マックが売れている理由

10月14日(火曜日)に、Apple社は新しいMacBookおよびMacBook Proを公開するイベントを開催しました。(ビデオはこちらから)

そのとき、恐らく投資家の視線を意識してだと思われますが、Macが非常に売れていることを細かく紹介していました。

  1. Macの売り上げ成長率が市場の3倍であること、および
  2. USの小売において、販売台数ベースでシェアが17.6%、金額ベースのシェアは31.3%であること

景気が下降している局面では、安い製品が売れると一般に考えられます。Macのように高価なパソコンは売れずに、安売りのウィンドウズパソコンが売れるだろうと予想されます。しかしそれとは逆のトレンドです。Macの売上が下がるどころか、ますます絶好調なのです。

この原因は何でしょうか。Apple社のTim Cookは次の順番で要因を挙げています(ビデオの1分30秒あたりから)。

  1. Better Computers: 最高のパソコンラインアップを用意していること
  2. Better Software: 最高のソフトウェアを提供していること
  3. Compatibility: Intel Macによって、WindowsがMac上で走らせられるようになったこと
  4. Vista: Microsoftの新しいOSのVistaが失敗し、これを契機にMacに人が移っていること
  5. Marketing: Mac vs. PCの広告が成功していること
  6. Retail Store: Apple Storeで新規顧客開拓ができていること

このリストの順番を見ると
自社が良いものを作っていること > 競合が駄作を作っている > 広告 > 小売り
の順番になっていることに気付きます。

バイオの業界では、ゲノムバブルがはじけたら2003年あたりから、モノ作り重視・日本語サポート重視からシフトして、マーケティング・セールスをことさらに強調する経営者が多くなってきたように思います。バイオに何の思い入れも無い、全く異なる分野出身の人が、MBAを持っているという理由だけで事業部長や社長になり始めたのもこの時期だと思います。

残念ながら、この方針がうまくいっているという話は全く聞いたことがありません。

マーケティングやセールスは確かに重要ですが、それはあくまでも優れた製品があって始めて意味を持つのであって、どんなにマーケティングやセールスが強くても、駄目な製品は駄目だと。Apple社の成功は、本当のモノ作りが最後には勝つことを我々に教えてくれているように思います。

ちなみに完全に蛇足ですが、日本でよく言っているモノ作りがApple社のモノ作りと同じかどうかははなはだ疑問のところがあります。日本のモノ作りの基本は、品質の良く、機能が多いもの(スペックが高いもの)を安く販売することがキモです。これは新興国には可能な方法ですが、人件費が安くないと破綻してしまうため、成熟した国家ではなかなか難しい戦略です(日本の製造業が派遣社員に頼ってしまっているのは、このモデルにしがみついているためとも言えます)。これに対してApple社のモノ作りは、顧客の将来のニーズを先読みし、機能を絞り込んで、使いやすいものを、比較的高い価格で売ることです。同じモノ作りでも、アプローチは全く違います。

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抗体検索, バイオの買物.comの広告のコンセプト その1

グーグルのネット広告が堅調で、不景気にも関わらず7-9月期決算で売上31%増、利益が26%増の増収増益であったことが報じられました(asahi.com)。

どうしてでしょうか。

サブプライム問題に端を発した金融不安は消費者の購買意欲にも大きな影響を与えており、自動車メーカーなどでは対米販売が数十%低下するという異常事態になっています。これほど極端ではないにせよ、他の製品も落ち込んでいます。この極めてネガティブな状況にも関わらず、グーグルのネット広告が好調なのはなぜでしょう。

僕がマーケティング部門に入って始めての頃、当時の外国人の上司は、modern advertisingの父と呼ばれている John Wanamaker の有名な言葉を紹介してくれました。

“Half the money I spend on advertising is wasted; the trouble is I don’t know which half.” (私が使っている広告費の半分は無駄だっているのはわかっている。問題は、どの半分が無駄かがわからないことだ)

