサービスを見つけ出そうというのが戦略です。

以下にCastle104合同会社の費用の内訳を簡単に紹介します。いかに少ない資金で運営できているかがわかると思います。

  • インターネットサーバ:毎月1万円。2 GigabyteのRAMと40 Gigabyteのディスクスペースが使え、なおかつカーネルアップグレード以外はほとんど何でもできます。
  • ソフトウェア:サーバのソフトはLinux, Apache, Ruby on Rails, Mongrelと完全にオープンソースで無料です。開発とかプロジェクト管理用に、毎月数千円のソフトウェア使用量は支払っています。
  • メールサーバなど、基本ITインフラ:こういうのは最近グーグルで全部できます。@castle104.comのアドレスのメールも、グーグルのGMailで動いています。無料です。
  • オフィス:自宅です。一時期外部の人に作業を委託したことがありますが、そのときもチャットでこまめに連絡をしていたので、オフィスの必要性は感じませんでした。(逆にチャットを通してその人の働きが悪いことがわかったので、打ち切りました)
  • マーケティング:グーグルのAdWordsが非常に効果的です。無名のウェブサイトでも、簡単にアクセス数を稼ぐことができています。費用は毎月数万円です。
  • プログラム開発:バイオの買物.comを動かしているプログラムはすべて一人で書いています。Ruby On Railsというオープンソースのフレームワークを使用しているため、非常に効率よく開発ができています。PHPとかで同じものを開発していたら、とてもじゃないですけど間に合いません。

その他、eMobileの通信費などをすべて合わせても毎月10万円以下です。また職場は自宅なので、実質的には経費はかかっていません。

バイオの業界はもともとそれほど大きなものではありませんし、インターネットマーケティングの活用もまだ十分に進んでいません。消費者である研究者と、広告主となるメーカーがお互いに満足できるビジネスモデルを探すには時間がかかります。このように経費が少ないからこそ、これが見つかるまでいろいろ試せるだろう考えています。

検索フォームはGETにするべきかPOSTにするべきか

GETの利点と言えば、

  1. 検索結果をブックマークしたり、URLをコピーしたり、リンクを作ったりできます。POSTを使っている場合は、検索トップページにしか移動できません。
  2. アクセスログにクエリーが保存されますので、どのような条件で検索されたかを後で分析することができます
  3. GETはプロキシサーバでキャッシュされますので(キャッシュが恩になっていれば)、サーバへの負担が減らせます

ということで僕は圧倒的にGETにするべきだと思いますが、世の中のウェブサイトを見ると、POSTを使っているウェブサイトがかなり多いです。

W3Cでも

  • Use GET if:
    • The interaction is more like a question (i.e., it is
      a safe operation such as a query, read operation, or lookup).
  • Use POST if:
    • The interaction is more like an order, or
    • The interaction changes the state of the resource in a way that
      the user would perceive (e.g., a subscription to a service), or
    • The user be held accountable for the results of the interaction.

となっていますので、GETを使った方がいいと思いますが。GoogleやYahooもGETを使っています。

ということで、皆さんにお聞きしたいのですが。
POSTを使った方が良いというケースはどのようなケースでしょうか?

ちなみにバイオのウェブサイトで調べてみました。

GET派

POST派

ごちゃ混ぜ派

  • BioCompareのAntibody SearchここはほとんどのパラメータはGETで送っていますが、メーカーごとの絞り込みをするとき、そこだけはPOSTになります。

抗体検索, バイオの買物.comの広告のコンセプト その1

グーグルのネット広告が堅調で、不景気にも関わらず7-9月期決算で売上31%増、利益が26%増の増収増益であったことが報じられました(asahi.com)。

どうしてでしょうか。

サブプライム問題に端を発した金融不安は消費者の購買意欲にも大きな影響を与えており、自動車メーカーなどでは対米販売が数十%低下するという異常事態になっています。これほど極端ではないにせよ、他の製品も落ち込んでいます。この極めてネガティブな状況にも関わらず、グーグルのネット広告が好調なのはなぜでしょう。

僕がマーケティング部門に入って始めての頃、当時の外国人の上司は、modern advertisingの父と呼ばれている John Wanamaker の有名な言葉を紹介してくれました。

