MacBookは愛着の沸くコンピュータ

Appleのウェブサイトに「東北福祉大学がWindows PCからMacBookにスイッチした理由」が掲載されていました。

利点はたくさん書かれていますが、以下に引用した言葉にAppleの魅力、そして一番大切なことが凝縮されているのではないでしょうか。

「MacBookを引き渡す際の講習会で“おおー”という感動の声が上がったんです。過去3年間、ノートパソコンを学生一人に一台配布してきましたが、これまでとは全く違う反応でしたね。女子学生なんかはやはり、箱を開けた瞬間に“かわいい!”と喜んでいました。iPodを配布するということも含めて、かなり反響は大きかったですね」

「MacBookは触っているだけでも楽しくて、愛着の沸くコンピュータ。それはすごく大事なことだと思います。」

企業の成果主義:ダイソンのCEOのコメント

普通の掃除機の数倍の価格でもどんどん売れてしまうダイソン社のサイクロン型掃除機。

そのダイソンのCEOとのインタビュー記事がNBOnlineに紹介されていました。その中で僕の考えにぴったり一致するところがありました。

 報酬についてしつこく聞いていたところ、マコートCEOは好業績と高報酬の話をしてから、次のように続けた。

 「CEOの私が最も落胆するのは、社員の誰かが給与や処遇、認知について不平を言った時。そうならないよう、私を含む経営陣は社員とコミュニケーションを深めることにコミットしている。我々は徹底してオープン。ダイソンで今何が起きているか、これから何をしようとしているか、あらゆることを社員に伝えるよう努力している」

企業の成果主義がどうして失敗するかについて、僕自身の経験談をブログに書きましたが、考え方はとても近いように感じました。

成果主義がうまくいかない根本的な原因は、経営者がビジョンや目標をしっかり示せないことにある。僕はブログでそのように書きました。ビジョンや目標、さらにそれを実現するプロセスがしっかりと共有されていないと、社員は自分の評価の基準を知ることができません。評価基準が曖昧だと、低い評価をもらったときに納得できなくなり、不平を感じることになります。そして大きくモチベーションを下げることにつながると。

人間というのは、低い評価を簡単を受け入れることができません。自分が悪いと思う前に、必ず環境や周りのせいにしようとします。そして環境や周りのせいにしていくうちに、自分の力だけではもうどうにもならないと感じるようになり、そしてやる気を失っていくのです。

ですから、低い評価がモチベーションを下げる方向に働くのではなく、発奮する方向に働くようにするのは容易なことではありません。社員が納得できるような会社のビジョン、そしてしっかりした評価基準が共有されていないと、成果主義は単にモチベーションを下げるだけになってしまいます。これは水が高いところから低いところに流れるのと同じぐらい,必然的なことです。人間はこういう風にできている動物なのです。必ずこうなってしまうのです。

これに対してダイソンのCEOは、会社で何が起きているか、これから何を使用としているか、あらゆることを社員に伝えることが重要だとしています。そしてそれが十分にできないと、社員が給与や処遇、認知について不平を感じることにつながると考えているようです。

まさにその通りだと僕は思います。

最後にダイソンのCEOの言葉をもう少し掘り下げたいと思います。どうして多くの経営者はあらゆることを社員に伝えるどころか、わざと隠したりするのでしょうか?コミュニケーションは不必要だと思っているからでしょうか?

僕が見てきた経験から考えると、それはコミュニケーションの必要を感じていないからではありません。そうではなく、議論に負けるのが怖いのです。自分に本当の自信が無いから、社員の中にいる論客を恐れているのです。そこで情報を隠して、自分の優位性を保つのです。別に悪意をもってやっている訳ではありません。動物なら誰もがもっている、単なる自己防衛本能です。