グーグルのネット広告システムはこのJohn Wanamakerの悩みに対して、非常に優れたソリューションを提供しているように思います。

グーグルはAdwordsという広告システムを提供していますが、これを利用する広告主は、1) この広告が何回表示されたか、2) この広告をクリックした人が何人いたか、3) この広告をクリックして広告主のウェブサイトを訪問した顧客はどれぐらい興味を持っていたか、4) この広告をクリックした顧客は実際に購入してくれたか、を知ることができます。

このためには広告を表示するだけでなく、その広告をクリックした顧客の行動を追跡するための様々な解析ツールも提供しています。

広告主は広告の文言をリアルタイムで変更できるのはもちろんのこと、広告がどういうときに表示されるかもコントロールできます。解析ツールから得られる分析結果を見ながら、広告の出し方を少しずつ帰ることができます。こうやって、どのような広告をどのようなときに表示すればどれぐらい効果があるかを知ることができます。John Wanamakerの悩みは有効な広告と無駄な広告が見分けられないということでした。グーグルのシステムを利用すれば、この見分けが簡単につくのです。

有効な広告と無駄な広告の見分けがつくということは、不況のときこそ重要になります。

以前にこのブログでイギリスのインターネット広告について書いたときも、インターネット広告ではお金がどこに使われているかが正確に把握できるため、予算削減の対象になりにくいと紹介しました。

さてバイオの買物.comの広告はどうでしょうか?

バイオの買物.comでは、抗体検索に連動して、スポンサーの抗体を優先的に表示する仕組みを作っています。例えば“CD4″で検索をすると、まず最初にスポンサーのBioLegend社とMillipore社の抗体が表示されます。そしてここに表示されている抗体だけで不十分であれば、ワンクリックでBioCompareにアクセスして、同じ条件でBioCompareのデータベースから抗体を探すことができます。

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この広告システムは様々な点でグーグルを真似ています。

完全な成果報酬型

まず、この広告システムは完全な成功報酬型です。セットアップ費用も月額の固定料金もありません。表示される抗体をクリック(下図の製品名のリンクをクリック)して、広告主のウェブサイトに飛ぶときに始めて費用が発生します。いわゆるCost-Per-Clickのモデルで、グーグルの仕組みと同じです。実際の広告の効果に応じて費用が発生しますので、無駄な広告費が発生しにくい仕組みです。

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クリック数のレポート

クリック数のレポートは下図のようになっています。

一番左の列は年月日、その右が課金対象のクリック数です。そして左から3列目はセッション数です。セッションというのは訪問者数とほぼ同じで、一人の訪問者が複数回クリックすることがありますので、クリック数>セッション数になります。また自動的にCost-Per-Clickで料金を計算したのが右から2列目になります。Cost-Per-Clickは従量的に単価が安くなります。ここで表示している例ではクリック数が少ないので単価が高いのですが、クリック数が多くなると最初と比べて約1/3のCost-Per-Clickにまで下がります。一番右の列は、最後のクリックがあった時間です。多くの研究者は実験が終わって、夜に試薬のリサーチをしているようで、かなり遅い時間でも大学からクリックが発生したりします。

なお、無駄なクリックに対してはなるべく課金しないようにするために、休日,祝日のクリックは課金しないようにしています。

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ユーザについてのレポート

クリックしてくれた顧客がどのような顧客だったのか、何に興味を持っていたのかを知ってもらうためのレポートも用意しています。顧客がどこから来たか、具体的に何を探していたのかを知ることができますので、無駄な広告費用を支払っていないという安心感があります。

なお、例えば自社からのアクセスでクリックが発生したり、競合他社からのアクセスでクリックが発生した場合はこれを報酬から除外するようにしています。こんなクリックにお金を支払うのは頭に来ますよね。

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今後の方向性

バイオの買物.comでは引き続き完全報酬型の広告システムを採用します。Cost-Per-Clickの他に、画面に表示された回数に応じて課金するCost-Per-Impressionというシステムも採用するかもしれません。

それ以上に大切に考えているのは、ユーザについてのレポートです。多くの広告は「やりっ放し」になりやすいのですが、本来、広告というのはもっとインタラクティブになる可能性を秘めていると考えています。