“Half the money I spend on advertising is wasted; the trouble is I don’t know which half.” (私が使っている広告費の半分は無駄だっているのはわかっている。問題は、どの半分が無駄かがわからないことだ)

グーグルのネット広告システムはこのJohn Wanamakerの悩みに対して、非常に優れたソリューションを提供しているように思います。

グーグルはAdwordsという広告システムを提供していますが、これを利用する広告主は、1) この広告が何回表示されたか、2) この広告をクリックした人が何人いたか、3) この広告をクリックして広告主のウェブサイトを訪問した顧客はどれぐらい興味を持っていたか、4) この広告をクリックした顧客は実際に購入してくれたか、を知ることができます。

このためには広告を表示するだけでなく、その広告をクリックした顧客の行動を追跡するための様々な解析ツールも提供しています。

広告主は広告の文言をリアルタイムで変更できるのはもちろんのこと、広告がどういうときに表示されるかもコントロールできます。解析ツールから得られる分析結果を見ながら、広告の出し方を少しずつ帰ることができます。こうやって、どのような広告をどのようなときに表示すればどれぐらい効果があるかを知ることができます。John Wanamakerの悩みは有効な広告と無駄な広告が見分けられないということでした。グーグルのシステムを利用すれば、この見分けが簡単につくのです。

有効な広告と無駄な広告の見分けがつくということは、不況のときこそ重要になります。

以前にこのブログでイギリスのインターネット広告について書いたときも、インターネット広告ではお金がどこに使われているかが正確に把握できるため、予算削減の対象になりにくいと紹介しました。

さてバイオの買物.comの広告はどうでしょうか?

バイオの買物.comでは、抗体検索に連動して、スポンサーの抗体を優先的に表示する仕組みを作っています。例えば“CD4″で検索をすると、まず最初にスポンサーのBioLegend社とMillipore社の抗体が表示されます。そしてここに表示されている抗体だけで不十分であれば、ワンクリックでBioCompareにアクセスして、同じ条件でBioCompareのデータベースから抗体を探すことができます。

showAllFromBiocompare.png

この広告システムは様々な点でグーグルを真似ています。

完全な成果報酬型

まず、この広告システムは完全な成功報酬型です。セットアップ費用も月額の固定料金もありません。表示される抗体をクリック(下図の製品名のリンクをクリック)して、広告主のウェブサイトに飛ぶときに始めて費用が発生します。いわゆるCost-Per-Clickのモデルで、グーグルの仕組みと同じです。実際の広告の効果に応じて費用が発生しますので、無駄な広告費が発生しにくい仕組みです。

antibodyRow.png

クリック数のレポート

クリック数のレポートは下図のようになっています。

一番左の列は年月日、その右が課金対象のクリック数です。そして左から3列目はセッション数です。セッションというのは訪問者数とほぼ同じで、一人の訪問者が複数回クリックすることがありますので、クリック数>セッション数になります。また自動的にCost-Per-Clickで料金を計算したのが右から2列目になります。Cost-Per-Clickは従量的に単価が安くなります。ここで表示している例ではクリック数が少ないので単価が高いのですが、クリック数が多くなると最初と比べて約1/3のCost-Per-Clickにまで下がります。一番右の列は、最後のクリックがあった時間です。多くの研究者は実験が終わって、夜に試薬のリサーチをしているようで、かなり遅い時間でも大学からクリックが発生したりします。

なお、無駄なクリックに対してはなるべく課金しないようにするために、休日,祝日のクリックは課金しないようにしています。

clicksummary.png

ユーザについてのレポート

クリックしてくれた顧客がどのような顧客だったのか、何に興味を持っていたのかを知ってもらうためのレポートも用意しています。顧客がどこから来たか、具体的に何を探していたのかを知ることができますので、無駄な広告費用を支払っていないという安心感があります。

なお、例えば自社からのアクセスでクリックが発生したり、競合他社からのアクセスでクリックが発生した場合はこれを報酬から除外するようにしています。こんなクリックにお金を支払うのは頭に来ますよね。