これについては長くなってしまうので、またきっかけがありましたらブログで話します。

携帯電話に動画と音楽は必要ない

アンケート調査の結果、携帯電話の動画も音楽も「あれば使う程度」の人が、全利用者の50%だそうです。
使っている人も最初に試した程度の人が多いみたいです。

しかも「携帯性」を利用しているのではなく、特に動画は自宅で暇なときに見るのが70%だそうです。携帯に動画機能をつける必然性は無いということですね。

日本の携帯メーカーが技術的に強みをもつのは音楽だとかテレビなので、利用者のニーズとは関係なくいまの日本の携帯電話は進化したのでしょう。

これから日本でも普及する、iPhoneをはじめとするスマートフォンは、パソコンでやることを携帯電話でやる方向に進化しているものです。日本はパソコンの技術は世界に自慢するほどではなく、携帯ほどはひどい状況じゃないにしても、やはり世界では全然売れていません(東芝を除いて)。

日本の携帯市場が、1990年代のパソコン使用のように、外国製品にあっさり侵入を許すのはもはや時間の問題でしょうか。

携帯で動画利用経験者は約6割、音楽利用経験者は約7割、でも利用頻度は低め

企業の成果主義

議場の成果主義について、主にそれが”ひどい状況”にあることを紹介した記事がNBOnlineに複数紹介されていました。

実にいろいろな視点から成果主義の問題点が取り上げられていて、逆に何が問題なのかがわからなくなってしまっている感じがします。たくさんの記事はありますが、「それでいったいどうすればいいの」が全く見えない企画になってしまったようです。
「人はどうやって人を評価するべきか」。これが如何に大きな問題かがうかがえます。

さて、僕自身は成果主義を実施している企業を2社経験していて、管理職という立場で人を評価する側にもいましたが、いずれも”ひどい状況”であったことは確かでした。ですから、上述に書かれている記事が云わんとしていることはだいたいわかります。

ただそこで何が問題だったかをいきなり話してしまうと、上の記事のように多くのバラバラな意見に単に一つ別の意見を追加するだけになってしまうので、やり方を変えます。

そこで僕は、実際に成果主義の問題が起こるメカニズムを、自分が見た通りにミクロに追跡したいと思います。

ビジョンが形成されないメカニズム

僕が経験した会社はビジョンとか企業理念がしっかりしていませんでした。ビジネスに関する書籍では繰り返しビジョンの重要性が主張されているにもかかわらず、会社の経営者はそれを実感できていないようです。その結果、ビジョンは非常に曖昧なものになってしまっています。

しかし、成果主義にはビジョンが重要です。成果主義的に人を評価するシステムは、会社のビジョンや目標に対して、個々の社員がどれだけの貢献をしたかを見ます。ですから会社のビジョンが無いと、貢献する対象が無くなってしまい、評価ができなくなってしまうのです。ですから僕が経験した人事評価システムの中には、必ず会社のビジョンや目標が記載されている欄がありました。

問題はそのビジョンとか目標が作成されるプロセスです。このプロセスは実にみっともないものでした。

会社の経営陣はビジョンの重要性を十分に認識していないため、ビジョンや目標の作成は後回し後回しにしてしまいます。そして人事評価目標の提出の直前に慌ててビジョンを作成していました。当然、関係者と対話を繰り返し、お互いが納得できる目標が出てくるはずはありません。しかも自分自身も日頃からビジョンについて考えていないので、単なる思いつきでビジョンが出来上がってしまいます。

僕自身が経験した最悪のシチュエーションは、前日の社長の話を聞いて変な刺激を受けて、「すべての社員が営業だ。私も営業だ。」というのを20時間後に事業部のビジョンにしてしまった事業部長でした。そこまで狂っている人は稀としても、ビジョンや目標がこの程度にしか重視されていないのは一般的でした。

当然ながらビジョンは突然、ほとんど一人で決まってしまいますので、そのビジョンをどのように実現するかは全く共有されないで決定されてしまいます。つまりビジョンは机上の空論でしかないのに、人事評価の目標設定に取り込まれてしまう訳です。