広告に対する感受性を見ることによって、広告主は顧客のニーズを理解することができます。抗体であればどのような抗原にニーズがシフトしているか、どのような標識が人気があるか。また複数のスポンサーが表示されたときにどのメーカーがクリックされるかを見ることによって、どのメーカーが高いブランド力を持っているかを分析できます。

そういったことがしやすいようにレポートをだんだんと充実させ、John Wanamakerの悩みを解決するだけでなく、それ以上のレベルのマーケティングツールとして活用できるような仕組みを提供していきたいと考えています。

ロングテールでは知ってもらうことが大切 : iTunes 8 のGeniusプレイリスト

Amazon.comのビジネスモデルの説明として、「ロングテール効果」が紹介されています。全売上の80%は上位20%品目がもたらしているという観測(パレートの法則)から、多くの経営者は上位20%品目に重点を置き、下位80%の製品を軽視する傾向が強くなります(特に大企業では目に余ることが多い)。それに対してAmazon.comなどのオンラインショップは、この下位80%をビジネスに組み込むことに成功しており、Amazon.comの売上の中で重要な位置を占めるようになっています。

バイオの研究用試薬機器のマーケティングにおいては、このロングテールはとても重要なコンセプトです。2,000億円程度の市場に200万以上の製品がひしめく、超少量多品種市場だからです(単純に平均すると1品目は10万円しか売れていない)。

ロングテールを可能にしているのは様々なインターネット技術と物流革命ですが、本日発表されたiTunes 8のGeniusプレイリストもその一つと言えると思います。iTunesユーザからの情報を集積して、関連性のある曲、一緒に聴くと楽しい曲をまとめてくれるのです。iTunes Music Storeにある曲も紹介してくれます。

とりあえずは、面倒くさくてほとんど整理していない自分の音楽コレクションを、全く新しい感じで聴くことができるので、とても楽しんでいます。

バイオでも何か似たようなことができないか。またまた刺激されてしまいました。できたら結構すごいと思います。

ポイントは、普段だったら知ることない製品でも、「これはあなたの趣向にぴったりです。あなたが使っているものと似ていて、ちょっと拡張したものですよ。」と伝えること。全く新しいものに取っ付くには時間がかかりますが、いままで使っていたものとの関連で説明されると早く納得してくれますので。

ウェブサイトでの調査が、店舗での購入に与える影響

ある製品を買うときに、まずウェブサイトで下調べし、実際には店舗で買うことがよくあります。
でも、ウェブサイトの善し悪しがどれだけ貢献しているかはなかなかわかりません。

バイオの場合はオンラインで試薬や機器を購入するのではなく、ほぼ100%代理店を介して購入しますから、まさにこのパターンです。

今回は、お客様がウェブサイトで下調べすることが、実際の店舗での購入にどれだけ影響しているかについて、いくつかの記事を紹介します。

Measuring the Offline Impact of an Online Visit

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解説:1) 店舗で購入した人の53%は、ウェブで下調べしたときに一番良く見た販売店から購入した。2) 店舗で購入した人の80%は、ウェブで下調べしたときに一番最初に見た販売店から購入した。

なお、実際に店舗を訪れた人のうち64%はウェブで下調べをしていたこと、さらにウェブで下調べした人の50%は、実際に店舗も訪れたというデータも得ているそうです。

Pinpointing the Value of Multi-Channel Behavior

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これは購入前に、顧客はどのように下調べを行うかを調査したものです。それを店舗で購入した顧客とオンラインで購入した顧客で分けて分析しています。

店舗で購入した顧客でも31%がメーカーのウェブサイトを訪問し、さらに28%が製品比較サイトなどを利用したという結果になっています。さらに38%の顧客は製品を取り扱っている販売店のウェブサイトを訪問しています。

The Online and In-Store Crossover Conundrum: Pinpointing the Value of Multi-channel Behavior