ピクチャ 1.png

今後の方向性

バイオの買物.comでは引き続き完全報酬型の広告システムを採用します。Cost-Per-Clickの他に、画面に表示された回数に応じて課金するCost-Per-Impressionというシステムも採用するかもしれません。

それ以上に大切に考えているのは、ユーザについてのレポートです。多くの広告は「やりっ放し」になりやすいのですが、本来、広告というのはもっとインタラクティブになる可能性を秘めていると考えています。

広告に対する感受性を見ることによって、広告主は顧客のニーズを理解することができます。抗体であればどのような抗原にニーズがシフトしているか、どのような標識が人気があるか。また複数のスポンサーが表示されたときにどのメーカーがクリックされるかを見ることによって、どのメーカーが高いブランド力を持っているかを分析できます。

そういったことがしやすいようにレポートをだんだんと充実させ、John Wanamakerの悩みを解決するだけでなく、それ以上のレベルのマーケティングツールとして活用できるような仕組みを提供していきたいと考えています。

ロングテールでは知ってもらうことが大切 : iTunes 8 のGeniusプレイリスト

Amazon.comのビジネスモデルの説明として、「ロングテール効果」が紹介されています。全売上の80%は上位20%品目がもたらしているという観測(パレートの法則)から、多くの経営者は上位20%品目に重点を置き、下位80%の製品を軽視する傾向が強くなります(特に大企業では目に余ることが多い)。それに対してAmazon.comなどのオンラインショップは、この下位80%をビジネスに組み込むことに成功しており、Amazon.comの売上の中で重要な位置を占めるようになっています。

バイオの研究用試薬機器のマーケティングにおいては、このロングテールはとても重要なコンセプトです。2,000億円程度の市場に200万以上の製品がひしめく、超少量多品種市場だからです(単純に平均すると1品目は10万円しか売れていない)。

ロングテールを可能にしているのは様々なインターネット技術と物流革命ですが、本日発表されたiTunes 8のGeniusプレイリストもその一つと言えると思います。iTunesユーザからの情報を集積して、関連性のある曲、一緒に聴くと楽しい曲をまとめてくれるのです。iTunes Music Storeにある曲も紹介してくれます。

とりあえずは、面倒くさくてほとんど整理していない自分の音楽コレクションを、全く新しい感じで聴くことができるので、とても楽しんでいます。

バイオでも何か似たようなことができないか。またまた刺激されてしまいました。できたら結構すごいと思います。

ポイントは、普段だったら知ることない製品でも、「これはあなたの趣向にぴったりです。あなたが使っているものと似ていて、ちょっと拡張したものですよ。」と伝えること。全く新しいものに取っ付くには時間がかかりますが、いままで使っていたものとの関連で説明されると早く納得してくれますので。

バイオ百科で抗体検索:僕が使いにくいと感じるところ

以前のブログで、バイオ百科の抗体検索が使いにくいとお話しました。

僕もいちおう科学者の端くれですので、方法および結果をちゃんと紹介し、皆様も追試できるようにしました。実際に僕が問題にぶち当たっているところをビデオにしましたので、ご覧ください。

日本語になった4Qアンケートシステム 11.7%の回答率

4Qアンケートシステムはウェブサイトに訪問してくれるお客様に対して、簡単なアンケートを実施するもので、ユーザの目的達成度や満足度を知る有用なツールです。これについては既に何回かこのブログで取り上げています。(1, 2, 3, 4, 5)

このアンケートシステムは当初は英語版しかなかったのですが、最近日本語版が用意されました。バイオの買物.comでは7/22からこの日本語版に切り替えましたので、簡単に回答率について報告したいと思います。

2008/7/22のブログでも紹介しましたように、英語版ではおおよそ3.1%の回答率でした。それが日本語版ですと、

7/22 – 7/28の期間で

23回答 x (100%/20%) / 980 ユニークユーザ = 11.7%

* 100% / 20% というのは、訪問者の20%にしかアンケートが表示されないため

となりました。

英語版に比べて、日本語版にした結果、回答率は約4倍に上昇。そして得られた11.7%という回答率というのは、景品無しのアンケートとしては実に驚異的な数字だと思います。以前にメーカーで働いていたときに行っていたメールで参加を促すキャンペーンでは、景品を付けてもこんな数字にはなりませんでした。