単なる数値目標でしか評価されなくなるメカニズム

ビジョンというのは、判断と行動の規範です。それに対して金銭的な数値目標は、その行動を実践に移したことによって生まれた結果です。

上述のようにビジョンがしっかり決定されないと、判断と行動の方向性が生まれません。そのため、成果目標に行動やプロセスを盛り込むことができなくなってしまいます。ビジョンが無いので、何をやるべきで何をやるべきでないかが定まりません。つまり、ビジョンが確立されないことによって、プロセス重視の成果目標を立てることが不可能になる訳です。

プロセス目標が立てられないので、仕方が無いから数値目標、それも売上とか利益の数値だけが立てられます。最悪のシナリオです。しかも数値目標をどのようにして実現するかが明確にされていないので、この数値目標はエイヤーと決まったものにならざるを得ません。

もう一つ数値目標重視に傾くメカニズムとしては、現場をあまりにも知らない経営陣があります。このような経営陣の場合、プロセスを全く理解できないのです。彼らが理解できるのは売り上げがどうなったか、利益がどうなったかだけなので、自然と単なる数値目標を重視してしまいます。

数値目標といっても、その目標の適切さがわからない

上述のようにビジョンが無く、目標を実現するプロセスも明確にできない状況では数値目標に頼らざるを得ませんが、こうなってしまうと頼りの数値目標だっていい加減なものになってしまいます。

何が普通の努力で実現可能で、ちょっと背伸びするとどこまでできるかがわからないのです。プロセスが見えていないから。

そこで数値目標は自然と、対前年比何パーセントアップというのはおおよそ一律に設定するにとどまります。もしくは外資系などの場合は、本社から降ってきた数字をテキトウに配分して、つじつま合わせをします。そのテキトウというのは非常に不透明なので、とてもまずいです。

このいい加減な数値目標が設定される環境というのは、ものすごくモチベーションを下げます。お互いが平等な環境の中で実力をしのぎ合って、結果としてそれぞれに差がついてくることについては、ほとんどの人は納得するものです。しかしえこひいきだとか、政治的な巧妙さとか、そういうことで目標が低くしてもらったのではないかとお互いに疑い始めたらモチベーションは地に落ちます。

いい加減な数値目標が設定され続けると、最悪の事態を招きます。

そしてもう一周

モチベーションが下がっているのを見ると、「成果主義」の幻想に取り付かれている経営者は、給与のうちの成果報酬分を増やそうとします。結果責任をもっと強く追求すれば、みんなもっと必死になってくれるのではないかという期待です。そしてこれに加えて、いろいろなコンテストをやりだして、モノで部下を引きつけようとします。このときももちろんいい加減な数値目標を基準にしたコンテストにします。

もちろんやればやるほどモチベーションが下がります。でも「成果主義」の幻想から覚めないと、経営者はこれを何回でもやってしまうのです。

最後に

これが僕が自分で見た、成果主義が最悪の事態を招く過程とメカニズムです。

成果主義が悪いのではありません。でも成果主義をやる以上、経営者はなあなあな時とは比べ物にならないほどにビジョンと目標をしっかり立てて、透明性のある評価を心がけないといけません。

残念ながら、多くの経営者はその資質を持っていません。経営者にしてはいけない人間を経営者にしてしまっていること。これが日本の成果主義が機能しない理由だと、僕は思います。

新しいWeb技術 SproutCoreがもたらすもの

6月9日のApple Worldwide Developer’s Conferenceは、iPhone 3Gの発表とそれがたった$199で発売されるというニュースで持ち切りでしたが、その陰で他にも非常に興味深い発表が多くありました。

その一つがSproutCoreという技術。これはAppleが発明した技術ではないのですが、Appleが全面的に支援している新しいWeb技術です。ひとことで言うと、SproutCoreを使うとWebの使い勝手が大幅に良くなります。しかも開発が簡単です。

日本語になっている記事がいくつかありますので、下にリンクを用意しました。

  1. アップル、ウェブアプリに向けオープンな「SproutCore」技術を採用か?
  2. アップルのMobileMeを試してみたい人は、SproutCoreをチェックしよう