これは店舗とウェブの補完的で相乗的な関係について述べています。さらに上述のブログをまとめています。

Like peanut butter and jelly, cookies and milk, or bread and butter, some combinations are just meant to go together. Such is the case when you link “high-consideration” categories like consumer electronics with online shopping. Arming the consumer with enough product information to make an instant expert, the Internet not only quenches the thirst for knowledge, but it satisfies the desire to buy too.
ピーナッツバターとジャム、クッキーと牛乳、パンとバターのように、完璧にうまくいく組み合わせというものがあります。家庭用電子機器のような”high-consideration”カテゴリー(購入前に十分検討するカテゴリー)とオンラインショッピングの組み合わせはまさにそのようなものです。専門家になれるぐらいの知識を消費者に与えることによって、インターネットは知識欲を満たすだけでなく、購買欲も満たしてくれるのです。

On the other hand, “low-consideration” categories, such as consumable products like pet food, do not hold the same online purchasing appeal.
一方で、ペッドフードなどの一般消費財のような”low-consideration”カテゴリー(購入前にあまり検討しないカテゴリー)では、オンラインでの購入の魅力はあまりありません。

感想

バイオの製品は “high-consideration”カテゴリーに含まれるものが多いので、オンラインショッピングには本来的には向いています。しかし、現実には代理店を介してオフラインで購入することがほとんどです。

“high-consideration”カテゴリーではウェブサイトでの調査はとても重要だと顧客は考えています。そしてウェブサイトを充実させることが、オフラインの購入を大きく促進することになります。

さらにウェブサイトがまぁまぁいいというレベルでは駄目だということです。既に当該製品分野でのブランドイメージも大切ですが、Googleなどで高い位置にリストアップされること、そして一番最初に見てもらえるぐらいに充実していることがとても大切です。

インターネットで抗体を探す方法:抗体検索サイト vs. Google

理想の抗体検索システムを追求した新「まとめて抗体検索」サービスを始めましたので、ぜひご利用ください。

またこの記事を含め、ライフサイエンス研究用製品メーカーのウェブサイトのあるべき姿について書いた記事を特集ページにまとめました。あわせてご覧ください。

あなたは抗体を探すとき、抗体検索サイトに行きますか?それともGoogleでダイレクトに検索しますか?

日本国内の抗体検索サイトについては以前のブログで紹介しましたが、今回は抗体検索サイトを利用せずに、ダイレクトにGoogleで検索する方法について話したいと思います。

ここでいうGoogleで検索する方法というのは、つまり “CD4 抗体”もしくは”CD4 antibody”のキーワードでGoogleすることを指します。

面白いことに、コスモバイオのウェブサイトなどをを利用して抗体を検索するのと、Googleで直接検索するのとでは、全く異なるのです。例えば “CD4 抗体”でGoogle検索すると、Beckman CoulterのサイトやMiltenyi Biotechのサイトは出てくるのですが、コスモバイオのサイトはやっと3ページ目に、あまり関係がないと思われる「Tregマーカー 細胞表面にある4型葉酸受容体抗体:コスモ・バイオ」というページが出てくるだけです。コスモバイオが取り扱っているCD4 抗体のページは出てこないのです。

どうしてそうなってしまうのかという技術的な問題については、後で機会があれば詳細に解説したいと思います。今日はとりあえず、Googleで直接検索する人がどれぐらいいるのかを分析したいと思います。利用するのはAdwordsのキーワードツールです(Adwordsアカウントがないと、フルバージョンは使えません)。

いくつかの抗原で、”[抗原名] 抗体”もしくは”[抗原名] antibody”のGoogleでの検索回数を表にまとめました。数字は月間の平均検索回数です。

抗原名 “抗体”と組み合わせ “antibody”と組み合わせ
annexin 不明 390
Calcineurin 不明 91
Raf 不明 12
Ras 36 480
Caspase 不明 58
myc 170 91
CD20 170 不明
CCR3 不明 73
CD133 91 390

各抗原について、非常に乱暴ですが、平均で月間100回の検索が行われると想定しましょう。また抗原の種類は、割と知られているものだけでも数百はあるでしょう。仮に500種類あるとします。そうすると、直接Googleで抗体の検索を行うのは、月間50,000回あると計算されます。平日だけを考えますと、毎日2,000回の検索が行われている、非常におおざっぱに言えると思います。