ということで、この4Qアンケートシステムを他人に勧める上でもう迷いはありません。

皆さん、特にメーカーのウェブサイトを運営している方は、ぜひこのアンケートシステムを導入して、お客様の生の声をご確認ください。このシステムは無償ですし、いまのところお客様から「こんなの邪魔だ」というコメントは一切いただいていませんので、躊躇する理由は無いと思います。

またわからない点がありましたら、私が可能な限りお答えしますので、ぜひご連絡をください。

バイオ関連のすべてのウェブサイトが、より良いものになっていくことを切に願っています。

4Qアンケートシステムは良いよ(アップデード)

バイオの買物.com4Qというところのアンケートシステムを使用していることは、以前にブログ(1, 2, 3)でも紹介しています。

いままでは始めて間もない頃の結果でしたが、今回は2ヶ月ほど運用した後の結果について紹介したいと思います。

まず結論ですが、とても良さそうというのが感想です。

日本語化

いままでは日本語に対応していなくて英語だけだったのですが、先日、日本語に対応しました。
インタフェースは英語のままですが、日本語のアンケートを作成することが可能になりました。
本日 2008/7/22 からバイオの買物.comでも日本語のアンケートの運用を開始しました。

いままでの結果

回答数

回答率やアンケートが表示された回数についてはレポートの中には出てきませんが、a) レポートが20%の訪問者に表示されるようにしていること、b) Google Analyticsの解析結果と合わせて考えると、7月で

16回答 x (100%/20%) / 2,550 (7月ユニークユーザ数) = 3.1%

の回答率になっていると思います。

英語であることを含めて考えると、景品無しのアンケートとしては驚異的に高い回答率と言えると思います。バイオの研究者に対する販促資料などでは、日本語化するだけで10倍ぐらいは回答率が上がるので、この4Qのアンケートも日本語化することによって数倍は回答率が上がると予想されます。

満足度

満足度は以下のような形でレポートされます。

overall satisfaction.png

バイオの買物.comについて言えば、真ん中の「普通」という評価しかもらっていないので、早く80ポイントの「とても良い」ぐらいになるようにしたいものです。でも「悪い」という評価じゃなくてほっとしています。

7月で少し良くなっていますが、これは製品を比較するという明確な目的意識を持って訪問してくれていることが良いのではないかと思っています。Googleで表示されるときに【比較】という文字がしっかり表示されるようにしたこと、またGoogleから来た場合に限り、画面に大きく「このサイトは製品比較サイトです」と宣言するようにしたことが良かったかもしれません。

目的達成度

ウェブサイトに来た訪問者は必ず何らかの目的があるわけですが、それが達成できたかどうかを確認するための質問です。これは以下のような形でレポートされます。

task completion.png

4Qで非常に重視している指標です。どんなにきれいでナビゲーションがしやすいウェブサイトであっても、訪問者の目的が達成できなければ意味がない。だからこそ、目的達成度を中心にアンケートを作ろうと4Qは考えているようです。

その中で、バイオの買物.comはまだまだ訪問者の期待の応えることができていないことがわかります。60%の訪問者しか目的を果たせていないわけですから。今後は内容をますます充実させること、特に要望が高い製品の情報を充実させることをしていきたいと思っています。

これが80%ぐらいになれば、リピートの訪問者も増えて、とても幸せな感じになってくるでしょう。そこが目標です。

主目的の分布

これはかなり細かいレポートになっています。バイオの買物.comを訪問している顧客の目的はいったい何なのか、これを理解するためのレポートです。

purpose.png

これでわかるのは、6月(Jun)と7月(Jul)を比較して、’Learn about products’と’Compare Products’を目的としているユーザ数が逆転していることです。つまり、6月は製品について学習したい顧客が多く、7月は製品を比較したい顧客が多かったようです。

現在のバイオの買物.comは製品について学習したい人のための情報は不十分で、製品を比較するための作りを重視していました。7月の方がそのような顧客をしっかりと呼び込むことができたようです。