さて、上のリンクだけだと専門的すぎて、ウェブ開発者でなければ理解できないものばかりです。
そこで僕は、このSproutCore的な技術が、バイオの研究にどのような利点をもたらすかに絞って紹介します。複雑な話なので、順番を追って。

AJAXという技術

HTMLを柱とするウェブ技術は、もともとページという概念が強く、すべての情報はページ単位という考え方でした。紙とかなり概念が似ていました。これはすごくシンプルでネットワーク上も扱いやすいという利点がありましたが、インターネットの双方向性とブロードバンド化が進むに従ってその限界が明確になってきました。

例えばマップ技術を見てみましょう。ぐるなびは初期のインターネットの技術を利用しています。そのため、地図を拡大するにしてもあるいは少しだけ場所をずらすにしても、ページが丸ごと再表示されてしまいます。
これに対してGoogle Mapsではすべての動作がスムーズです。地図の中心をずらすには地図をドラッグすればいいし、拡大縮小のときもページ全体が再描写されることはありません。

これはGoogle MapsでAJAXという技術が利用されているためです。AJAXを使うと、ウェブサイトをページ単位に扱う必要がなく、またドラッグのような操作を使うことができるようになります。ウェブのサイトを見ているというよりは、自分のパソコンにインストールされているソフトを使っている感覚に近くなるのです。

GoogleはMaps以外にもAJAX技術を活用していて、Google Docsではワープロ、スプレッドシート、プレゼンテーションを作成するためのソフトを無償提供しています。これらはいずれも自分のパソコンにソフトをインストールせずに、マイクロソフト オフィスのような機能と操作性のソフトを提供するものです。

まとめると、パソコンにインストールされたソフトと同じような高い操作性のものが、AJAX技術によってウェブで実現できるようになりました。

ソフト開発におけるフレームワークの重要性

AJAX技術はGoogle MapsとGoogle Docsに代表されるように、非常に強力な技術ですが、残念ながら開発は簡単ではありません。簡単なAJAXはずいぶん多くなりましたが、ユーザが入力したデータまで含めて管理する、Google DocsタイプのAJAXウェブサイトはまだ数えるほどしかありません。

SproutCoreはこの問題を解決してくれる可能性のあるテクノロジーです。これはAJAXソフトのための「フレームワーク」です。ソフトの開発ではこのフレームワークが非常に重要で、優秀なフレームワークがあればプログラマーの生産性は何倍にもなります。

フレームワークというのは例えると電気、ガス,水道、そしてそれを利用する流しやトイレ,コンロ、暖房のようなものです。家を造るために自分で電気、ガス、水道を引くのは大変ですし、トイレやコンロも全部用意するのも面倒です。それらをすべて備え付けておいてくれているのがフレームワークです。あとは居住者の趣味に合わせて家具やカーテンをそろえて、住み心地の良い部屋にすればいいのです。フレームワークはすべての人が必要として、ほぼ共通しているものをあらかじめ用意してくれているものなのです。

いままでもAJAXのフレームワークはいくつかありましたが、どちらかというと電気、ガス,水道どまりのものでした。SproutCoreはさらにトイレ,コンロ、暖房を用意したものになっています。ですから、SproutCoreの出現によって、Google Docsのようにデータまで管理してくれるAJAXウェブサイトが簡単に開発できるようになります。

Appleのサポート

AppleはSproutCoreの開発者を雇い入れ、7月に公開するMobileMeにSproutCoreを全面的に活用します。MobileMe Webアプリケーションとしてはメール、アドレス帳(連絡先)、カレンダー、iDisk、そして写真ギャラリーを用意しますが、いずれもパソコンにインストールされたソフト並みの操作性となっています。AppleはSproutCoreの技術を利用するだけでなく、SproutCoreの開発も支援していて、おかげでずいぶんとSproutCoreの性能が向上したと紹介されています。