そもそも「抗体」というキーワードだけだと165,000回の検索が行われていますし、antibodyだと27,100回の検索が行われています。「抗体」で検索しているのは、研究者以外の人が多いと思われますので、僕らの目的からすると、antibodyの27,100回の方が意味があると考えています。ちなみに「コスモバイオ」は6,600回、Googleで検索されています。

‘antibody’は27,100回検索されていますが、この数を先に推定したGoogleでの直接的な抗体検索回数、月間50,000回と比べますとかなり近い数字です。そこで、論理的にはかなり乱暴ですが、インターネットで抗体を探している人はかなり高い割合で、Googleでの直接検索を行っていると言えると思います。

そう考えると、Googleで直接検索を行うユーザは多いので、彼らを対象とした対策が必要になります。しかし、極一部のメーカーを除いて、これをしっかりやっている会社はかなりの少数派のように見受けられます。

残念な話です。

Google Insights for Searchとバイオ業界のSEO

Googleの新しいサービスであるGoogle Insights for Searchの紹介と、バイオ業界において日本語のウェブサイトが必要な理由を解説したビデオです。Google Insights for Searchを使うと、韓国や台湾では英語のウェブサイトで十分かもしれないけど、中国では絶対に中国語のウェブサイトが必要になることがよくわかります。

いまはYouTubeを使っていますが、画質を考えながら、ビデオを今後どのように掲載するかを考えていこうと思っています。

高画質バージョンはここからダウンロードしてください。

バイオ業界の広告の費用対効果 (ROI) 推定

バイオの業界ではいろいろな方法で広告などを行って、研究者に製品を買ってもらおうとしています。

当然、効果の高い広告と低い広告があるのですが、どれぐらいの費用対効果(ROI)になるのかは、よく考えてみると、僕がメーカーでマーケティングをやっているときも計算していませんでした。経験とか感覚(これは結構当たっていたとは思いますが)を頼りに、効率の良さそうなものとそうでないものを選んでいたと思います。また一口に費用対効果と言っても、どういうメッセージを伝えたいかによっても大きく変わるので、じゅっぱひとからげに費用対効果を数値化するのも誤解を招くことがあります。

そうは言うものの、一回自分の経験をもとに、非常におおざっぱですが費用対効果の計算結果を紹介したいと思います。

「これはちがう!!」ということもあると思いますので、そのときはぜひコメントを書いてくださいね。

ではいきます。

table {width:100%; border: 1px solid orange;}
th { background-color:#fc9:border: 1px solid orange;width:25%;text-align:center;}
td { border: none;text-align:right;padding: 0 10px 0 10px}

費用 問い合わせ数 単価
雑誌広告 ¥200,000 2 ¥100,000
チラシ ¥300,000 200 ¥1,500
バナー広告 ¥50,000 40 ¥1,250
メルマガ ¥150,000 ¥100 1,500
学会展示 ¥300,000 200 ¥1,500

これはとても大雑把な数字ですが、一応この数字を出している根拠を書きます。

雑誌広告

雑誌広告というと、グローバルの本社がNature, Scienceには出すので、Nature日本語版および実験医学などということになります。広告の費用はエー・イー企画のウェブサイトを参考にすれば良いと思います。この価格に加え、広告原稿を作るためにも結構お金がかかりますので、費用はこんな感じになります。

さて効果のほどですが、すばり、雑誌広告を見たと言って問い合わせてきたお客様というのは、何年間かバイオの業界にいて、ほとんど聞いたことがありません。

もちろん広告を見てすぐに問い合わせなくても、何となく記憶に残っていて、徐々にブランドが構築される効果は否定しません。

でも自分自身が研究していたときも、広告が印象に残ったということはほとんどありませんし、極稀に印象に残ったものであっても、そのときにやっていた実験とは関係がなかったので何も買わなかったという経験しかありません。