また7月はサイト内リンクとサイト外リンクをともに充実させ、「比較」をより前面に出しました。例えば、6月までは、「このサイトで製品比較ができる」ことすら気付かずに帰ってしまう可能性の高い構成になっていました。サイト内リンクの充実でそれを防ごうとしました。

主目的の分布については、さらに「目的を達成できた人のそもそもの目的は何だったか?」「目的を達成できなかった人のそもそもの目的は何だったか?」「目的ごとの満足度は?」というレポートも出してくれています。

score by purpose.png

まとめ

とても簡単な質問のアンケートですが、どんな目的の人をGoogleから呼び込んで、どのような心の準備をしてもらうか、これがしっかり意識できるようになりました。またどの分野を強化していけば満足度を高められるかがとてもはっきりわかるので、次の方向性を迷わず決定できます。

日本語かによってN数も大幅に増えること、さらに記述式の回答も増えることが期待されるので、今後がとても楽しみです。

4Qはまだβ版なので、使いにくいところはいくつもあります。わからないことがあったら、僕にでも気軽に質問してください。

バイオメーカーのための一番効果的なSEO対策

SEOというのはSearch Engine Optimizationの略で、Googleなどで検索したときに、自社ウェブサイトが一番上に表示させるための方法論と対策です。

例えばSCGFに対する抗体を探したい研究者が、Googleで「SCGF抗体」と入力したとします。そうするとこんな検索結果になります。Abcam社の抗体が一番上に表示されます。

そうするとこの研究者はまず間違いなくAbcamの抗体を調べに行きます。GoogleのおかげでAbcam社のSCGF抗体が売れる訳です。

こうやって自社のウェブサイトがGoogleで上位に表示されると、売り上げが伸びそうだというのはよくわかると思います。

さて、どうやれば自社のウェブサイトを上位に表示させることができるのでしょうか?

SEOコンサルタントという業種がいて、彼らは何百万円をもらいながら、キーワードを解析したりしてGoogleでのランキングを向上させるように努力します。しかし、彼らが主に扱っている業界とバイオの業界とは大きく異なります。当然SEO対策も大きく異なります。

そこで、僕がウェブサイトを運用しながら感じている、バイオのためのSEO対策のポイントを紹介したいと思います。

少しだけでも日本語化する

まず、日本人がよく使うキーワードだけでも日本語化したウェブサイトを用意する必要があります。上述のAbcam社のウェブサイトは実際にはほとんど英語なんですが(つまり全く和訳していない)、抗体というキーワードだけは翻訳されています。だから上位に出るのです。

またGoogleは日本語のウェブサイトを優先的に上位に表示します。例えば”real time PCR”を普通に日本からGoogle検索すると、このような結果になります。一方で、US英語圏の人が”real time PCR”で検索すると結果は全然違います。同じ”real time PCR”という言葉ですが、USで上位に表示されていたものが日本語では全然上位に出ません。

バイオの業界だとほとんどが外資ですから、どこのメーカーも英語のウェブサイトならそれなりのものを持っています。それを完全に日本語に訳すことはできないとしても、少しでも日本語化しておくだけで、Googleでの表示位置は全然変わってきます。その日本語かの程度はAbcam社の例を見てもわかるように、ほんの少しだけでいいのです。

検索しなくてもアクセスできるようにする

さて、先のSCGF抗体の話ですが、これはコスモバイオ社でも取り扱っています。日本語のウェブページもしっかり用意されています。

でもGoogleの検索結果にはどこを探しても見当たりません。

その理由は、コスモバイオ社のウェブサイトでは、検索以外の方法でSCGF抗体にありつくことが出来ないからです。Googleは世界中のウェブサイトを巡回していますが、検索キーワードを自動的に入力するという芸当はさすがにできません。ですから、コスモバイオのSCGFについてはGoogleは全く知らないのです。当然、検索しても表示されません。

特に抗体などを扱っているバイオメーカーは、得てしてこのようなウェブサイトを作ってしまっています。ユーザの利便性を考えて検索機能を用意するのはもちろん必要ですが、「Googleの利便性」も考えてあげた仕組みも用意する必要があります。それが検索しなくてもアクセスできるようなサイトマップです。