バイオへの波及

AJAX技術はバイオにとってかなり重要な技術です。バイオの情報はあまりにも多く、多岐に分かれていますので、ページという単位で表現するのは困難です。情報を閲覧している人がいろいろな絞り込み検索を行ったり、画面の微調整をしたり、自分で整理したりしないと、なかなか目的の情報が得られません。

実際、NCBIもかなり努力をしていて、AJAX技術も使われているようです。Sequence ViewerもおそらくAJAXをかなり活用していると思われます。

SproutCoreなどが普及することにより、Sequence Viewerよりもっともっと使い勝手のいいものが、より多くのバイオインフォマティックス系のウェブサイトに登場することが期待されます。Sequence ViewerそのものがSproutCoreのカスタムコンポーネントとして普及し、データを持っているところであれば簡単に自分のウェブサイトに組み込めるようになるかもしれません。

またPubMedなども、いまでは論文のタイトルとリンクが表示されているだけですが、AJAX技術を利用すれば、ページを移動することなく、素早くSummaryをプレビューできるようになるでしょう。またメールソフトのようにお気に入りの論文をフォルダにドラッグして整理できるようになるかもしれません。

あと、塩基配列を解析して制限酵素サイトを探したり、プラスミドマップを作ったりするソフト。。。。AJAX無しのものとしてはNEBcutterPlasMapperなどはいいと思いますが、もっともっと便利なものができてくるでしょう。

InvitrogenがABIを合併

今朝のびっくりニュース。冗談ではないみたいです。

Invitrogenのウェブサイトから。

ARLSBAD, Calif. & FOSTER CITY, Calif.—(BUSINESS WIRE)—June 12, 2008—Invitrogen Corporation (NASDAQ: IVGN) and Applera Corporation today announced that their Boards of Directors have approved a definitive merger agreement, under which Invitrogen will acquire all of the outstanding shares of Applera’s Applied Biosystems Group (NYSE: ABI) in a cash and stock transaction valued at $6.7 billion.

InvitrogenがAppleraのApplied Biosystemsグループの株式をすべて購入します。統合した会社はApplied Biosystemsという名前になります。Invitrogenの現在の取締役は9人ともそのまま残り、そこにApplied Biosystemsから3人が加わるということです。

Applied Biosystemsのウェブサイトにも

これがいったいどういうことなのか、背景は不明です。Applied Biosystemsを保有しているApplera社が、遺伝子診断部門のCeleraに集中するのが狙いだったとしか思えません。雰囲気的にはInvitrogen社が買いたがっていたというよりは、Applera社がApplied Biosystems部門を売りたがっていたようです。

研究者向けマーケットと遺伝子診断マーケットはそれぞれ全く異なりますし、成長性についても、研究者向けは一桁台であるのに対して、遺伝子診断でCelera社は20-30%の成長を示しています。ですから、Celera社の株主価値を高めるためには、このように分けるのはわかりやすい方法です。

Applera社の2007年業績報告

研究試薬・機器の内外価格差

研究試薬や機器は日本で買うと高いというのは、ほとんど常識?!になってしまっていますよね。

それでその理由として、中間卸しがどうのこうのって話になって、日本の流通システムが非効率って話にすぐになっちゃうんですけど、以前に内部にいたものとして言わせてもらうと、これはほとんどが嘘です。

確かに1~2割ぐらいだったら、流通とか、日本語のサポートが必要だからという説明はそれなりに説得力を持ちますが、実際のところ同じ試薬の日米内外価格差はこんなもんではなく、2倍~3倍っていう話も珍しくないと思います。ネットではうまく見つけられませんでしたが、ここでは3倍と言っています。要するに、流通とかとは別の理由で値段が高くなっているのです。

アメリカ留学などをして日本に帰ってきた研究者にはこの内外価格差が非常に良くわかるのですが、日本でだけ研究しているとなかなかわからないものです。そこでいま考えているのは、バイオの買物.comに米国価格も併記しようということです。これで内外価格差が非常に明確になってくれば、例えば割り引き交渉をするときの材料にも使えますので。