したがって、問い合わせ数 2 という数字はテキトウに記入しましたが、雑誌広告があまり効果を持たないという意味ではこれはこれで良いのかなと思います。

チラシ

ここで言っているチラシというのは2-3万部刷って、自社の営業にも代理店にも余るほど配っておいて、「ほらばらまいてくれ」と言って配るものを指します。印刷費用もかかりますし、各地の代理店に郵送する費用も結構かかります。それで大雑把にこんな費用になるかと思います。

効果の程度ですが、これは結構あります。ただしチラシを代理店にしっかり配ってもらうためには、何かわかりやすいキャッチと、代理店が配らないでいられない理由が必要です。そしてこれはほとんどの場合、新製品もしくはキャンペーンの案内になります。逆にそうでなければ、ほとんど効果が期待できないというのもチラシの特徴です。また自社の営業担当者が代理店と良好な関係を築けていないと、チラシを配ってくれない、もしくは投げやりに配られてしまうという話もあります。

効果はだいたい100のオーダーになると思います。製品の汎用性やキャンペーンの魅力度などによって数倍はぶれると思いますが、数1,000になることは無いと思います。チラシに対する問い合わせはメーカーよりもむしろ代理店に入りやすいと思いますので、数を把握するのは難しいです。それでもチラシの場合はメーカーに直接入る問い合わせも少なくありません。

バナー広告

これはインターネット上のウェブサイトに貼るバナー広告です。

これもあまり効果がないです。ただ雑誌と違って、同じ効果がないでも、バナー広告の場合はクリックスルーが測定できますので、効果の無さがはっきりします。

そう思っているのは僕だけではないようです。羊土社やネイチャーのウェブサイトはいずれもバナー広告を募集していますが、どちらも開店休業状態に近いかと思います。ウェブサイトを見れば、メーカーのバナーが少ないことがよくわかると思います。

問い合わせ数(クリックスルー数)については、実際にあるウェブサイトにバナー広告を出して、そのクリックスルーをみた結果をもとに書いています。

ちなみにバイオの買物.comでもGoogleが提供している広告をたくさん貼っていますが、これもクリックスルーは低いですね。

メルマガ

メーカーでもメルマガをやっているところは多いですが、これはそれとは別に、第三者のメルマガに広告を載せてもらう話です。大きいところだと、ネイチャーのメールアドレスデータベースのうち、広告を流していいと了解をもらっているアドレスに対して、ネイチャーがメールを出してあげるというサービスがあります。

メルマガはタイトルがどれぐらい魅力的かが非常に重要で、やはり顧客は「サンプル」とか「キャンペーン」によく反応するようです。「セミナー」も効果的だと聞いています。

これも内容によってレスポンス数が大きく変わると思いますが、クリックスルーはやはり100のオーダーではないかなと思います。

学会展示

分子生物学会などの展示場にブースを出して、来てくれたお客様に製品の話をすることをここでは言っています。問い合わせ数というのは、製品のことをちゃんと話せたお客様数と考えると良いと思います。ただの冷やかしとか、景品をもらいたくてくる人も多いので。

ここは「サンプル」とか「キャンペーン」じゃなくても、ある程度ちゃんと製品について話ができます。来るお客様も自分からわざわざ足を運んでくれている人たちなので、メーカー側としては話していても結構楽しいことが多いです。

冷やかしのお客様を除いた数字として200はまぁまぁな数字かと思います。30万円という金額はブースひとこまのサイズなので、中堅以上のメーカーだとその2-3倍になることが多いと思います。

感想・結論

ひとことで言って、高いです。どの媒体も費用対効果は悪いです。インターネットを活用したものであっても、費用対効果は高いと言えないと思います。

いまは媒体側もあまり真剣な活動をしていなくて、費用対効果が高い広告媒体を作ろうという努力が足りないと思います。でもこの状況なので、良い媒体ができればかなりのビジネスがとれると思います。

ちなみに僕はいまGoogleのAdwords (検索連動型広告)を使って、「まとめて抗体検索」に誘導する広告をうっていますが、これの費用対効果 (クリックスルーの単価)はかなりすごいです。あまりにも低くて(つまりクリックスルーが安く入手できる)、ちょっとここでは言えないぐらいです。