ユーザ認証はなるべく減らす

例えばBio-Radはユーザ識別機能を盛んに(しかもおかしな方法で)利用していて、Googleに無視されてしまっています。例えばBio-RadのqPCR用の製品に”iQ Supermix”というのがあるのですが、これで検索するとこんな結果になります。つまりうちのバイオの買物.comが一番上で、Bio-RadはQ&Aサイトにしか行きません。Bio-RadのQ&Aサイトから該当製品のカタログサイトにいくことはできませんので、カタログ番号の確認すらできず、とても都合が悪い状況です。製品を買いたいお客様を逃してしまいます。

これがなぜ起こるかというと、ユーザ識別機能のせいです。http://discover.bio-rad.co.jp/をクリックするとBioRadのホームページにいきますが、そのときにURLはすごく変なものになってしまいます。僕はいまやったら、http://www.bio-rad.co.jp/B2B/BioRad/br_community_home.jsp?BV_SessionID=@@@@2044248699.1215668559@@@@&BV_EngineID=cccdadeeiilkdkhcfngcfkmdhkkdfll.0&loggedIn=false&country=JP&lang=Japanese&divName=Life+Science+Research になりました。ここのSessionIDというところにユーザ識別コードが入っているのです。でもGoogleが巡回したときはこのユーザ識別機能がうまく対応しないのです。そこでGoogleは遮られてしまい、結果としてBio-RadのページはほとんどGoogle検索で引っかかってきません。

Q&AサイトがGoogleで引っかかるのは、Q&Aサイトは日本独自のサイトで、個人識別機能がないためです。

海外メーカーのサイトは最近このような個人識別機能などを盛んに利用するようになっています。ネットショップ機能を実装し始めているからです。しかもたぶんとてもプログラミングが下手な業者に頼んだのでしょう。AmazonなんかはGoogleに完璧に引っかかるようにしつつネットショップを実現しているのに、バイオのメーカーはGoogleを遮断してしまっているところが多いです。ロシュもその一つです。Googleの検索からはRocheのウェブサイトのどこかにはいけますが、Fugeneの価格になかなかありつけません。

最後に

大手じゃないバイオメーカーですと、日本支店で独自にウェブサイトを立ち上げたりするのは困難で、英語のウェブサイトに頼ることになってしまいがちです。しかし、それでは非常に多くの顧客を逃してしまいます。

上記の手法は、ほとんど翻訳作業をしなくてもGoogleからの顧客をグンと増やす方法です。人間がやる作業ではなく、プログラムを使った工夫で実現できるものです。

Castle104社ではSEOに課題を抱えるバイオのメーカーのために、それぞれの状況に合わせてカスタマイズされたプログラムを作ることもできます。お悩みでしたら、ぜひ一度、気軽にお問い合わせください。

製品のカテゴリー分け

このブログは、自分で悩んでいることをつらつらと書いたものになるので、まとまりのないものになります。読んでしまってから後悔しないように、あらかじめ断っておきます。

悩んでいるのは製品のカテゴリー分けです。特に製品というよりも、各メーカーが提供している学術資料であるとかをまとめて整理するためのカテゴリー分けです。バイオの買物.comの比較表のところで使うものです。

何を悩んでいるかを解説できるほどに頭が整理できている訳ではないので、まずはバイオの製品カテゴリー分けがうまくいっていない例を紹介しています。

うまくいっていないカテゴリー分け:BioCompare

BioCompareは多数のメーカーの猛烈な数の製品を階層的にカテゴリー分けしています。しかもカテゴリーはかなり細かく分断しています。例えばPCR用の耐熱性DNA polymeraseのところは15のサブカテゴリーに分かれています。

BioCompareトップページ

しかもTaq DNA PolymeraseだけではNativeとRecombinant、さらにdNTPがキットに含まれているものという3つのサブカテゴリーにわかります。いまの例なんて特にそうなんですが、カテゴリーの重なりや独立性にはこだわっていないようで、目的の製品がどこにあるのか、大いに悩んでしまうような分類になっています。