それと、一部のメーカーでは内外価格差が非常に少ないこともあります。このようにがんばっているメーカーと、相変わらず非常に高い値段設定をしているメーカーがいったいどこなのか。そこをはっきりさせたいとも思っています。

がんばっているメーカーは日本の研究者から支持され、日本からぼったくっているメーカーは日本の研究者から見放される。そういうことに少しでもつながればと思います。

細かい時期は未定ですが、年内には実現する予定の機能です。

携帯サイトの犯行予告は自動検索技術では見つけられず

Asahi.comの携帯サイトの犯行予告、自動検索に技術の壁 秋葉原殺傷の中に、今後の自動検索技術の進むべき方向がはっきり表現されていると思います。

現存の自動検索技術を地図と連動させたり、図書やニュースを検索したり、ブログを別に検索したりなど、いろいろなことが行われています。でもそのベースとなっている文章解析技術がまだまだ全然貧弱です。基本的にはキーワードだけを拾って何が書いてあるかを類推し、それにリンクなどによって重みづけをしているわけですから。

どこかの大学で研究されているかもしれませんが、真に役立つ文章解析技術が生まれてくれば、いままでとは全く別の、とてつもなく便利なインターネット社会になってくると思います。

ちなみにBioinformaticsでは膨大な文献情報を自動的に理解し、整理するための構文解析技術が研究されていますよね。有名な論文がどれかはわかりませんが、Googleをするとこんなものが見つかります。
Annotating protein function through lexical analysis

イギリスてiPhone 3Gは0円

イギリスの02というキャリアが提供しているiPhoneプランのうち、ヘビーユーザ用のプランではiPhone 3Gは0円になるとのことです。

table {border: 1px solid #666; font-size: 0.8em;}
td, th {border: 1px solid #666;}
th {background-color: orange;}

月額使用料 30ポンド(¥6,300) 35ポンド(¥7,350) 45ポンド(¥9,450) 75ポンド(¥15,750)
8GB iPhoneの価格 99ポンド(¥20,790) 99ポンド(¥20,790) 0ポンド(¥0) 0ポンド(¥0)
16GB iPhoneの価格 159ポンド(¥33,390) 159ポンド(¥33,390) 59ポンド(¥12,390) 0ポンド(¥0)
無料通話時間 75 600 1,200 3,000

いずれもデータ通信は無制限で、18ヶ月の最低契約期間となっています。
それとO2というキャリアはWiFiのHotSpotもやっているのでしょうか、WiFiも無制限でコミコミとなっています。

さて、ソフトバンクはどのような価格設定をするでしょうか、楽しみです。

iPhone 3G $199 (21,000円)から

サンフランシスコのApple World Wide Developers ConferenceでiPhone 3Gが発表されました。

日本の価格が確定したのかどうかわかりませんが、USの価格はとても安い。しかも機能というか、ソフトウェアとソフト開発環境がすごいです。

Appleのホームページにも紹介がありますし、キーノートを解説した記事もありますので、詳細はそちらを見てください(ケータイWatch, NikkeiBP

僕がここでお話ししたいのは、以下の2つとイノベーション一般への示唆です。

その1:AppStore

iPhoneは7月11日よりソフトウェアがversion 2.0になります。これは新しいiPhone 3Gだけでなく、既存のiPhoneユーザも無償でアップグレードできます。そしていままではサードパーティーがiPhone用のソフトが作れなかったのが、このversion 2.0からはどんどん作れます。

ここまでは一般的なパソコンと同じモデルです。Palmでもそうでしたし、スマートフォンでも同じです。iPhoneが違うのは、サードパーティーがソフトを販売する場合、必ずAppleが運営しているApp Storeから買わなければならない点です。つまり、iPhone用のソフトを発売できる小売業者はAppleだけであり、Amazonにしてもヨドバシカメラにしても楽天にしても、iPhone用のソフトを一切取り扱えないのです。無償のソフトもすべてApp Storeから販売されます。