ですから、バイオ業界だから費用対効果が悪いというのではなく、どこかやり方が悪いということだと思います。

景品のアイデア

学会などで各メーカーはペンや携帯電話ストラップ、USBメモリなどの景品を配ったりしています。

でも、なかなか喜んでもらえるものを探すのは難しいです。USBメモリなどは最近ありふれている上に、なぜか256MBのものばかりなので、ちょっとなぁという感じがしますよね。

どういうものがいいか、FriendFeedで話題になっています。

太陽発電による充電器か…

競合他社製品をPR文に使うことの危険性

先週、40分ほどジョギングをした後にコンビニに立ち寄って、ウイダーinゼリーを買いました。

でもパッケージの裏を読んで、もう二度と買わないことを決心しました。代わりにおにぎりを買おうと。
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なぜかというと、PR文が
「すばやいエネルギー補給に(おにぎりおよそ1個分)」となっているのですが、ウイダーinゼリーの価格はおにぎりのおよそ2倍なのです。

本当に価格差を正当化できるだけのメリットがあるのか、真剣に悩んでしまいました。その上、ウイダーinゼリーのパッケージはゴミ量的にはおにぎりの5倍はありそうなので、エコロジーが叫ばれる今日この頃はこれもとても気になります。僕の結論は「正当化できない」でしたので、もう買わないことにしました。

実はこのような逆効果PRは随所に見られます。マーケティングに大枚をはたいている企業であってもです。

またマーケティング資料では避けていても、営業担当者の多くは何かと競合の話をする癖があるので、顧客にこのような逆効果PRを仕掛けてしまいます。

ということで、
「競合をPR文で前面に出すときは、確実に性能と価格で勝てるときだけにしましょう」

最後に、このような逆効果PRをやって馬鹿にされているマイクロソフトの例を紹介します。

マイクロソフトはご存知のように、新しいOSのVistaが思うように売れなくて困っています。多くのユーザと大口顧客はXPで十分と判断して、Vistaを見送るだけ無く、DELLなどにVistaでなくXP搭載パソコンを販売するように圧力をかけています。MS-Windowsはもともとの市場シェアが非常に高いだけに、Vistaの競合はXPになるわけです。

SubHero_enterpriseready01.jpgそこでマイクロソフトは「XPよりVistaがいいよ」というマーケティングキャンペーンを展開しています。Vistaのホームページに行くと、もうその関係の文章ばかりです。しかも親切にも「お悩み解決! アップグレード徹底ガイド」というリンクがあって、アップグレードで悩んでいる人が多いことを半ば認めてしまっています。

アメリカではもっと積極的で、“Mojave Experiment”なるものをやっています。これは例えるならば、あの「ペプシチャレンジ」をVista vs. XPでやっているようなものです。これを評価している人もいますが、大部分の評論家は否定的ですね。

携帯電話に動画と音楽は必要ない

アンケート調査の結果、携帯電話の動画も音楽も「あれば使う程度」の人が、全利用者の50%だそうです。
使っている人も最初に試した程度の人が多いみたいです。

しかも「携帯性」を利用しているのではなく、特に動画は自宅で暇なときに見るのが70%だそうです。携帯に動画機能をつける必然性は無いということですね。

日本の携帯メーカーが技術的に強みをもつのは音楽だとかテレビなので、利用者のニーズとは関係なくいまの日本の携帯電話は進化したのでしょう。

これから日本でも普及する、iPhoneをはじめとするスマートフォンは、パソコンでやることを携帯電話でやる方向に進化しているものです。日本はパソコンの技術は世界に自慢するほどではなく、携帯ほどはひどい状況じゃないにしても、やはり世界では全然売れていません(東芝を除いて)。

日本の携帯市場が、1990年代のパソコン使用のように、外国製品にあっさり侵入を許すのはもはや時間の問題でしょうか。

携帯で動画利用経験者は約6割、音楽利用経験者は約7割、でも利用頻度は低め