BioCompare Thermostable Polymerases

ユーザの立場から見たらすごくわかりにくいカテゴリー分けですが、実際にデータを入力する立場から考えるとその気持ちは非常に良くわかります。単純な話、階層的にかつ独立性のあるカテゴリー分けというのはほとんど無理な話で、必ず訳が分からなくなるのです。そしていったん訳が分からなくなったら、もう後はずるずると易きに流れて、「えい、どこかにとりあえずしまっておけ」という感じのカテゴリー分けになるのです。

どうしてカテゴリー分けが狂うのか

階層的なカテゴリー分けをしているのは、Biocompareもそうですが、ほとんどのメーカーのウェブサイトがそうです。コスモバイオのようにカテゴリー分けをそもそもあきらめて、検索だけ提供すればいいやと開き直っているメーカーも一部にはありますが、たいていのメーカーはとりあえず製品を階層的にカテゴリー分けします。

インビトロジェンなんかは合併に次ぐ合併をしたせいもあり、全製品を統合してカテゴリー分けするのではなく、とりあえず合併した会社をそれぞれ別々のカテゴリーに分けています。

invitrogen product central

僕がいたロシュも、リアルタイムPCR試薬・機器とその他の試薬が別々のグループに分かれていたので、かなり重なりがあるにもかかわらず、最も上流で枝分かれをしています。

このようにユーザの立場ではなくメーカーの都合でカテゴリー分けをすることによって、カテゴリー分けが狂ってしまうというケースが一つにあります。

もう一つには階層的なカテゴリー分けの限界があります。階層的なカテゴリー分けは、基本的には一つの属性を基準にして、ユーザに複数のものから一つの道を選択させるものです。ですから複数の属性があり、複数の階層にまたがる製品はどっちのカテゴリーに入れることもできず、悩んでしまうのです。例えばBioCompareの耐熱性DNA polymeraseの例では、Pfu DNA PolymeraseとかTgo DNA Polymeraseの他にHigh Fidelity Polymerasesというカテゴリーがありますが、PfuもTgoもHigh Fidelity Polymeraseの一種なので、カテゴリーがおかしくなります。さらにHot StartのPfu Polymeraseも発売されていますが、これはいったいどっちに入ってくるのか、さっぱりわかりません。

それでもBioCompareが階層的なカテゴリー分けをするのは、メーカーの情報を割とそのまま載せているからだと思います。メーカーは印刷物のカタログを作る関係で、必ず階層的なカテゴリー分けをします。その階層化されたカタログをメーカーがBioCompareに渡して、「これを掲載して」と言っている訳ですから、BioCompareも階層的にカテゴリーに突っ込むのが作業的には楽なのでしょう。ユーザにとってはわかりにくくても。

バイオの買物.comの試み

バイオの買物.comでは、BioCompareのようにカテゴリー分けの問題をテキトウに済ますのではなく、WebとかDesktopサーチで使われているようなコンセプトを応用していこうと思っています。BioCompareの製品比較表のカテゴリー分けは意識的に細かくせず、大雑把なところでとどめています。そこからさらに絞り込むためには、カテゴリー分けに頼るのではなく、メタデータ(製品スペック)による絞り込み検索を実行するようにしています。

castle104 query form

 

そしてこれに加えて、そろそろダグというメタデータもつけようと思います。

製品スペック的なメタデータは、ある程度限定された範囲で説明できる機能について、特に数字を比較するときなどに役立ちます。例えばPCRで何キロベース伸びるとか、プラスミドDNAがどれだけ回収できるのかです。でも一方で、非常に広がりがあるものについては弱いです。例えばトランスフェクションが成功した細胞はどれか。この場合は何千という細胞株をスペックに用意するのは大変ですし、そもそも有無だけで抽出する訳ですから、数字の比較はしません。学術資料がどの分野の実験について書かれているか、というのも同様です。ノーザンとかサザン、in situハイブリダイゼーションというのをそれぞれ別々のスペックにしていたらとても大変です。

ということで、取り扱いメタデータによって、スペック的に取り扱うかタグ的に取り扱うかを選べるようにしていこうと思います。

その一方で、いろいろな手法が混在してしまってユーザが混乱してしまわないように、いろいろ工夫しないといけません。これもチャレンジですね。

Railsのacts-as-taggable-onがなかなか良さそうなので、これを使っています。