これはとても閉鎖的に見えますが、元はウィルスなどによるセキュリティーの問題を回避する手段として講じられたのだろうと思われます。でも結果として、小さいソフトメーカーでもPRチャンネルと販路が確保できますし、Appleは売値の70%をソフトメーカーに還元してクレジットカード手数料やサーバホスティング費用はすべて負担しますので、悪い話ではないはずです。自分たちの販路を確保しているソフトメーカーとしてはうれしくないかもしれませんが、小さいメーカーにとってはとてもいい話のはずです。そして顧客としては、バージョンアップが確実にできるので、とてもらくちんです。

インターネット時代の新しいソフトウェア流通経路の完成です。日本の携帯電話市場でも類似したシステムになっていたと思いますが、より徹底したアプローチをAppleはとったと言えると思います。そのアプローチを採らざるを得なかった理由はセキュリティーという、どちらかという後ろ向きのものですが、そのアプローチの可能性をしっかり考え尽くすことによって、ユーザとソフト開発者の双方にとって非常に魅力的なシステムになったと思います。

その2:Mobile Me

Mobile MeはMac.comに変わる新しいウェブサービスで、大きな特徴はプッシュ型のメール、カレンダーとアドレス帳です。インターネットのメールは通常はプル型で、パソコンのメールソフトがサーバに問い合わせを数分おきに実行することによって、新しいメールを受け取っています。それに対してプッシュ型というのは、サーバに新しいメールが届いたら瞬時にサーバからパソコン側に連絡が来て、そしてパソコンにメールが届けられる仕組みです。実用上のプル型とプッシュ型の大きな違いは、プル型では最新メールを受け取れるまで数分かかること、それに対してプッシュ型は瞬時に最新メールが受け取れることです。

このプッシュ型のサービスは、パソコンであればMicrosoft Exchangeをメールサーバとして使用していれば10年以上前から実現していました。しかし、それ以外にプッシュ型のパソコンメールというのはほとんどありませんでした。一方で、携帯電話ではプッシュ型のサービスは一般的で、いまの携帯電話のメールはすべてプッシュ型です。

GoogleのGMailとかYahooのメールとかもプッシュ型ではないので、Mac.comとしては敢えてプッシュ型にする必要はありませんでした。どこもみんなプル型でしたので。しかしAppleが携帯電話市場に参入した結果、どうしてもプッシュ型のシステムを用意しなければいけなくなったのです。そしてそのシステムを用意している以上、携帯電話だけでなく、パソコンでも使わないとおかしい。ということで、こうしてMobile Meのプッシュ型メール、カレンダー、アドレス帳が生まれたのでしょう。

インターネットのパソコンだけを相手にしていたらやらなかったプッシュ型のメールを、Appleは携帯電話に参入するために開発したのでしょう。Microsoftが企業内向けだけに用意していたプッシュ型メールを、誰でも利用できる環境にしたのは、Appleのように妥協を許さないパソコンメーカーが携帯に参入したおかげと言えると思います。(BlackberryはMicrosoftのプッシュ型メールを受け取る仕組みまでは作りましたが、サーバとかメールサービスを自ら作ることはしませんでした。)

最後に

この2つの例を見ていると、イノベーションってどこからくるのか、そのヒントが見えてくるように思います。そのヒントとは、

  • ネガティブで後ろ向きに見えることであっても、徹底して考え抜けばきっとポジティブにできるという超前向きな姿勢
  • 異なる分野に参入するだけなら誰でもやっていますが、新しい分野と既存の分野を妥協の無い、高いレベルで統合させるぞという姿勢

イノベーションというのは、他人がいままでやらなかったことを成功させることです。そして他人がいままでそれをやらなかった理由は、1) できないと思ったから、2) できてもあまり価値が無いと思ったから、3) 気づかなかったから がほとんどのケースだと思います。上述したAppleの姿勢が、1)-3)を乗り越える力になったのだと思います。